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滝の焼き餅の印象


 眉山の山麓に滝がある。そこに小さな茶店が四軒、湧水の流れを背景に数寄を凝らせていた。滝壺の岸よりには子ガモが二匹、泳いでいたのである。石段に沿って軒を並べたどの店も、赤い毛氈をかけた縁台が鮮やかだった。僕は幼いときからこういう風景も、とにかく小ぢんまりとした茶店のたたずまいも好きだ。店内では釜戸の炉が赤あかと炎を動かし、丸い形の薄い鉄板が載せられていた。滝の焼き餅は、もち米とうるち米の団子に餡を詰め、小判型にのばし熱した鉄板に油を引かないで、焦がして焼き上げるのである。それを縁台に腰を下ろし阿波番茶でいただくのが、何よりである。帰りにあの滝壺の中を覗くと、あの子ガモはもういないかった。


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