市民参画社会実現のための仕組みについて

 

 

一厘の仕組(日本編)

森本 優(2005/11/01)


 前回、森本が「地方自治の統治機構図」の中で提案いたしました、議会・行政府とは独立した別個の、市民共同の常設協議機関に関しまして、もう少し詳しく説明致したいと思います。

 ご検討の程、よろしくお願い致します。

 

 先ず、この常設機関の位置づけを、(1)全く統治機構の中に位置づけずに、市民活動の延長線上のものとするのか、(2)行政府の下部組織(委員会・協議会・機関等)とするのか、(3)統治機構の中の、議会・行政府とは独立した別個の機関とするのかでは、その監視・市民参画・民意の反映・情報公開・公平性確保・総合的調整、等々の諸機能に関して、雲泥の差が生じてきます。

 また、その機関が、廃止を含め、行政府の判断・裁量でどうにでもなるようなものなのか、それとも、基本条例上の常設機関として、その廃止・変更等には、基本条例の改正手続きをとらねばならないものなのかでは、その法的地位に関しても、雲泥の差があります。

 

 確かに、参加する人の意識・経験のレベルは様々でしょうが、ここで問題にしているのは、住民自治の制度・仕組みのあり方なのです。市長が変われば、この機関の位置づけもコロコロ変わるようでは困るのです。

 いつの時代でも、参加する人の意識・経験のレベルが違うのは当たり前です。それを当然の前提として、市民参画を強力に推し進めてゆける制度・仕組みを、せっかくの機会なのですから、自治基本条例の中に盛り込みたいと言うことなのです。

 

 恐らく、このようなガラス張りの統治機構を作られては困る人たちも、少なからずいるはずですから、横槍が入ってくるのは当然覚悟しなければなりません。しかし、たとえ最終的にこの案が潰されても、甲府市の「つくる会」では、このような案が出たと言う事実を、全国に知らしめる必要があるのではないでしょうか。

 初めから、「できない」「時期尚早だ」としてしまうのは、この千載一遇のチャンスを、無残にも見殺しにしてしまうのに等しいと思うのです。

 

 そこで、この案を実現させるための実践的な提案です。

 PI活動等がそろそろ始まりますから、特にPI活動を中心にして、市民共同の常設協議機関設立のためのネットワークの形成並びに人材の発掘を自覚的に進め、そしてより多くの市民の皆様のご参加とご理解・ご賛同を得てゆくことを提案します。

 すなわち、全市民の関心を引き起こしましょう。そして、全市民、延いては全県民の草の根のネットワークを結んで、この常設協議機関を構築するための土台となし、この案を是非実現させようではありませんか。

 

以下、気が付いた点を述べます。

 

一、市民参画の手続保障について

 

 もし「住民自治」が住民の住民による住民のための政治であるなら、一番重視されなければならないことは、個々の住民に、あらゆる段階において、政治への参画が手続的にも保障されているということです。

 それが保障されていれば、結果として、個人的には意に反した内容の地域的合意がなされるに至ったとしても、その結果を受け入れられるのだと思います。

 今回森本が提案している市民共同の協議機関(第三機関)は、市民参画を手続上保障して参画社会を進めるために、行政や議会と対等に対置されるべきだと思います。しかし、その役割に関しては、執行機関(行政)・議決機関(議会)に対して、提言・答申・監視機関とでも呼ばれるべきものです。そして、この機関は、公募制も採り入れ、一般市民に開かれているべきだと思います。

 役割についてもう少し具体的に述べますと、条例案の提言、企画・実施・評価等に関する提言・答申・監視、市民参画の基礎資料としての情報の公開、要所での説明請求、等々です。

 この部分に関する具体的な細部は、PIをしていく過程で、専門家や参加希望者等を巻き込みながら、煮詰めていくのが実践的だと思います。

 

二、自治体内分権について

 

 自治体内分権の話しですが、巨大都市になっているところでは、身近な地域内の課題への対応・解決のため、都市内分権も必要だと思います。

 しかし、この方策は、より身近な地縁組織に権限を移譲するだけの話しで、移譲された権限が適正に行使されることまで保証するものではありません。

 従って、権限を移譲された地縁組織に、運営ルールの透明化・適正化並びに情報の公開を求めるとしても、それを監視するシステムがちゃんと働いていなければ、絵に描いた餅でしかありません。

 そしてこのことは、地縁関係が強い農村並びに準農村地帯では顕著です。

 地域の有力者(ボス)の言う事が絶対であり、事実はどのようにでも捻じ曲げられて来た過去を、どの地域でも持っているのではないかと思います。

 特に山梨は、都市部でさえも地縁関係による結束力は強く、政治家並びに県政・市政もその上に乗っかっていますので、自治体内分権の導入は、地縁組織を更に強固なものにさせ、地域エゴを助長させるだけでしょう。

 そのため、少なくとも甲府レベルでは、公益部門を担うテーマ別の地域協議会を立ち上げて、公募市民・有識者・専門家等と一緒にそれらの声も市政に反映させることで、極力公平性を確保してゆくべきだと考えます。

 特に、高度で専門的な情報は、全国・世界レベルでネットワークを組んでいる各地域協議会の会員の方が断然多いはずですし、将来の展望も見据えているはずですから、市政に対する提言能力・総合調整能力は、地縁組織よりはるかに高いはずなのです。

 ですから、是非、自治会等の地縁組織とは異質なテーマ別地域協議会も立ち上げていただき、行政・議会とは別個の独立した市民共同による常設協議機関を作りたいと考えているのです。

 

三、行財政改革に関連して

 

 また、この機関を立ち上げることは、行財政改革の趣旨からしても理に適っていると考えます。

 すなわち、提言・答申等に関する行政の実務等をこの市民共同機関に移すことで、肥大化した行政を少しでもスリム化できると考えるからです。

 当然、その分の行政職員の給与の削減につながります。

 また一方、市民共同のこの機関では、少数精鋭の職員スタッフで足り、協議のためのメンバーは、原則として無報酬(若しくは交通費程度の実費)でお願いし、使命感のある人たちに集まってもらうようにすれば良いと考えます。

 

以上

次回「地方自治の現状と市民参画社会への展望」へ続く


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