随筆 『空跳ぶカエル 7』 一人旅
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一人旅  君は初めて一人旅をした時のことを覚えてる。「旅の不安があるんでしょうね」と聞かれても全く不安なんてありません。以前からそうしたいと思っていたの。「寂しいでしょうね」と聞かれても全くそんなことはありません。せいせいするの。「日常生活に不便でしょうね」と聞かれてもそんなことはありません。ご飯もお風呂も気の向いたときに、虫を食べ、田んぼのお風呂に入ればいいの。洗濯もしなくて良いように最初から洋服は着ないの。パンツもはいていないから汚れないよ。あ〜あ〜自由だ自由だ。

 そう思って一人旅をはじめたの。旅の目的は何か??? 最初は目的があったの、だけどさっき川を渡るときにドッコイショと声を出したら忘れてしまったの。ドッコイショに行くわけでもなく、ドコイキマショになってしまい困った。そういえば、ボクが幼いオタマジャクシの時、お母さんはいつも心配そうな顔をしながらボクを見ていたけど、あれはボクの姿がナマズに似ていただけではなく、記憶不良も心配していたのかな? どうせお父さんお母さんに似て頭が悪いんだ。これは遺伝だと思いあきらめる。

 兎に角、気の向く方向に歩いていた。目の前の葉っぱが邪魔で前が見えないところにきた。ゆっくり左手でその葉を動かした。その時、そこに居たのは大きな青大将だった! その瞬間、反射的に後ろ足に力が入ってボクの身体は飛び上がった。あまりの恐ろしさに「お母さ〜ん!!」と叫んでいた。その時、そうだお母さんを捜しに一人旅を始めていたのだと思い出した。

 無意識の中、瞬間的な足の動きに筋肉痛を起こしたが、本能的な行動で我が身が助かった。その怖さのお陰で親を訪ねる目的を思い出した。生きてゆくためにはストレスも大切なんだな〜〜と感心した。

  











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