バスフィッシング1 バスフィッシング2

連日釣り人に釣られ、バスはスレきっていた。バス釣りは、渓流釣りスタイルかボート釣りでないと思うように釣れない。早速、渓流用足袋とウェットタイツ、腰にはバスを入れる網袋を下げてアシの中に入った。おまけに熊鈴まで下げていたからオカシイ!。水に濡れながら、そっとポイントに近付くのは、渓流釣りの真骨頂だ。 アシの先まで歩き、アシ際をゆっくりリーリング。すると、変に鈍いアタリ。すかさず竿を立てると、強い引きが返ってきた。慌ててリールを巻き上げると、バスは水面でジャンプ。思ったよりデカイ。待望の初バスは、いきなり37cm、ビギナーズラックといったところか。上州屋開店特売の300円の竿でも釣れました。
釣り方が分かればこっちのもの。次々とバスが掛かった。掛かった瞬間のアタリは、意外にも弱い。安い竿だから、そう感じるのかも知れないが・・・。ところが、リールを巻き上げた瞬間から見事なファイトを見せてくれる。これがたまらない・・・いや、いやバス釣りにハマっちゃいけない、いけない。でもバス釣りの魅力も分からなくもない。そして、キャッチ&リリースする気持ちも分かる。何しろ、できるだけ多く釣るにはキープなどという面倒くさいことはしていられないのだ。爆釣している時に、写真を撮ったり、キープして網に入れて一箇所にデポする時間は無駄以外の何ものでもない。おまけに生臭いことこの上ない。
「早くリリースして」と訴えるバス。なぜか釣り人のそばに寄せられると急におとなしくなる。リリースされるクセがついているのか、観念するのが実に早い。キャッチ&キルの釣り人とは知らず哀願するバス。キープすると網の中で猛然と暴れた。回りの釣り人は全てキャッチ&リリース、そんな中でキープしバスの頭を石に叩きつけているのは私一人。白い目で見られたのは言うまでもない。驚いたことが一つ、バスは急所である頭を石に叩きつけても、死なないということ。これを知らずに、一匹見事に逃げられた。
37cm、33cm、31cm・・・尺上3尾。意外にも魚体は金色に輝き美しい。しかし、口は上下に鋭い歯があり、黒いまだら模様が気色悪い。エラを掴むと絶対に逃がすことはないが、最後のバス釣りでは、間違えて40cm級のバスの口を掴もうとしてラインを見事に切られ逃げられてしまった。悔しい〜! ボート釣りは、次々とバスを釣り上げていた。50センチ級の大物バスも2尾ほど掛けたのを目撃した。「デカイ、デカイ!」と絶叫していた。興奮するのもわかるが、せめてボートに乗らず陸で勝負してほしいものだ。バス釣りは、近代的な道具に頼りすぎる。
キープした中では最も大きかった38cm。右の写真が特売300円のバスロッド。バス釣り人は、高そうな竿を3〜4本も持って歩いている。そんなバサーから見れば、渓流用足袋にウエットタイツ、特売ロッドに熊鈴スタイルは誠に変なオジサンに見えただろう。恰好や値段、竿の数だけでは、バスは釣れないと思うのだが・・・。それにしてもバス調査からバスフィッシングの4日間を通して、バスにはいろんなことを教わった。
4日目の釣果。38cm、35.5cm、31cm尺上3尾。網に入れたまま、ゴミ袋に入れて家に持ち帰ったが、まだ生きていた。その生命力の強さには度肝を抜いた。別のため池に放流しようと思えば簡単だ、ということがわかった。生の切り身は、犬もネコも見向きもしなかったが、焼いたら美味そうに食べてくれた。感謝、感謝!!。

バスフィッシングは確かにオモイロイ。そして感激もある。しかし、元の八郎湖を知る一人として大きな疑問を抱かざるを得ない。今から20数年前、八郎湖はコイやヘラブナ釣りのメッカだった。その中に私もいた。小さなコイは、家に持ち帰って水槽で飼ったりして楽しんでいた。ところが、今やバス釣り人で溢れている。八郎湖には、ボートが飛び交い、バシャ、バシャとヨシの中で騒いでいるのは全てバスばかり。アシの中でじっと観察しているとバスが見えるほど魚影は濃く、デカイ。この変わり果てた八郎湖に、かつての生態系は確実に破壊されている現実があった。これだけ大きくなったバスがどれだけ多くの小魚たちを食べたのだろうか。そして、この八郎湖から密かに持ち出し、どれだけの野池に密放流されたのだろうか。次々と疑念が湧いてきた。

・・・それにしても渓流釣りグッズがバスフィッシングに応用できるとは、新たな発見であった。さらに、バスフィッシングの釣り方もかなり進化している。釣りの技術、道具という点では、日本古来の釣法より格段に創意工夫が感じられる。例えば、ルアーを線ではなく点で釣る釣法、これにはルアーの一年生としては新鮮な驚きだった。というのも、ポイントが小さく障害物の多い源流で釣る場合、日本古来のチョウチン釣りという独特の釣法があるが、アシや障害物周りのバスを釣る場合、ルアーにも既に進化した形で導入されている。これは山釣りルアーにも応用できるのではないかと思った。いや、ぜひ試してみたい釣法である。ただし、カッコよさは微塵もないが・・・。

漠然とした不安
連日押し寄せる釣り人、キャッチ&リリースとは言うものの、大量のバスが何度も釣られ、口はブヨブヨに痛めつけられている。当然、バスは完全にスレ切っていた。八郎湖では、子供でも釣れるバス釣りなどという時代は、とうに過去のものという実感がした。ゴールデンウィーク最終日は、釣り人もまばらでボート釣りでさえ悪戦苦闘していた。最後は、釣り人に見捨てられ、バスだけが残る死の湖になるのではないか・・・との不安が脳裏をかすめた。経済効果とは言うものの、長い歴史からみれば、一瞬の線香花火のような輝きに終わり、人間の手では取り戻すことのできない荒涼とした八郎湖とゴミだけが残っていた・・・と考えるのは、単なる杞憂だろうか。

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