UY 247B 0.75Wモノラル・アンプ

Sep.1,2012:初 版


はじめに

 本アンプはUY247Bとそれに電力を供給していた電源トランスありきでスタートしました。前作はUZ57ー>UY227ー>UZ247Bの構成で羊羹箱に入れた和風アンプで音は二の次で、しばらく電源も入れずに忘れ去られていました。が、最近何となくかわいそうになりリメークして見ました。
 リメークにあたり、UY247Bの出力段は三極管結合にするか5極管のままとするかで一寸悩んだ結果、なるべく出力が取れる5極管出力とし負帰還(NFB)を与えて1W程度の出力とすることとしました。
 我が家の0dbは300mVなので6db以上のNFBを期待するとUY247Bをフルスイングする80倍以上のゲインのドライバが必要となります。ここを前作のように2段にするとNFBが安定しなくなるし複雑になるため1段で済ませるためには三極管では無理なので不本意ではありますが5極管を使ってみることとしました。
 5極管の低周波増幅回路はいまいち難解で納得がいかないのですが、6J7のデータシートにあった抵抗結合回路定数表からプレート電圧200Vの時ゲインが90倍ほどとなるのをそのまま鵜呑みにして6J7相当のST管を物色し、手持ちのUZ77がWE-310のルーツであるらしいとのことなので、それはたいそうありがたい音がするであろうとの思い入れで選びました。むろんWE-310のお仲間であるCZ-501Dでも良かったのですがトランスのヒーター巻き線の容量が苦しいので止めました。



使用した球

 アンプに使用した球は全てジャンク箱の中身で60才を経過しているものです。出力管UY247Bは、ラジオマニアならご存じの直熱五極出力管247を日本流にアレンジした球で227、336などでラジオを構成していました。UY247B(=47B)は、247(=47)より一回り小さく、ちょうどUZ42と6ZP1の関係に相当し、3YP1で置き換えが可能です。ちなみに日本独自の整流管はUX112Bで、後にKX12Fとなりました。
 このUZ77(写真右端)は外観の割に劣化が少ないようです。球の特性は、シャープ・カットオフの検波増幅用5極管でかの有名なWE-310の原型となった球です。77の仲間は57や6C6、6J7、6SJ7などです。球の特性は6J7を参照可能です。
 同じ形状で差し替えることもできるUZ78や58,6D6はリモート・カットオフ特性(バリμ)でバイアスにより増幅率を変えることができるAVC付きスーパーヘテロダイン方式受信機の中間周波や高周波増幅専用でオーディオ用には不向きです。



回路構成

 本アンプはUY247Bとそれに電力を供給していた電源トランスありきでスタートしましたのでUY247Bの出力段は三極管結合にするか5極管のままとするかで一寸悩んだ結果、なるべく出力が取れる5極管出力とし負帰還(NFB)を与えて1W程度の出力とすることとしました。
 UY247Bは日本独自の球なのでNETのデータサーチでは引っかかりませんが、たまたま所蔵していた昭和40年版「全日本真空管マニュアル」の旧品種の規格一覧に載っていた主な諸元から、フィラメントが2.5V0.5A、プレートとスクリーングリッド電圧が180V、グリッドバイアス-19V、プレート電流20mA、スクリーングリッド電流4.8mA、負荷抵抗6KΩ、出力が1.4Wであることが判りました。
 我が家の0dbは300mVなので6db以上のNFBを期待すると150mV程度の入力でUY247Bのグリッド(-19V)をフルスイングするドライバが必要となります。ここを2段にするとNFBが安定しなくなるし複雑になるため1段で済ませるためには80倍以上の増幅度が必要となり三極管では無理なので不本意ではありますが5極管を使ってみることとしました。
 5極管の低周波増幅回路はスクリーングリッドの振る舞いがいまいち難解で納得がいかないのですが、6J7のデータシートにあった抵抗結合回路定数表からプレート電圧200Vの時ゲインが90倍ほどとなるのをそのまま取り入れて6J7相当のST管を物色したところ手持ちに6C6があり、さらに、57、77、CZ-501DなどのST管の中からWE-310のルーツであることと見た目からUZ77を選びました。残念ながらナス管の該当品はありません。



UX247Bモノラル・アンプの回路図


UY247Bモノラル・アンプの裏側と表側


回路設計の概要

 UY247Bの定格から、(1)フィラメントは交流点火としハムバランサーを入れる。(2)フィラメントとプレート、SG間の電圧は180Vとしてプレート電流20mA、スクリーングリッド電流4.8mA、負荷抵抗6KΩ、750Ωの抵抗で自己バイアス-19Vを発生させる。(3)この時出力が1.4Wとなるはずであったが球の劣化があるためか波形にクリップが生じない出力は1W程度であることが判った。(4)プレート負荷は6KΩだが手持ちの出力トランスの都合で二次側4Ω、一次側7KΩ(近々交換予定)となり、出力は8Ω負荷0.75W RMSとした。
 以上から、UZ247Bをフルスイングするためにはグリッドに13.3V RMS以上が必要となります。今回使用するUZ77の場合、6J7のデータシートにあった抵抗結合回路定数表からプレート電圧200Vの時ゲインが90倍ほど得られるとのことなので入力146mV RMSでUY247Bがフルスイング可能となります。
 この時のアンプの裸の電圧ゲインは出力を8Ω負荷で0.75W RMSとすると約16.75倍24.4dbとなります。アンプの仕上がり出力を8Ω負荷で0.75W RMS、入力を0.3V RMSとすると必要なゲインは18.1dbとなり6.3dbの負帰還が可能なことが解りますがダンピングファクターは微々たるものです。
 UZ77はシールド電極がプレートの外側を覆っているのでシールドケースは不要ですがグリッドが球の頂上にあるためここから静電的や電磁的な飛びつき発信を起こす場合があります。飛びつき発信した場合はシールドケースを装着します。シールドケースにはグリッドを覆うトップキャップを装着しないと無意味となります。
 電源はブリッジダイオードとチョークコイルの標準的な構成としました。このトランスが付いていたラジオでは整流管にUX112B(=KX12F)の半波整流方式が採用されていましたが球のドロップが大きいためやむなく半導体にしました。トランス上部にヒューズ・フォルダが付いているのが当時のラジオのスタンダードでした。
 このアンプの第一の調整箇所はUZ77のバイアスですが1.2KΩに合わせておけば触らずとも良いでしょう。オシロスコープを持っている場合はNFBを外して入力を加減しクリップが少なくて出力が大きくなるところを探してみます。可能であればスクリーングリッドの1MΩのところに電圧が変えられるように可変抵抗器を入れて、最も好結果が得られる電圧に調節できるようにしても良いと思います。
 第二の調整箇所はUY247Bのハムバランスでゲイン調整を最低にして出力のハム音が最も小さくなるところを探ります。ちなみにこのアンプの無信号時の雑音は0.8mV程度でした。


製作と音色などについて

 本アンプはブリキ板をシャーシーにして裏表チョコレート色のラッカーで塗装し「UX12Aシングル、ロフチンホワイトモノラル・アンプ」とおそろいの小物入れの引き出しに載せています。チョークコイルと出力トランスを隠すカバーもブリキ板を半田付けして作りシャーシーと同色塗装しました。
 このアンプは、クラシカルな五+五極管の構成ですが最大出力を押さえてこのアンプの最大限のNFBを与えているのでそれなりの音が出ていますがステレオの相方となるアンプ(強いて言えば弁当箱アンプか?)が無いので枕元でMacBookのiTunesをソースにしてPAX-20Fを鳴かせていますが特に不満はありません。ちなみにこのアンプと同じ回路でUZ77をUZ6C6、UY247を3YP1か6ZP1に変更するとほぼ同じものとなります。トランスに余裕があれば47や42とすれば出力を3W程度にアップ可能となります。
 UZ77はバカ高いWE-310のルーツだそうですが、その仲間の6C6や6J7、6SJ7GTなどは比較的安価に入手可能です。アンプ完成後にスクリーン電圧可変抵抗を臨時に取り付けて、手持ちのNEC製の日本版WE-310であるCZ-501Dに試験的に差し替えて見ましたがほぼ同じでした。また、57や6C6とも交換して見ましたが違いが分かりませんでした。と、言うより私のところの測定器とスピーカと耳とソースでは違いが分かりませんでした。


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