キトラ星図、天狼と老人
キトラ古墳天井星図(キトラ星図)に関して、筆者は以前から疑問を持っていて、それを元に
かなり荒唐無稽な主張を続けていたのだが、このたび、その疑問が氷解した。
筆者の疑問は、「天狼(シリウス)」と「老人(カノープス)」と同定されている(いた)星の位置関係にあった。それを当初は来村多加史『高松塚とキトラ 古墳壁画の謎』に見たのが事の発端であったが、それは2014年の『特別展 キトラ古墳壁画』(東京国立博物館)の図録でも変わっていなかった。

2014年の『特別展 キトラ古墳壁画』(東京国立博物館』の図録pp46
それが、このたび中村士『キトラ古墳星図および関連資料の成立年の数理的再検討』(科学史研究No.275)に掲載された図では明確に修正されている。

中村士『キトラ古墳星図および関連資料の成立年の数理的再検討』(科学史研究No.275)pp196
「図録」の位置関係(老人が天狼より西)は、現代のものである。しかしその関係は歳差によりAD1000年頃に逆転している。キトラ古墳はそれより前のAD700年頃なので、中村図のように老人が天狼より東でなければならない。
その他の部分についてはまだ検討できていないが、これで2008年以来の疑問は解決した。
Oct 30, 2015
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