大阪湾の縦式単節静振にGalerkin法を適用してみる。
基本方程式は
(1−ξ2)(d2η/dξ2)−(1+2ξ)(dη/dξ)+(ka)2(1+ξ)η=0 (O-6)
であるが、これは次のようにも書ける。
(d/dξ)((1−ξ2)dη/dξ)+(dη/dξ)−(ka)2(1+ξ)η=0
これは第2項のためにGalerkin法を適用しても
δF=0
なる汎関数F(η,dη/dξ)が定義できない。
しかし、元の基本方程式
∂2ζ/∂t2=(g/w)∂(wh∂ζ/∂x)/∂x (O-1)
に対しては、
ζ=η(x)cos(σt), σ=2π/T (O-4)
を用いて
(d/dx)(whdη/dx)+(σ2/g)wη=0 (O'-1)
となるが、これに対しては、次の汎関数Fが得られる。
F=(1/2)∫-aa{wh(dη/dx)2−(σ2/g)wη2}dx (O'-2)
ここで、
ξ=x/a (O-5)
w=2b(1−ξ2)1/2
h=h0(1−ξ)
を用いると
F=(1/2)∫-11{(1−ξ2)1/2(1−ξ)(dη/dξ)2−(ka)2(1−ξ2)1/2η2}dξ (O'-3)
ここに
k2=σ2/(gh0) (O-7)
ここでηを次のように展開する。
η=Σm=0MAmξmexp(mξ) (O'-4)
このとき、
dη/dξ=ΣmmAm(1+ξ)mexp(mξ)
となり、これが境界条件
(dη/dξ)ξ=+1≠∞ (O-8)
(dη/dξ)ξ=-1=0 (O-9)
を満たすことは容易にわかる。特にA0は定数項で、ξ=0(湾の中央)における振幅を表す。
さて、問題は汎関数(O'-3)に(O'-4)を用いて連立方程式
∂F/∂Am=0,(m=0,1,2,・・、M)
を解くことに帰着する。
(O'-3)に(O'-4)(O'-5)を代入すると、
F=(1/2)∫-11{(1−ξ2)1/2(1−ξ)(ΣmmAmξm-1(1+ξ)exp(mξ))2
−(ka)2(1−ξ2)1/2(ΣmAmξmexp(mξ))2}dξ
これから次の連立方程式が得られる。
∂F/∂Am=mΣnnAnGmn−(ka)2ΣnAnHmn=0 (O'-6)
ただし、
Gmn=∫-11(1−ξ2)1/2(ξp-2+ξp-1−ξp−ξp+1)exp(pξ)dξ (O'-7)
Hmn=∫-11(1−ξ2)1/2ξpexp(pξ)dξ (O'-8)
p=m+n (O'-9)
これらを用いて、連立方程式(O'-6)を解いてみる。ここでは、m,n=0,1,2を用いた場合を考える。H01=H10,H02=H11=H20,G01=G10なので、(ka)2=λとすると行列式は
| | | −λH00 | −λH01 | −λH11 | |
|
| | | −λH01 | G11−λH11 | 2G12−λH12 | | | =0
|
| | | −λH11 | 2G12−λH12 | 4G22−λH22 | |
|
これから、
λ=0
および
αλ2+βλ+γ=0
ただし
α=H00(H122−H11H22)−2H01H11H12+H113+H012H22
β=H00(4G22H11+G11H22)+4H01H11G12−G11H112−4G22H012−4G12H00H12
γ=4H00(G122−G11G22)
が得られる。
GmnおよびHmnは、Simpsonの公式により数値的に求める。もっとも、
H00=∫-11(1−ξ2)1/2dξ=π/2=1.5708
であるが、Simpson法では分割数を4096にしてもなお 1.57096 となり、かなり分割数を上げなければ精度は良くならない。しかし、ここでは日高の時代に立ち戻って、手計算でも比較的容易と思われる分割数20の結果を用いる。この結果は次のとおりである。
| | H00= | 1.597
|
| | H01= | 0.4508
|
G11= | 2.127 | H11= | 0.8789
|
G12= | 1.689 | H12= | 1.296
|
G22= | 2.269 | H22= | 2.353
|
これらより、
λ=(ka)2=2.745, 9.369
ka=1.657, 3.061
が得られる。日高の得たkaの値は単節静振が1.660、双節静振が2.822であった。今回の結果は単節静振に関しては日高の結果と良く一致している。双節静振は、日高の結果より8%ほど大きい。しかし、日高の双節静振の結果は実測と比べて周期が6%長い(kが6%小さい)としているから、今回の結果は実測より2%大きいだけで、実測との差は日高の結果よりむしろ小さいとも言える。