The Days of Multi ＜香織／悪夢編＞ 第５部 Days with Serika ☆第１５章 悪夢の完成 （マルチ２５才） 本編第五部第１４章で”Ｂ．思念の言う通りにする。”を選択した場合の続きです。 −−−−−−−−−−−− ＜おもな登場人物＞ 柏木耕一 鶴来屋の副会長。 柏木千鶴 耕一の従姉。鶴来屋の会長。 柏木楓 千鶴の妹。実は耕一の「正妻」。メイドロボ体だが、本物の楓の魂を宿す。 柏木芹香 耕一の妻。来栖川グループの会長。 仕事の関係で、耕一と別居を余儀なくされている。 柏木香織 耕一と芹香の娘。高校一年生。 容姿は芹香そっくりだが、明るく活動的、やや脳天気。 −−−−−−−−−−−− 「耕一さん！！」 「しっかりして！！」 千鶴たちが叫ぶ。 耕一は娘の体を抱き起こした。 「ふふふ… やってやれよ。 娘も、そうしてほしいんだぜ。」 思念がささやく。 「…香織？」 耕一はそっと声をかけた。 「パパ…」 香織はぼんやりと呟く。 「パパが好きか？」 「うん… 好きだよ… パパの…言うことなら…何でも…聞く…」 「それみろ、娘もそう言っているだろう？ 早くやってやれよ。」 耕一は愛しい娘のあられもない姿に…激しい欲望を感じた。 「本当に…何でも言うこと聞くか？」 「うん…」 「香織… 毎晩夢を見ていたんだな？ えっちな夢を…」 「うん…」 「悪い娘だな。」 「ごめんなさい…」 「懲らしめてやる。」 香織は耕一の意図を悟ると、 「うん… 懲らしめて…」 と目を閉じた。 「耕一さん！」 駆け寄ろうとする楓たちの前に、思念の耕一が立ちふさがる。 ヒュッ！ ガキッ！ 思念と楓たちの戦いが始まった。 一方耕一は、香織の体にのしかかっていった… …やがて。 耕一が娘の体から身を起したときには、思念に打ち負かされた楓たちが地面に倒れていた。 「どうだった？ よかったろう？」 思念の耕一がささやいた。 「ああ。」 「この喜びを、本物の肉体で味わってみたいだろう？」 「……ああ。」 「じゃ、いいんだな…？」 翌朝。 芹香の部屋へ朝食を知らせに来たメイドロボは、芹香、千鶴、楓の三人が意識不明の状態で床に倒 れているのを見つけた。 芹香と千鶴は救急車で病院に、楓は来栖川の研究所に運びこまれ、入念な検査を受けた。しかし、 三人ともこれといった異常は見つからないにもかかわらず、ついに意識を取り戻すことはなかった。 耕一と香織の姿はどこにもなかった。 山奥の空家の中に、耕一は香織を運び込んだ。 香織はセーラー服を着ている。 来栖川邸を出る前に、耕一が命じてわざわざ着替えさせたのだ。 かび臭い匂いのする寝室。 古惚けたベッドの上に、用意しておいた新しい毛布を広げて、娘の体を横たえた。 おいおい必要なものを運び込むつもりだが、さし当たって、するべきことがあった。 …香織は後ろ手に戒められていた。 意識はあるが、何となくぼんやりしているようだ。 耕一（例の思念が人格の中心に位置している）は、娘に手を伸ばした。 香織が弱々しく呟く。 「パ…パ… だめ…」 「パパは香織が好きなんだよ。いいだろう？」 「だって… 私たち…親子…だから…」 こういう場合どう対処すればいいか、耕一は知っていた。 ゆっくりと力を解放する。 巨大な鬼の姿に変わっていく父親を、食い入るように見つめる香織。 圧倒的なエルクゥパワーに魅せられている。 「さあ…」 「でも…」 わずかに残る娘のためらいを打ち砕くために、耕一は言う。 「おまえは縛られている。抵抗はできない。 …そうだな？」 それは、耕一の愛をスムースに受け入れられるよう、言い訳を与えるためだった。 そう、香織には責任がない。 自由を奪われて、どうしようもない状態なのだから。 「言うことを聞かないと、ひどい目にあわせるぞ？」 さらなる「言い訳」を与えてやると、案の定、香織は静かになった。 耕一が香織に覆いかぶさる… 「ただいま、香織。いい子にしてたか？」 「お帰りなさい、パパ。いい子にしてたよ。」 何気ない父娘の会話。 だが… 娘はセーラー服に、ごつい金属製の首輪をつけていた。 「今日は川魚を取って来た。」 「わあ、おいしそう。」 「米や味噌はまだあったな？」 「うん。」 「腹が減った。」 「そう？ じゃ、ごはんの支度を…」 台所に向かおうとする娘を、耕一は後ろから抱き締めた。 「鈍いやつだな。 お前を食べたいと言っているんじゃないか？」 「え？ …でも、まだ昼間だよ？」 「いいじゃないか。」 「だって… パパ、すごいから… 夜まで動けなくなっちゃう。」 「魚を焼くだけなら、パパでもできるよ。」 「でも…」 「ふふ… しょうのないやつだ。」 耕一は手錠を取り出すと、娘の両手首にはめた。 「あ…」 「これで逆らえないだろ？」 「…………」 「さあ、おいで。」 手錠をかけられた娘のほっそりとした両肩を抱くようにして、寝室へ伴う。 娘はおとなしく連れられて行く… …香織はベッドの上で、ぼんやりと目を開けていた。 ほんとにパパってすごい… 例によって、しばらくは起き上がることもできそうにないや。 少し身じろぎすると、首輪と手錠の金属的な感触がした。 （ほんとは…こんなものなくても…） それはわかっている。父も知っている。 だが、拘束具をはずされた自由の身で、今の関係を受け入れることはできそうにない。 香織の精神がもたないのだ。 耕一が悪役になって、香織を拘束し続ける限り、香織は罪悪感に悩まされなくてすむ。 （ごめんね、パパ。） 耕一は、香織のために、何種類ものセーラー服をそろえて来た。 制服以外の衣類はほとんどない。 だから、毎日セーラー服を着る。 今着ているのは、どこの学校のものか知らないが、胸元に大きなリボンがあって、隆山中学の制服 によく似ている。 そう、香織が初めて耕一の前で着て見せた制服に… （パパは、あのときから私のことを…） 熱っぽく自分を見つめていた父を思い出す。 （私は… やっぱり、パパの鬼を見たときからかな？） 巨大な恐ろしい鬼の姿に、恐怖よりも憧れを、恋慕を抱いた。 やがてそれは、身を焦がすような思いとなって… ついに結ばれた。 こんなかたちではあるとしても… 香織はまた身じろぎした。 耕一は毎日自分を抱く。 そのうち、耕一の子を身籠るだろう。もしかしたら、もうすでに… 耕一はこの上なく強いエルクゥの男性。 自分も、エルクゥの女性としては、能力に優れているそうだ。 生まれる子は、きっとすばらしい力の持ち主に違いない。 かすかな笑みを浮かべる香織の瞳は、知らぬ間に紅に染まっていた… ＜香織／悪夢編＞ 完 −−−−−−−−−−−− ちょっとダークっぽくなりました。 特に分岐を書いている時そうなのですが、少しシリアスにしようとすると、 なぜかダークな雰囲気が前面に出てしまい… 多分、「痕」のダークな雰囲気に影響された結果だと思うのですが。 といって、気の利いたコメディも書けないし…はっきり言って、力不足、ということですね。 なお、ここも危険な描写をかなり削除したつもりですが…まだアブナいですか？ 本編第五部第１５章 悪夢の終わり へ 戻る