The Days of Multi第一部第1章 投稿者: DOM
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これは、図書館に投稿したテキストに、以下のような変更を施した改訂版です。

* 分岐等への移行がスムースにできるよう、ハイパーリンク化しました。

* 読みやすいよう、改行・句読点のつけ方等を考慮しました。

* 投稿後に気のついた誤字・脱字・気になる表現等を改めました。

* 「あとがき」の末尾に、改訂についての簡単な経緯を書き加えました。

すでにこの作品を読んだことのある方は、最後の「年表・キャラクターリスト・章名一覧」で、
お好みの章名をクリックすると、直接その個所を見ることができます。

なお、「年表…」の部分には本作品の内容等に触れる記述がありますので、初めての方は見ないよう
お願いします。

注:本作品は、PCゲームである Leaf Visual Novel Series 「痕」および「ToHeart」のネタばれ
  を含みます。

       1999.7.12               by  DOM

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* 分岐<綾香と浩之編>他の付加に際し、さらに誤字・脱字等を改めました。

* 「あとがき」の末尾に、新しい分岐作成の経緯と、作者に影響を及ぼしたと思われるSSに
  関する文章を加えました。

       1999.11.20              by  DOM

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The Days of Multi
第1部 Days with Hiroyuki
☆第1章 出会い (マルチ誕生〜生後4ヶ月)



「長瀬、例のおまえの倅のことだが…」 

「恐れながら…
 セバスチャンにございます、大旦那様。」

 大旦那様と呼ばれた人物−−天下の来栖川グループの会長を務める老人は苦笑した。

「やれやれ…
 そんなに大事か、その『愛のニックネーム』とやらは?」

「芹香お嬢様よりいただきました、大切なお名前にござりますれば。」

「…まあいい。
 おまえが芹香を大切に思ってくれていることは、
 わしも有り難いと思っている。」

「もったいなきお言葉にございます。
 …して、愚息めが何か?」

「うむ。
 いよいよ人間そっくりのメイドロボを完成させたということだ。」

「メイド…ロボ?
 …あの、女中の代わりをするからくり人形のことでございますな?」

 来栖川翁は再び苦笑する。

「ずいぶんと古風な言い回しだな。
 …まあいいだろう、
 おまえの倅が作った今度の…からくり人形というのは、
 人間のように考え、話し、行動できるという、今までにない画期的なものなのだ。」

「何と!?
 愚息がそのような大それたものを?」

「それでだ、
 そのメイドロボ…からくり人形がどこまで人間そっくりか試すために、
 実際の人間がいる学校へ送ってみよう、ということになったのだ。
 もちろん、いろいろな便宜を図りやすいよう、
 我が来栖川グループの出資する、二つの高校へだ。」

「と仰せられますと、つまり…」

「その通り。芹香と綾香の学校だ。」

 そこで来栖川翁はセバスチャンと呼ばれた巨漢の顔を見つめると、

「ついては、おまえに聞いてもらいたいのだが…」



「では、今日からこのクラスに入る新しいお友達を御紹介します。
 …マルチさん、どうぞ。」

「えー、皆さん、こんにちは、ですぅ。
 私、来栖川のメイドロボHMX−12です。
 どうぞマルチとお呼びくださぁい。
 今日から8日間、皆さんとごいっしょすることになりました。
 私、人間の皆さんに喜んでいただけるよう精一杯頑張りますので、
 よろしくお願いしますぅ。」

 ざわざわ… (ずいぶん人間っぽい娘ね… 本当にロボット?)



「こほん。
 今日は皆さんに新しいお友達を御紹介致します。
 さ、セリオさん、自己紹介を…」

「−−皆さん、初めまして。
 来栖川エレクトロニクス製メイドロボ試作型HMX−13、
 通称セリオと申します。
 正式名称は呼びにくいことと存じますので、どうぞ通称をお用いください。
 今日から8日間、皆様とご一緒に学ばせていただきます。
 ふつつか者ですが、何とぞよろしくお願い致します。」

 ひそひそ… (やっぱりロボットね… いかにも機械って感じ…)



「お父さーん! ただいま帰りましたーっ!」

 長瀬源五郎主任率いる来栖川エレクトロニクスのメイドロボ研究室に元気いっぱい駆け込んで来た
のは、新型メイドロボの試作機HMX−12ことマルチである。

「おお、マルチ。ご苦労だったな。
 初めての学校はどうだった?」

「はい! とっても楽しかったですぅ!」 

 マルチは、まるで人間の女の子が感動しているときそのものの様子で、目をキラキラさせながら、
学校とその行き帰りに起こったことを話し始めた。
 だが、楽し気に話すマルチの様子とは裏腹に、長瀬主任の顔にはかすかな憂慮の相があった。
 マルチは、クラスの生徒たちにいわゆるパシリをやらされている。
 いいように利用されているのが、マルチの話からありありと伺われた。
 …マルチ自身は、人の役に立てたと喜んでいるのだが。

 ただひとつ、マルチの報告の中で長瀬の注意を引いた事項があった。
 マルチが重い段ボール箱を抱えて苦労しているのを助けてくれた少年の存在である。
 その少年は、マルチをメイドロボというより、ひとりの女の子として扱ってくれたのだ。
 「限りなく人間に近いメイドロボ」をコンセプトに作られたマルチが、そのように扱われることこ
そ、長瀬を始めとする開発スタッフの本意なのである。

(しかし…) 

 と、長瀬は、マルチの報告を聞き終えた後で、思った。

(やはり、当然報告されるべきあの事項が抜けているな。)

 長瀬は苦笑する。

(まあ、マルチのことだから、そうじゃないかと予想はしていたが。)

 そして、おもむろに口を開く。

「ところで、マルチ?」

「はい、何ですかー?」

 マルチは相変わらず笑顔だ。

「例の件はどうなった?」

「は? 例の件?」

 マルチはきょとんとする。まるっきり失念しているらしい。

(参ったな…)

 長瀬は苦笑を深めつつ、マルチの耳のセンサーにささやいた。

「ほら、『お嬢様』の件。」

「?」

 マルチは一瞬わけがわからない、という顔をしたが、次の瞬間、

「あああああああああああああああーっ!!」

 長瀬がせっかく声を潜めた配慮を台なしにするような大声で叫んだ。

「す、すびばせーーーーーん!!
 すっかり忘れていましたああああああああっ!!」



 長瀬はその後泣いて謝るマルチを「明日から頑張って取り返せばよい。」と言ってなだめすかすの
にずいぶん苦労した。
 やっとマルチが落ち着いたとき、マルチと共に帰って来たもう一台のメイドロボが報告の順番待ち
で控えているのに長瀬の目が行った。

「…おお、セリオ。待たせて悪かったな。
 では、早速報告を聞かせてくれ。」

「−−かしこまりました…」

 セリオは運用試験初日の様子を的確に報告し、最後に、

「−−それから例の件ですが…」

 と、マルチが忘れた件について語り、

「映像データがございますので…」

 必要な資料も整えてあることを示して、報告を終えた。

「うむ。明日もこの調子で頼むぞ。」

「−−かしこまりました。」



 メイドロボの登校二日目。
 マルチは学校へ行く道すがら、時折自分の左手を開いてじっと見ている。
 その手のひらには平仮名で大きく「せりかさん」と書いてあった。

(昨日は失敗しちゃいましたから… 今日こそはしっかりと。)

 しかし、学校に着く早々から「パシリ」をやらされたマルチは、結局放課後になるまでターゲット
に接近することができなかった。

 放課後、皆に押し付けられた掃除を済ませて、晴々と後片づけをしていたマルチは、ふと、自分の
手の平に書かれた文字に気がついた。

(あれ、これは?
 …あああ! いけない! また忘れる所でしたぁ!)

 クラスメートから言いつかった用事を果たしているうちにまたしても「例の件」をころっと忘れて
いたマルチは、ちょうど通りかかった女子生徒に尋ねた。

「あ、あの、恐れ入りますが、
 …芹香お嬢様はどちらにおいでかご存じですかぁ?」

「え? 芹香お嬢様って?
 …ああ、もしかしたら、3年生の来栖川芹香さん?」

 女子生徒の顔にちらっと苦渋のようなものがさしたが、マルチは気がつかなかった。

「は、はい! そうですぅ。」

「来栖川先輩に何か御用?」

「ええっ、私、芹香お嬢様のことを調べ… あわわ…
 え、ええっと… そう!
 私、来栖川のメイドロボなんですけど、
 まだお嬢様にお会いしたことがなくて、
 それで、一度ご挨拶をさせていただこうと思いまして…」

 咄嗟にこれだけの言い訳を考え出すことができたのは、マルチにしては上出来と言うべきであろう。

「ああ、あなたが志保の言ってたメイドロボ…
 来栖川先輩の教室はね…」

 女子生徒が場所を教えると、マルチは礼を言ってから駆け出した。

 今にも転びそうな様子をはらはらしながら見送っていた女子生徒−−神岸あかりは、

(来栖川先輩か… きれいな人だよね…)

 心の中にちくっとした痛みを感じながら歩き出した。



 マルチが教えられた教室の前に来てみると、そこには見知った顔の男子生徒がいた。

(あっ!)

 嬉しくなったマルチは、またしても当初の目的を忘れてその男子生徒の前に駆け寄ると、

「浩之さん、こんにちは!」

 元気な声で挨拶した。
 この少年は2年生の藤田浩之、昨日マルチを手伝ってくれた人物だ。

「ん?」

 いきなり間近で名前を呼ばれた少年はちょっと驚いた顔をしたが、マルチを認めると、いささか目
つきの悪い顔を綻ばせて、

「よう、マルチじゃねーか。
 相変わらず元気だな?」

「はい! 私、丈夫なのが取りえですから!」

「そうか。
 …で、今日はどうした?
 …わざわざここまで来るということは、俺に何か用か?」

「え?」

 マルチはきょとんとする。
 ここに来た目的を一瞬忘れてしまったからだ。

「俺を探しに来たんだろう?
 誰かにいじめられたのか?
 それなら遠慮なく言ってくれ。
 俺がそいつにかけ合って、場合によっては…」

「ち、違うんですぅ。」

 マルチはやっと、自分が何しに来たかを思い出した。

「私、芹香お嬢様…来栖川先輩をお探ししているんですよぉ。」

 さっきの女子生徒にならった呼び方に言い換えている。

「先輩を?」

「はい。
 今どちらにおいでか、浩之さんはご存じですか?」

 それを聞くと浩之は、呆れたような顔になり、

「先輩なら…」

 と自分の隣を指差した。

「…さっきからここにいるけど?」

「えっ?」

 言われて初めて、マルチは、浩之の隣にいるぼーっとした感じの女子生徒に気がついた。
 長く艶やかな黒髪、美しい顔立、確かにそれは研究所で写真を見せてもらった来栖川芹香その人に
間違いなかった。

「あ!? あああ!?」

 マルチは大慌てに慌てた。

「ご、ごめんなさあああい!
 気がつきませんでしたぁ!
 あの、私、来栖川のメイドロボで、HMX−12マルチと申しますぅ。
 …あの、芹香お嬢様が、あの、この学校においでと聞いて、
 あの、ご挨拶に伺いましたぁ!」

 汗をかきながら一生懸命に話すマルチを、浩之は微笑ましそうに、芹香は何を考えているのかわか
らない表情で見ていた。



 浩之たちと一緒に校門までやって来たマルチは、芹香が黒いリムジンに乗り込むのを見届けた。
 リムジンで迎えに来た黒服の巨漢は、浩之を見ると威嚇するような一睨みを与え、次いでマルチに
探るような眼差しを向けたが、何も言わず車を運転して立ち去った。

「まったく、むかつくじじいだぜ。」

「何だか、こわそうな人ですねぇ。」



 マルチはそのまま浩之と帰ることになった。
 ともすれば浩之との楽しいおしゃべりに我を忘れそうになりながら、何度も気を取り直しては芹香
についての情報を得ようとした。

「浩之さんと芹香さんは、お友だちなんですね?」

「ああ、そうだな。
 …そう言えば先輩、
 俺のことを『たったひとりの大切なお友だち』とか言ってたっけ。」

「え? たったひとり?」

「ああ。
 先輩、俺の他にはひとりも友だちがいないんだと。」

「そ、そうなんですかぁ?
 …ううっ、お気の毒ですねぇ。」

 浩之はもちろん、全校生徒、並びにたまたま出くわした犬まで自分の「友だち」だと思っているメ
イドロボには、芹香の境遇はまさに同情すべきものだったのである。

「そうだよなー。
 …そうだ、マルチ、おまえも先輩と友だちになったらどうだ?
 先輩喜ぶぜ、きっと。」

「え? 私ですか?
 …そ、そうですねぇ…」



 その日、帰って来たマルチから報告を受けた長瀬主任は、頭を抱えていた。
 来栖川会長からセバスチャンこと長瀬源四郎(主任の父親だ)を通じてあった要請は、「会長の孫
娘の様子を、『本人に気取られぬように』探ること」だったはずなのに、マルチは当の本人の所に赴
いて堂々と挨拶までして来たというのだ。

(所詮、マルチには隠密行動をとることは無理か。)

 苦笑している所へ受付から連絡が入った。
 来栖川会長が会いに来ているという。
 慌てて出迎えてみると、父親の源四郎セバスチャンも傍に控えていた。

「これは会長。
 わざわざのお運び、恐縮です。」

「うむ。
 …新型メイドロボの運用試験は順調にいっておるようだね?」

 長瀬は会長の目的を悟ると、こう言った。

「はい。今のところ特に問題はありません。
 …ところで、例の件につきましては、
 運用試験が一段落してから、
 ご報告申し上げることになっていたはずですが?」

「うむ。それでよいのだが…
 たまたまこの近くを通りかかったものでね、
 少しでもわかっていることがあれば、
 聞いておきたいと思ったものだから…」

(「たまたま」ね… 会長の孫可愛がりも相当なものだな…)

「わかりました。
 それでは、それぞれの担当者から報告をさせましょう。」

 そう言って、長瀬は、「担当者」であるマルチとセリオを連れて来た。



 普段、家族に対しても仏頂面と口喧しい態度をとっている来栖川翁であるが、実は情に厚い所があ
り、特にふたりの孫娘、芹香と綾香のことは掌中の珠のように慈しんでいた。
 以前から孫娘の学校生活−−自分が直接見聞できない面−−について知りたいと思っていた翁は、
今回たまたまメイドロボの試作機が孫の通う学校で運用試験をすることになったと知って、長瀬主任
に秘かにあることを要請した。
 すなわち、運用試験の妨げにならない範囲で、孫たちの様子をそっと探って報告してほしい、とい
うものだった。



 さて、いよいよ公式の報告となって、マルチはどう言うべきか頭の中で必死にまとめ始めた。
 それを見て時間がかかりそうだと判断した長瀬は、セリオの報告を先にした。

 セリオは、自分が通う高校での綾香の様子を的確に報告し、要所要所は近くにあるモニターを使っ
て映像データを示すことまでした。
 おかげで、簡潔な報告ながら、翁には綾香の学校での生活ぶりが手にとるようにわかった。
 その活発で奔放な生活態度も、学校の人気者であることも…
 お嬢様学校であるから男性問題の心配はないが…

 そう、翁にとって、年頃の孫娘についての大きな心配の一つが、「妙な虫がつくこと」であった。
 念のため、綾香の周りに男っ気がないかどうか尋ねた翁は、セリオの意外な答えを耳にすることに
なった。

「−−詳しいことはわかりませんが…
 綾香お嬢様は、他校の男子生徒である藤田浩之という人に、
 関心を抱いている可能性があります。」

 詳細は現在調査中という。
 翁は不快なものを感じながらも、姉娘についての報告を受けるためにマルチを促した。

 セリオの報告もそっちのけで自分の言うべきことをまとめていたマルチは、しかし、いざという段
になって、緊張の余り今までまとめていたことをすっかり忘れてしまった。

「え、えーと、…せ、芹香お嬢様は…
 お気の毒、なんですぅ!」

 ともかく思いついたことがまっ先に口に出た。

「な、何だと!?」

 いきなりそう言われて、当然ながら翁は驚いた。
 マルチの余りにも余りな報告ぶりに、翁の傍にいる長瀬が顔に手を当てて天を仰いでいるが、それ
も目に入らないほどである。

「気の毒とは… どういうことだ?」

「は、はい…
 お嬢様には、お友だちがひとりもおられないんですぅ!」

「ん?」

 もう少し違う状況を考えていた翁は、やや安心した。
 孫娘が無理に下々の者と交わる必要もあるまいと思っているからだ。

「…あ! そ、そうでした!
 最近になって、
 『たったひとりの大切なお友だち』ができたんだそうですぅ!」

 報告というよりは連想ゲームといった方が当たっているようなマルチの話に苦笑しながらも、翁は、
芹香の『たったひとりの大切なお友だち』というのに興味を引かれた。
 芹香に友だちなど、いまだかつてできたことがなかったからだ。

「ほう。
 …その友だちというのはどういう娘かね?」

 当然女の子だろうと思ったのだ。
 しかし、マルチは答えた。

「え? いいえ、その方は、男の方ですぅ。」

「何!?」

 「たったひとりの大切なお友だち」が…男だと!?

 今度こそ驚いた翁は、思わずマルチを睨みつけるような顔をした。
 マルチが竦み上がる。

「あ、い、いや…
 それで、その男はどういう男かわかるか?」

 マルチを安心させるように声を和らげると、

「は、はい。
 その方は藤田浩之さんといって、2年生の方ですぅ…」

 マルチは浩之の話を始めた。

 藤田…浩之?
 つい最近、その名前をどこかで聞いたことがあるような…

 セリオに目を向けると、翁の意を察したセリオは頷きながら状況を分析した。

「−−断定はできませんが、諸般の事情から見て、
 その方が、綾香お嬢様の関心の対象である方と同一人物である可能性は、
 極めて高いと思われます。」

 芹香も…綾香も?

 焦った翁の耳に、マルチの声が入って来た。

「…それで、浩之さんは、私に手を貸して、
 荷物を運んでくださったんですぅ。
 本当によくしていただいて…
 それから今日の帰り道…」

 芹香の男友だちについての報告であるはずなのに、浩之の話を始めたマルチは、いつの間にか楽し
そうに、まるで自分の好きな男の子の話をしているような感じでしゃべり続けている。

(好きな男の子…か…)

「…おまえは、その藤田浩之という男が好きなのか?」

「え?」

 マルチは不意の質問にきょとんとする。
 そして、みるみるうちに顔を真っ赤にすると、

「そ、そ、そんな! わ、私は別に…!
 ひ、浩之さんは…
 ただの、仲のよい、お友だちなんですぅ!」

 手をぶんぶん振りながら慌てるその様子は、明らかに浩之が「ただのお友だち」ではないことを証
明している。
 翁は笑いながら、長瀬に言ってマルチとセリオを下がらせた。


 A.マルチって可愛いなあ。(第一部第2章 眠り へ)

 B.セリオが気になる。(セリオ編第一部第2章 セリオとの出会い へ)


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初めまして。DOMと申します。初めて書いたSSです。

今さらマルチSSか、とお思いになるかもしれませんが…
HMX-12と彼女をとりまく人間模様を描いてみたい、と思います。
登場人物は、「To Heart」および「痕」の皆さん、それにオリキャラです。

執筆の動機は…あちこちのWebサイトで面白そうなLeaf SSを目にするのですが、
連載途中だったり中断されたりというケースが多く、フラストレーションを解消するために、
「いっそ自分で完結したSSを書いてやれ。」と思い立ったためです。

で、一応完結させたのですが… 正直しんどかったです。時間もえらくかかったし。
多分もう二度とSSは書けないでしょう。

もともと自分ひとりのために書いたもので、あちこち無理や矛盾やこじつけがあります。
やたらに長かったりくどかったりしますし。
にもかかわらず、完成させてみると、読んでもらいたくなるのが人情というもの。
というわけで、厚かましくもこちらへ投稿してみようかと。

本編は第五部で完結、ほんの少し分岐も用意しました。
分岐は特にしょうもないですが。

最後に、私は年くってますので、作中人物(特に若者)の言葉遣い等、
おかしな部分があるかも知れませんが、ご容赦ください。

では、今後ともよろしく。