「美浜の会ニュース」No.47(1998.12.16)より


安全委は本当に関電申請書を審査したのか?!

高浜原発プルサーマルに関して、安全委員会から意見募集が行われ、それに対する「回答」なるものが12月1日の原子炉安全専門審査会で初めて報告され、同時にそこで、プルサーマルの安全性が確認され、その結論が12月3日の安全委員会に報告された。
そこで私たちは急きょ、その1日付「回答」に対する2日付質問書をつくり、竹村泰子議員の助力を得て、3日の安全委員会に提出した。それに対する4日付回答が郵送で手元に届いた7日は、ちようど安全委員会が通産省ヘの答申を決定した日であった。
わざわざ意見を募集しておきながら、抽象的な「回答」をー方的かつぎりぎりに公表して、再質問の余地を無くするとは、あまりにも国民に対して失礼な態度ではないだろうか。しかもその後、4日付回答の意味と根拠を電話で問いただしているが、担当者は答えることができないまま、宿題の状態になっている。今後のためにも、このやりとりの焦点を簡単に紹介しておきたい(別紙2日付質問書4日付回答書参照。なお、この回答書は安全調査室名になっているが、安全委員の承認を得ているとのことである)。

■質問1について:燃料被覆管の酸化膜はl5%を越えてはいけないという制限がある。
事故時の増量が3.3%(関電計算)なので、通常運転中は(15‐3.3)%を越えてはいけないことになる。高浜4号の被覆管は(低スズ)ジルカロイ4なので、酸化膜は下図の実測データのように、燃焼度が4万5千を越えると急激に成長するはずである。ところが関電申請書ではこの通常時の酸化をまったく無視している。この指摘に対する12月1日付「回答」では、「今回は」それも考慮した結果問題なしと判断したとのこと。通常時の酸化も初めて考慮したこと自体は評価できる。
2日付質問でその判断の根拠を問うたのに対し、ようやく答申決定後に第95部会の資料の該当グラフが送られてきた。このグラフから、通常運転中の酸化膜厚さを読みとったのが図の実線である。明らかに燃焼度の高いところで実測データとの間にきわめて大きなギャップがある。この実線の値で安全審査をしても、その対象は高浜4号ではなく、架空の原発ということになる。このグラフの実証的根拠を問い合わせ中であるが、まだ返事はない。

■質問2について:制御棒飛び出し事故時に、炉心がまともに冷却されるのかどうか、関電の申請書にはまったく何も書かれていない。この指摘に対し12月1日「回答」では、冷却水中への破損燃料放出量は73kgなので安全委の「RIE報告書」に含まれるとある。その73kgの計算法を2日付けで質問したところ、4日付回答では、参考文献「三菱PWRのMOX燃料装荷炉心の安全評価について」、に記載されているという答えで、そのうちの該当部分と思われる参考1(下表)が送られてきた。
しかし、この表からどうして73kgが出るのかと聞いたが、担当者は答えることができない。それよりもなによりも、表ではEOC(サイクル末期)でのPCMI破損本数割合が約0.43%となっているが、他方、関電の申請書ではこの値は約1%となっている。したがって、この表どおりの審査をしたのであれば、それは架空の原発の審査をしたのであって、高浜4号に関する関電の申請書を審査したことにはならないのである。

■質問4について:私たちは、安全委員会が親切にも、関電の申請書に書かれていない内容までも自分で付け足して「審査」していることに強い不信感を抱いている。プルトニウム被ばく評価を免除してやるなどはその最たるものである。
質問4に対する回答は、回答書最後の「なお」以下であるということだが、この意味は「設置許可申請書に書かれていない内容は基本設計に該当しない」ということらしい。
担当者がこのような趣旨を述べたので、本当にそうなのかと問いただしたところすぐに口を濁した。関電の申請書に書かれていない内容について「回答」で説明していること自体が、まさにそれが審査の対象になっていることを示しているのであり矛盾している。
この点も明確にするよう質問しているがまだ回答はない。


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