能はシェークスピア……。 狂言はチャップリン……。 能・狂言への誘いを受けたとする。が、見終わっても、 「いやあ、能は眠かった」 と、ほとんどの人は見栄っ張りで言わない。 春はシェークスピアも能も眠い? 春のチャップリンと狂言は眠気覚まし? 能楽師は、 「日本の音楽芸能には、序・破・急の演出感覚があ りますよね。初めは導入、次に展開、そして集結へ の自然な運び……」 なので、初めの序あたりで眠りに誘い込まれるの も自然の成り行きだから、それはそれで結構なのだ という。 初めての能鑑賞では、そりゃもう眠気とのたたか いでタイヘン! 自分の手をつねってみたり、足を組み替えてみたり の大奮闘だった。 見所(見物席)を見回せば、前後左右がコックリ、 スヤスヤやっているではないか。 著名文化人も眠っていたりするのだ。 が、回を重ねるうち、コツをつかんだ。 自分の自由なイメージで、それなりに楽しめるってこと。