7月18日(土) [惣流アスカラングレー]
くっ、アタシともあろうものが、あんなバカシンジなんかに負けるなんて…。
たとえ神が許してもこのアタシが許さないわっ!
それがたとえゲーセンのエアホッケーだとしてもよ!!
考えてみればこんなの簡単なのよね。
単なる運動量保存の法則じゃない。
"mv=const" ってヤツよ。
この若さで大学まで出てるアタシにしてみたら、赤子の手を捻る、
ううん、シンジの手を捻るようなモンよ。
シンジ、見てらっしゃい。明日は吠え面かかせてあげるわ。
アタシはこの一週間、あらゆる状況に合わせてシミュレートをしてきたんだからね。
覚悟はいいわね!?
7月19日(日) [碇シンジ]
こんにちは。碇シンジです。
アスカが……。 ちょっと怖い。
だってさ、今日、この前のリターンマッチってことで、ゲームセンターに
エアホッケーをやりに行ったんだ。
アスカはもう自信満々で、
『今日という今日は、アンタのその自慢げな顔を粉々に砕いてあげるわ。』
なんて言ってるんだもん…。
そう言えばアスカ、今週はずっとブツブツ言いながら勉強してたなぁ。
僕が覗き込もうとすると、
『アンタは敵!』
って凄い顔で睨んでたっけ。
アレ、もしかして……このための勉強だったの??
それで今日の結果はどうだったかって言うと…。
実は、また僕の圧勝だったんだ。
成績は僕の14勝6敗。
僕、この前と同じように手加減はしなかったんだ。
当たり前だよ。だってアスカなんだもん。
その後どうなったかって?
アスカはもうすっごく悔しがって、
『くっ、今日のところは大人しく負けを認めてあげるわ。
でも今度はアタシが貰うわよ!!」
だって。
でも、そのときのアスカ、なんだかちょっと、楽しそうだった。
気のせいかな…?
7月22日(水) [綾波レイ]
今日、碇君の家に行ったの。
碇君の家に行くのは久しぶり。
何だか私、ドキドキしていた。
今日は行く前に碇君へ電話したの。
だって、もし行ってもいなかったら悲しいから。
今日は碇君、ちゃんといてくれた。
私が行くって言ったら碇君は喜んでくれた。
私、嬉しい。
碇君の家に入ったら、セカンドチルドレンの姿が見えないの。
不思議に思っていたら碇君が、
『あ、アスカ?アスカならね…。部屋に籠もって勉強してるんだ。』
あの人が勉強しているの?
どうして?
私は何故だか聞こうとしたけれど、碇君は笑って答えてくれなかった。
でも私、何となくわかったの。
多分、碇君のせいなのね。あの人が勉強しているのは。
碇君はそれを知っているのね。
私はなんだか変な気分になった。
嬉しいような、寂しいような、そんな気持ち。
でも、これはいいことなんだと思う。
そう、思えるの。
7月24日(金) [惣流アスカラングレー]
アタシよ。
……………わかったわよ。認めるわよ。
アンタがアタシより上手いってコトをね。
先週アンタに負けてから、アタシは再度シミュレートをやり直したのよ。
運動量保存の法則だけじゃなくて、エネルギー保存の法則も考慮すべきだったのよね。
そう思ったから、ロジックを立て直してプログラムを組み直したのよ。
そう、完璧だった…。完璧だったはずなのよ……。
でもアイツは、バカシンジはアタシの予想の上を行ってたのよね。
ホントだったら凄く悔しいはずなのに、でも、それほど悔しくもなかったわね。
何故かしら?
精一杯やって負けたのにね。
たかがエアホッケーだけど、でも、ね。
まぁいいわ。
それにシンジにだって、ひとつくらい取り柄がないとかわいそうじゃない。
ね?シンジ。
7月25日(土) [碇シンジ]
こんにちは。碇シンジです。
昨日、またエアホッケーをやりに行ったんだ。
結果は…。
またも僕の圧勝。
アスカ、いろいろ勉強したみたいだったんだけど、また僕が勝っちゃった。
自分でも不思議なんだけど、何故だか僕、これ、強いんだよね。
アスカ、また凄く悔しがるかと思ったら……。
結構、サバサバした顔をしてた。
そして僕に言うんだ。
『悔しいけど、アンタの方が強いみたいね。』
ってね。
アスカからこんな言葉が出てくるなんて、少し前じゃ想像も出来なかったよ。
でも今は、そんなに驚かなかった。
それに……。
そのときのアスカの顔、凄くいい顔してたから。
でも、その後ニヤって笑ってたっけ。
アレは……。
何かを企んでる顔だよな…絶対に。
7月26日(日) [惣流アスカラングレー]
今日はね、シンジのヤツを連れて、買い物に行ったのよ。
いつもは特に目的も決めないでブラブラすることが多いんだけど、
今日は違うのよね。
でもシンジには、何を買うのかは教えないでいたの。
そしてシンジをつれていったところは…。
水着売場。
シンジのヤツ、すっごく恥ずかしそうにしてた。
だから教えなかったのよ。
言えば絶対に嫌がるもん、あいつは。
ならなんで連れてきたのか、ですって?
別に意地悪したワケじゃないわよ。
ただね、シンジに見て欲しかっただけよ。
いくつか目星をつけておいたものをとっかえひっかえ着て、
シンジに見せたんだ。
シンジは顔を真っ赤にして、凄く恥ずかしそうにしてたけど、
でも、ちゃんと答えてくれた。
言っとくけどね、アタシだって恥ずかしかったんだからね。
みんな、アタシ達の方を見て、くすくす笑ってるし…。
6着ばかり着替えて、最後に残ったのが薄いピンク色のパレオが付いたビキニ。
これを着て出ていったら、シンジ、妙にまじめな顔になって
『あ、これ、凄くいいよ。』
だって。
アタシ、なんだかおかしくなっちゃった。
だってそのときのシンジの顔、凄く真剣だったんだもん。
結局、それを買って帰ったの。
やっぱり、ね。
それじゃシンジ、今度プールに行くわよ!
泳ぎ方、忘れてないでしょうね?