十九.苦悩


 八月一三日(土) 天気・晴れ

 ここ数日、僕は悩んでいる。それは、ハルカとのことだ。
 僕は今、ハルカを裏切り続けている。ハルカのことは大好きだし、その気持ちに嘘はない。けれど、僕はハルカを裏切り続けている。

 どうしたらいいのだろう。いくら考えても、まったくわからない。悪いのは全部僕で、ハルカは少しも悪くない。

 こんな気持ちでいるから、ハルカも僕の態度が変なことに気付いているみたいだ。そのせいでここ暫く、ハルカとの関係がどうにもギクシャクしている。

 いやだ。こんなの、もういやだ。


 でも、どうしたらいい?


 僕は不意に、この前読んだ『トゥルーマン・ショー』のことを思い出した。あの主人公は最後に、何一つ不自由のない作り物の世界から、本当の世界へと足を踏み出した。きっとそこには、多くの艱難辛苦が待ち構えているだろうことを知りながら。
 僕は改めて思う。それは正しいことだったのかと。
 壁の中の世界だって、主人公が実際に生きた世界であることは間違いない。それは演出された世界だったかもしれないけれど、その中で実際に主人公は生きていたんだ。
 だったら、そこにいても良かったんじゃないだろうか。わざわざ未知の世界に足を踏み出さなくても、良かったんじゃないだろうか。

 それは僕にとっても、決して無関係の話じゃない。
 もし僕だったら、どうする?どうしたらいい?
 僕にはわからない。

 でも、このままでいいのだろうか。

 そうは思えない。


(以上、浜田シンイチの日記より抜粋)








二十.終わりと始まり

 

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