七. どうすんのよ、ファースト



 「アンタ、こんなとこでなにやってんのよ」
 彼女の第一声は、憎まれ口だった。

 「いや、ちょっと約束があって……」
 「この店で?」
 「うん、多分ここだと思うんだけど」

 つかつかと歩み寄ると彼女は、「ちょっと貸しなさいよ」と彼の手から地図をひったくる。

 「確かにここで合ってるわね」
 地図を睨みながら、彼女は独り言のように呟く。

 「よりによって、同じ場所で待ち合わせなんて……」
 『どうすんのよ、ファースト』

 「え、なにか言った?」
 「なんでもないわ、独り言」
 努めて素っ気なく切り返す彼女。
 「まあいいわ、とりあえず入るわよ」
 「あ、うん」

 外から想像するよりもずっと、店内は広々としていた。席の数は六十は越えているだろうか。入って右手はカウンター席になっており、左手前に二人掛け・四人掛けの席が、左奥に多人数用のボックス席が有った。
 客の入りは五分と言ったところか。彼女は店員に目配せすると、右手奥のカウンター席へ向かった。

 「ほら、なにぼさっとつっ立ってんのよ」
 「え、でも」
 彼女の視線に困惑する彼。
 「まだ来てないんでしょ、相手」
 「そうだけど……」
 「久しぶりなんだから、ちょっと顔を貸しなさいよ」

 彼女の勢いに気圧されながらも、彼は彼女の右隣に腰を下ろした。




八. これから




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