十四. レイからのメール



      
  
 お集まりの皆さんへ。

 今日は皆さん、ありがとうございます。そしてごめんなさい。もしかすると、怒ってらっしゃるかもしれませんね。
 私は、皆さんの所へは行けません。理由を言うことは出来ませんが、行くことが出来ないのです。

 私が皆さんの消息を知ったのは、ひょんな事がきっかけでした。
 四年前の出来事以来、皆さんは散り散りになっていました。色々な理由から、そうなっていたと思います。
 私はこの四年間に、色々なことがありました。そして、色々なことを学びました。
 そして、あの頃の事を想い出すことが多くなりました。
 あの頃の事は、辛い記憶しかないようにも思えます。沢山の出来事が起こりすぎましたから。

 でも私は、もう一度、皆さんに会いたいと思いました。
 だから、皆さんにメールを出しました。ちょっとずるい方法でしたけれど……。

 今日は、皆さんにお会いすることを、本当に楽しみにしていました。お会いすることが出来ないのは、返す返すも残念です。

 でも、またの機会がきっとあると信じています。
 その時を、楽しみにしたいと思います。

 今日は本当にごめんなさい。そして、ありがとうございました。
 僭越ではありますが、皆さん、今晩は楽しんで下さいね。


 では、またお会いする日まで。


 綾波レイ

  



 そこまで読み上げると、リツコは端末の画面から面を上げた。
 「以上が、レイからのメールです」
 張りつめた空気が一気に崩れ、あちこちから溜息が聞こえる。

 「そうか……」
 「綾波がね……」
 「レイちゃんも、色々あったのね」
 「会ってみたかったな」
 「うん、オレもだ」

 そんな中、ひとり赤木リツコだけは端末に向かっていた。キーを叩く音がリズミカルに続く。
 「先輩、なにやっているんですか?」
 不思議そうな顔で覗き込むのは伊吹マヤ。
 「ちょっとね」
 そう言いながらも、画面上は下から上へと次々に文字が流れて行く。
 「まさか……ここからアクセスしているんですか?」
 「ええ、そうよ」
 さも当たり前のように、リツコは答える。
 そのまま更に数分ばかりキーを叩いていただろうか。突然、リツコは端末を切って立ち上がった。

 「皆さん」
 「皆さんに、お知らせすることがあります」




十五. きっと会える




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