十三. 最高の再会



 エレベーターで九階に上がる。九〇一号室は左手奥のようだ。
 部屋の前まで来ると、いよいよ緊張が高まった。
 「行くわよ」
 「うん」
 意を決して、呼び鈴を押すアスカ。
 数秒の後、扉は開く。そして扉が開くと共に、大音量の騒ぎ声が部屋の中から飛び出してきた。
 「いらっしゃい―――!」
 「アスカ!」
 「シンジじゃないか!」
 「シンちゃん!アスカ!」
 二人に降り注ぐ、懐かしい声。懐かしい顔。

 葛城ミサトがいた。鈴原トウジがいた。洞木ヒカリがいた。相田ケンスケがいた。赤木リツコがいた。伊吹マヤがいた。青葉シゲルがいた。日向マコトがいた。冬月コウゾウがいた。

 「え、な、え」
 「!」

 それは、予想だにしない、最高の再会だった。

 「いや、実はオレ達も、綾波に呼び出されたんだよ」
 「そうそう。綾波さんったら酷いのよ?みんなが来るなんて、一言も書いてないんだから」
 「ノコノコ来てみたら、みんな大集合ってわけや」
 「ったく、レイにここまでやられるとはね。元作戦部長としては恥ずかしいわ」
 「不様ね」
 「アンタも騙されたんでしょおが!」

 「で、肝心のファーストは?」
 「それが……」
 急に押し黙る、面々。

 「レイはね、来てないのよ」
 腕を組みながら、ミサトが言う。
 「何か事情があったんでしょう。とにかく今、ここにレイはいないわ」

 「いないって……」
 「綾波……」
 さっきまでの馬鹿騒ぎがうそのように、しんと静まり返る。
 暫し、沈黙があたりを支配する。

 不意に、リツコが携帯電話を取り出す。彼女はメールの着信を確認すると、バッグの中からノート型の端末を引っぱり出した。
 仕事をしているような顔でキーを叩くリツコ。皆の視線が彼女に集中する。
 彼女はすぐに顔を上げると、そこに集まった顔を見回した。そして、いつもの落ち着いた声で話し始める。
 「今、レイからのメールが届きました」
 どよめく一同。
 「読み上げますから、そのまま聞いて下さい」




十四. レイからのメール




Web拍手