東洋工業の3輪トラック史上で初めて”車名らしい車名”が与えられたTシリーズでは、過去の3輪トラックと比べて、その「型式名称」で呼ばれるケースは極めて少なくなったと想像できます。
 このネーミング付与は当時のライバル3輪トラックメーカーにはない独特なもので、Tシリーズをより一層親しみやすい存在とした大きなポイントと言えますが、その一方で、商用車にとって重要な要素であるエンジン型式/荷台仕様/積載能力などの表現を一切含んでいません。その意味において、最小限のアルファベットと数字を巧みに組み合わせた「型式名称」の右に出るものはないでしょう。


 ここではTシリーズの型式の読み方について、T1500の1.5トン積み三方開き車(写真下)の型式を例にとって説明してみましょう。






@シリーズ名称

言うまでもなく「T」はTシリーズを示します。
参考までに当時の東洋工業の他の商用車の例を挙げると
    「D」 … Dシリーズ〜クラフト
    「E」 … Eシリーズ
    「B」 … B1500〜プロシード
    「KT」 … K360
    「KB」 … B360
等があります。


A機関型式

搭載するエンジンの型式名称を示します。
    「TA」 … TA型・1139ccエンジン(T1100)
    
「UA」 … UA型・1484ccエンジン(旧T1500)
    
「UB」 …               〃              (新T1500)
    
「VA」 … VA型・1985ccエンジン(T2000)
ここでT1500は新旧ともに同じ1500ccのUA型エンジンを搭載していますが、新T1500/旧T1500でそれぞれ「UB」/「UA」と記載を区別しています。写真のT1500は1.5トン積みの新T1500なので、UBの記号が入ります。


B荷台長さ

平ボディの場合は荷台長さ(尺)を示します。

    「8」 …   8尺荷台(約2.4m)
    
「1」 … 10尺荷台(約3.1m)
    
「3」 … 13尺荷台(約4.1m)
最重量クラスの2トン積み(旧T1500/T2000)では、上記の全ての荷台長さが設定されていたのに対し、1.5トン積み以下(T1100/新T1500)では8尺のみです。よって、写真のT1500では「8」が入ります。なお、Tシリーズ以前の時代には
「6」…6尺荷台、「7」…7尺荷台も存在していました。

また、ダンプ車両の場合は若干表現ルールが異なり、
    
「なし」 … ショート荷台ベース(8尺相当)
    
「1」   … ロング荷台ベース(10尺相当)
となるようです。



C最大積載量

積載量をトン表示にしたうえで、数字1桁で示します。

    「1」 … 1 トン積み
    
「3」 … 1.25トン積み
    
「5」 … 1.5 トン積み
    
「2」 … 2 トン積み
1.25トン積みの「3」は、四捨五入で1.3トンとなることからこう表現されていますが、T1100の初期型のみに設定されていた稀少な機種です。写真のT1500は1.5トン積みなので「5」が入ります。ちなみにTシリーズ以前の時代には
「7」…0.75トン積みが存在していました。
なお、ダンプ等の特装系車両にはCの表示はないようです。


D荷台仕様

平ボディの場合、荷台の仕様(形状)を示します。

    「なし」 … 低床一方開き(標準形)
    
「N」 … 低床三方開き
    
「S」 … 平床(高床)三方開き
型式の経緯としては、無記号(タイヤハウス有り、後方のみの一方開き)の標準荷台でスタートし、1954年のCHTA型2トン積み(13尺車)で、床面を上げて平床かつ三方開きとした「S」が登場。次いで1956年のCMTB型/CHATB型(8尺車)で、低床のままで三方開きとした「N」が登場しました。
写真のT1500は平床ではなく低床三方開きなので、「N」が付きます。

なお、特装系車両では、
    
「DA」 … 船底形ダンプ
    
「DB」 … 角底形ダンプ
    「E」 … バキュームカー
    
「K」 … 客貨兼用車
    
「W」 … ウィンチカー(工事用駆動装置付き)
といった例が確認されています。