<旧車シリーズ 819>


KUROGANE KY8型


 
終戦後、マツダ、ダイハツと並びオート3輪の三大ブランドの一つに数えられたくろがねは、年間7,500台を生産した1953年をピークに、経済不況の影響を受けて日本内燃機製造は極度の販売不振に陥り、経営危機に瀕してしまう。ここは東急資本の介入を受けて再建を目指すこととなり、1957年にオオタ自動車工業と合併、そして1959年には東急くろがね工業と社名変更する。
 こうした情勢の中、1957年10月に「鋼製フルキャビン+丸ハンドル」というオート3輪の最新トレンドを備えた最新の2トン積み車・くろがねKR型が登場する。パワーユニットは空冷V型2気筒OHV・1360ccエンジンを搭載したが、同時に発表された1.5トン積みのKS型には、オオタ号用の水冷直列4気筒の1263ccエンジン(E-13型)が移植され、オート3輪初の水冷4気筒エンジン搭載車となった。翌1958年には2トン積み車も水冷4気筒となり、1488ccのE-15型エンジンを搭載するKY型/KU型となる。
62psの最高出力は当時のオート3輪で最強であり、4速コラムシフトを介した最高速度は90km/hにも達した。この時、前輪が太い油圧フォークとなり、シャシーも箱型断面フレームに進化した。アポロ式の方向指示器は翌年から独立ウィンカー式となり、荷台長8尺のKU型はKY8型へ改称された。

 
くろがねはマツダやダイハツよりも約10年早く姿を消したため、現存する車両は極めて少なく、最終型といえるこのKY型でさえ、私が福山で撮影したこの展示車でようやく撮影2台目という台数の少なさを誇ります。もっとも、今から25年前の小学生時代に撮影した1台目とは、瓦礫の山の上に放置されたスクラップだったので、とても皆さんに紹介できる代物ではないんですが・・・。
 朱色のボディから、元ファイアチーフカーだったと思われるこの個体、博物館敷地外のストックヤードで風化しつつあったのが少し気掛かりです。


推定年式:1960
撮影時期:2000年9月
撮影場所:広島県福山市北吉津町 福山時計自動車博物館にて