<旧車シリーズ 817>


MAZDA T1100 (TTA81)


 
オート3輪のトップメーカーの地位を確保した東洋工業は、1957年秋からスタイリッシュな鋼製独立キャビンを導入、待望の丸ハンドル化に加え、エンジンのシート下配置とコラムシフトの採用によって乗車定員を3名とした2トン積み車・HBR型を登場させた。ほぼ同時に1〜1.5トン積み車も丸ハンドルのMAR型となるが、エンジン搭載位置は旧来のバーハンドル車と同等で2人乗りだった。これが1958年秋にHBR型ベースの改良キャビンを得て、3人乗りのMBR型へ進化する。
 1959年春に誕生したT1100は、MBR型のエンジンを空冷V型2気筒OHVから水冷4気筒OHVに換装したNewモデルである。マツダのオート3輪初となる水冷ユニット・TA型は4輪トラックのD1100に搭載されていたもので、1139ccの排気量から46psの最高出力を発生、最高速度は87km/hに達した。T1100はフロントブレーキを新設して全輪ブレーキとしたほか、トリプルベンチュリーキャブレターやシールドビームヘッドランプなど業界初の機構も積極的に採用しており、キャビンデザインこそMBR型の小リファイン程度に留まるが、メカニズムの進歩には抜かりがなかった。ただ、この1〜1.5トン積み車は1962年にUA型・1484ccエンジンを得てT1500へ移行したため、T1100のカーネームは僅か3年で姿を消すことになった。


 
撮影時にオーナーから聞いた話では、このクルマは1963年購入とのことで、1962年式の在庫車か新古車だったのかもしれません。積載クラスや荷台種類の豊富なオート3輪は、主力機種のモデルチェンジ後も廉価版として旧型が併売される例もあり、年式推定もなかなか簡単にはいきません。
 私のT1100撮影事例は極めて少なく、現役時代を収めたこの写真は大変貴重なショットといえます。最終型のT1500/T2000と一見してわかる相違点は、2本のフロントワイパーの向きが対向式であることと、ノーズのMAZDAロゴが三角形の絵文字となっている点です。


推定年式:1962
撮影時期:1981年2月
撮影場所:山口県美祢郡秋芳町にて