<旧車シリーズ 805>


MITSUBISHI PET LEO (LT10)


 
中日本重工業の水島製作所では戦後「みずしま」という小型三輪車を製作していたが、1952年に新三菱重工業と社名を変えた後、1959年10月に最後発の軽三輪トラックとして登場させたのが、三菱ペットレオである。
 レオの特徴はオールスチール製の全天候型キャビンを採用したことと、キャビンの足元空間を稼ぐために小径タイヤを可能な限り前方に配置していることである。ME20型・310ccOHVエンジンは単気筒ながら4サイクルで、最高出力は12.5ps。これをシート下に収めるため、左に90度倒して水平配置としている。トランスミッションは軽三輪で唯一のシンクロメッシュ3速ミッションを奢り、最高速度74km/hも当時の軽三輪で最速を誇った。
 レオはピックアップ(トラック)の他、キャンバスバンやライトバンも当初からラインナップした。低価格さも好評を博した結果、最盛期の1961年には年間約14,000台の生産を記録した。しかし、翌1962年の9月をもって新三菱重工業は全ての三輪トラックの生産を停止してしまった。


 
レオは当時流行していた手塚治虫のジャングル大帝にちなんで命名されたそうです。カタログの「三菱3輪ペット」という記述からも、その可愛らしさは十分理解できますが、よく観察すればするほど、その表情はロボットのようにも見えてきて、漫画チックな雰囲気が漂います。
 現代の高機能な軽自動車と比べると、これら軽三輪車は極めて原始的な乗り物に過ぎませんが、こんなに個性溢れるデザインと身近に触れ合えた当時の子供達の方が、よっほど豊かな感受性を持ち合わせていたであろうと思うのは少々勘繰り過ぎでしょうか。


推定年式:1959
撮影時期:1988年7月
撮影場所:富山県小矢部市芹川 日本自動車博物館にて