<旧車シリーズ 109>


SUBARU 1000 Dx (A12)


 昭和40年代に入り、1000ccクラスの大衆セダン市場の競争は一層激しさを増していた。のちに不動のビッグネームとなるカローラとサニーが登場した昭和41年、富士重工から発表された大衆セダンがスバル1000(A522型)である。国産初の水平対向4気筒エンジンをフロントに縦置きに搭載、前輪を駆動するFF方式を採用した点がスバル1000の最大の特徴である。電動ファンを併用したデュアルラジエータとしたところもユニークで、977ccのEA型エンジンは最高出力55psを発生した。
 サスペンションはダブルウィッシュボーン/トレーリングアームの4輪独立懸架とし、リアがリジッド式だったライバル達に差をつけた。アルフィンドラムのフロントブレーキには国産初のインボードタイプのデュオサーボを採用するなど、シャシー技術も個性溢れるものだった。
 FF方式がもたらす広い室内とフラットなフロアがスバル1000の特長のひとつだが、発売約1年後の1967年にはロングホイールベースがさらに20mm延長され、型式記号がA12型に変更された。

 大衆車クラスではすっかり世界の主流となったFF方式を、今から30年以上も前に、しかも初めての小型乗用車に採用してきたことは、先見の明があったと同時に、スバルというメーカーの括弧たる「主張」を感じずにはいられません。現代の洗練されたFF車と比べるとかなり癖の強いハンドリングだったかもしれませんが、このスバル1000は、個性的な技術が詰め込まれたその成り立ちだけでも十分に訴求力を持っていたことでしょうね。

推定年式:1967
撮影時期:1981年5月
撮影場所:山口県徳山市中金剛山にて