離散力学システムについて

さて、残りの「力学システム」とは何なのか。
簡単にいえば、ある規則性を伴って時間の経過と共に状態が変わるような
システム
のことです。世の中には時間によって変化するものが沢山あります。
たとえば経年劣化(錆とか腐食とか)であったり生物の成長であったり・・・
そしてそれらはとても多くの要素によって変化しています。その要素をできる
限り多く取り出し、その変化の規則性を考えることで将来の状態を予想し
たり、あるいは何かに応用したりするのが力学システムという学問です。
ではそれらを合わせた「離散力学システム」とは何でしょうか。
早い話が「漸化式」です。
変化の規則性が漸化式で表されるのが離散力学システムです。逆に連続力学シ
ステムではこの規則性は一般的に微分方程式で表されます。
言うまでもありませんが現実では時間という概念は連続しています。途中で区切れ
たりはしません。が、漸化式ではあるnの時の状態(値)によって次のn+1
の時の状態(値)がわかります。その状態時間(nとn+1)は線で繋がってはいません。
点です。つまり必然的に離散値ということになります。
ただし先ほどの例(錆とか成長とか)は連続の変化ですので扱えません。
応用の一例として前頁の藤崎先生のお言葉を思い出してみましょう。
決定論、というのはつまりある規則によって決定される力学システムです。
そして確率論、というのはサイコロのような完全なランダムと思ってください。
両者は基本的に相見えないものであるということはすぐにわかるでしょう。
もし規則性があったらそれはランダムではないのですから。
しかし離散力学システムを用いればこの両者を限りなく近づけることが出来る
ようになります。
つまり決定論に基づいた漸化式(離散力学システム)
によって、ランダム(確率論的)にみえるような物を作り出すことが可能です。
擬似乱数という言葉を聞いたことはありませんか?パソコン内部のプログラム
では基本的に完全なランダム(乱数)は作り出せません。ですから、ランダムに見
えるような数
を作り出すことによってその問題を解決しています。
このような擬似乱数は離散力学システムによって生成することが出来ます。
実際に研究室では高性能な擬似乱数の生成携帯電話の通信システム
(CDMA)など、離散力学システムの様々な分野への応用を図っています。
より適切な漸化式を考え、実際にプログラムを組んでシミュレーション、あるいは
解析してみるというのが研究室での主な研究になってきます。
研究室名からは全く分からないと思いますが、意外と面白そうなことをやっている
と思いませんか?
数学系というと社会的には役に立たない分野であると思われがち
ですが実はこういった最先端の事に応用できる、とても面白い研究室です。