日記帳(ニック帳)


プレイバックPART 90

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4/21
自宅北側の窓から見える公園の藤棚。薄紫の花が咲いている。

4/10
先日、発注した物品が納入されないので、得意先に問い合わせたところ「データが届いておりませんが」という返答。はて?確かに送ったはずであるが、なんらかの手違いであろうか。「それでは今日これからもう一度同じ内容で発注しますので、確認して下さい。念のため明日また電話します」私は受話器を置いた。先方にデータが送れないなど普通ではあり得ない事なので、なんらかのトラブルの予感がした。翌日、担当者の吉田さんに連絡してみると、案の定「来ていません」との解答である。不便なのは「それなら今ここで貴方に発注するから明日に間に合うように発送してくれ」と言っても融通が利かないところである。コンピューターシステムの腹立たしい一面だ。私は正確な操作をしているのに向こうに行かないのは何が悪いのだ。目の前のパソコンか本部のサーバか、それとも別の何がしか。面倒だがしかたがない。本部のシステム部、海部主任に電話を入れた。「特定の一社にだけデータが送信できない。こんな事はあり得るのか。調べて欲しい」最初に疑われたのは私自身のパソコンの操作ミスである。電話口でモニターを見ながら自分のやった操作履歴を詳細に説明し、何も間違っていないことを確認し、続いて本部のサーバの受信データをチェックしてもらったところ「おたくの発注はこちらのホストコンピューターにも届いていない」と。取引先はおろか本部にまで駄目なのだ。「俺の手には負えないので魚住に電話して調べてもらってくれ」
魚住ドキュメントシステムは我が社のコンピューターシステムを開発、管理している専門の企業である。電話器の裏に貼付けてある魚住の保守管理サービス専用のナンバーをプッシュし、ガイダンスにしたがって契約コードを入力して#を押した。三度目のコールでオペレーターの女性の声がし、当方の電話番号を言うと「担当者と変わります」小さな物品をひとつ送って欲しいだけなのに何でこんなに苦労してあちこち電話せなアカンのか実に嘆かわしい。私は吉田さんとこの物を注文したいだけなのだ。本部の海部やら魚住ドキュメントシステムの担当者などとパソコンの操作手順について同じ問答をくり返し、さっきから30分ちかく浪費している。魚住ドキュメントシステムの担当者は崎本と名乗り、話を聞いた後、プリントアウトした発注控えの伝票番号を教えてくれと言って、私が答えると、調べて報告しますと、いったん通話を切った。まだ待つのかい。私の願いはすでに吉田さんに伝わって、先方も答えてくれているのに、会社のシステム上では、私と吉田さんの会話は成立していない事になるのである。「言葉が通じない。想いも伝わらない。心はどこにも届かない。我々バベルの末裔は、永遠に分かり合う事ができないのか?」私はどこかの国の映画の予告編のコピーを思い出してしまったよ。最初、海部に連絡したのが午後3時。崎本から一回目の返事があったのが、午後4時半。それによると、私が送った発注データはたしかに本部に送信されているはずであると。だーかーらー、本部の海部はデータを受信しとらんと、言っとるんだよ、崎本さん!さんざん待たせて出てきた答えが、それかいっ。私の営業所からデータが飛んでいるのは証明された。だが、本部の担当者は「受けていない」と言い、取引先にも「来てない」と言われているのだ。データはどこで消えたのだ。いや、システム上でのデータなど、どうでもいい。俺は吉田のブツが欲しいのだ。なんとかしろっ。この後、何度か魚住の崎本と不毛なやりとりが続き、午後8時にシステム本部の石野から連絡がきた。「魚住からあんたとこの発注がどうのこうのと言ってきているが、それは昼間に海部が受けた件だな」私はそうだと答えた。「一週間前と昨日、二度同じ内容で発注したのだな」そのとおり。「一週間前の方に関しては、申し訳ないが、履歴上、受けていないことになっている。昨日の分については、君が送信した時間帯が午後6時以降という事なので、明日にならないと確認できない。そういうシステムなのだ。手間をとらせてすまないがもう少し待って欲しい。朝のうちにこちらから電話するから」電話やファクシミリの受付時間に制限があるのはよく聞く話だが、コンピュータ−ネットワークでの受付締めきりは初めて聞いた。なんのことはない、ネットは二十四時間活動していても、管理する人間は夜になったら家に帰って、飯食って、風呂に入って、テレビを見て、眠らなければならないのだ。社内的な問題で吉田のところに対する発注システムが特殊だということも初めて理解した。問題ありだ。しかし今日、私に出来る事はなにもない。明日まで待つだけである。
8時半過ぎ、私は業務日誌に引き継ぎ事項を記入して、デスクの引き出しの中にしまい、電灯のスイッチを切って、営業所のドアを閉め、カギを掛けた。
帰りの電車の中で、二回目の発注データが消えていた場合の事を思った。この問題が解決しない限り、納品はなされない。数年前まで緊急時には、電話一本で手書きの仮伝票を使って何でも扱えた。本部の管理部門ではどうなのか知らないが、少なくとも現場のレベルでは、以前ほうが便利だったことは間違いがない。
明日は「
大帝の剣」を観よう。


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