Research

Drug discovery research on next-generation platinum-based anticancer agents

がんは致死率が非常に高い病症で、世界の死亡原因の第1位はがんである。約5人に1人はがんが原因で死亡し、日本では約3人に1人ががんで死亡する。がんの化学療法(制がん剤治療)は「患者には耐え難い副作用を伴うこと」、「薬物耐性によって投与量が増大すること」など、未だに多くの問題を抱えている。

一方で、白金(プラチナ, Pt)を原料に開発された制がん剤の世界市場は年率20%以上の割合で増加し続けている。つまり、他の制がん剤同様、副作用等の欠点は存在するものの、白金制がん剤の高い治療効果がその需要を押し上げていることがわかる。

我々が白金制がん剤に着目してアゾラト架橋白金(II)二核錯体(1-4)の創薬研究を遂行した結果、テトラゾラト架橋白金(II)二核錯体(4)が膵がんに対して顕著な in vivo 抗腫瘍効果を発揮することが明らかになった。現在はこのリード化合物を基に新たな誘導体を分子設計し、副作用の軽減と薬理活性の向上を図っている。

DNA interaction modes of transition-metal complexes

DNAは白金制がん剤の標的分子であり、白金錯体とDNAの結合が制がん作用を初動すると考えられている。白金錯体が結合したDNAの立体構造は、白金錯体とDNAとの相互作用様式によって大きく異なり、白金錯体の制がん効果に密接に関与している。我々は、シスプラチンとは異なるDNA付加物を形成する白金錯体を分子設計すれば、シスプラチンとは異なる制がんスペクトルが得られ、化学療法が有効でないがんにも著効を示す次世代制がん剤の開発に繋がると考えている。
当研究室では、白金錯体が形成するPt-DNA付加物の立体構造を物理化学的手法によって明らかにし、それらと制がん活性の関連を調べている。