店主、滝田順一氏の横顔

 

――この仕事をしていて、つまり古書籍を扱う上で滝田さんが大切にしていることは何ですか?

滝田:やはり、古書籍は日本の文化ということ。それも消えゆく文化と言えると思うのです。ですから、古書籍を大切にしたい。古きものを守りたいというのが先ずは第一かな。

 

――買取りに古書籍を店舗に持ち込まれる方へのアドバイスは、何かありますか?

滝田:本を処分する人は、まずその古本屋の特色を学んでから、買取りに古書籍を店舗に持ち込んで貰いたいですね。これはちょっと勝手な言いぐさかもしれませんが。つまり、どんな本を扱っている古本屋か知らないで、持ち込まれても、まず期待に応えることはできないかな。

 

――良く、亡くなったご主人の本を処分したいと来られる方もいるかと思いますが?

滝田:いますね。できれば、本を集められた本人が処分されるのが一番いいのですが、本が好きな方は、生前に処分する方はなかなかおられませんね。亡くなってから、ご家族の方が勝手に良し悪しを判断して、見栄えのするものばかりを持ち込んで来りすることが多いのですが、そんな方には、自分で判断せずに、埃のついたまま一度全てお見せいただきたいですね。小さな冊子なんか価値がないと棄てられる方もおられますので、ゴミも一緒に買い取りますよ。(笑)

 

――古書籍を購入、または探している方へのアドバイスはありますか?

滝田:そうですねえ。本を探している方は、おしなべて尋ね方が解りにくいですね。「誰々」の本ありますか? と言われ、本を出すとこの本は読んだことがあると言われることが多いですね。少し絞って尋ねていただけると良いのですがね。棚の本を見る方も、こういう傾向の本はありますかと言われれば、この辺りがそうなっていますとお教えできます。昔のように本棚を舐めるように見渡して、その中から購入される人は、めっきり減りましたね。  しかし、なんと言っても、「探していた本が見つかりました」という声を聞くことが、店舗経営をしていて一番嬉しいことですよ。

 

 

 

――古書籍店 蝸牛の店舗販売/ネット販売の特徴について教えてください。

滝田:うちは扱っている本の間口はかなり広い方だと思いますが、どうしても人文系のものが多くなってしまいますね。
ネット販売に出すものは、当りまえなことですが、本の状態をかなり丁寧に診ているつもりですが、それでも見落としはあるでしょうね。やはりネットは文章だけで伝えなくてはならないので、気を使いますね。

 

――近年、古書籍の取扱いについて思うことを最後にお聞かせください。

滝田:確かにネットは便利なものですけれど、その分、これまであった良きものが無くなった感もありますね。

 

――例えば、どんなものでしょうか?

滝田:ネットで古書籍も購入できるようになって、めっきり店舗に来るお客さんの数が減りましたね。そう、古書店巡りをする人もいなくなったに等しいのではないでしょうか。これは古書店の側にも責任があるかもしれません。最近の古本屋は、即売会に参加するのに力を入れる傾向にあります。そのため店がおろそかになることが理由の一端にあるかもしれません。
古書籍 蝸牛は、店をおろそかにしないのが、モットーです。

(聞き手:北野辰一)

 

蝸牛さんについて一言 私が蝸牛さんと付き合い始めて、間もなく 20 年近くなるはずです。最初に古書籍店 蝸牛に行ったのは、震災の一月前の 1994 年 12 月、出張で来た折に寄ったのが、サンパル古書のまちの 2 階の店舗だったと思いますが、その時は蝸牛さんにお声掛けはしませんでした。その後、関西転勤で鳴尾に移り住んだ時に、西宮の店舗にお邪魔してからのお付き合いとなります。とにかく本の目利きとしては、神田の神保町の有名古本屋に負けませんし、本の状態が良いものが多いというのも特徴です。それと買取りは、どこよりも良心的です。先年、本を書くに当たって、大変お世話になりました。(北野)


蝸牛ぼやき放題NO.001