お馬鹿から科学までと世界にひとつだけの花の2003年7月の日々

2003/07/07 (月)

Misc
Movie:キャメロン・ディアス「普通じゃない」(VHS)

キャメロン・ディアスが見たかったのと、お馬鹿系の映画が見たかったのでTSUTAYAの旧作半額を良いことに借りてみた映画。
期待に違わぬ…というか期待以上のお馬鹿系。
行動力いっぱいの大富豪令嬢にキャメロン・ディアス、小説家志望の貧乏な夢見る夢男にユアン・マクレガーと、役者は悪くないのに、変な映画。この二人をくっつけようと天使が介入してくるとかいう話だが、なんでこんな組み合わせの男女を無理にくっつけようとするのだ?
物語の間もあんまり良くないし、最後の部分、二人並んでこっちを向いて座ったまま、延々喋りだけでいろいろ説明しているのも、なんだか興醒めの演出。
この最後の部分は、さすがに単調だと思ったのか、背景にいろんなシーンを合成して見せているのだが、その合成もいかにもブルーバック(グリーンバック?)をしましたって感じで輪郭がぼけている。もうちょっとまともな合成ができなかったのか?
なんだかいろいろと出来があまり良くない気がするのだった。

2003/07/10 (木)

Book
わたしたちはなぜ科学にだまされるのか インチキ!ブードゥ・サイエンス

著者:ロバート・L・パーク( Robert L. Park)
訳:栗木さつき
原題:VOODOO SCIENCE: The Road from Foolishness to Fraud

まあはじめに正直に言っておくと、7月10日に読了したときの、数単語のメモを、8月5日になって文章に換えているわけで(^^;。なので中途半端に言葉を補うと、おそらく嘘が発生すると思うので、内容については極力触れずに、心に残った部分の感想文だけにしておく。

常温核融合、ホメオパシー、永久機関、電磁場、UFO、SDI(いわゆるスターウォーズ計画)といった科学の衣をかぶった嘘について取り上げている本。その「嘘」の分類などの記述もあるが、その詳細は他のサイトなり現物で。

ちなみにホメオパシーというのは、病気の症状と類似の症状をもたらすものを摂取することが、その症状の改善に役立つと言う民間療法の類い。実際の投与には非常に大きな希釈をしたものを用いる。すなわち簡単に言えば、毒を希釈して用いれば解毒剤として作用すると言う考え方。これだけ聞けば、まあそういうこともあるのかな、と思う向きもあるかもしれないが、その希釈と言うのが並外れている。驚くなかれ10-100といった希釈を平気で行うのだ。すなわち問題の物質を1分子も含まない液が、作用すると主張する考え方だ。当然考えられるメカニズムはプラシーボくらいだろう。要は毒にも薬にもならぬものを飲むなり塗るなりして喜んでいるんだから、信者は好きにやってくれ、と思う。他に迷惑をかけなければ。

ホメオパシ―には個人的にちょっとした思い出がある。ちょうど大学院に進学した直後の時期、1988年の6月30日号のnature誌に、「水の記憶」として、抗IgE抗体を大希釈して、1分子も含まなくなった水が、抗塩基球と反応するという内容の論文だった。当時ホメオパシ―なるものは知らず、珍しいこともあるものだと、論文紹介の場で紹介したのだが、あまり受けずにがっかりしたのだった(笑)。思えば教授などは海外生活も長かったから、既にホメオパシ―についてもよく知ってて、ああ、あの似非科学の話だな、とちゃんと眉に唾を付けて聞いたのだろう(^^)。

しかしやはりnatureに出ると言うのは恐いもので、その後すぐに全面否定された論文であるにも関わらず、出たと言う事実だけでホメオパシ―信者が自説の補強に使ったりしているのだね。当時のnatureの編集長のコメントとしては、公開の場に引きずり出して、きちんと叩くために取り上げたと言う主旨のことを言っているらしいし、実際にその後きちんと否定されていたにもかかわらず、いまだにホメオパシーはなくなっていない。一般に、似非科学は、否定的に扱ったものであっても、言挙げすることそれ自体により、活気づけてしまうことがあると言う。かといって放置しておくことも、時に害毒を垂れ流すことを放置することになってしまう。難しいものだ。

余談がずいぶんと長くなってしまった。ちょっと寂しいのは、これらの中に「宇宙ステーション」が入っていること。月以遠にはコスト、宇宙における放射線の人体影響などの関係から有人飛行は非現実的であり、それどころか無人的に既に大きな成果を上げている現状(ボイジャー、マーズパスファインダー等々)で、有人飛行にリソースを割くのは、無人飛行によって得られるべき成果を阻害するものですらあるという主旨のことがかかれていたと記憶する。

以上非常にごもっとも。ではあっても、物心つくかつかないかの頃にアポロを経験し、その後各種SF小説やアニメなどを通じて人類の宇宙進出を無条件にあり得るべきものとして、いわば善として刷り込まれた私にとって、その正論は理屈は分かるが、これを否定したくはないなあ、と正直辛いものがあったのだった。


Data:
主婦の友社
2001.4.20第1刷発行
ISBN:4-07-228921-3
(狛江市立中央図書館蔵書)

2003/07/16 (水)

Misc
いまさらの「世界にひとつだけの花」/スマップ

なぜナンバーワンでなくオンリーワンだという曲に癒されうるのか。

いい曲だとは思う。いい詩だとは思う。
だが、ナンバーワンは、競争でとにかく一番になればなることができる。オンリーワンは、それをこえて唯一の存在になる必要があるのだ。どちらが難しい?
唯一の存在になるためには、「世界」に自分しか存在しない状況が必要である。容易に実現する方法は、「世界」をどんどん小さく閉じていけば良い。究極的には自分に取って自分は絶対に唯一である。ゆえに自分だけの世界に閉じこもれば、オンリーワンは達成できる。で、それが楽しいか?
要はどの「ワン」であれ、すくなくとも他者と言う評価者があって初めて意味を持つ。
最小の単位である二人の場合を考えてみても、自分が「絶対的」な価値を持つと認めてくれる他者がいて、初めてオンリーワンになれる。さて、そのような他者と巡り会うこと、その価値基準が持続すること、あわせ長期間ともにいられること。これは果たして簡単なことであろうか?
まだ相対的なone of themであるナンバーワンの方がよほど簡単ではないか?
また仮に「絶対的」な価値を獲得したとして、自分がオンリーワンであることに甘えてしまったとたんにオンリーワンではなくなってしまうのではないのか?そして一度堕ちた「絶対的」価値は、普通二度と元には戻らない。(簡単に崇拝から拒絶に振れるファン心理の変遷を考えてみるが良い)
何度もトップに返り咲くことも可能であるナンバーワンのための競争と、たったい一度しか到達できないオンリーワンになりそれを維持することのどちらが過酷であろうか?一概には比べられまい。

いい歌だとは思う。聞くのも歌うのも好きだ。本当に。
でも納得はできない。

2003/07/31 (木)

Misc
環境科学技術研究所プレスリリース

平成15年7月30日、財団法人環境科学技術研究所が『「低線量放射線の生物影響―寿命への影響―」について』というプレスリリースを行った(ウェブページ上でPDFファイルが公開されている)。内容はおおむね昨年度の学会等で公にされた話。その時点で解析途中だった分の解析が完了したと言うことなのだろう。

具体的には、自然放射線の約20倍、400倍、8000倍の割合(線量率:単位時間辺りの放射線量)で400日放射線を当てたマウスについて生涯観察して寿命の比較を行ったもの。結果としては、20倍では統計的に有意な寿命への影響は認められなかったが、400倍ではメスにのみ20日の寿命短縮が、8000倍ではオスメス共に100日以上の寿命短縮が認められたとする。

文章末尾に「本動物実験の結果は、ICRPの考え方や我が国の放射線防護体系を支持するものであります。」とあるが、さて、えらく大雑把なくくりである。具体的にICRPや防護体系のうちの「どの」考え方を支持するものなのかが非常に不明瞭な台詞である。
プレスリリースの冒頭に「原子力関連施設に従事する方や周辺住民の方々の健康不安を解消するため」という目的をかかげているが、ここで目的とした「不安を解消する」上で、どのような考え方にどう合致しているのか、そこを説明してくれないことには、目的に対する解答としては不満なものといえる。

自然放射線は地域によって異なり、一般に西日本では東日本よりも高い値を示す。さらに日本は世界レベルでは比較的低いと言われる。また、世界の中にはさらに自然放射線が高い地域がある。中国では約3倍高い地域があり、そこでこの高い自然放射線レベルが発がんなどに影響を与えていないかを調べる研究も既に行なわれている(現在までの調査結果においては、特に放射線レベルが高い地域の発がん率が高くなっているといったことはないと聞く)。20倍と言うレベルは、世界的に見れば、非常に稀ではあるが、そのような環境で生活している人がいないわけではない放射線レベル。少なくともそのようなレベルまでは影響が見られていない、とでも言うなら冒頭の目的とは対応するだろう。(人とマウスではそもそもの寿命が異なり、当然生涯に積算で受ける放射線量等も異なってくることだろうから、必ずしも「そのような地域でも、放射線による寿命への影響がない」とは言い切ることはできないだろうが。すくなくとも自分ならそのような言い方はしたくない。

まあ細かいいわずもがなの部分で突っ込んでしまったが、データ自体は非常にきれいなものであり、平成7年開始、平成15年度終了と、非常に長い時間をかけた、世界的にも得難いデータである。今後さらにそのメカニズム部分に踏み込んだ研究が行なわれるというから、そちらにも期待したい。



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