6.二人の場所
フィルムを買いに車を走らせる。
すっかり日が暮れた夜の道を、
銀色の車で過ぎていく。
どちらかといえば田舎なこの辺は、
昼間はあまり車は通らないが
今は帰りを急ぐかのように、
スピードを出した車が反対車線を通り過ぎていく。
対向車の上向きのライトに迷惑そうに目を細めながら、
コンビニに向かう小さな交差点を左折した。
静かな車の中、
カチカチというウィンカーの規則的な音が響いて消えた。
車の免許は、
高校を卒業した年の春休みに車校に通いつめて一発でとった。
早く免許が欲しかった。
一人でどこへでも行きたかった。
§ § §
研とは高1も高2もクラスが違った。
いつも一緒にいると言っても、
思い返してみればそれは部活での話で、
その他特別に会うことなんてなかった。
放課後は毎日毎日一緒だったので、
いつも一緒にいるような気がしていたのかもしれない。
そして、高3。
あたし達は初めて同じクラスになった。
そうなると、
あたし達は本当にいつも一緒にいるようになった。
朝は会えば研の自転車の後ろに乗った。
移動教室も一緒だったし、
選択授業も一緒だった。
放課後はもちろんずっと一緒で、
たまに一緒に帰った。
すぐ、噂がたった。
というより、
もう付き合っていると完全に思われていた。
去年まではそんなこと考えたこともなかったけど、
こうやって噂されると、あたしも普通の女子高生。
研のことを意識しだした。
それは、恋をするとかいう意識じゃなかった。
研は男の子なんだ。
クラスにいる、他の男子と同じ。
あたしの中で、
もやもやとしていた研の存在がはっきりした。
あんなに恋とは離れた場所に
二人、いたと思ったのに。
04/08/25