3.卒業アルバム
「あ。」
本棚の一番端。
「卒アル、こんなとこにあったんだ。」
厚紙の入れ物からアルバムを取り出す。
やわらかい水色をした表紙。
その中心に、校舎が上からのアングルで撮られている写真。
こう見るとあたし達の通った学校は、なんてちっぽけなものだったんだろうと思う。
山の中(はっきり言うと田舎)の学校だったからしょうがないけれど。
でも、好きだった。
周りの森が。
この空気が。
ほこりくさい校庭が。
校舎の隅の桜の木が。
高校卒業してもう3年。
あたしは短大へ進学してこの春に卒業。
そして就職した。
なんてことない普通の事務職。
事務だから毎日同じことの繰り返しなわけだけど、
あたしは仕事に変化を求めるわけじゃないから別に良かった。
あたしが求めるのは、あたしの時間。
好きなことをする時間。
あの頃みたいに。
「変な顔。」
『田中 ゆき』
平凡な名前の上には、ひきつった笑いの自分の顔。
写真撮るのは好きだったくせに、写真を撮られるのはどうも苦手だった。
そのすぐ横。
『千早 研』
写真を撮るのも、撮られるのも好きな彼の名前。
無邪気な笑顔で幼く見える。
「研。」
懐かしくてその名前を口に出してみた。
きゅん、となった。
まるで恋してるみたいに。
何年この名前を呼んでないんだろう。
あの頃はあんなにいつも一緒にいたのに。
04/08/24