2.写真

部屋の整理は思った以上に時間がかかった。

持って行くもの。
置いていくもの。

部屋が荷物であふれかえる。


あたしが家を出ようと思ったのは、違う景色が見たかったから。

周りを同じような高さの家で囲まれた窓からは、あまり綺麗な空は見えない。
昔からそれが窮屈だった。
なんでこの部屋から景色が見れないんだろう。
家族には言わなかったけど、家を建ててここに越して来てから、ずっとそう思ってた。

昔から写真を撮るのが好きで、高校時代も写真部に入っていた。
部活では、黒白写真の現像の仕方から焼き写しまで一通りやらせてもらった。

一眼レフのシャッター音は、心に重みを持たせ、
暗室の独特の香りは、気持ちをしゃんとさせてくれた。

モノクロ写真も、雰囲気があって好きだけれど、
あたしはカラー写真の方が好きだった。
好きな空を青色で見たかったから。

だからよく友達と二人、顧問にお願いして
カラーフィルムをいくつももらっては、写真を撮っていた。
でもカラーフィルムは自分達じゃ現像できないから、
撮り終わるたびに、学校帰りにお店に出していた。

幼馴染でも恋人同士でもないのに、いつも二人一緒にはしゃいだ。

男女の友情が成立するとかしないとか
そんなくだらないこととは、遠い所にいる気がしていた。
というか考えたことなかった。

あの頃、自分も立派な乙女だったはずなのに、
彼は恋とはすごく遠い場所にいる気がしていた。


彼は誰よりも空が好きだった。

無邪気に恋、してるみたいに。

04/08/24

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