5
もうだめだ、なんて思いたくなかった。
思えなかった。
彼がそこにいるのに。
先に学校が見えた。
あと少し
あと少し
だから
どうにか持って。
歯を食いしばった。
顔は下げられなった。
どんなに苦しい顔をしていても。
下を向いたら最後だと思った。
この後姿を一瞬でも見ることをやめれば
おいていかれると思った。
全身が痛い。
たかが3キロの違い。
そうやって必死に励ました。
どうにか。
「あっ。」
思わず大きな声を上げた。
足がもつれた。
自分の体がスローモーションのようにゆっくり倒れていく。
疲れきった自分の力では、どうすることもできない。
目をぎゅっとつぶった。
何で。
あと少しなのに。
おいていかないで。
せっかく
この背中に追いつけたと思ったのに。
2004/3/23