聴診器の話

ーラエネックからステレオまでー

北里大学医学部胸部心臓外科

風間 繁

目次

1. はじめに

2. 聴診器の歴史

3. 聴診器の基本点

4. 大きさと重さ

5. オープンベル型とダイアフラム型チェストピース

6. ベル型とダイアフラム型の使い分け

7. イアチューブ

8. 聴診器の性能の判定

9. 現在の聴診器

10. ステレオ聴診器

11. ステレオ聴診器発明の経緯

12. ステレオ聴診器の評価

13. 参考文献

1. はじめに

聴診器は1810年代に登場した最初の医療診断器具ですが、この簡単な器具によって心臓、肺、消化管、動

脈、静脈などの多くの疾患や病態が診断され、把握されます。また非侵襲的な血圧測定法として聴診法は最も

正確、迅速な方法です。安価であり、維持費もかからず、持ち運びが自由であるこの診断器具の有用性はいく

ら強調しても強調されすぎることはありません。

 私自身も心臓外科医として臨床経験を重ねるにつれて、聴診の有用性や大切さをいっそう認識させられま

す。通常の診断やフォローでのルーチンの聴診が欠くことのできないものであることはいうまでもありませ

が、聴診によってしか得られない情報に遭遇したことも少なくありません。

 たとえば59歳男性の冠状動脈動脈バイパス術後の例があります。この患者は術後経過は順調でしたが、左

側に胸水の貯溜が認められたので、チューブを挿入してドレナージを行い、数日後このドレナージ・チュー

ブを抜去しました。この後も特に問題はありませんでしたが、毎日聴診をしていると、ある日心臓にかすかに

連続性の雑音が聞こえることに気ずきました。術前には心雑音はないことは確認しており、これは術後に新し

く生じた心雑音ということになります。しかも、それは連続性雑音ですから病的雑音であることは確実です。

手術は通常のバイパス手術でしたから、連続性雑音を生じたということは何か合併症がおきたということにな

ります。手術を担当したのは私自身でしたから、どのような合併症がおきたのか、処置はどのようにすべきか

と、驚き、かつ心配になりました。

 しかし、よく聴診をしてみるとこの連続性雑音は心臓よりずっと左外側に最強点があることがわかりまし

た。しかもその最強点はドレナージ・チューブを挿入したあとの切開創に一致するのです。ではここに動

静脈の交通があって連続性雑音が生じているのか?、ということになり、血管造影を行なって見ると、はたし

て鎖骨下動脈の枝である外側胸動脈と肋間静脈との間に交通ができていました。おそらくドレナージ・

チューブを挿入または抜去した時に両血管が偶然吻合されたのであると思われます。処置は簡単でした。ドレ

ナージ・チューブ創の上に圧迫包帯をきつく巻いて3日後にとりはずしてみると、連続性雑音はもう聴かれ

ませんでした。

 これは処置が終わってしまえば何ということもない合併症でしたが、これがもし長期間気ずかれずに経過し

たら、瘻が拡張し、破裂・出血のようなことがおきたかもしれません。またもし、患者が退院したあと他の病

院や医師によってこの動静脈瘻が発見されたとしたら、私と私のチームの医師にとってまことに不名誉な失態

にになります。ドレナージ・チューブによって生じた動静脈瘻というのは文献にも報告がありませんが、その

最初の診断は聴診によってのみ可能であったということが重要です。ルーチンとして行なっていた聴診が患者

を救い、担当医を救ったということができます。このような例は特殊な例ですが、聴診がいかに有用であるか

の証です。

 しかし、憂慮すべき傾向もなしとしません。それは聴診器が近年著しく発達したカテーテル、超音波、CT,

MRIなどのハイテク診断機器・診断法の陰に置かれる傾向が見られることです。これらのハイテク診断技が医

療に計り知れないほどの進歩をもたらしたことはいうまでもありません。しかしこれらの機器は設置にも、運

用にも多大の費用を必要とするものです。たとえば上記のハイテク診断機器のうち、比較的安価な超音波診断

装置でさえ、購入には数千万円を要し、一回の使用について約1万円の診療報酬請求がなされます。このよう

な高額の機器を歯止めなく導入すると、個々の医療機関レベルでもまた社会全体のレベルでも医療経営が破綻

することにつながります。当然これらのハイテク機器は限られた場所で限られた時間しか使うことができない

ものです。つまりハイテク診断法は医師にとって強力な助っ人なのですが、あくまでも助っ人であって、全て

をそれに依存することはできないのです。主役は「医師」である君、あなたなのです。患者の訴えをよく聞き

取り、聴診法を含めた理学所見の把握にすぐれた医師が主役なのです。

 しかし、一方では聴診器は過去70年以上も本質的に進歩をしていなかったという事実もあります。ハイテ

ク医療が普及した今日、聴診器も進歩してしかるべきです。実は私は聴診器の新型、「ステレオ聴診器」を考

案し、国内、外ですぐれた聴診器として認められるようになりました。今日はこのステレオ聴診器について、

聴診器の歴史をたどりつつ、のべることにします。

2. 聴診器の歴史

 聴診器は1816年にフランスの医師ラエネック(Laennec)が発明し、stethoscope (胸部を探る器具の

意味)と名ずけました。ラエネックの発明以前は医師が患者の胸部に直接耳をあてて聴診をしていたのです。

ラエネックが発明した最初の聴診器は筒状のものでしたが、その後聴診性能を向上させるためにさまざまな工

夫、改良がなされました(写真)。まず種々のラッパ状のものが登場し、約100年間広く使われました。今で

も産科の胎児心音の聴診器として使われることがあります。1851年、アメリカのリアド(Leard) がY型チュ

ーブを接続した両耳型聴診器 (binauralstethoscope)を発明しました。これは単耳ラッパ型よりはるかに使

いやすく、広く普及しました。1894年やはりアメリカのボウルズ(Bowles)が低域をカットし、中高域の感

度を上げた膜型聴診器 (diaphragm stethoscope) を発明し、聴診器は大きな進歩を遂げました。さらに

1926年、アメリカのスプラーグ (Sprague)がオープンベルとダイアフラムの両チェストピースを切り替えて

使用できる聴診器(スプラーグ型聴診器)を発表し、今日の聴診器の原形となりました。

3. 聴診器の基本点

 以上のように、聴診器は19世紀の初めに発明されて以来、性能をよくするためにかずかずの改良、工夫が

重ねられてきました。今日でも多種の聴診器が使われています。ではよい聴診器の構造や理論的根拠を考えて

みましょう。

4. 大きさと重さ

聴診器は音をピックアップするという目的のためには大きく、かつ重い方がよく、使いやすさという点からは

小さめで軽い方がよく、この相反する目的のかねあいで種々の聴診器が作られてきました。まず、体の中の音

をピックアップするために聴診器のヘッドの部分−チェストピースといいます−を体表面にあてるわけです

が、体と接触するチェストピースの面積が大きいほど音が聴きやすくなります。これはそれだけ音の通り道が

広くなるからです。しかし、チェストピースを大きくするとしても、体表面は湾曲していますから、あまり大

きいとチェストピースは体に密着しなくなり、また隙間から音が逃げてしまうロスが生じます。チェストピー

スの材質も性能に関係します。重い金属の方が音は吸収されにくく、聴診性能はよくなりますが、軽い金属や

プラスチックは音を吸収するので性能は悪くなります。

5. オープンベル型とダイアフラム型チェストピース

 チェストピースにはオープンベル型とダイアフラム型の2種類があります。オープンベル型が聴診器の原点

で、ラエネックが最初に発明した聴診器はオープンベル型です。これは全周波数域の体音をピックアップしま

す。使用する時にはベルの縁を皮膚にソフトに密着させて使用します。強く押しつけると皮膚が伸展してダア

イフラム効果を生じ、低音が聴きにくくなります。ベルの直径が大きいと湾曲する体表面と縁が密着しなくな

りますから、あまり大きくできません。ダイアフラム型はベルの開口部をプラスチックでカバーしたもので、

こうすることによって200ヘルツ以 下の低周波数帯域がカットされ、相対的にそれ以上の高周波帯域が聴き

やすくなります。皮膚に密着させることができる面積はオープンベル型よりも大きくすることができますか

ら、ベル型よりも直径が大きく、ピックアップされる音量も大きくなります。ダイアフラム型を使った時にベ

ル型よりもよく聞こえると感じる のはこのためです。

6. ベル型とダイアフラム型の使い分け

心臓の聴診ではI音、II音と心雑音の多くは高周波帯域に属する音ですからダイアフラム型でよく聴かれます

が、III音、IV音と僧房弁狭窄症の拡張期雑音などは低周波数帯域に属する音で、ベル型を用いる必要があり

ます。呼吸器の聴診では正常音、異常音ともに高周波帯域に属しますから、通常ダイアフラム型が適していま

す。

7. イアチューブ

 チェストピースでピックアップされた音を耳に伝えるイアチューブも聴診器の性能に関係します。 イアチ

ューブは内径が大きいほど、短いほど、壁が厚いほど伝音性能がよいのですが、これは実用上ほどほどにする

必要があります。チューブが1本のものと2本のものがありますが、理論上は1本チューブよりも2本チューブ

の方が伝音性能はよいとされています。チューブについて大切なのは、チューブが耳に挿入される部分である

イアピースを耳にぴたりとフィットさせることです。フィットしないと聴診音のリークが起き、また外部の雑

音が遮断されないので聴診がしにくくなります。

 耳に挿入する時のイアピースの方向にも注意が必要です。外耳道の開口部は真横ではなくやや後方に向いて

いますから、イアピースは少し前方に向ける必要があります。

8. 聴診器の性能の判定

 聴診器の性能、つまり感度がよいかどうかを判定するときには大きな音が良く聞こえるかどうかで判定して

はなりません。心音のI音、II音や正常の呼吸音は大きな音ですからどんな聴診器でもきこえます。しかし、

ごく小さい音−初期の弁膜症の収縮期雑音や拡張期雑音、ある種の呼吸音など−はよい聴診器でないと聴くこ

はできません。聴診器の性能の判定は微弱な音が聞こえるかどうかで判定すべきです。

9. 現在の聴診器

 以上の基本点のほか、聴診性能を向上させるため多くの工夫がなされてきました。そのため聴診器には数多

くの種類があります(写真)。写真1はスプラーグ型の廉価品、2は高級品、3は2本チューブを備えたもので

す。 写真4のものはチェストピースが3個あります。特性を変えた2種のダイアフラム型チェストピース備え

たものです。写真5の聴診器ではチューブの1本を長くして渦巻き状に巻いています。2本のチューブの長さを

異なるものにすることにより、聴診性能が向上すると説明されています。また写真6の聴診器ではチェストピ

ースは基本的にはダイアフラム型なのですが、中央に突起があり、ダイアフラムそのものは皮膚に接触せずロ

円周の縁と突起だけが接触します。これも聴診性能を向上させるための構造であるということです。 写真7の

聴診器は基本的にはダイアフラム型チェストピースだけの聴診器ですが、ダイアフラムを皮膚に対して押しつ

ける強さを変えることによって、周波数特性を変えるというコンセプトです。

10. ステレオ聴診器

 写真8は新しい聴診器であるステレオ聴診器です。ステレオ聴診器は 全体的な形、大きさは従来の聴診器と

かわりはありません。しかし、チェストピースが中央で2分割され、ベル型もダイアフラム型も左右独立した

2個のチェストピースから成っています。そして2個のチェストピースにはそれぞれ独立したイアチューブが

接続され、完全2チャンネル聴診器となっています。従来の聴診器はチェストピースは1個ですから両耳で聴

いてはいるものの、モノラル聴診器なのです。ですから聴診音としては音の強弱と音質しか聴くとができませ

ん。この新しい聴診器では左右独立した2チャンネルがあるため、左右の音の時間差、位相差、音量の差が伝

えられ、ステレオ音を聴くことができます。つまり、音の強弱、音質だけでなく、広がり、動き、音源の方向

を聴くことができるのです。ベル型とダイアフラム型チェストピースの切り替えも従来型聴診器とかわりなく

行なうことができます。

11. ステレオ聴診器発明の経緯

 このステレオ聴診器は私が発明しました。聴診器は歴史で述べたように1926年以後スプラーグ型を基本と

したデザインや材質の改良に止まり、聴診器としての本質的な改良というのはなかったのですが、ステレオ聴

診器は1991年に登場して以来画期的な聴診器と評価されるようになりました。私はもともと聴診器が好き

で、よく聞こえる聴診器はどれだろうと、国産製品、外国製品をいろいろ試したのですが、結論として大きな

違いはないと感じていました。それで、聴診器の性能を今よりも向上させるにはどうしたらよいだろうと、い

つも考えていました。そしてある時、可能性は聴診器を2チャンネル化、ステレオ化することにあるに違いな

いと思いついたのです。従来の聴診器は両耳で聴くようにはなっていますが、2本のチューブは1個のチェス

トピースに接続されているため、実質的には1チャンネルしかなく、したがってモノラル音を聴いているわけ

です。

 そこでチェストピースを2個としてそれぞれに1本のチューブを接続し完全独立2チャンネル聴診器とすれ

ば、ステレオの聴診音を聴くことができるのではないかと考えました。レコードやFM放送も初めはモノラル

だったのですが、録音と再生を2チャンネルとすることでステレオとなったのです。呼吸音や心雑音をステレ

オで聴くことはできないのだろうか? ステレオで聴くことができたら大きいメリットがあるのではないだろ

うか? こういったことが私の疑問であり、期待でした。そこでまず2個の聴診器を分解し、2個のチェストピ

ースにそれぞれ1本のイアチューブを接続して2チャンネル聴診器を作ってみました(独立分離型2チャンネル

聴診器)。

 この聴診器で聴診をしてみると、まったく奇妙な聴診音しか聞こえないことがわかりました。左右の耳に

別々の異なる音がはいってきて、ごちゃごちゃするだけなのです。私はこの型の聴診器は2チャンネル聴診器

ではあるが、ステレオ聴診器ではなく、実用性はないと結論しました。しかも調べてみて分かったのですが、

この独立分離型2チャンネル聴診器はすでに1858年にアイルランドのアリソン(Alison) によって鑑別聴診器

(differential stethoscope) という名称で発表されていて、その後もいろいろな2チャンネル聴診器が考案

されていました。これらの聴診器はその後忘れ去られたのはやはり実用性がなかったからでしょう。

 私は独立分離型2チャンネル聴診器でステレオ音が聴かれないのは、2個のチェストピース間の距離が大き

すぎるからだと考えました。2個のチェストピースをもっと接近させれば、つまり1個のチェストピースを中

央で2分割した形にすれば、2チャンネルで、かつステレオ聴診器となるのだと想像ました。

 この形の聴診器は工作が難しく、思いついてから結局10年以上もたってからようやく作ってもらうことが

できました。テストの結果は私の期待通りか、あるいは期待以上でした。音の広がり、方向、動きといったス

テレオ効果がはっきり聴かれるのです。もちろん分離型2チャンネル聴診器のような違和感はありません。微

弱な心雑音や人工弁の開閉音も聞えやすくなりました。これは本当に新しい聴診器といってよいのではないか

と思いました。そしてあるメーカーが製造開発にとりかかってくれて、1991年に製品化されました。アメリ

カ特許、ドイツ特許、日本実用新案も順次成立しました。

12. ステレオ聴診器の評価

 では新登場のステレオ聴診器はどのうな評価を受けているでしょうか。実際にこの聴診器を使った医師の感

想を紹介させてもらいます。

 まず、心臓(循環器)専門医です。

−私はこのステレオ聴診器を最初に手にした時、心臓の聴診音がこんなにもちがうものかと本当に驚きまし

た。これはあれこれ口でいうよりも、とにかく聴いてみるのが早いと思います。一番いいのが大動脈弁疾患で

す。教科書に to and fro と記述されている大動脈弁閉鎖不全の音がまるでサラウンドステレオを聴いている

ように右に左に、 左に右にと動きを伴った迫力ある生々しい音で聞えます。聴診器の位置を少しずつ ずらせ

るinching という方法を用いなくても、心雑音の音源方向が分かりますから、その方向へ聴診器を動かせば最

強点を容易に知ることができます。肺動脈弁疾患や三尖弁疾患も格段に聴診しやすくなりました。僧房弁疾患

も時相・音の性質・方向性が明瞭に判別できます。ステレオ聴診器を使ったあとで従来型聴診器を使ってみる

と、まるで耳栓をしているように感じます。

 次は呼吸器専門医です。

-呼吸器の診療で使ってみますと、まず驚くほど音がリアルに聞えます。特に肺線維症のfine crackle (捻髪

音)などでは、クラックルがあちらこちらから出ているのが分かります。一つ一つのクラックルの発生源が違

った場所にあることを理屈ではなく実感できることは驚異です。聴きなれてくると音の出ている深さが感じ取

れるような気もしてきます。

 そしてある心臓外科医の感想ですです。

−私はステレオ聴診器を入手以来、聴診が楽しくなり毎日使っています。ファロー四徴症の患児など、同じ収

縮期雑音でも肺動脈狭窄の音の広がりと心室中隔欠損の音の広がりやがこんなに異なるものかと実感していま

す。今まで使っていた古い聴診器とくらべると、何か違った世界を聴いているようです。

 ステレオ聴診器は外国の医師にも使ってもらいましたが、次のようなコメントが届いています。

−ステレオ聴診器という考え方に驚き,感心しました。私の同僚も同様です。(ペンシルバニア州立大学心臓

胸部外科 W.S.ピアス先生)

−心臓の収縮期雑音,拡張期雑音の多様な性状よく分かります。もし学生が診断学学習の最初からこの聴診器

を使うなら,従来型の聴診器を使う気にはならないでしょう。私のレジデント,学生も皆この聴診器を使いた

いといっています。(オクラホマ大学心臓研究所A.C.ド・レオン先生)

−この聴診器は従来のものより絶対に優れていると断言します。(カリフォルニア大学サンフランシスコ校内

科 L.M.ティアニ−先生)

−この聴診器を使うことができることは大きな喜びです。音が非常にクリアに聴かれ,従来の聴診器より優れ

ていると思います。(テキサス・メディカルセンタ−心臓科D.J.ホ−ル先生)

−この聴診器を使うことができるのは私の喜びとするところです。私が編集者である診断学教科書の新版に掲

載することにしました。(ジョンズホプキンズ大学小児科 H.M.サイデル先生)

−この聴診器は胸部の聴診において全く新しい次元を展開するものです。(ハ−バ−ド医科大学内科 R.H.フ

レッチャ−先生)

−ステレオ聴診器は他の高級聴診器と比較して心臓、肺の聴診において最高の聴診性能を有しています。した

がいまして私はすべての心臓、呼吸器の専門家にステレオ聴診器を推薦します。(ハイデルベルグ大学内科

M. ボルスト先生)

−ステレオ聴診器を多数の患者で使ってみましたが、とりわけ弁膜症患者ですばらしい効果があります。(ケ

ンブリッジ大学心臓胸部外科 F. C. ウエルズ先生)

 ステレオ聴診器は 使う上で難しい点はまったくありません。従来からある聴診器と同じ使い方でよいので

す。また、従来の聴診器にはなかった効果的な使い方を自分なりに発見する楽しさもあります。

 学生にも最適だと思います。聴診音を聴き、それを発生させる呼吸動態、循環動態を理解するには、ステレ

オ聴診によって音の大きさや質的特徴だけけでなく、広がり、動き、方向を把握することが非常に役立つと思

います。

 以上、ラエネックの発明から私の発明である最新のステレオ聴診器まで解説しましたが、聴診器について何

を基準にどの聴診器を選び、どのように使うのか、参考になることがあればば幸いです。

13. 参考文献

1. Kazama S: A new stereophonic stethoscope. Jpn Heart J 1990;31:837

2. ステレオ聴診器の隠れた評判。モダンメデシン 1991;11:55

3. ステレオ聴診器 Mebio 1992;9:Forum

4. 松井弘稔他 :ステレオ聴診器によるfine cracklesの検 討。日本胸部疾患学会雑誌 1992;30:349

(Laennec の読み方は「ラエネック」または「レネック」が正しく、「ランネック」、「ライネック」は誤りであるようです。)