幼虫を産卵ケースに確認してから9〜10ヶ月ほど経つと、いよいよ待ちに待った掘り出しを行う。

すっかり土化したマットをスプーンなどで丁寧に掘り出して行く。
ネブトクワガタの場合、容器の側壁に蛹室を這わせる事はまずない。
容器の外側をグルっと掘っては受け皿にあけると言った感じで掘り進めていくと・・・。


こんな感じのカタマリがコロンと転げ出てくる。


この土の塊から丁寧に周りの土を取り除くとウズラの卵の様な土繭が現われる。
既に蛹化している様であれば、少し傾けただけで、ゴロゴロと蛹が蛹室内を転がる様子が手に伝わってくる。


取り出した土繭は、プリンカップかタッパーに掘り出したマットを少々敷いて寝かせる。
羽化までの間は乾燥に充分気を配り、余り乾燥している様であれば霧吹きで少々湿らせるとよい。
しかし、明くまでも湿らせる程度で、水分過多にならない様にしよう。

蛹室内部の撮影のために少々土繭を削って見た。意外にも蛹に対して蛹室が狭いようだ。

もう一つネブト君には申し訳ないが、撮影にご協力頂き土繭から出て頂いた。
大歯型のなかなか立派な蛹である。


運悪く掘り出し時に土繭を壊してしまった場合、オアシスを用いた人工蛹室をよく使うが、ティッシュぺーパーを用いても人工蛹室は出来るので覚えておくと便利かも知れない。

まずプリンカップなどの小さめの容器にティッシュペーパーでリングを作り、湿らせ幾重にも重ねていく。ある程度の厚みがとれたところでリングの中央のヘコミにあんことして座布団を敷く様な感じでさらにティッシュを敷く。その上にさらにティッシュを重ね、霧吹きで湿らせてよく下地と馴染ませる。ここに蛹をそっと寝かせ、蓋をして乾燥を防ぎ羽化を待つ。

文書にするとダラダラと面倒そうだが、意外と簡単に作れるので試して見るといいだろう。


こうして2〜3週間ほどすると羽化が始る。羽化したかどうかを確認するときは、前述の通り土繭を少々傾ければ、ゴロゴロという蛹の転がる感覚の有無である程度確認する事ができる。
しかしこれもゼッタイという方法ではないので、ある程度の判断基準と思って頂きたい。
もっとも、時期が来れば自力で土繭を壊して出てくるので、我慢出来るのであれば放って置いた方がいいだろう。
ちょうどマンガで鳥のヒナが羽化する時と同じ様に、パカっと割って出てくるので意外とカワイイものである。

これは待ちきれずに土繭を割ってしまったものだが、この瞬間もまた飼育の楽しみの一つである。


今まで述べてきた様に、菌糸の喰い粕とマット粕だけでも充分に大歯型を育てることが出来るのである。

マットもリサイクルなら飼育ケースもリサイクルで充分大きく育つネブトクワガタは、とってもエコノミストだったりするのである。
もっとも自然界での彼等の働きもまた、そう言ったことなのかも知れない。

ただ単に採集して飼育するだけでなく、こう言った自然の働きや営みと言ったものも、彼等との接触のなかで私達は教わらなくては成らないのかも知れない。