2000年度 採集記(単独新規開拓編:後編)

2000.08.04 (Fri) 〜
2000.08.06 (Sun)

某県 某所
● やはり壁ポイントか

散々走り回り、さすがに疲れてきた。さらには強大な睡魔も襲ってきた。これ以上走り続けるのは非常に辛い。瞼が今にもくっついてしまいそうだ。

ただ、競合者がゼロであることだけが精神的な支えとなった。これで、もし競合者がいるならば早々にあきらめていただろう。最近は競合者恐怖症かもしれない。

あまりに眠いため、あの壁ポイントで休憩も兼ねしばらく張ってみることにした。

気温は20度を底に下がる気配がない。クワガタも深夜にかかわらず、ぽつぽつと飛来している。どうも今晩の条件は最高のようだ。

少しうとうとしていたのだが、いきなり『バシっ!!』と地面に何かが叩きつけられる音で目が覚めた。何かと思えばカブちんの♀であった。なんだ〜、びっくりさせるなよ、もう。

本命は飛んでこないのかな〜?、とため息まじりでタバコを吹かしていると、頭上から垂直に落下する小さな黒い影が...。そして、『パチっ』と地面に着地した。

落下点に目を向け、それがクワガタの♀であることはすぐに判った。翅をしまっている最中だ。

なんだ、今度はコクワか....。と、そいつに手を伸ばしてみる。

んんん!!!!

いやっ、違う。

やった!!、やったぞ!!

来た〜〜〜、本当に来たよ〜。

注意:
写真は一度採集した個体を再び地面に置いたヤラセ


あああああ、夢のようだ。思わず目頭が熱くなってしまった。

早速、車へノギスを取りに戻る。不随意にこわばる手で測ってみたところ、36ミリ。少々小さめであるが、大きさなんかどうだっていい。

すぐに各地へ散らばる採集仲間へ報告だ。本当にうれしい。皆と握手できないことがもどかしくてならない。

なにはともあれ、あ〜さんのアドバイス通りだった。これには心底感服した。

この後、日付が変わり、かなり深夜まで頑張ってみたが、ある時間を境にぱったりとクワガタの飛来が途絶えてしまった。気温も17度まで下がっていた。う〜〜ん、今晩はこの辺で潮時かな。

適当な場所に車を停め、深い眠りについた。もちろん、今晩最高の獲物と添い寝したことは言うまでもない。


● 翌朝

気がついたらすでに8時を回っていた。天気はうれしいことにピーカンである。

とりあえず、昨晩の結果を撮影。

ミヤマの♀ばっかり...。

今日は、もう1本の林道へヤナギの新規開拓へ行く予定だ。と、思っていたら実は、あ〜道コンビがすでに開拓済みであり、ヒメオオの棲息は分かっているのだ。さすがである。

その前に、あの材場をもう一度見ておきたい。というわけで、まずは材場へ向かった。

う〜〜ん、まだ時間が早いのか、ほとんど虫がいない。かろうじて採集できたのは、ルリボシが1頭、そしてヘリグロベニカミキリを1頭のみであった。

しばらく粘ってみたが、状況は変わらず。虚しく退散した...。

朝食をとった後、いよいよ目的の林道へ行くことに。

順調に林道を走り、ヤナギがちらほら見えてきた。

昨日の林道と異なり、けっこうしっかりとヤナギがある。

さあ、いるのか?、ヒメオオ。

標高を1000〜1200メートルにキープしつつ、次々とヤナギを見付けては、枝の隅々まで見ていく。しかし、『黒いコブ』は一向に見当たらない。何往復したかわからないほど、林道を行ったり来たりした。でも、私には見付けることができなかった...。相変わらずヤナギ採集は下手である。

敗北感に覆われている最中、追い討ちするように雷雨となった。あああああ、今日もヤナギは駄目か...。結局、今回のヤナギ採集は見事にボ〜ズ、完全なる惨敗を喫した。


● 相棒と合流

雨は相変わらず降り続けている。やむを得ず雨宿り。またまた暇な時間が襲ってきた。

手持ちぶさたで、相棒へ電話してみる。実は、昨晩のオオクワゲットの報告で刺激された相棒は、今晩ここへ来ることになっているのだ。仲間との合流は本当にうれしい。

相棒によれば、午後には合流できるとのこと。こちらの天候を伝えると、やはり雨はチャンスだという。いい条件というものを肌で知っている印象であった。

雨も弱まった頃、相棒と合流した。この時点で3000キロ近くも走ってしまったそうだ。いったい、どこをどういう風に回ってきたんだろうか?、よくもまあ体力が続くものだ。

さて、そんな相棒を私の車へ乗せて、昨晩回った街灯ルートを予習・復習した。このエリアは、私よりも格段に経験を積んでいる相棒でさえ、う〜〜んと唸るほどの環境であるようだ。

ここで、相棒から提案が出た。今晩は自前のセットを張りましょう!、というものであった。私のも含めると2セットあり、水銀灯は300WX2、100WX1、その他蛍光灯、ブラックライトなどなど、全部灯せばすごい灯火が張れるのである。

よし、是非そうしよう。ということで、絶好の設置ポイントを探すべく走り回ったのである。


● すごい灯火!

なんとかいい場所を発見し、2人で設営を始める。

お互い慣れたもので、あっという間にセッティングは完了した。あとは、日が暮れるのを待つだけだ。およそ30分ほどで日没なのだが、すごく待ち遠しい。

やっと日没を迎え、いよいよライト・オンだ。

私のセットは今季初始動である。

凄まじいほどの光が、山の斜面を照らし出す。

こりゃ、来るでしょう、絶対。

この夜の気温は18度、昨晩に比しやや低い。途中から雨もまた降りだす状況であったが、条件的にはまずまずであろう。

日没から約1時間の間に、ミヤマを中心として20頭あまりものクワガタが飛来した。幸先のいいスタートである。

この後は、交代で灯火番、街灯回りを繰り返すことになる。

灯火番をしている際に飛来したヒメオオ♀。

とにかく一番数の多いミヤマの♀以外は、どきっとさせられる。

あああ、お前とはヤナギで会いたかったよ... 。

あと、現場ではコクワと思っていた♀が、実は極小ヒメオオであった、ラッキー。

結局、日付が変わるまで粘ったが、残念ながら本命は飛んでこなかった。 壁ポイントも昨日とは別のポイントかと思うほど、クワガタの数が少なかったのだ。どうしてなのか?

しかし、相棒はこの晩だけでミヤマ、アカアシ、コなど40頭近くも採集してしまった。これまたさすがである。ちなみに私は、合計20頭弱だ...。

とにかく疲れ果てた。そして、2人で死んだように睡眠を貪った。

さて、翌日はお互いに疲労が隠せないため、材場を軽くルッキングした後、午前中に帰京したのであった。


● エピローグ

毎度のことだが、今回もかなりの距離を激走した。ある一定のエリアをぐるぐると、それだけで150キロも走ったことになる。これは何の自慢にもならないが、後で思えばそれだけやったんだ、という達成感は確実に得られる。私は昆虫採集で生計を立てている訳ではない。が、感覚的に今や単なる遊びの範疇を越えてしまったかもしれない。少々、いや、かなりやり過ぎだ。

いずれにしても、半年温めていたエリアにて、一撃で決められたことは本当にうれしい。これは、素直に喜びたいと思う。出撃にあたり、情報やアドバイスを頂いた方々にはこの場を借りて深謝したい。

振り返れば、今季は自分でも信じられない数のオオクワガタを採集し、毎回夢物語のような採集記を書かせていただいた。その時の感情をほぼストレートに書いたりしているため、中にはイヤミに取られた方もあるかと思う。しかし、事実を事実として書いた私的な記録である以上、お許しいただきたい。

一応、今回をもって、今季の予定された遠征・新規開拓は終了ということになるが、来シーズンに繋がるいい経験ができたと本当に思う。特殊かも知れないが、こんな素晴らしい趣味に出会えたことも幸せに思っている。来シーズンも今季得た経験をベースに一層頑張っていきたい。

余談:でも突然遠征に行っちゃうかも、その時は採集記をお楽しみに!

2000年盛夏、東京にて

るどるふ


★★ 採集成績 ★★

ミヤマクワガタ  2♂38♀
アカアシクワガタ 4♂8♀
コクワガタ    2♂2♀
ヒメオオクワガタ 2♀
オオクワガタ   1♀
(36ミリ)

ルリボシカミキリ    6頭
ヒゲナガゴマフカミキリ 1頭
ヘリグロベニカミキリ  1頭

→ 『第1回ジャパン・クワップ自己申告ボード


記載日:2000.08.08
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