あこがれの檜枝岐を訪ねて・・・PART.2

川口のトム




まさかもう一度行けるとは。
9月初め、赤城山麓で群馬支部主催で埼玉支部と合同の灯火採集会が催されると知った。
日頃から掲示板を利用させていただいているまちかねさんや群馬支部の皆さんに会いたくて、仕事を早く抜けて夜間採集に参加させてもらい、朝までに帰宅するつもりでいた。
このとき、私のこころの中で『採集の虫』がウズウズし始めた。
そうだ、どうせ群馬まで行くのだし9月といえばヒメオオの発生ピークではないか。
どうにかしてもう一度檜枝岐に行ってみたい。
家族に相談すると翌日休みを取ることにOKがでた。
ムフフッ、ということはその次の日は仕事が休みなので二日間の休みになった。
埼玉掲示板で知り合ったSさんに相談すると同じく休みが取れるということなのでご一緒することになった。
彼はひとりで檜枝岐に行ってヒメオオも採集しているのでこころ強い。



お互いの目標は私がヒメオオペア、Sさんは時期的につらいがまだ採ったことのないオオクワである。
今回はたっぷり時間があるのでどうにか自分たちで産地を見つけてみたい。
自分の持っている資料を調べてみると昭和40年代発行の本に群馬県H山でヒメオオが採れたという記事がある。
同行のSさんに相談すると快く新産地開拓に同意してくれた。
あとは赤城山から檜枝岐までをどのルートでどちらから攻めるかを楽しみながら考えることにする。



いよいよ群馬での夜間採集会、9月ということもあり灯火採集はあまり期待していなかったのだが、私たちに衝撃的情報がもたらされた。
まちかねさんのところで待ち合わせた埼玉支部長のタカさんより、前日までにあいあんさん達神奈川支部の方たちが檜枝岐にて灯火採集でオオクワを採集しているという最新情報を提供してくれた。
 「えぇー、9月に入ってもほんとうにオオクワ採れるんですか?
ふつうは7月、遅くても8月のお盆の頃までと思っていた私たちは頭の中がパニックに。
そのうち、まちかねさんを始め初めてお会いする方と自己紹介をしてから夜間採集場所まで移動。



私たちの車内では翌日からのルートをどうするか、檜枝岐一本にかけるか予定通り檜枝岐以外の新産地開拓と織り交ぜるか、答えがでない。
会場につくと、
 「す、すごい!!
群馬支部長のnamihiroさん自慢の灯火セットと支部の方たちが準備をして私たちを待っていた。
クワガタ採集というより群馬支部のアットホーム的なキャンプ場といった感じだ。
実際、埼玉の面々は採集に来たというよりバーベキュー会場に招待されたイメージ。
こんなににぎやかに昆虫採集をするのは初めてで食べ物は次から次へ用意されて幸せな気分であった。>とてもおいしかったが、肝心の採集結果は・・・?
群馬支部のみなさま、準備も片づけも手伝えなくてすみませんでした。
また、機会があればご一緒させてください。
(後記・・・このときの灯火セットが後日、群馬支部檜枝岐採集で大活躍したのであった。)



午後10時過ぎ頃、埼玉支部の面々は帰宅することになったので私たちも次の採集地に向かうことにした。
二人になってから話し合うと、タカさんから聞いたオオクワ採集のことが燃えていたSさんにガソリンを注いだようだ。
私も灯火ではオオクワ採集の経験がないので翌日の夕方から深夜にかけてを檜枝岐にかけるとして、初日の昼間を新産地開拓につとめるようにした。
赤城から深夜のドライブで真夏にはミヤマがかなり集まりそうな外灯をいくつか見つけながら、H山を目指す。
事前に周辺の沢と林道を4、5本見つけておいたので一眠りしてから攻めることにした。
H林道と同じ環境を探すがなかなか無い。
Sさんの話では檜枝岐H林道と比べるとヤナギの木が少ないようだ。
ヤナギ以外にもダケカンバやシラカバ、ハンノキなどの幼木にもつくようなのでそれも探す。
このあたりは熊に注意の看板が至る所にある。
スズをならしながらのドキドキ採集である。
初めに発見したのはやはりSさんであった。
見事に50mmオーバーのヒメオオ♂を発見。
あとから♀も採集できトータル3♂2♀。
早朝から昼過ぎまで群馬県にいたわりには、まだ見たい場所をいくつも残してしまった。
これは来年以降の楽しみに取っておこう。



さあ、次は栃木県のヒメオオねらいだ。
ここさえ採れば福島は確実だから3県制覇だ。
と思い一気に奥日光から栗山村へ。
ほんとうはここから林道を山越えして檜枝岐村に入る予定であったが、初めての道でしかも夕暮れが近い。
このころからオオクワの外灯巡りが頭の中をちらつく。
結局、国道を通って檜枝岐に向かう。
どうにか明かりがともる前にスキー場の外灯下に到着、湯をわかして腹ごしらえ。
前日が少し寒かったので少々不安になる。
ここをベースに交代で外灯巡りをすることにした。



さて、Sさんが初めに出発。
途中雨が降ったりしたがアカアシ、ノコなどがポチポチ飛んでくるくらいでさすがに9月。
虫の数も少なくなったと感じていた。
車が戻ってくるとSさんがこちらに飛んでくる。
いや飛べるはずはないのだが確かに足が地面についていない。
 「まさか? いや、ほんとうに? ウソだろ!?
近づくなり、手を握り抱きついてきた。
取り出されたルアーケースにはノコ、アカアシ、ミヤマ。そして、燦然と輝くオオクワガタ♀。
 「で、でかい!
測ってみると42mm。
おめでとう、Sさん。
初めてのオオクワゲット!!
行くときにはいなくて、帰り際にもう一度よってみたらいたそうだ。
ほんとうによかった、来た甲斐があった。
さらにSさんは、
 「今度はトムさんの番ですよ。ここは任せて行って来てください」
といってくれた。
時間は9時前だ。



そんなにマンガみたくはいかないだろうが、せっかくの好意なので喜んで出かけた。
集落のはずれに車を止め、静かにひとりで周辺を探索する。
空気がとても気持ちよい。遠くに川の流れの音がする。
二度ほど採れたポイントを見回るが、やはりマンガではない。
そんなにうまくいくはずがない。
さらにまわりを探す。
と、ライトで照らした道路上をこんもりした虫が歩いている。
クワガタの♀だ。
一瞬、ミヤマのように見えたが歩き方が早い。
取り上げてみるとオオクワであった。
すぐにルアーケースに入れたが、自分でも信じられずに何度か確認した。
きっと、ほかの人が見ていたら相当ニヤニヤしていただろう。
場所はかなりくらいところを歩いていて、もう少ししたら道路脇の草むらに入られるところだった。
近くの外灯は暗く、とても期待していなかった場所だ。



自分も採ってみて改めてどの方向から飛んでくるのか考えてみた。
わずか3例だがすべて同じ方向へ外灯が向いているような気がする。
もし、灯火セットを自分で持っていたらその方向に近いところでやってみたいものだ。
さぁ、Sさんのもとへ戻ろう。
きっとやきもきしているだろう。



戻ってさっそく、
 「採ったよ〜」
といったが冗談だと思われた。
採集品を見せると手を握って自分のことのように喜んでくれた。>私もうれしい。
サイズを測ったら39mmだった。
オオクワを採る前は採れたらそのまま帰ってもよい、などと口にしていたのだがそんな話は二人とも忘れている。
これからどうするか?
10時をすぎているのだが、まだチャンスがあるし♂を採りたいと一致して車で外灯巡りをすることになった。
アカアシ、ノコ、カブトはいたが残念ながらオオクワは採れなかった。
翌日最終日はH林道でヒメオオを採って帰ろうということになり、さらに奥の御池まで外灯廻りをして眠りに入る。



翌朝、起きてみると一雨あったようだ。
5時半頃から国道沿いをみていく。
まだ早いだろうという考えはすぐにぶっ飛んだ。
Sさんはすぐにヒメオオを発見。
私が中学から愛用の5本ツナギ(5.5m)と2.7mが活躍する。
ネットは口径36cmをクワガタ用に用意したがもっと小さくても良いかもしれない。
ネットの袋の部分が枝に当たるので縛って使った。
まるで金魚すくいネットだ。これで枝や葉に触れることが減りほとんど落とさなくなった。
来年はさらにちょっと改良したネットを考案しようと思う。



林道には誰もいなかった、私たちの貸し切り状態でゆっくり採集を満喫した。
倒木から2令幼虫を5頭ほど割り出したが帰宅後、私の不注意で3頭☆。
残りはSさんにゆだねる。
まだ見ぬヒメオオのようなのだが、アカアシかな?>楽しみである。
前回採り逃がしたキベリタテハも3頭ほどネットインできて、ハッピーである。



昼過ぎまで採集を楽しみ、さすがに空腹感を覚えた。
麓に下りてそばでも食べよう。
檜枝岐まで戻りカルビ丼とそばで祝杯を挙げた。
まだ時間があるので林道で山越えし栗山村で栃木産ヒメオオをねらうか、さらにもう一晩外灯巡りをしてオオクワをねらうかを相談したが、欲張らないことにした。
その代わり夜は見られなかったオオクワの飛来するあたりの植生を見ながら次回には発生地域を特定する楽しみを残して、檜枝岐を後にした。



採集品
オオクワ2♀(42、39mm)ヒメオオ(群馬産・福島檜枝岐産、♂最大53mm)21頭
アカアシ♂♀多数、ミヤマ2♂、ノコギリ♂♀、コクワガタ♂♀、スジクワガタ♂♀
キベリタテハ3exs





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