親子で楽しむ昆虫展 昆虫ワンダーランド レポート



k-sugano


 
8月7日から22日までの15日間、大阪梅田ハービスホールにて開催された「親子で楽しむ昆虫展:昆虫ワンダーランド」について、その企画から開催までの経緯を簡単に報告する。


◇企画

この催し物はクワガタムシの標本収集で有名な鈴村勝彦氏にお会いしたことに端を発するもので、所蔵標本を拝見してその質と量に驚いていた筆者は、後日、筆者の勤務先でイベントを担当している事業部のN部長プロデューサーと世間話をしている際にその話がでた。1998年の初夏のことである。
Nプロデューサーは、翌年(1999年)夏にハービスホールで開催する企画を探しており、鈴村氏の標本をお借りして標本展示会をすることは出来ないものかということになった。しかしクワガタだけでは標本展の開催は苦しいため、蝶などの他の昆虫も集めなくてはならない。そこで鈴村氏とも懇意である標本商「パイネ」の宮下哲夫氏の協力を得ることにする。晩夏に開催された「京都インセクトフェア」で宮下氏ともお会いして快諾を得る。

 左から:鈴村氏、宮下氏、A.CHIBA氏(会場にて)
12月、総合監修を埼玉大学教授の奥本大三郎氏にお願いするため上京した。奥本氏は大阪の出身で関西にも虫仲間は多い。当日は非常に寒い日で、風邪で体調不良にも関わらず奥本氏は授業は休講としたのに約束の風月堂にお出でくださり、監修を引き受けていただくことになった。その席での話題は昆虫だけでなく文学、芸術あらゆる分野におよび、氏の博識ぶりに改めて驚嘆するとともに久々に教養人とお話できた満足感で一杯であった。
ところで、筆者のみならず筆者の妻も奥本先生のファンであり、妻からは「サインを頂いてくるように!!」という厳しい指令が発せられていたため、奥本氏の著作および和訳の「楽しい昆虫採集」「ファーブル昆虫記」にそれぞれ「スカラベ」と「アゲハ」の絵付のサインを頂いた。役得である(^^;
 左からk-sugano、奥本氏(会場にて)
その翌日、展示会用標本の確認のため、パイネの宮下を訪問してその個人所蔵標本を拝見した。所蔵標本はビルのワンフロアを占拠しており、大型ドイツ箱3000箱を軽く超える。筆者は博物館や大学の一般公開していない所蔵庫の標本を特別に見せて頂いたこともあるが、宮下氏の規模の標本はなかなかお目にかかることはない。巷では幻とされているインドクルビデンスやインドアンタエウスの特大個体がドイツ箱数箱にずらりと並んでいるのは驚嘆以外のなにものでもない。宮下氏にはインドクルビデンスの80mm標本などを頂いた。役得である(^^;;

さて、この昆虫展は、自然とのふれあい、自然との対話そのものである「昆虫採集」の復権を意図したものである。お父さんお母さんに「子供を昆虫採集に連れていこう」と思ってもらえる昆虫展をテーマに企画された。そのため昆虫採集案内のためのパンフレット「近畿の昆虫採集マップ」を制作することになった。子供に採集をせがまれたときの「お助けマニュアル」でもある。

余談だが、最近のお父さんには「どの時期に、どのような場所に行けば、どのような昆虫がとれる」といった知識が皆無な人もいる。筆者の経験では、春に「コオロギやバッタがとりたいので、そのような場所に連れていってくれ」という驚くべきものがあった(^^;;; 精神的に貧しい少年時代を過ごした大人達がいかに多いことか。いまさら言っても仕方がないが(^^;;

近畿の昆虫採集マップ
 「近畿の昆虫採集マップ」原稿はナチュラルリサーチクラブ代表で大阪昆虫同好会の杠(ゆづりは)隆史氏にお願いした。写真は昆虫写真家の渡辺康之氏の手によるもので近畿地方の11箇所のポイントが紹介された素晴らしいものである。このほか、杠氏には昆虫展会場でのジオラマコーナーの担当と蝶の舞うトンネルの活きた蝶の補給などをお願いした。

 
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