rain、危機一髪!

 慌てて拾うと、やはり!フタテンアカクワガタの♀でした。辺りを見回すと、ゴミ捨て場に腐ったパイナップルがまとめて捨てられています! 普通の方からみればまさに<ゴミの山>しかし、クワ馬鹿からみれば<宝の山>です。 さっそくほじくると、みなれた黒いお尻が!つまみだすと、タイワンヒラタの♂です。 思わず顔がほころびました。しかし、その時、周囲の方の冷ややかな視線に気づきました。 当たり前だ....。その場は笑ってごまかし、新たな<宝の山>(ゴミ捨て場)に向かう と、次々とヒラタがみつかり結果7♂5♀を見つける事ができました。ついでに、やけに 泥っぽいクワを見つけ<汚いなぁ〜>と思って水で洗っても奇麗になりません。まじまじと 見ますと...タイワンサビクワガタの♀でした。 よく、まぁこんなにいいかげんで、台湾に来たものだ....。

 さて、日が暮れてきたので挨拶をして帰ろうと思い羅氏に会いますと、思わぬお誘いが! <夜も採るんだろう?一緒にご飯を食べていきなさい>あまりの事で<え.....で、 でも..>と、どもっていると<さぁ、はいった、はいった>と夕食に招かれ、さらに、 席は羅氏の真となり!そして、日本語による料理の解説!!<今、自分は世界で一番幸せな クワ馬鹿にちがいない>そう真剣に思いました。 その後、フタテンアカの♀を3匹追加して宿に帰りました。夢のような一日でした。

 翌日はもうすこし足を伸ばして、少し山の方までバスで行きました。すぐに、路上で黒い ものを見つけ、拾ってみるとオニツヤの♀の死骸でした。<ここは、採れそう!>そう思い、 宿に荷物を置き、まわりの下見をしました。見晴らしのいい場所や鬱蒼と茂った森があり いい雰囲気です。よさそうな場所に腐ったバナナでつくったトラップを仕掛けていきました。

 まだ少しはやいのでは?と思われる午後7時頃、辛抱できずにトラップと目を付けて おいた外灯を見に行きました。外灯には蛾やカマキリ等が大量にたかっており、注意深く 下を見ていきますと、<いた、いた!>クワガタの♀です。しかし、拾った瞬間<ああ.. ..また、タイワンヒラタか..>数が多すぎです....。ヒラタでうんざりするとは 自分も贅沢になったものだと実感しました.. さらに、外灯付近の木を揺さ振っていくと、<ドサッ>と大きな音がして、興奮しつつも 拾い上げてみると、それはなんと、タイワンテナガの♀でした。はじめて間近で見る テナガの美しさは例えようもなかったです。その結果に気をよくした私は、期待に胸を膨ら ませつつトラップを見に行きました。が、結果は全滅。全て蛾と蟻で占領されてました...

 なんとも言えぬ疲労感で足を引き摺りつつ宿に帰ろうとすると、山の上の方に 明りが見えます、<ああいうところに、多いんだよね>と思いながら歩いていくと、 すさまじい数の蛾に混じって予想どおり、たくさんのクワガタが見えました。<いざ!> 近寄るとそこは民家のすぐぞばで、家人がいる事が分かりました。 しかし、ここまで来たら引き返せない!ここで逃げたらクワ馬鹿の資格がない!! ....そうまでしたのに採れるのはヒラタばかり.....

 結局、10匹以上も採集したにもかかわらずヒラタ以外はタイワンサビの♂1のみ <坊主でないだけましか....>諦めて宿に帰りました。 でもまた1時過ぎに、<テナガが採れた木が気になる!>と懲りずに宿を抜け出して 、同じ木から今度はオニツヤ♀を採ったのです。

 翌日も同じ場所で採集しようと思ったものの、宿では<悪いけど予約が....> 仕方なく予定を変更し、さらに奥地の標高の高い温泉街を目指しました。 <そこなら、また違ったものが採れるはず!>しかし、予定では、午後3時に着くはずがなんと 9時に!!辺りは真っ暗です。早く今夜泊まる所を決めないと異国の地で野宿という事態に 陥ってしまいます。しかし、どこもいっぱい!<今夜は野宿か....>とぼとぼと宿を 求めて歩きますと、やはり、いた...タイワンヒラタです。探せばまだいるはず! そう思い、虫のために無理して高い宿に荷物を置き、慌てて探しに行きました。

 予想どおり、オサムシやらカミキリやらがいっぱいいます、そしてなんと、昨日に続き タイワンテナガが採れました。さらにはぜひ欲しい!と思ってたミヤマヒラタに加え タイワンサビも採れます。これだけでも来た甲斐あったなぁ....。もっともこんな場所 で採集したので、いつの間にやら人が集まってきました。しかし、テナガを見せると、 興味津々で話し掛けてきました。中国語がわかるはずもなく、筆談で応答しましたが... どこの国でも案外みなさん虫に興味があるんだぁ、と分かりうれしくなりました。

 翌朝、<?なんか忘れたような>と思いつつも、新しい場所を求めて出発しました。出発してから、ようやく気付きました。そう、温泉街に来たのに温泉に入ってないんです!!<おれ、何しにここへきたんだろう...> つくづくクワ馬鹿を再認識しました。

 この日は観光名所に来たこともあって、台湾に来てはじめて観光をしました。 夜になってからはいつものように街灯まわりをしましたが、徒労に終わり、なんとも言え ない疲労感です。諦めて宿へ帰る途中、ふいに自転車の少年達に囲まれてしまいました!

危機を感じて必死で説明するにも言葉は思うようにならず、こんな日に限って1頭も クワガタがとれていません。 ところが、少年の一人が<シェンク?タイワンオオ?>と日本語で話しかけてくれた ではありませんか!こうしてその子達と仲良くなり、飼育中のクワガタや標本を 見せてもらいました。<シカやホソアカが見たいのだけど..>と図鑑を見せて話すと、 <僕は持ってないけど、知り合いが持ってるよ。今から見に行く?>と誘ってくれ、 ペットショップのような感じの場所に案内してもらいました。すると驚くべきことに 次から次ぎへとかなりレアなものが出てきます。 最後にうやうやしく冷蔵庫から<アンター、アンター>と標本を取り出してきました。 <台湾にアンタエウスが???>ところが、なんとその標本は福島の安達さんの知り合いが採集したタイワンオオでした。中国語で「安達」を「アンター」と読むのでした!!

 それからの帰国までの残りの数日間は部屋の明かりを使った灯火採集を徹夜でやったり、 いままでの場所をもう一度回ったりしていましたが、たいしたものは採れませんでした。
 

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