コルリ&ミヤマツヤハダの採集(3)
by えりー


この日,わたしにとってひとつの大きなブレークスルーがあった.自宅住所と同名産地のコルリを採集することができたからである.これは私の短期目標のひとつだったのだ.このポイントも後述のK池と同様に春には惨敗したポイントであるだけに嬉しいものがあった.それにしてもこんな近くに居るのならば,福井県下ならばどこにでもいるのではないかと思わせるに十分な採集であった.今後の福井県下の地域変異を調べる楽しみが増えたといってもよいだろう.


1998年11月03日,福井県丸岡町
今日は午前中だけしか時間がないので遠くへは行けそうにない.しかし,むちゃむちゃ快晴である.こうなりゃコルリの県内新産地を開拓したる〜と思って家から一番近い(自宅住所と同じ町内)のブナ林へ.直線距離にして約10kmだが,一山迂回して登るので,ポイントまではだいたい30〜40分かかる.このポイントは何度か通ったのであるがマークの付いた材を探すことすらできなかった.だが,今回は違う.前回までの採集により,コルリ採集には多少の自信もついてきた.ブナが存在するならば最低でも幼虫は必ず出ると信じていた.

ブナ林は本当に美しい.澄み渡った青い空に白い樹皮が,そして赤く色づいた芽が春を待っている.ここは稜線近くであるから標高は1000mを少し切ったくらいの場所である.下の写真は傾斜のきつい斜面に生えるブナ.2枚目の写真は,山頂付近で見つけた一連のブナの幼木である(手前).来年の春には(ちょっと斜面を下らなければならないので足場は余りよくないけど)新芽採集が可能だろう.



まずこの日最初のポイントで材を探す.といっても写真で見る以上に斜面はきつく,採集は困難である.足下から石が崩れ落ちて谷底へ転がって行く.滑落したらやばい,まじでやばい.下の写真の右の斜面を見て欲しい.車を置いた林道に対してかなりの角度が付いているのが分かるだう.まさしく斜面にへばりついての作業である.


太い倒木が斜面下にあったのでそれを足がかりにして材を探す.ここでは,なんとか3匹幼虫を出して引き上げる.体力を徒に消耗するのは得策ではない.さらに,林道を進むとやや日当たりの良い斜面であるが,そこを挟むように2筋の沢がある.良い感じに湿っているようだし,ここを攻めてみることにする.


一見緩やかな斜面で,登り易そうにみえるかもしれないがとんでもない.実際にはひいひい云いながら登るのである.このような枯れ沢といっても湧き水が常に流れ出ているため,岩の上にコケが付いている.こういう沢を登るときは特に注意を要するのだ.万が一脚を滑らせたらせっかく登った沢を下まで滑り落ちてしまうだろう・・・.今回は沢の両斜面を中心に見てまわる.程良く朽ちた材はあるもののマークがない.落ち葉をめくって埋もれてる材を拾い上げる.
かなり湿った材から幼虫が出てきた.


お昼になったので引き上げることにした.10匹ほど採集したのだが家に持ち帰った段階で生きていたのは7匹だった.成虫が採れなかったのは残念であるがここはいつでも来ることができるので焦る必要は全くない.来春の新芽採集に期待しよう.

<<追記>>
実は地元の利を生かして,後日,30分間という短い採集時間であったが,コルリ♂1,幼虫4を追加している.この産地でのコルリはおそらく未記録であると思われるので非常に嬉しいかぎりである.市街地に近いうえ,標高もこれまでに比べたら低い900m付近で採集できた.この800m地点ではこれまでにもアカアシ,ミヤマ,スジクワの幼虫を採集している.この地域でどこまで標高を下げて採集できるか?このようなトライアルは近くに住んでいないとできないものである.なんとか600m地点くらいまで標高をさげられれば良いのだが,さすがに植林の進んだ林やブナ以外の雑木林では採集できていない.

<<追記2>> 実は,またもや地元の利を生かして,1時間ばかり早朝採集をしてきた.残念ながら幼虫ばかり15匹〜だしたところで雨のためやむなく引き返した.なかなか成虫が出ない.かなり古い材を探して居るつもりなのだが・・・.しかし,幼虫はこれで十分である.このポイントは新産地だろうと思っていたら,どうも未確認ながらA氏によって採集されているらしいという情報が入ってきた.残念!!12月に入って久しぶりにこの地を訪れたのだが,ところどころ積雪が見られた.すぐにこのポイントも雪に閉ざされることであろう.


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