「怪説・世界のクワガタ」 第11回 ミヤマクワガタ (1)

A.CHIBA


前回に続きミヤマクワガタで、今回は主に小−中型の種を紹介してみたい。中型のミヤマクワガタには優雅で品の良いカタチをしたものも多く、個人的には好きな種が多い。やはり、東南アジアから中国あたりが一大産地で多くの種が記載されている。


                        fig1                                     fig2

fig1. Lucanus szetschuanicus Hanus, 1932

産地は中華人民共和国四川省で、最大サイズは65mm前後になると言う。載せた標本は55mm程度だが、このサイズでも大顎が横に張り出して湾曲し非常に良いカタチをしたミヤマ。体表面の微毛は大顎の基部、頭部、前胸にわずかに生えている個体がある程度であまり目立たない。標本のラベルは中国四川省楽山地区沙湾 JUL. 1991採集。

fig2. Lucanus fortunei Saunders, 1854

前種に良く似ているが体には艶が無く、体表には微毛も殆ど見られず区別は容易。サイズは大きくても60mmは超えないもようで、普通見かける大きいものは50mm程度。やはり、中国に分布しているが、前種よりも分布する範囲は広く広東、四川、江西、Zhejiang、に分布。この種は中国のミヤマとしては昔から良く入ってきている。写真は中華人民共和国 Zhejiang 四明山 JUL. 1990 採集。


                             fig3                                        fig4

fig3 Lucanus fortunei Saunders, 1854

中国福建省産の L. fortunei で fig2のものよりも内歯が大顎の基部にある。この福建産の L. fortuneiは次種 L.swinhoei に良く似ており殆ど差は無い。特に小型のものは大陸産と台湾産と産地によって判断する以外区別は難しく、同種としても良いように見える。更に似た種で別種として書かれているものが福建にいるらしいが、資料もなく詳しい事は良く解からない。中華人民共和国福建省武夷山 JUL. 1991 採集。

fig4 Lucanus swinhoei Parry, 1874

台湾産ヒメミヤマクワガタとして昔から有名な種で、載せた写真の標本は45mmの中型。最大サイズは50mmを超えなかなか良いカタチのクワガタだが、やはり最近大型のものは少ないそうである。標本は台湾松嵐 JUL. 1986採集。


                             fig5                                      fig6

fig5 Lucanus delavayi Fairmaire, 1887

中華人民共和国雲南省あたりに産する種で、大顎から頭部、前胸には微毛が生え、前バネと足は黄色味が強い。最大サイズは40mmを少し超える程度にしかならないが、大きいものは大顎が良く発達してカタチも良いミヤマ。そう少ない種とも思えないのだが、あまりこの種の標本は見かけず標本は割と高価。写真は雲南省昆明 AUG. 1992採集♂40mm。

fig6 Lucanus laetus Arrow, 1943

中華人民共和国、四川省、雲南省に産し有名な Lucanus parry を更に大型にしたような種で前バネの色合いは良く似ている。最大サイズは50mmを少し超える位だが大型個体は頭部と大顎が良く発達する。1990−1991年頃に L. szetschuanicus と一緒に沢山入ってくるまで両種とも日本には殆ど標本は無かった。標本のラベルは四川省楽山地区沙湾 JUL. 1991採集。

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