3 文化施設訪問

 


(1)プラハ

IMAGE_201.JPG - 36,770BYTES チェコの首都プラハは「百塔の町」と言われる。いたるところにゴシック、ルネサンス、バロックの各時代に造られた建物がそびえる。街全体が建物の博物館といわれるゆえんである。それらが調和して中世の雰囲気を漂わせている。街そのものが世界遺産に指定されているのである。

 特にプラハ城は圧巻で、プラハの街のどこからでも見えるフラッチャニの丘にその威容を現している。

 完成までに500年の歳月が流れたという聖ビート教会の塔が空に向かってそびえる様は、見る者を圧倒する。

IMAGE_202.JPG 街中にはブルタバ川(ドイツ語でモルダウ)がゆったりと流れる。ブルタバにかかる橋の中でも最も有名なカレル橋には30体の聖人像が立ち並ぶ。橋自体が彫刻の美術館の様相を呈している。14世紀カレル4世の時代に作られたという橋の上は歩行者天国になっており、ストリートミュージシャン(ひっそりとした)、マリオネットを繰る人(けっして道行く人を意識しない)、絵を売る芸術家の卵(いっさい商売っ気はない)など、観光客の人の波のなかに、生活が息づいている。

 旧市街の狭い路地を通り、旧市庁舎前の広場に足を踏み入れた瞬間、おもわず息を飲んだ。目の前の天文時計を見上げ、そしてティーン教会の2本の塔に目を移し、しばらくそこを動けなかった。ここは、今まで私の記憶の中にあるいかなる景観とも違う。美しいというには軽すぎる。壮麗、厳然・・。足元に目をやる。この石畳は血塗られた歴史を知っているのだろうか。歴史は人間の営みであり、紙に書かれた読み物ではないはず。周りを見渡す。さまざまな肌の色髪の色。人が流れていく。ほんとうに遠くに来ていることを実感し、心細くなった。

 新市街地区のバーツラフ広場近くには装甲車の影。テIMAGE_204.JPG - 34,944BYTESロの影IMAGE_203.JPG - 24,614BYTES響はまだいたるところの現実なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(2)カルロビバリ

 私たちの主滞在地であったカルロビバリは、ドイツ国IMAGE_205.JPG - 28,836BYTES境に近い、人口6万人程度の小さなまちである。カルロビバリとは「カレルの温泉」という意味である。カレル4世がこの地に狩りに来て鹿を追い森深く入っていくと、熱湯が噴出している場所を見出したという言い伝えがある。ここは古くから保養地として栄えた、ヨーロッパで最も有名な温泉地の一つなのである。

IMAGE_206.JPG - 13,317BYTES 日本と違うのは、温泉と言っても、浴用ではなく、飲む温泉である。テプラ川(暖かい川)沿いには、コロナーダと呼ばれる温泉施設がたくさんある。源泉を汲んだり、温泉水を飲みながら散策できるようにと作られれた建物がコロナーダである。カルロビバリには12の源泉があり、それぞれどのような効用があるか詳しく研究されており、医師の処方のもとIMAGE_207.JPG - 22,928BYTES数週間滞在して湯治をする人が多いと聞く。観光客は皆、鉄臭くて決しておいしくない温泉水を飲んでいる。

 カルロビバリでできるベヘロフカという薬草酒がある。日本の養命酒のようなものだがアルコール分が40度ほどある。

 学校訪問の際、まず初めには、ベヘロフカがグラスで配られ、ナスドラビー(健康に!)といいながら、みんなで一気に飲む。すぐに身体IMAGE_209.JPG - 15,615BYTESが温まり、初対面の外国人どうしは早くも打ち解けてしまう。

 現地の人は、カルロビバリには源泉が13あるという。13番目が最も健康によい。それがベヘロフカなのである。

 カルロビバリで最も由緒あるホテル、それはグランドIMAGE_208.JPG - 12,754BYTESホテルプップである。300年の伝統を誇るというその建物に足を踏み入れると、中世の時代へタイムスリップしたような錯覚に陥る。ホテルのコンサートホールで開かれた世界ボーカルコンクール最終日に招待されて出席した。まさにカルロビバリ著名人の社交の場という趣であった。

 

 

 

 

 


(3)パリ

 さて、3つ目の訪問地はパリである。 IMAGE_210.JPG - 7,061BYTES

 「パリは花の都と称されてきたが、今は光の都だと言ってよいぐらいだ」とガイドが説明する。夜、ライトアップされた建造物がまばゆい。車線のない広い道路を全く譲り合うということばを知らぬドライバーの繰る車が行き交う。夕方のラッシュには、四方から強引につっこんでくる交差点の車のヘッドライトがいやでも夜の街を明るくしている。

IMAGE_211.JPG - 13,281BYTES パリはとても1日では見ることができない。今回の訪問は、チェコから日本へ帰国する途中、シャルルドゴール空港を利用するための、限られた時間での滞在であったのが残念であった。

 チェコから空路パリへ入ったら雨だった。今年は紅葉が遅いという話であったが、マロニエの並木はきれいに色づいていた。

 パリは一体何だろう。産業革命の産物エッフェル塔。IMAGE_212.JPG - 26,470BYTESルーブルは想像を絶する建物。絵画、彫刻、古代シュメールから19世紀までのさまざまな美術品の数々。コンコルド広場に立つ塔はエジプトの石。象形文字ヒエログリフが刻まれた33世紀前の石。それはマリー・アントワネットがギロチンにかけられた場所。200年ががりで建てられたノートルダム寺院、カトリックの国フランスの象徴か。オルセー、印象派美術の宝庫。

 革命が起きた時、ベルサイユ宮殿は略奪にあい、荒れ果てる。ベルサイユは膨大な費用、労力をつぎ込み、フランスを代表する芸術家を総動員してできあがった気の遠くなるような創造物。しかし、後に、これを復興しようとした人たちは言う。これは確かに人々の金IMAGE_213.JPG - 11,202BYTESがつぎ込まれたのかもしれないが、ルイ14世が後の我々のために貯金してくれたものといえるかもしれない・・と。

 フランスにしろチェコにしろ、当たり前のことであるが、日本とは違う人種がいて、違う言語で話し、そして違う文化がある。

 出会ったことがない景色、とんでもない建物、世界に一つしかない美術品。

 文化とは歴史。生活の蓄積。ともかくも人間の営みの証。

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 研修が始まった日、日本からチェコへ向かう飛行機から、シベリアの茫々たる大地を見た。見渡す限りの白い凍てついた大地。飛んでも飛んでも変わらない風景。

 人が住んでいる形跡を探した。道路、集落、明かり。 IMAGE_215.JPG

 小さくて見出せないのか、そもそもないのか、ずいぶん時間をかけて見渡すが分からない。

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 人はちっぽけである。

 人は無力である。

 他のあらゆる生きものと同じように。

 そして地球上どこへ行っても人は生きている。

 

 地球の明かりは宇宙からでも見えるという。

 

 

 


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