低周波増幅器の実験(その1)
FETを使った増幅回路

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目次
低周波増幅回路の実験
低周波増幅器の回路図
低周波増幅器の部品
■低周波増幅器の実験
 □入力無信号時のFET端子電圧
 □低周波増幅器の電圧利得
 □スピーカーをつないでみる
 □負荷抵抗による出力電圧の変化



低周波増幅回路の実験

FETを使った低周波増幅回路を実験します。
FETは接合型のNチャネル、デプレッションモードである2SK192Aを使用します。
IDSSを実測すると5.2mAでした。

今回、動作点やドレイン電流に適したバイアス回路などややこしいことは最初抜きにして
取り合えず回路を組み立て実験してみます。
動作理論先行型でなく実験回路の電圧測定や波形を観測する中で、気付いた疑問点を
調べたりトラブル対策をしたりするのも電子回路独習の良い方法と思います。

回路はソース接地回路、バイアス回路は自己バイアス方式で書籍に
「実際の増幅器の一例」として 掲載されていた回路を実験に採用しました。
出典:「ハムのトランジスタ活用 丹羽 一夫 著 CQ出版社」

FET増幅回路の実験
 FETによる低周波増幅回路の実験



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低周波増幅器の回路図
出典:「ハムのトランジスタ活用」 丹羽 一夫 著/CQ出版社 (46p 第1-3-26図)



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低周波増幅器の部品
Q1のFETはオリジナル回路では2SK30A-Yですが手持ち部品の都合で
接合型のNチャネル、デプレッションモードである2SK192Aを使用しました。
FETのIDSSを実測すると5.2mAでした。

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入力無信号時のFET端子電圧
FETは接合型のNチャネル、デプレッションモードであるから
VGSが0Vならドレイン電流はIDSSだけ流れるはず。(IDSSの実測値は5.2mAでした。)

そしてバイアス回路はソース抵抗による自己バイアス回路であるから入力無信号時の
ドレイン電流は VGS−ID静特性上のつり合う点で安定するはずと思い測定しました。

FET端子電圧

Vcc Vs VD VGS
12.17V 1.172V 8.29V -1.159V

上記の実験結果からソース電流(ドレイン電流)は無信号時に1.17mA流れていること、そして
R2両端に発生するバイアス電圧によってドレイン電流がその値で安定していることが確認できました。

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低周波増幅器の電圧利得

実験回路にAFジェネレータを接続し1V/1KHzを入力した時のOut端子出力電圧は7.9Vでした。
このテストで実験する低周波増幅回路の電圧利得は7.9倍(18dB)であることが分かりました。

入出力の波形
電圧利得測定
 プローブ1:10
 (上)入力波形 1Vp-p
 (下)出力波形 7.9Vp-p
 周波数は1.0438kHz


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スピーカーをつないでみる
出力端子に直径5cm/0.2w 8Ωのスピーカーをつないでみましたが
かすかな音しか聞こえません。
シンクロスコープで出力波形を確認すると、電圧利得を測定した時のような
ハイレベルな出力が出ていません。
入力電圧よりもとても小さくなって増幅どころか減衰しています。

そう言えばこの低周波増幅器はスピーカーを接続する為に設計されているわけでは
ありません。
FETを使った増幅器の一例として解説本に掲載されていただけのことでした。
低周波増幅器と聞いて、スピーカーをつなげてみたくなって実験したものの結果は
蚊の泣くような音でした。

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負荷抵抗による出力電圧の変化
出力端子にスピーカーをつないでみた実験の結果、負荷抵抗の値によって
Out端子の出力電圧が相当に変わるだろう事が想像できました。

そこで出力端子に抵抗負荷を接続し抵抗値を変えて出力電圧の変化する様子を実験してみました。
抵抗値500Ωと1kΩについて実験した結果を下表に示します。

負荷抵抗 入力電圧 出力電圧 電圧利得
1kΩ 1V 1.94V 1.94倍
500Ω 1V 1.08V 1.08倍

このように500Ω負荷でゲインがほぼ1.0になってしまいました。
ですから8Ωのスピーカーを接続したのでは出力電圧が小さくなってしまうのは当然です。

スピーカーを接続した実験で、出力電圧が入力電圧よりもとても小さくなって
増幅どころか減衰していたことがこの実験で理解できました。

負荷抵抗1kΩ
負荷抵抗1kΩ
 プローブ1:10
 (上)入力波形 1Vp-p
 (下)出力波形 1.94Vp-p
 周波数は1.0435kHz



負荷抵抗500Ω
負荷抵抗500Ω
 プローブ1:10
 (上)入力波形 1Vp-p
 (下)出力波形 1.08Vp-p
 周波数は1.0435kHz



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