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治  療
2008年
がん患者のうつ病は,研修を受けたがん専門看護師による複合的な介入によって改善する
第13回日本緩和医療学会 症状緩和のための最新の技とその活用法を探る
2009年
脳腫瘍に伴う問題には早めの対応を 頭痛・てんかん様発作・せん妄
がん患者へのエリスロポエチン投与の是非を考える スイスで行われたメタ解析から
肺がん末期の中枢気道狭窄 テーパー型スパイラルZステントが有用
腹水をろ過、再び体内へ 改良型で目詰まり解消
アロマで緩和ケア 宝塚市立病院
精神腫瘍医が持つスキルの共有を サイコオンコロジストの介入環境づくりも−第22回日本サイコオンコロジー学会
2010年
第12回日本在宅医学会 皮下輸液は管理・安全面から全身状態の改善に有効
第107回日本内科学会 終末期がん患者への血液培養実施は慎重に行うべき
終末期患者への酸素吸入は室内気吸入と比べて息切れ改善に差がない オーストラリア,米国,英国共同のRCT
2011年
進行癌患者には早い段階で終末期医療について話す必要がある
末期大腸がんをいかに負担なく治療するか? その方法とは
胃ろう 終末期をどう迎えるか
「国会がん患者と家族の会」総会を開催
中央社会保険医療協議会 がん対策、放射線治療の充実と早期緩和ケアが柱
2012年
終末期胃ろう「治療差し控えも」…老年医学会
大きな転換期を迎えた日本の専門医制度 第49回日本癌治療学会
第14回日本アロマセラピー学会 アロマセラピーや漢方が統合医療,緩和医療に貢献
第30回日本認知症学会 パーキンソン病治療薬・ACE阻害薬で嚥下機能が向上
診断時からの緩和ケアを-初会合開催
続・時間の風景 胃ろうの是非について―高齢者の「自然な死」を取り戻すには
がん生存者のQOL改善 QOL低下につながる倦怠感を見過ごさないことが重要

がん患者のうつ病は,研修を受けたがん専門看護師による複合的な介入によって改善する
 がん患者が,抑うつや不安を持つことは一般的であるが,その一部はうつ病と診断されるレベルに達する場合も多い。しかし,がん患者のうつ病は,気付かれないまま見過ごされたり,治療されないまま経過することもしばしばである。

 一方,がん患者のうつ病治療についてのエビデンスは乏しく,有効な治療法についての研究はほとんどなされてこなかった。英国のStrongらは,がんセンターに通う患者を対象に,看護師が実施するうつ病への複合的な治療介入の効果を検証した。

 看護師による特別な介入によって,患者がうつ病であることを自覚し,対処技能を身に付け,医師とうつ病についてのコミュニケーションを図ることで,うつ病に対して適切な治療が施され,患者の抑うつ,不安,倦怠感の症状が軽減された。

 今回の研究では,通常治療においても担当医にうつ病であることが報告されており,その結果として,見過ごされていたうつ病に対する治療が開始された可能性がある。したがって,介入による効果は,実際の現場ではさらに高いかもしれない。

 本研究では,患者に対する特別な介入を,メンタルヘルスの専門家ではなく,がん専門看護師が実施している点は注目すべきである。がん診療にメンタルヘルスの専門家が常時かかわる環境を整備することは望ましいのかもしれないが,人的資源や医療経済的な観点からすると,実際にはそのためのハードルはかなり高い。

 むしろ,今回の研究で行われたように,がん診療に普段携わっているスタッフを訓練し,既存の医療資源を活用しながらうつ病治療の効果を複合的に高めていくことのほうが現実的であろう。こうしたモデルは,がん患者におけるうつ病治療のみならず,その他のあらゆる身体疾患に合併するうつ病治療にも適用できる可能性がある。

メディカルトリビューン 2008年7月10日
第13回日本緩和医療学会 症状緩和のための最新の技とその活用法を探る
 がんに伴う心身の苦痛に対する緩和医療の立ち遅れが指摘されている。静岡市で開かれた第13回日本緩和医療学会のワークショップ1「集学的オンコロジー:症状緩和における最新の技」では,緩和医療スタッフとして知っておきたい"最新の技"の概略が紹介された。

感染症対策 まず何が起こっているかを明らかにする努力を
 緩和医療を受ける患者に起こる感染症は悪性疾患などに合併するものが多く,市中感染とは様相が異なる。静岡県立静岡がんセンター感染症科の大曲貴夫部長は,緩和医療における感染症のうち特に対処に注意を要するものとしてカテーテル関連血流感染症,単純ヘルペスによる粘膜・皮膚感染症,C. difficile関連腸炎などを挙げ,その具体的な対処法を解説した。また同部長は,緩和医療における感染症にうまく対処するための方法としては,「まず,何が起こっているかを明らかにする努力が求められる」と述べた。

適切な診断と治療で症状が改善する症例は多い

 緩和医療の現場では,患者が突然,原因不明の発熱を起こすことが少なくない。大曲部長は「その原因として見落とされがちなものにカテーテル関連血流感染症がある」と言う。これはカテーテルの留置部位が中心静脈か末梢かにかかわらず発症する。発熱,悪寒戦慄だけで局所所見に乏しいことも多いが,逆に言えば,局所所見に乏しい発熱ではカテーテル感染症を疑うべきだと言える。おもな原因微生物としてはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などのグラム陽性菌,緑膿菌などのグラム陰性菌が挙げられる。診断は血液培養により確定する。治療はカテーテルの抜去が第一で,抗菌薬としてはバンコマイシンにセフェム系薬などを併用する。

 緩和医療の現場で発生する単純ヘルペス感染症には,免疫抑制やストレスの影響などから,きわめて重篤なものが多い。したがって緩和医療に従事する医師は,日ごろからこのことに留意し,そうした重篤なケースに遭遇しても沈着に対処することが求められる。

 緩和医療における院内発症の下痢の最大の原因はC. difficile腸炎である。診断はC. difficileトキシン検査によるが,これが陰性でもC. difficile腸炎を否定できない確率は高い。したがって,C. difficile腸炎を想定した診断的治療が容認されている。治療にはメトロニダゾールやバンコマイシンの内服が推奨される。

 同部長らは,これまでに緩和医療の現場から感染症科に寄せられたコンサルテーションの理由を分析し,緩和医療における感染症診療で何が問題となっているかを検討し,その成績について紹介した。

 それによると,合計105件のコンサルテーションのうち抗菌薬未使用例は53件,抗菌薬使用例は52件であった。抗菌薬未使用例のうち36件は「感染症かどうかわからない」というもので,17件は「適切な治療がわからない」というもの。抗菌薬使用例のうち43件は「治療したが改善しない」というもので,9件は「治療中に新たな問題が発生した」というものであった。つまり,コンサルテーションのうちのかなりの部分が,「何が起こっているのかわからない」という理由で占められていることになる。

 ちなみに,感染症科へのコンサルタント後の105件の症状の変化を見ると,64%に改善が認められた。すなわち,感染症と診断が付き,適切な治療を行えば,多くの症例で症状が改善することが示された。

 以上の成績を総括して,同部長は「緩和医療における感染症にうまく対処するためには,問題の臓器・微生物を同定する,あらかじめ傾向を知っておくなど感染症診療の基本ともいうべき努力がさらに求められる」と述べた。また,同部長は,感染症予防には院内感染対策も重要であると付け加えた。

メディカルトリビューン 2008年11月6日
脳腫瘍に伴う問題には早めの対応を 頭痛・てんかん様発作・せん妄
 脳腫瘍患者の多くでは根治的治療が存在せず,患者の余命は短いことが多い。ケルン大学緩和医療科のHeidrun Golla博士らは「脳腫瘍では頭蓋内という限られたスペースで脳が圧迫されるため,症状はきわめて重く,早い段階から緩和ケアの実施を検討すべきである」と発表した。

ステロイドの適応を定期的に確認

 原発性脳腫瘍または転移性脳腫瘍の患者では,頭痛,悪心,嘔吐,てんかん様発作,麻痺,感覚障害などの身体症状に加え,人格の変化,認知障害,意識障害,せん妄などの重い精神症状も発現する。

 身体症状については,脳腫瘍患者の約50%で緊張型頭痛様の頭痛が発現する。腫瘍の増殖,浮腫,または髄液の循環障害によって脳圧が上昇するにつれて痛みも増強する。腫瘍による脳浮腫は血管性浮腫であり,一般にステロイド薬(例 デキサメタゾン4mg/日)が奏効する。ただし,副作用リスクを伴うため慎重に投与し,適応については定期的に確認しなければならない。

 ステロイド投与後も頭痛が十分に軽減しなければ世界保健機関(WHO)が提唱する段階的方法に従って疼痛緩和を試みる。

 多くの脳腫瘍患者では,疾患の経過中にてんかん様発作を生じるが,腫瘍の増殖速度が緩やかなほうが急激に増殖する場合よりも,同発作の発現頻度は高くなる。

 発作が連続して発現する場合やてんかん重積症がある場合は同療法の適応となる。ジアゼパム,ロラゼパム,クロナゼパムの効果はほぼ同等だが,ロラゼパムのほうが効果の持続時間が長いため,重積症の治療には適している。

 ベンゾジアゼピン系薬を繰り返し投与しても十分な効果が得られない場合は,フェニトインまたはバルプロ酸の急速飽和を検討する。また,初めててんかん様発作が生じた脳腫瘍患者には,抗痙攣薬を予防的に投与する。

 脳腫瘍患者で高頻度に合併する精神疾患には,うつ病,不安,せん妄が挙げられる。せん妄に対する薬物療法ではベンゾジアゼピン系薬と抗精神病薬を併用する。後者における第一選択はハロペリドールである。

メディカルトリビューン 2009年4月23,30日
がん患者へのエリスロポエチン投与の是非を考える スイスで行われたメタ解析から
東札幌病院副院長・化学療法センター長 平山 泰生
私の考察:エリスロポエチン投与は利益とのバランスにおいて考慮すべき

 がん患者の貧血および倦怠感に対し,わが国では概ねHb 8g/dL以上を保つ程度に輸血が行われることが多いが,欧米ではその簡便性,安全性,臨床試験で裏付けされた倦怠感への効果によりHb 12g/dLを目標にエリスロポエチン製剤が投与されることが多い。

 Bohliusらは上記疑問に対し,53 のランダム化比較試験をメタ解析し,確かにエリスロポエチン投与で死亡率を引き上げていることを示した。

 対照群に対しエリスロポエチン投与群で,なぜ死亡率が高い結果になったかは不明であるし,化学療法を施行した患者で影響が少ない理由も不明である。

 各症例の死因を解析すればよいと思われるかもしれない。しかし,終末期がん患者の場合,急変したにせよゆっくりと全身状態が悪化したにせよ,死亡した場合は原因を特定する努力はせず「がんによる死亡」と診断するのが一般的である。この傾向は,わが国でも緩和ケア病棟で顕著であるが,実際の死因は感染症,心疾患(虚血性および不整脈),播腫性血管内凝固症候群による出血,各種血栓症などが多いと思われる。

 これらの病態を特定しても生存期間およびQOL改善につながることは稀であるので,私としても終末期がん患者に積極的に各種検査を行うことは避けるべきだと考える。

 このような背景から,エリスロポエチン投与による死亡率増加の原因は特定されていないが,エリスロポエチンによる腫瘍増殖や血栓症の増加などが推測されている。

 本研究の結果から,今後はHb 12g/dLを目標にエリスロポエチン投与を推奨することはできなくなったが,全生存率の悪化はわずかであることから,論文の結論にもあるように,エリスロポエチン投与は倦怠感の改善と利益とのバランスにおいて考慮することになろう。

 わが国においては倦怠感が強い貧血のがん患者には主として赤血球輸血をするという現状の対応のままでよいと思われる。

メディカルトリビューン 2009年5月19日
肺がん末期の中枢気道狭窄 テーパー型スパイラルZステントが有用
 進行肺がんなどで中枢気道狭窄を来し,重症の呼吸困難を呈した症例への対処として,気管支鏡を用いた気道ステント留置術が行われている。日本大学練馬光が丘病院内科の細川芳文教授は,テーパー型スパイラルZステント(TSZS)を挿入した25例の臨床成績を示し,この方法が肺がん末期の中枢気道狭窄例における緊急避難的な窒息回避だけでなく,QOLの改善にも有用であると報告した。

短時間で留置可能で,直ちに効果

 TSZSはスパイラル形状によって屈曲部への留置が可能であり,かつ径が先細りしたテーパー形状によって気管から主気管支にかけての留置が可能な金属ステントである。細川教授は,長い1個のTSZSを気管下部から左右いずれかの主気管支にかけて挿入した25例(男性17例,女性8例,平均年齢66.2歳,51〜88歳)について成績をまとめた。

 対象はいずれも酸素吸入を受け,強度の呼吸困難を呈して来院した患者で,原疾患は肺がん23例,食道がん(術後)1例,大腸がんの肺転移1例であった。

 ステント留置後にがん治療ができた症例は25例中10例のみで,化学療法のみが9例,化学療法と放射線療法が1例。以上から,末期の肺がん患者がおもな対象と言える。15例では気管から左右いずれかの主気管支にかけて1個のTSZSを挿入し,10例ではそのほかに対側主気管支にも短いスパイラルZステントを挿入して,λ型留置または人字型留置とした。

 結果として,13例で酸素吸入を中止でき,6例が減量,4例が継続または増加であった。呼吸困難度を表すHugh-Jones分類は,ステント挿入前に全例が最も重いV度以上であったが,挿入後は I 度9例,II度5例,IV度11例と改善が認められた。16例が退院し,9例は退院に至らなかったが,退院可能であっても患者本人の希望により入院を続けた例もあったという。23例が既に死亡しており,死因は悪液質9例,がん死3例,その両者10例,肺炎1例であった。生存日数は平均105.5日(7〜528日)。

 同教授はTSZSの長所として,(1)硬性気管支鏡や全身麻酔の必要がない(2)短時間で留置ができ,直ちに効果が見られる(3)湾曲が可能で,気管支側枝を閉塞しない(4)留置後に分泌物を頻回に吸引する必要がない―ことを挙げた。ただし,全例にマクロライドの少量長期投与を行っているという。

 一方,短所としては,(1)留置後に位置の修正ができない(してはいけない)(2)ステント内に再狭窄を来すことがある(3)抜去が難しい(抜去の必要のない例に適用する)―ことを指摘した。

 今回の25例ではTSZSの挿入・留置に伴う重大な合併症は全く見られなかったことから,同教授は「悪性疾患の終末期で気道狭窄を来した例に対する窒息回避,およびQOLの面から見た場合,TSZSは有用なairway stentと言える」と結論付けた。

メディカルトリビューン 2009年7月16日
腹水をろ過、再び体内へ 改良型で目詰まり解消
 がん性腹膜炎などのため、がん細胞が腹腔に広がり水がたまる難治性腹水の治療に、腹水を抜いてろ過し、栄養分や免疫成分は体に戻す「腹水ろ過濃縮再静注法」(CART)が注目されている。装置の目詰まりが多かった従来の方式を改良。患者は腹部の張りや息苦しさが改善した。「腹水は抜くと体が弱る」との考えが根強いが、開発者らは「抜いたら元気になる」と呼びかけている。

▽栄養も体外に

 難治性の腹水は、胃がんや卵巣がんなどによるがん性腹膜炎のほか肝硬変でも見られ、おなかがぱんぱんに膨れて息苦しくなったり食事が取れなくなったりする。

 水分や塩分の制限、利尿剤投与のほか、腹腔に針を刺し腹水を抜く治療が行われてきたが、効果は1週間程度と短い。防府消化器病センター (山口県防府市)研究所長の松崎圭祐医師は「栄養状態に関係するアルブミン、免疫に関係するグロブリンも一緒に捨ててしまうため、さらに腹水がたまりやすくなり、繰り返すたびに全身状態が急速に悪化する」と説明する。
 この欠点を補うのがCART。抜いた腹水を特殊な膜に通し、血球や、身体に有害ながん細胞、細菌などをろ過して除去する一方、アルブミンやグロブリンは回収し、約10分の1の量に濃縮して静脈から患者に戻す。1981年に保険も適用された。

▽外側から

 だがこの方法は「肝硬変なら問題ないが、がん性腹膜炎の腹水では、がん細胞や白血球などの細胞成分が多いため膜が目詰まりし、中止するケースも少なくなかった」と、松崎さん。

 松崎さんは2001年から医療機器メーカーと共同で改良に着手。合成高分子化合物のポリスルホンなどでできた中空糸膜のフィルターを使い、腹水を内側から外側に押し出してろ過する従来の方法を、外側から内側にろ過して詰まりにくくする方式に変えた。

 昨年夏時点で40人の患者に計130回実施。1回に抜く腹水は3千〜7千ミリリットルで、最も多かった肝硬変・肝がんの男性患者には、3年3カ月の間に28回治療を行った。アルブミンを補う血液製剤は一度も使わずに栄養状態は徐々に改善、実施間隔も長くなった。

 松崎さんは「がんの腹水の場合、モルヒネなど効果の高い鎮痛薬でも腹部の張った感じが軽減されない場合が多いが、CARTなら呼吸困難なども含めた自覚症状はすみやかに改善し、苦痛を取り除ける」と説明。

 患者は食欲が増して行動範囲も広がる。副作用として軽い発熱などが見られる場合があるが、ショックなどの重い症状はこれまでにないという。

▽積極治療

 松崎さんは昨年、多くの医療機関にある輸液ポンプなどを使った手軽なCARTシステムを開発した。治療前の準備が10分ほどで済み、腹水処理の効率も高く、膜の目詰まりを除去する機能で粘液の多い卵巣がんなどにも使えるようになった。

 現在、東京大のグループに協力して進めているのが、胃がんによるがん性腹膜炎患者の腹腔内に抗がん剤を投与する治療と、CARTとの併用。これまで、抗がん剤投与前に抜いた腹水はすべて捨てていたが「新開発のCARTを組み合わせ、効率よく栄養、免疫成分を回収して血管内に戻せば、より治療効果が高まるのでは」と松崎さん。

 今年4月にはCARTの普及などを目的にした研究会も設立された。松崎さんは「従来は緩和ケアの一環としてほそぼそ行われることが多かったCARTを、がん性腹膜炎に対する積極的な治療と位置づけ、標準治療の脇役に育てたい」と話している。

共同医療健康ニュース 2009年7月21日
アロマで緩和ケア 宝塚市立病院
 宝塚市立病院(宝塚市小浜4丁目)が、がん患者の緩和ケアとしてアロマの香りを使った芳香浴やマッサージに取り組んでいる。院内の外来受付や各病棟にはアロマランプも登場。オレンジやラベンダーなどの香りにあふれ、患者からは「病院独特のにおいと違ってうれしい」と好評だ。

 アロマに取り組むのは、医師や薬剤師、看護師ら約20人でつくる「アロマセラピー委員会」。全国の公立病院では初めて設置されたという正式な委員会だ。

 宝塚市立病院がアロマセラピーに注目し始めたのは06年。がん患者のストレスや苦痛を和らげるため、緩和ケアチームの「代替補完療法委員」として活動を始めたのがはじまりだった。

 その後、職員を対象に手足のマッサージの勉強会を重ね、08年1月にがん患者やその家族を対象にアロママッサージを導入。その年の7月には、各病棟や外来計15カ所でアロマランプを使った芳香浴を始めた。

 病床でマッサージを受けるがん患者のなかには眠ってしまう人も多く、一定のリラックス効果が表れているという。来年3月には、宝塚市医師会の医師も参加して「宝塚アロマセラピー協議会」を設立する予定だ。松田良信委員長は「今後は全病棟で緩和ケアの一環としてマッサージを導入していきたい」と話している。

アサヒ・コム 2009年09月21日
精神腫瘍医が持つスキルの共有を サイコオンコロジストの介入環境づくりも−第22回日本サイコオンコロジー学会
 第22回日本サイコオンコロジー学会総会が1、2の両日、広島県のメルパルクHIROSHIMAで開かれた。総会テーマは「がん医療における心のケアの拡がり」。がん患者の増加傾向が続く中で、精神的なケアを担うサイコオンコロジストの役割についての議論が行われた。

  学会2日目のシンポジウム「緩和ケアチームにおけるサイコオンコロジストの役割」では、腫瘍内科医、緩和ケア病棟医などが、それぞれの立場から「精神腫瘍医」に求める機能、連携の在り方などについての見解を述べた。

求められる精神腫瘍医によるアドバイス

 国立がんセンター中央病院肝胆膵内科の森実千種氏は腫瘍内科医の立場から、精神腫瘍医に求められる役割について解説した。難治がん患者と向き合う際には、精神的側面のサポートの重要性を痛感する場面が多いと指摘。精神腫瘍医が自然に介入できる環境づくりや、精神腫瘍医が持つコミュニケーションスキルを学ぶ重要性を強調した。

 森実氏が精神腫瘍医に求める点として挙げたのは、@精神科受診に対する心理的拒絶感の軽減Aコミュニケーションスキル向上のための精神腫瘍医の視点から見たアドバイスB精神腫瘍医同士の連携や精神腫瘍医の地域偏在の是正C患者の家族への精神的サポート―の4点。

 精神科的介入については、偏見や抵抗感を持つ患者が多いことに触れ、抵抗感を持たずに受診できる存在として認知してもらう必要があるとした。その1つの取り組みとして、精神科を受診することの負のイメージを軽減することを意識した「膵がん教室」を紹介した。参加者からは「精神科の先生にも相談できることが心強いと感じた」「誤った情報もある中で、正しい知識を強化するためにも教室が役立っている」などの声が寄せられ、精神科医も受診しやすい環境づくりの一環として機能しはじめているという。

 また、腫瘍内科医は、患者にとって悪い情報を告知せざるを得ないケースが多いことも指摘した。ただ、「厳しい中でいかに本人の価値観、判断力を保たせるか。見放された感情を抱かせないようにすることが重要」と述べ、精神腫瘍医の視点からのアドバイスなどを受けながら、コミュニケーションスキルを磨く必要があるとした。

 また、大学病院やがん専門病院では精神腫瘍科同士の連携が可能であるとしたが、在宅ケア、ホスピスへの転院などの段階では「精神腫瘍医の介入が物理的に継続できない場合もある」と強調した。転院時には精神腫瘍医の医療連携が求められるほか、精神腫瘍医の地域偏在を解決するための精神腫瘍医の育成も課題に挙げた。患者家族のケアの重要性も高まっているとし、「患者の治療中だけでなく、死後も精神的サポートが必要」と述べた。

精神腫瘍医「日々のコンサルに応じることが活動の礎」

 名古屋市立大病院緩和ケア部の奥山徹氏は精神腫瘍医の立場から講演し、自らの施設の状況を紹介しながら精神腫瘍医の在り方について解説した。がん対策基本法制定以降、「多くの病院で精神腫瘍医ががん患者の心のケアを提供するようになってきている」との認識を表明。求められる役割としては、患者や家族の精神疾患、心理プロセスへの支援など「さまざまな機能があるが、日々のコンサルテーションに丁寧に対応することがすべての活動のベース」と述べ、医療チームや、患者・家族のニーズやゴールを把握することを課題に挙げた。

 また、愛知県では「精神腫瘍学研修」を展開し、県内サイコオンコロジストの均てん化を進めていることを報告した。緩和ケアチームや、緩和ケア病棟を持つ病院の「精神科医」「心療内科医」を対象として半日のワークショップで議論するもの。研修会ではメーリングリストを作成するなど交流を深める場になっており、今後はこうしたネットワークをいかに生かしていくかが課題になるとした。

 緩和ケア病棟の特徴として、@うつ病、せん妄などの精神疾患の頻度が高いA苦痛緩和の困難症例が多くスタッフが無力感を抱くケースが多いB死亡退院が多く遺族ケアが課題―などにも言及。その上で「患者の安寧を最優先するなど、病棟固有の価値観に配慮すべき」とした。

緩和ケア病棟 精神腫瘍医のフォロー率が約2倍

 国立がんセンター東病院緩和医療科の松本禎久氏は、緩和ケア病棟医の立場から、精神腫瘍医との連携の現状について報告した。緩和ケア病棟では、一般病棟に比べて精神腫瘍医のフォロー率が約2倍の18.4%で、せん妄や大うつ病の診断が多く、「症状緩和に難渋するケース」が精神腫瘍医に紹介される傾向があるとした。

 緩和医療医と、精神腫瘍医との連携を強める仕組みとしては、週2回の定例カンファレンスを運用していることも報告した。症例検討会、勉強会といったやり取りを通じて、「お互いに話しやすい関係性ができている」と述べた。また、緩和ケア病棟内での教育にも精神腫瘍医に関与してもらう必要性も強調した。

「こころ」の苦痛軽減に配慮したリハビリを 代償的リハビリの有効性も

 静岡県立静岡がんセンターの田尻寿子氏は2日のシンポジウムで、「リハビリスタッフからのがん患者の精神心理的側面へのアプローチ」をテーマに講演した。がんリハビリの目的として、疾病や治療で生じた制限の中で「身体的、社会的、心理的、職業的に最大限の機能を発揮させるべく援助すること」と指摘。喪失感や心の苦痛の軽減など、「『こころ』に配慮したリハビリ、『こころ』に影響を及ぼす事柄にアプローチすることが望まれる」との見方を示した。

 身体的喪失感などに対するアプローチの事例なども紹介した。例えば、脳腫瘍による上下肢運動、感覚麻痺などの機能障害など、病状悪化で終末期医療での緩和医療にシフトが求められるケースに触れ「この時期に機能改善目的のリハビリを行うことは、結果として動作ができなくなる現実に直面させてしまう可能性がある」との見方を表明。対処法としては、失われた機能自体の回復を目指すのではなく、ほかのものを活用して欠けている機能を補うという“代償的リハビリテーション”の必要性を挙げた。

 心理的側面に配慮したリハビリを行う際には、それぞれの患者の「社会的背景、社会的役割、仕事や趣味など活動歴に配慮し、作業活動を選択する」ことの重要性も指摘した。患者の要望や意志を尊重するほか、うつ病やせん妄などの症状があるケースでは「精神、心理的側面の正確な判断」が求められるとした。

m3.com 2009年11月17日
第12回日本在宅医学会
皮下輸液は管理・安全面から全身状態の改善に有効
 通常,輸液は経静脈的に行われるが,在宅療養患者では静脈からの投与が困難な場合がある。一方,皮下輸液は比較的手技が簡便で,家族でも管理が可能といった利点がある。医療法人鳥伝白川会鎌倉常盤クリニック(神奈川県)の今井一登氏らは,在宅療養患者に対して皮下輸液を施行した症例を検討。「皮下輸液により脱水など全身状態の改善が見られ,管理および安全面を考慮すると在宅医療において有効な治療手段である」と述べた。

がん末期患者では看取りの準備が可能に

 対象は在宅で皮下輸液を施行した25例(男性12例,女性13例,平均年齢85.9歳)。基礎疾患はがん末期患者(肺,胃,大腸,膵,脳腫瘍,皮膚,喉頭)が13例,非がん患者(高血圧,脳梗塞,パーキンソン病,慢性閉塞性肺疾患,肝硬変,慢性心不全)が12例であった。

 輸液を施行したおもな理由は,(1)経口摂取量低下による脱水の補正(2)意識障害による経口摂取困難(3)肺炎またはイレウスの治療(4)鎮静目的(5)家族の希望―などであった。また,皮下輸液を選択した理由は,(1)循環動態が不安定(2)静脈確保が困難(3)自己または事故抜針の危険性が高い(4)家族主導の点滴管理―などであった。

 皮下輸液施行数は年々上昇し,昨年は11例に施行されていた。皮下輸液の投与日数は平均11.6日,投与量は平均607.9mL/日であった。

 死亡は16例,改善は9例であり,これをがん末期患者と非がん患者とで比較すると,がん末期患者では死亡10例,改善3例であったのに対し,非がん患者ではそれぞれ6例,6例と50%に改善が認められた。投与日数や投与量にがん末期患者と非がん患者で明らかな差は認められなかった。

 皮下輸液を中止した理由は,(1)全身状態の改善(2)死亡(3)局所の吸収障害による浮腫(4)刺入部の皮膚発赤(5)家族の希望―であった。

 皮下輸液の利点としては,(1)非がん患者では有効(50%が改善)(2)水分補正が緩徐なため循環動態への影響が少ない(3)がん末期患者では本人や家族が死を迎えるまでの気持の整理,心の準備をする時間ができる―などが考えられた。一方,欠点としては浮腫の増加や刺入部に皮膚発赤が認められることがあり,この場合は中止する必要がある。なお,重度の感染症は認められなかった。

 今井氏は「皮下輸液を施行することで,在宅終末期の患者や家族に死を迎えるまでの時間をつくることができた」と述べた。

メディカルトリビューン 2010年4月1日

第107回日本内科学会 終末期がん患者への血液培養実施は慎重に行うべき
 緩和医療を受ける終末期がん患者への抗菌薬投与は自覚症状を緩和させるとの報告があるが,度重なる検査や点滴で患者の苦痛が増す可能性が懸念される。亀田総合病院(千葉県)緩和ケア科の廣橋猛氏は,一般病院における同患者への感染症治療の現状を把握し,血液培養の必要性を中心に検討。死期が近いと予測される場合は,血液培養の適応は慎重に判断すべきとの見方を示した。

死亡直前では症状緩和に寄与しない

 対象は,2009年1〜9月に同院緩和ケア科に依頼のあった院内死亡例のうち,化学療法などの積極的治療終了後に経静脈的抗菌薬投与を行った78 例(男性39例,女性39例)。感染源,抗菌薬の種類,血液培養の有無および結果,症状改善の有無について後方視的に解析した。

 その結果,37例(47.7%),43回(重複あり)で抗菌薬投与開始が観察された。感染源の内訳は,呼吸器系37.2%,消化器系32.6%,尿路14%,皮膚軟部組織など16.2%。多くは緑膿菌をカバーする広域な抗菌薬が用いられていた。

 抗菌薬投与開始エピソードのうち33回(76.7%)で血液培養が実施されていた。Palliative Prognostic Indexでは予後3週間以内を予測できることから,廣橋氏は死亡日の3週間以前(19回)と3週間以内(14回)に分けて検討。その結果,後者のうち4 回は死亡3日以内に血液培養が行われており,感受性試験の結果が判明するころに死亡していた。また,血液培養なしでは症状緩和が得られないケースは見られなかった。

 さらに,3週間以前群では7割以上で自覚症状の緩和が得られたのに対し,3週間以内群では14例中5例にとどまった。この5例の血液培養は死亡2 週間以前に行われており,死亡直前の血液培養は症状改善に寄与しない可能性が示された。また,残り9例の経過は悪化の一途をたどっていたという。

 同氏は「適切な抗菌薬投与により,終末期がん患者でも自覚症状の緩和が期待できる。臨床現場では,経験的な抗菌薬の選択はやむをえないが,死期が近いと予測される場合には血液培養の施行は慎重に判断するべきだ」と結論。内科と緩和ケア間で議論される課題は多く,これらの検討を続けていくとした。

メディカルトリビューン 2010年5月20日

終末期患者への酸素吸入は室内気吸入と比べて息切れ改善に差がない
オーストラリア,米国,英国共同のRCT
 終末期の患者に対し,息切れの改善目的でしばしば使用される酸素吸入。米デューク大学のAmy P. Abernethy氏らは,終末期患者に鼻カニューレによる酸素吸入を行っても室内気吸入と比較して息切れ改善に差がないことをLancet9月4日オンライン版に報告した。

NRスケールで呼吸を評価

 Abernethy氏らによると緩和ケアの70%の医師が息切れを伴う患者に酸素吸入を行っているという。しかし,酸素吸入導入についての明らかなエビデンスはないことから,同氏らは3か国共同で二重盲検ランダム化比較試験(RCT)を行い,終末期患者への酸素吸入の効果を検討した。

 対象は,オーストラリア,米国,英国の計9施設の肺疾患,緩和ケア,がん,プライマリケアなどの外来診療科に通院中の生存期間1か月と判定された終末期患者239例〔18歳以上,動脈血酸素分圧(PaO2)>7.3kPa,Medical Research Council(MRC)dyspneaスケール3以上〕。貧血(ヘモグロビン<100g/L),高炭酸血症(PaO2>6.7kPa),認知機能障害〔Mini-Mental State Examination(MMSE)スコア<24〕,喫煙歴あり,直近の7日間で呼吸器または心イベント発症は除外した。

 これらの患者を治療により状態を安定させた後,鼻カニューレにより2L/分の酸素を少なくとも15時間/日吸入する酸素吸入群(120例,男性 76例,平均年齢73歳)と,鼻カニューレで室内気を吸入させる室内気吸入群(119例,男性71例,平均年齢74歳)に分け,7日間,Numeric Rating(NR)スケールを用いて朝夕の息切れの程度を10段階で評価した。

 なお,慢性閉塞性肺疾患(COPD),初期肺がんは酸素吸入群でそれぞれ59%,15%,室内気吸入群ではそれぞれ68%,13%に見られた。

QOL改善,副作用発現は同等

 ベースラインから6日後の計7日間評価できたのは,酸素吸入群120例中112例(93%),室内気吸入群119例中99例(83%)であった。これらの患者における朝の平均NRスケールは,ベースラインに比べて酸素吸入群では4.5から0.9低下(相対変化率−20%,95%CI−1.3〜−0.5),室内気吸入群では4.6から0.7低下(同−15%,−1.2〜−0.2)したが,両群間に有意差は見られなかった(P=0.504)。一方,夕方の平均NRスケールは,酸素吸入群で4.7から0.3低下し(同−7%,−0.7〜0.1),室内気吸入群では 4.7から0.5低下(同−11%,−0.9〜−0.21)したが,同様に両群間に有意差は認められなかった(P=0.554)。

 両群におけるQOL改善および副作用発現に差はなかったが,極度の眠気は酸素吸入群10%,室内気吸入群13%,鼻の炎症はそれぞれ2%,6%見られた。酸素吸入群では鼻からの厄介な出血が1例発生していた。

 試験終了後,全例に酸素吸入について質問したところ,43例(18%)が酸素吸入を望まないと回答。そのほかに,介入しても恩恵が得られないと回答したのが63例(26%),試験終了後に酸素吸入を希望し実際に導入したのが41例(17%),酸素吸入を希望したが実際には導入しなかったのが74例(31%),残りの18例(8%)は無回答であった。

 カニューレによる鼻への酸素吸入は,室内気吸入と比べて息切れの改善効果に差がなかったことから,Abernethy氏らは患者の予後を考慮し負担が少ない治療を行うべきであると述べている。

メディカルトリビューン 2010年9月9日


進行癌患者には早い段階で終末期医療について話す必要がある
 「進行癌患者は、早い時期に終末期医療の選択肢について医師と話し合うべきである」とする米国臨床腫瘍学会の新しい方針声明が発表された。声明の著者である米デューク大学(ノースカロライナ州)メディカルセンター准教授Jeffrey M. Peppercorn博士は、「癌治療において万能な方法はないが、患者に権利を与え、疾患に直接的に対処する治療、症状管理を目的とした緩和療法、臨床試験への参加などの選択肢があることを知ってもらう必要がある」と指摘している。

 現在、あらゆる治療選択肢について公平な話し合いをしている癌患者は10人中4人に満たないと推定されており、患者の死の直前(数日前から数週間前)になって初めて話し合いが行われるケースもあるという。しかし、このような話はもっと早い時期に行うべきであるという。また、直接的な疾患治療に加えて支持・緩和ケアを行うことによって、生活の質(QOL)が向上するだけでなく、余命が延長することを示すエビデンス(科学的根拠)もあると同氏は付け加えている。

 今回の声明では主に以下のことが推奨されている:

* 進行癌治療におけるすべての段階において、生活の質を優先する必要がある。
* 最初に進行癌と診断した時点で、医師はすぐに患者の予後および治療選択肢について患者と話し合う必要がある。
* 患者は、臨床試験に参加する機会を与えられるべきである。

 Peppercorn氏は「患者が治療から何を得たいと望んでいるか、何を恐れているかを医師が理解することが重要である」と述べている。また、医師は不確実な点も含めて患者の予後について明らかにする必要がある。この種の踏み込んだ話し合いをするには時間が障壁となることがあるが、「一度に提供する情報量および詳細については、個別的に対処する必要がある」と同氏は指摘している。また、今回の声明では、緩和ケアも含めて進行癌の治療計画の話し合いに要する費用を保険適用の対象とすることを推奨している。

 米モンテフィオーレ-アインシュタインMontefiore-Einstein癌治療センター(ニューヨーク)のSteven Libutti博士は「患者や家族がこのような話をする準備ができているかどうかを見極めることが重要である」と述べるとともに、「多くの医師は治療を諦めることが難しく、最初に現実を受け入れるのは患者自身である場合が多い」と指摘している。

 Peppercorn氏は「進行癌患者に対し、医師からこのような率直な話がない場合は、患者の方から尋ねるべきである」と述べている。

NIKKEI NET いきいき健康 2011年2月2日

末期大腸がんをいかに負担なく治療するか? その方法とは
 原発の切除困難な大腸がんの腸狭窄には、従来人工肛門の造設が行なわれる。しかし、全身麻酔による開腹手術が必要なため、特に末期がんの患者には心身の負担が大きい。そこで狭窄部分を通すために、大腸にステントを留置する治療が導入された。開腹手術をしないので患者の負担が少なく、数日で食事ができるなど、QOL(生活の質)も改善できる緩和ケアの一つとして期待されている。
 
 大腸がんやその他のがんのため、大腸が圧迫され狭窄が起こると腹痛や圧迫感などで、身体的、精神的苦痛を感じる。狭窄の切除が不可能な場合、従来は人工肛門を造設することが多い。しかし、人工肛門は全身麻酔による開腹手術をする上に、使用に慣れる必要があるなど、特に末期がん患者にとっては心身ともに負担が大きい。そこで近年、大腸の中にステントを留置することで狭窄を改善する治療が実施されるようになっている。

 2005年から2010年までに大腸ステントを留置した治療結果を発表した、市立豊中病院(大阪府豊中市)下部消化管外科の畑泰司医師に話を聞いた。

「今回は根治術が不可能な、大腸に閉塞をきたしたがん患者(胃がんや子宮がんが原因の場合も含む)19名に対して、大腸ステントを留置しました。ステントは異物なので長期間置くと弊害もあるため、余命半年で狭窄解除の手術が困難、もしくは人工肛門よりステントを強く希望する患者を対象としています。留置すると狭窄が改善され、楽になるだけでなく、食事もできるようになり、退院して家で過ごせるようになった人もいます」

NEWSポストセブン 2011年2月19日

胃ろう 終末期をどう迎えるか
 年をとって体が弱ると、口から食べられなくなり、やがて静かに息を引き取る−。かつてはこうした老衰死が珍しくなかった。

 いまは食べられなくなっても命をつなぐ手段がある。その代表格が「胃瘻(ろう)」である。おなかの壁に埋め込んだ管から直接、胃に流動食を入れる。

 終末期を迎えた高齢者に胃瘻をつくるべきか否かをめぐり、医療現場の葛藤は深い。日本老年医学会の調査では、認知症の末期で食事を取れなくなった人に対し、胃瘻や点滴で栄養と水分を補給するかどうかの決断が難しい−と医師のおよそ9割が考えている。

 必要性は個々の患者の状態によって異なり、一概に論ずることはできない。ただ、安易に胃瘻をつくることは、終末期にある人を苦しめることになりかねない。

 終末期の胃瘻について、緩やかなルールが求められる。さまざまな角度から論議を深めたい。

 胃瘻は有効性の高い栄養補給の方法だ。実際、体力を回復して口からものを食べられるようになり、閉じる患者もいる。

 問題は、回復が見込めず、本人の意思確認もできないケースだ。医師から提案されて、悩む家族が少なくない。

 老衰の場合、人工的な栄養の投与は無理な延命につながり、安らかな最期を奪うことになりかねない。一方、胃瘻をつくらなければ、手を尽くさなかったと後で悔やむかもしれない。どちらを選んでも迷いは消えない。

 本人の意思が置き去りにされるケースもある。退院後に施設や在宅での食事介助が楽になるよう、胃瘻をつくる実態がある。

 外す判断も難しい。いまの刑法では、治療の差し控えや中止は医師が罪に問われる可能性がある。法的、倫理的課題を整理し、一定の社会的合意を図りたい。

 特別養護老人ホームでみとりを重ねてきた医師、石飛幸三さんの意見が参考になる。著書「『平穏死』のすすめ」で、胃瘻をつける際の注意点を挙げている。

 本人の利益が第一であり、口から食べられないという判定が科学的になされること。医師が胃瘻のメリットとデメリットの両面を本人と家族に説明した上で、自発的な同意を得ることが必要だ。

 寿命が尽きるなら、なるべく苦しまずに自然な最期を迎えたい−。そう望む人は多いだろう。

 口からものを食べられなくなったら、どうするか。本人の意思が出発点になる。元気なうちから考え、家族と話し合っておきたい。

信毎web 2011年3月4日

「国会がん患者と家族の会」総会を開催
 超党派の国会議員で組織する議連、「国会がん患者と家族の会」は8月4日、総会を開催し、2012年度の予算概算要求などについて議論した。

 代表世話人を務める自民党の尾辻秀久氏は、総会の冒頭、「がん対策はギアを入れ替える時に来ている。これまではローギアでやってきた。これはこれまで何もしなかったわけではない。がん対策基本法ができ、患者も交えた、がん対策推進協議会も発足、がん対策情報センターなども誕生した。こうした動きがあったが、いよいよ一段と高速のギアに入れなければならない。今日はその作戦会議」と挨拶。

 総会には、様々な患者会が出席。厚生労働省のがん対策推進協議会委員で、NPO 法人グループ・ネクサス理事長の天野慎介氏は、がん患者の身体的痛みや精神的な痛みの軽減には一定の取り組みが行われてきたものの、患者の経済支援と就労支援は取り残された領域であると指摘。「金の切れ目が命の切れ目」にならないよう、高額療養費制度の負担上限額を所得に応じて軽減するほか、「がん患者の働く権利擁護制度」の確立などを求めた。

 厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会委員で、卵巣がん体験者の会スマイリー代表の片木美穂氏は、未承認や適応外などで多くの患者が薬を使えず、困っている現状を紹介し、ドラッグ・ラグ解消を要望。さらに、抗がん剤の副作用被害救済制度について厚労省の検討会で現在議論されていることを踏まえ、「救済後も、患者が、医薬品を開発した製薬企業や治療に当たった医師を提訴する権利は残る。それにより、医療が萎縮することがないよう、慎重に制度設計する必要がある」と求めた。

 そのほか、「シーズからベッドサイドまで、シームレスながん研究体制の確立」、「相談支援センターの充実などによる、情報提供・相談体制の充実」、「小児がん拠点病院や、小児がん情報センターの整備」などの要望が上がった。

 総会では、厚労省、文部科学省、経済産業省の三省が、2010年度の予算と執行状況や2011年度予算を説明。厚労省の場合、2010年度のがん対策予算額316億円に対し、執行額は314億円である点を尾辻氏は指摘。都道府県の事業に対する、国の補助的な性格の予算であることから、「ただでさえ少ない予算をなぜすべて執行しないのか。国が一生懸命になれば、都道府県も動く」とし、同省の対応を促す場面もあった。

 超党派議連、「国会がん患者と家族の会」の8月4日の総会には、20人弱の国会議員、約30人の議員秘書が出席した。同議連は約55人の国会議員から成る。

「今の患者の要望は、氷山の一角」、門田氏

 総会では、がん対策推進協議会での検討状況も紹介された。

 同協議会会長で、日本医学会副会長の門田守人氏は、がん対策をめぐる現状認識を、「患者の要望は、がん難民、がんの専門医不足のほか、医療不信、医療格差などの問題として顕在化しているが、表面に出ているのは氷山の一角。これらを本質的に解決するためには、水の底に沈んでいる様々な問題も解決していく必要がある」と説明。

 諸問題解決には、まず長期的視野に立った基本計画を立て、中・短期的計画を策定していく必要性を指摘。特に重要課題として、(1)教育改革(国民への病気と健康、がん、予防、早期診断や死生観などの教育)、(2)医療提供体制の改革(施設完結型から地域完結型への移行など)、(3)医療データ登録制度(がん登録)の確立(がん患者登録から全国民の登録制度にし、検診からがんの治療成績まで、全国規模で登録)の3点を挙げた。

 同協議会の三つの専門委員会からは、予算概算要求の要望に当たって、重視すべき分野が紹介された。

◆がん研究専門委員会
 (1)がん臨床試験統括支援機構の設立、(2)アカデミア創薬の支援強化と創薬支援機構の設立、(3)がんバイオバンクの設立とゲノム・エピゲノム解析拠点の整備

◆緩和ケア専門委員会
 (1)診療体制と連携体制、(2)療養に関する相談支援、(3)教育研修、(4)地域緩和ケアに関する質的な評価

◆小児がん専門委員会
 (1)小児がん情報センターの設置、(2)小児がん拠点病院の設置、(3)小児がん用薬剤の企業知見の推進 

m3.com 2011年8月4日

中央社会保険医療協議会
がん対策、放射線治療の充実と早期緩和ケアが柱
 厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会(会長:森田朗・東京大学大学院法学政治学研究科教授)が10月27日開かれ、がん対策、生活習慣病対策、感染症対策をテーマに議論(資料は、厚労省のホームページに掲載)。

 がん対策では、放射線治療と緩和ケアが焦点。厚労省は、放射線治療については、患者数が伸びに比して放射線治療医が少ないことから、放射線照射のたびに放射線治療医が診察する「毎回診察」のほかに、「包括的な診察」のパターンも想定し、放射線治療医が包括的指示の下、チームで診療に当たる案を提唱。これにより、例えば、放射線治療医の診察は週1回以上などに減らすなど、負担を軽減する。

 緩和ケアは、末期ではなく診断早期から実施するとともに、身体だけでなく精神面でのケアもいかに行うかが課題。また、緩和ケア病棟も、看取りだけでなく、外来や在宅への円滑な移行を支援する取り組みの評価を目指す。そのほか、医療用麻薬には14日の処方制限があるが、30日に延長することも検討課題。

 生活習慣病対策の中での重点課題が、糖尿病。透析導入の原疾患において糖尿病性腎症が4割以上を占める現状を踏まえ、外来で、医師や看護師、保健師など多職種が連携して重点的に医学管理を行う例を診療報酬上で評価する方針。

 たばこ対策は、屋内全面禁煙を実施している病院は約64%にとどまっているため、生活習慣病患者、小児・呼吸器疾患患者などの指導管理を行う病院については、原則として屋内全面禁煙を進めるための方策を取る。

 感染症対策のメーンは、結核。諸外国と比較すると、日本は結核の「中まん延国」。問題の一つが、多剤耐性が再発例で多い点であるため、DOTS(直接監視下短期化学療法)を外来で推進する。また結核では退院が長期化していることから、退院基準に関する規定を定めるよう進めるほか、結核以外の合併症を持つ患者への対応体制を整備する。

糖尿病のチームでの医学管理を評価

 国立がん研究センター理事長の嘉山孝正氏は、日本の放射線治療の遅れを認め、「放射線治療医だけが患者を診ているわけはなく、他科の医師も診ている。放射線治療医が毎日見なければいけないという基準を外さないといけない」と指摘。医療用麻薬の処方期間の延長も支持。そのほか、がん登録推進へのインセンティブを設定するほか、医学物理士の評価なども求めた。

 日本経済団体連合会社会保障委員会医療改革部会部会長代理の北村光一氏は、「在宅療養の中でいかに緩和ケアを進めるか、そのシステムをどう考え、作り上げていくべきかがよく見えない。この点についても検討してもらいたい」とコメント。他の多くの委員も、緩和ケアの推進を評価した。

 日本対がん協会常務理事の関原健夫氏は、緩和ケア病棟入院までの待機時間は、がん診療連携拠点病院の約35%は2週間以上というデータについて、「もっと深刻。緩和ケアという選択肢に辿りつくまでに時間がかかっており、緩和ケア病棟入院に至るまでの時間はこれより何倍も長い」と指摘、さらに、「早期からの緩和ケアを実施するなら、より多くの緩和ケア病棟が必要」とコメント。これに対し、嘉山氏は、褥瘡ケアなどと同様に、「緩和ケア病棟」がなくても、緩和ケアチームを作り、各病棟を回る体制が可能だとした。

 そのほか、糖尿病への医学的管理やたばこ対策、結核対策についても、様々な議論が出たが、基本的には委員の支持が得られた。特に糖尿病対策については、チーム医療の重要性が強調された。

m3.com 2011年10月26日

終末期胃ろう「治療差し控えも」…老年医学会
 日本老年医学会(理事長・大内尉義(やすよし)東大教授)は28日、高齢者の終末期における胃ろうなどの人工的水分・栄養補給について、「治療の差し控えや撤退も選択肢」との見解を示した。

 終末期医療に対する同学会の基本的な考え方を示す「立場表明」の改訂版に盛り込まれ、同日の理事会で承認された。

 「立場表明」は2001年に策定されたが、その後の実態に即したものにするため、10年ぶりに改訂された。近年、口から食べられない高齢者に胃に管をつ ないで栄養を送る胃ろうが普及。病後の体力回復などに効果を上げる反面、欧米では一般的でない、認知症末期の寝たきり患者などにも広く装着され、その是非 が議論になっている。

 改訂版では、胃ろうなどの経管栄養や人工呼吸器の装着に対する見解が初めて盛り込まれた。高齢者に最善の医療を保障する観点からも、「患者本人の尊厳を 損なったり、苦痛を増大させたりする可能性があるときには、治療の差し控えや撤退も選択肢」とし、「患者の意思をより明確にするために、事前指示書などの 導入も検討すべき」とした。

YOMIURI ONLINE 2012年1月29日

大きな転換期を迎えた日本の専門医制度 第49回日本癌治療学会
 日本の専門医制度が大きく変わろうとしている。学会単位の専門医認定から,中立的第三者機関による認定へ転換されようとしているためだ。名古屋市で開か れた第49回日本癌治療学会の特別企画シンポジウム「日本の専門医制度:大きく変わるコンセプトと新たな方向性」では,わが国の専門医制度の歩みと計画さ れている新制度の概要,がん治療領域の専門医制度の現状が報告された。

 日本専門医制評価・認定機構の専門医制度あり方委員会と第三者機関検討委員会の委員長を務めた司会のがん研究会有明病院(東京都)・門田守人院長は,わが国の専門医制度のこれまでの経緯を紹介し,「専門分化」から「統合」への転換の必要性を指摘した。

 わが国の専門医制度は1962年の麻酔指導医制度から始まり,その後,多くの学会が専門医制度を導入した。81年に,学会ごとの専門医制度の整合性を図 る目的で学会認定医制協議会(学認協)が発足。86年には学認協,日本医学会,日本医師会による1回目の三者懇談会が開かれ,個々の学会ではなく,この三 者によって専門医を認定する方向への模索が始まった。

 三者の考え方の違いから時間はかかったが,1993年に基本的領域診療科13学会の専門医の三者認定が合意に達した。また,99年には日本学術会議から,専門医制度の整備と第三者的な専門医資格認定機構の設置が提言された。

緩和医療専門医制度 新制度への対応は学会で検討

 日本緩和医療学会理事長で大阪大学大学院緩和医療学の恒藤暁教授は,「緩和医療専門医制度」の現状について概説した。

 日本緩和医療学会の設立は1996年。がんや他の治癒困難な疾患の全経過において人々のQOLの向上を目指し,緩和医療を発展させるための学際的かつ学術的研究を促進し,その実践と教育を通して社会に貢献することを目的としている。

 米国臨床腫瘍学会(ASCO)と米国立がん研究所(NCI)が開発した緩和ケアの系統的教育プログラム(EPEC-O)を日本語版化し,2005年から このプログラムに基づくトレーナーズワークショップを開催した。また,2007年からはがん診療に携わる医師を対象とした緩和ケア研修会を全国で開催。こ れまでに約2万6,000人が受講したという。

 2009年に暫定指導医と研修施設の認定を行い,2010年から緩和医療専門医の認定試験を開始した。現在,暫定指導医は619人,認定研修施設は445施設,緩和医療専門医は24人となっている。

 緩和医療専門医の要件として,専門的知識と技術に基づく臨床実践・コンサルテーション活動・教育指導と,専門的知識に基づく臨床研究が挙げられている。 また,研修カリキュラムには,(1)症状マネジメント(2)腫瘍学(3)心理社会的側面(4)自身およびスタッフの心理的ケア(5)スピリチュアルな側面 (6)倫理的側面(7)チームワークとマネジメント(8)研究と教育〜の大きく8つの柱がある。

 現在,専門医用の教科書を作成中で,今後,専門医養成のためのセミナー,専門医の生涯学習セミナーを計画していく予定という。

 新しい専門医制度について,同教授は「どのように対応していくか,学会で検討中である」と述べた。

メディカルトリビューン 2012年2月2日

第14回日本アロマセラピー学会
アロマセラピーや漢方が統合医療,緩和医療に貢献
 今後,資源を有効利用し,疾病を予防するには統合医療が必要となる。東京都で開かれた第14回日本アロマセラピー学会(会長=東京警察病院整形外科・柴 伸昌部長)のシンポジウム「統合医療へのアプローチ」(座長=昭和大学第一解剖学教室・塩田清二教授,大阪大学大学院生体機能補完医学講座・伊藤壽記教 授)では,アロマセラピーは健康・美容やがん患者のQOL改善で,漢方はがん治療で,麻薬はがん性疼痛治療で統合医療や緩和医療に貢献すると報告された。

〜エコ医療におけるアロマセラピー〜セルフケアで健康・美容を達成
〜緩和ケアにおけるアロマセラピー〜がん患者のQOLを改善
〜がん治療〜西洋医学+漢方の統合医療確立が急務
〜がん性疼痛と緩和医療〜疼痛存在下では麻薬への精神依存が抑制

〜エコ医療におけるアロマセラピー〜
セルフケアで健康・美容を達成

 日本統合医療学会の渥美和彦理事長は,エコ医療におけるアロマセラピーの役割について検討し,今後の健康,長寿,美容は病気の予防とセルフケアにより達成される時代になるが,アロマセラピーは健康・美容面で貢献するとの見解を示した。

医師中心から患者中心の医療へ

 現在,さまざまな面で東西文明が衝突・融合しつつある。また,世界的な資源枯渇による有効利用・配分見直しが必要であり,ゲノム診断や再生医療の発達で 医療は治療の時代から予防の時代に入りつつある。これらに対応する医療は必然的に統合医療になる,と渥美理事長は指摘した。

 西洋医学は情報学的,統計学的であり,数十万人のデータを集め理論的に結論を出すことで診断・治療を行うが,個別的例外に対して答えを出せない。このよ うな個人の医療を扱うには伝統医学を含む相補・代替医療(CAM)が有効であり,両者を統合することで患者中心の医療を目指すのが統合医療である。

 統合医療の定義について同理事長は,(1)患者中心の医療(2)身体・精神(心理),社会(環境),霊性(魂)を含めた全人的医療(3)治療だけでなく 疾病予防,健康維持,長寿(抗加齢)のための医療〜の3つを挙げ,「これまでの医療は医師中心の医療だったが,今後は患者中心の医療に変えていかなければ ならない」と強調した。

 さらに同理事長は,東日本大震災ではライフラインが寸断されて従来の西洋医学を行えなくなった結果,インフラをあまり必要としない漢方,鍼灸,ヨガ, マッサージ,アロマセラピーなどのエコ医療が役立ち,被災者を癒したと評価。また東日本大震災後に(1)エネルギーを消費しないエコ医療へ(2)治療中心 から予防・健康中心へ(3)自分の健康は自分で守るセルフケアへ〜変化したと指摘した。

 最後に,同理事長は「今後の健康,長寿,美容は疾病予防とセルフケアにより達成されるが,単なる長寿でなく,健康で美しい長寿でなければならない。特に健康・美容面ではアロマセラピーが大きく貢献するだろう」と締めくくった。

〜緩和ケアにおけるアロマセラピー〜
がん患者のQOLを改善


 病院や患者自宅への訪問アロマセラピーを行うメディカルアロマ&リフレTori(神奈川県)代表でナースセラピストの所澤いづみ氏は,アロマセラピーと緩和ケアについて自身の経験を基に検討し,アロマセラピーはがん患者のQOLを改善できる療法の1つと述べた。

患者が最も安楽な姿勢を心がける

 ホスピスや緩和ケア病棟では現在,ボランティアのアロマセラピストが定期的に施術を行っているが,常勤のアロマセラピストがいる施設は少ない。病院看護 師がアロマセラピーの講習会で勉強し,患者に施術している施設も増えているが,アロマオイル購入の問題などであまり普及していない。

 これらの現状を踏まえて所澤氏は,緩和ケアでのアロマトリートメントの要点として(1)自分ががんになったときに何をしてほしいかを考える(2)患者と 家族の話をよく聞く(3)患者の痛みを少しでも理解しようという気持ちを持つ(4)心を込めて気持ちよさを与える施術をする(5)心身のリラックスと症状 緩和に導く〜などを挙げた。また,緩和ケアでのアロマトリートメントでは,患者が最も安楽な体位で施術することが重要であり,その姿勢が本当に楽かどうか を確認する必要があるとした。

 アロマトリートメントの効果には(1)腹部の施術と足のマッサージによる腹水の改善(2)弱い下剤と腹部の施術による便秘の解消(3)アロママッサージによる高度浮腫および日常生活動作(ADL)の改善 などがある。

 緩和ケアとしてのアロマトリートメントを行う際の基本姿勢としては,(1)施術者の精神的安定(2)患者の動きや言動を読み取り,心を込めた施術を行う (3)その人らしい生き方のお手伝いをする姿勢(4)家族の話も傾聴し,その気持ちを理解する姿勢(5)人生の終末にかかわる意味を感じ,暗くならず明る さとユーモアを忘れない(6)チーム医療でサポートする などが必要である。

 最後に同氏は,アロマセラピーは,2002年に世界保健機関(WHO)から発表された緩和ケアの定義である「QOLを改善しようとするアプローチ」の1つにつながると結んだ。

〜がん治療〜
西洋医学+漢方の統合医療確立が急務


 がん研有明病院(東京都)消化器センター内科の星野惠津夫部長は,同院に漢方サポート外来を開設し,多数の進行がん患者に長年漢方治療を行ってきた。同 部長は「今後20年以内に,がんに対する西洋医学と漢方による統合医療を確立することが,わが国のがん医療にとって必須」と強調した。

「がん証」改善に有効な補剤

 がんは全身疾患であるため,心身全体を調整できる漢方が役立つ。星野部長が2006年春に開設した漢方サポート外来の目的は,漢方薬によるがん患者の (1)諸症状の緩和(2)元気回復とQOL向上(3)副作用軽減による計画通りのがん治療の遂行(4)延命効果と抗腫瘍効果〜などの検討であった。

 同部長は,進行がん患者が呈する基本病態を「がん証」と呼んでいる。がん患者は,がん自体による苦痛に加え,治療による副作用や後遺症,さらに免疫細胞から放出されるサイトカインの影響によって,気力・体力が低下し元気がない。

 がん証に有効な漢方薬は「補剤」であり,補中益気湯,十全大補湯,人参養栄湯の三大補剤を患者の状態(証)に応じて使い分ける。また,ほぼ全例に滞った 血行を改善する「駆お血剤」や,生来の生命エネルギーを蓄える「腎」を補う「補腎剤」が併用される。前者には桂枝茯苓丸,後者には牛車腎気丸などがある。

 同部長はこれまでに,放射線皮膚炎に対する紫雲膏,大腸がん肝転移例の術後肝不全に対する「茵ちん蒿湯+五苓散」,末梢神経障害に対する補腎剤,乳がん のホルモン療法によるホットフラッシュに対する「柴胡剤+駆お血剤」,高度進行がんへの抗がん薬と漢方薬の併用などが著効した症例を経験した。

 最後に,「がん患者を治療する医師は,患者に緩和ケアを勧めるだけでなく,現代のがん治療に漢方を導入すれば,がんに対する新たな統合医学が生まれる」と結論した。

〜がん性疼痛と緩和医療〜
疼痛存在下では麻薬への精神依存が抑制


 星薬科大学薬品毒性学教室の鈴木勉教授は,がん性疼痛のメカニズムと緩和医療について考察。「わが国では麻薬性鎮痛薬(麻薬)に対する誤解・偏見が強いが,疼痛存在下では精神依存は起こらず,便秘,悪心・嘔吐,眠気も十分対処可能」とした。

麻薬使用量は韓国よりも低い

 WHOは緩和ケアを「治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患を持つ患者に対して行われる積極的で全人的なケア」としている。

 また,下山らの分類ではがん性疼痛をその原因から(1)がん自体が原因の疼痛(2)がん治療に関連した疼痛(3)全身衰弱に関連した疼痛(褥瘡,便秘など)(4)がん自体にも治療にも関係がない疼痛(筋肉痛など)〜の4つに分けている。

 WHOのがん性疼痛治療の考え方では,非麻薬(アスピリンなど),弱麻薬(コデインなど),強麻薬(モルヒネなど)を痛みの強さに応じて3段階に使い分 け(WHO三段階除痛ラダー),疼痛の評価によっては当初からの麻薬使用も推奨しているが,わが国では麻薬に対する誤解が根強い,と鈴木教授は述べた。ま た,各国の麻薬使用量を見ると,日本は韓国よりも低く,将来は英国程度の使用量を目安にすべきと指摘した。

 同教授らは炎症性および神経障害性疼痛モデルを用いて麻薬の精神依存性を検討した結果,いずれの場合も疼痛存在下では精神依存が抑制された。さらに,動 物での検討でモルヒネの鎮痛用量を1とした場合,それより低い用量でも悪心・嘔吐,便秘は起こるが,眠気は2.6倍,呼吸抑制は10.4倍以上の用量でな いと起こらなかった。「麻薬の3大副作用の便秘,悪心・嘔吐,眠気のうち便秘には下剤を用い,悪心・嘔吐は1,2週間で耐性ができる。また,眠気は早い時 期に耐性ができるので用量調節により,ほとんどは乗り切れる」と述べた。

メディカルトリビューン 2012年2月16日

第30回日本認知症学会
パーキンソン病治療薬・ACE阻害薬で嚥下機能が向上
 アルツハイマー病(AD)を代表とする変性性認知症では,終末期に嚥下障害やこれに起因する誤嚥性肺炎が重要な問題となる。群馬大学保健学研究科リハビ リテーション学講座の山口晴保教授は,終末期でも経口摂取できる期間をできるだけ延ばすために,薬物療法で嚥下機能を高める方法を検討。パーキンソン病 (PD)治療薬・ACE阻害薬で嚥下機能が向上できると報告した。

終末期の経管栄養を回避

 認知症の終末期に,経皮的内視鏡的胃瘻造設術(PEG)などの経管栄養への移行をできるだけ回避するためには,誤嚥の予防と食欲の増進を図る必要があ る。山口教授は,終末期の認知症患者に,嚥下機能に深く関与する神経伝達物質サブスタンスP(SP)を増やす効果のある薬剤を用いて,その有効性を検証し た。

 具体的には,発症して10年以上経過した認知症終末期で発語・表情がなくなり,食物を口の中にため込む,むせるなどの約20例に対し,(1)SPの分泌 を高めるアマンタジン(〜150mg)やL-DOPA製剤(〜300mg)(2)SPの分解を防ぐACE阻害薬(3)グレリン分泌で胃排出促進・食欲増進 作用を示す六君子湯〜を適宜組み合わせて投与したところ,半数以上で嚥下機能が向上してむせ込みが減少しただけでなく,笑顔や表情が戻る,1〜2語程度の 発語など,情動や言語面での改善効果も見られたという。

 同教授は「終末期の安易な経管栄養移行は予防すべきである。嚥下機能を強化する薬剤だけでなく,嚥下リハビリテーションや好物をソフト食,ミキサー食など食べやすい形で提供することも大切だ」と強調した。

メディカルトリビューン 2012年3月1日

診断時からの緩和ケアを-初会合開催
 がん対策推進基本計画を受けて、緩和ケアに関する具体的施策を議論するための「緩和ケア推進検討会」の初会合が25日に開かれた。会合では、癌診断時か ら緩和ケアを提供することの重要性が、複数の委員から指摘された。議論のスケジュールでは、短期的な施策については来年度予算案に反映させ、緩和ケアチー ムの配置や教育など中長期的な課題は、診療報酬や拠点病院のあり方などを見据えて議論をすることが確認された。座長には花岡一雄氏(JR東京総合病院名誉 院長)が選出された。

 癌患者とその家族ができる限り質の高い生活を送るためには、診断時からの緩和ケア提供や、診断、治療、在宅医療の各場面での切れ目ない緩和ケア実施が求 められる。一方で日本では未だ、疼痛緩和に用いられる医療用麻薬の消費量は少なく、国民のみならず医療関係者の間でも、緩和ケアに対する正しい理解が進ん でいないのが現状だ。

 こうした背景を受けて検討会では今後の論点として、▽診療体制▽診療の質▽教育体制--を切り口に議論を進めることが確認された。診療体制では緩和ケア へのアクセスの改善や情報提供のあり方、緩和ケアチームなど各職種の適正配置や連携について議論する。診療の質では、▽患者の心情への配慮▽診療への緩和 ケアの組み入れ方▽身体的苦痛緩和のための薬剤使用▽精神的苦痛を含めた苦痛緩和--などが盛り込まれた。

 ディスカッションでは、診療側、患者代表双方の委員から「癌の診断時からの緩和ケア提供の必要性」が強調された。これに対してがん対策・健康増進課の林 昇甫課長補佐も「診断時および診断プロセスの段階から、いかに患者負担を軽減するかは、がん対策基本法の立法精神にも含まれるキーワードだ。ぜひそこを汲 んで議論してほしい」と応じた。

 加賀谷肇委員(横浜市南部病院薬剤部長)は「在宅医療における医療用麻薬の適正使用を考えると、ぜひとも保険薬局を巻き込んだ連携のあり方を議論に加えてほしい」と要請した。

 議論全体のスケジュールに関し事務局は、「今年度中に実施できる提案はどんどん提案してほしい」と要望し、次年度予算に反映させられる短期的な議論と、2年後の診療報酬や今後の教育など中長期的に取り組む施策と分けて議論を進めることが確認された。

 次回以降の会議では、1議題3回での完結をメドにヒアリングなどを実施し、具体的施策の提言につなげていく。

m3.com 2012年4月27日

続・時間の風景
胃ろうの是非について―高齢者の「自然な死」を取り戻すには―
佐藤 順 神奈川県同胞援護会衣笠診療所(横須賀市)所長/元神奈川県立循環器呼吸器病センター所長

 私は長年,神奈川県立病院で心臓血管外科医として勤務し,定年退職後,特別養護老人ホームや老人保健施設などの老人福祉施設で,責任者として高齢者の健 康管理に携わってきました。老人施設で超高齢者の死に間近に接するようになって分かったのは,不自然な死に方をしている高齢者が少なくないということでし た。

 施設では高齢者が老衰で死にそうになったとき,看取ることはせず,ただちに病院へ送ります。そうすると病院では「食べられない病人」として扱われ,あら ゆる手だてを使って命をとりとめようとします。医師は年齢に関係なく少しでも長く生かすのが義務だと考えているからです。

 しかも近年,「胃ろう」という「食べられない病人を治療する」手軽な方法が開発されました。おかげで医療の現場では「食べられなくなっているから,胃ろうをしましょう」と,いとも簡単に胃ろうの造設が勧められているのです。そこに本人の意思の介在はほんの僅かです。

 ここで問題は2つあります。ひとつは,高齢者の「老衰死」とはどういうものか,「自然死」とはどういうものか,医療従事者でさえよく分かっていないとい うことです。今ひとつは,ひとたび胃ろうを造設すると中止できないということです。問題は深刻だと思います。高齢者が病気ではなく老衰で亡くなるとは,だ んだん食べられなくなって,枯れるように死んでいくことです。その自然な死を迎えようとしているときに,胃ろうを造設するとどうなるか。寝たきりで発語が なく,手足が硬縮し植物状態となっても,胃腸が丈夫であれば生かされ続けることになるのです。

 フランスに長く滞在していた私の弟が,フランスの医師からこんな台詞を聞きました。「老人医療の基本は,本人が自力で食事を嚥下できなくなったら,医師の仕事はその時点で終わり。あとは牧師の仕事です」。

 そもそも胃ろうが初めて臨床に応用されたのは1979年。アメリカでの神経疾患による嚥下障害の子供が対象でした。現在日本では,多くが食べられない終 末期の高齢者の延命のために使われています。そうした現状に対して,PEG(胃ろう)を開発した小児外科医のガウダラー医師は,適応を顧みない高齢者への 過剰施行という,PEGの開発当初は意図しなかった実態を憂えているといいます。現在,胃ろうの患者は40万から50万人にものぼるといわれています。

 果たして高齢者本人は,胃ろうによる延命を望んでいるのでしょうか。東京都健康長寿医療センターの外来高齢者562名を対象に行なった調査があります(1999年)。

 認知症が進行し,食事の摂取困難,寝たきり,自分の意思を表明できない状態に陥ったことを想定した場合,胃ろうを希望するかどうかを質問しました。結果は,胃ろうの希望者が2.7%,経鼻胃管は6%,点滴は3.9%,何もしないが最も多く42%でした。

 しかし現実的には,胃ろうが延命処置として施行されているという報告です。また一方,その調査のため参加してもらったPEG造設をしている医師30名 に,自分が患者の立場なら胃ろうでの延命を望むかという質問に対し,21名は否定的な回答でした。認知症末期は,日本人を含めた多くの研究者が,経管栄養 法の適応でないと述べています。

 PEGの良い適応は,脳血管障害や軽度の認知症で,嚥下障害が生じたものの意識状態が悪くない症例や,頭頸部の外傷で一時期口から食べることができない症例だと思います。

 医療の目的は,本来,患者がよりよく生きるために役立つものでなければなりません。この胃ろうという生命維持の技術も,患者の「生活の質」(QOL)を高める上で役立つものでなければ,使うことが正当化されないと思います。

 問題は,胃ろうの手術をした医師たちの多くが,胃ろうを造設されたお年寄りのみじめな末路を詳しくは知らないことではないでしょうか。人間は誰しも,最 後まで人として意味のある人生を送りたいと願うものです。しかし現状では,本人も家族も望まない肉体だけの延命を,誰も止めることができません。

 今年の1月,日本老年医学会が,「高齢者の終末期には,胃ろう造設を含む経管栄養などは慎重に検討されるべきであり,治療の差し控えや治療からの撤退 (すなわち中止)も選択肢として考慮する必要がある」としました。急がれなければならないのは,胃ろうをする・しないを決める新しい基準を作ることや,患 者の意識がもう戻らないと分かった時点で,胃ろうを中止する法的な基準を決めることではないでしょうか。

メディカルトリビューン 2012年8月23,30日

がん生存者のQOL改善
QOL低下につながる倦怠感を見過ごさないことが重要
 現在,ドイツのがん生存者は320万人に上る。ドイツがん研究センター(ハイデルベルク)のVolker Arndt博士は「がんの予後が改善したことから,今後,がん生存者の数はさらに増えることが予測される。こうしたがん生存者の60%は65歳以上の高齢 者が占めているが,長期にわたりQOLが低いことが問題となっている」とドイツがん学会の第30回会議で報告した。

社会復帰は依然困難

 がん生存者が直面するのは,がんそのものやがんの治療に直接関連する問題だけではない。それよりも深刻なのは,生命に関わる慢性の疾患を抱えていることから来る不安で,これはしばしばうつ病や認知機能の低下につながる。

 社会復帰も大きな問題となってくる。1年後に再就労していた患者は約半数にすぎず,50歳以上の患者では3分の1にとどまる。

 ただし,オランダで行われた調査では,再就労の状況はがんの種類によりかなり異なることが示されている。例えば,1年後に再就労していた患者の割合は,皮膚または生殖器のがんでは最大約80%であるのに対し,血液のがんや肺がんでは極めて低かった。

 また,ドイツ地域がん登録協会(GEKID)がザールラント州に居住する乳がん患者を対象に診断後10年間のQOLを調査したVERDI研究では,乳が ん患者のQOLは全体的には健康人に近いものの,中には社会生活機能や日常動作,感情的機能,認知機能が著しく低下しているケースも見られた。

 QOLを低下させる極めて大きな要因として倦怠感が挙げられるが,Arndt博士は「倦怠感については,客観的に評価する尺度がないため見過ごされることが多い」と指摘。その他,睡眠障害,食欲不振,疼痛,呼吸困難,胃腸障害なども長期間続くと患者に悪影響を及ぼす。

がん発症が自分自身を見つめ直すきっかけになる場合も

 その一方で,Arndt博士は「発病をきっかけに,自分自身を見つめ直す患者も少なくない」と述べた。これは外傷後成長(Posttraumatic growth;PTG)として知られており,心的外傷をもたらす経験による苦悩から,自己形成や他者との関係,人生に対する考え方にポジティブな変化が起 こることがあるというもの。同博士は「長期のがん生存者のQOLについては,まだ不明な点が非常に多い。がん患者のアフターケアを本質的に改善していくに は,がん生存者に質問するだけでは不十分で,この分野での研究を強化していく必要がある」と強調した。

 ロベルト・コッホ研究所(ベルリン)のBenjamin Barnes博士によると,ザールラント州,ハンブルク市,ミュンスター市で収集されたがん登録データの解析の結果,乳がん患者の5年生存率は約80%で あることが判明している。しかし,これら乳がん生存者の死亡リスクは同年代の健康人と比べて,長期にわたり高いことが分かっている。一方,結腸がんも治癒 したり長期治療が奏効する可能性が高いが,同がん生存者の死亡リスクは,診断から8〜10年後でも健康人とほぼ同等であるという。

 また,慢性骨髄性白血病患者の生存率も診断直後は著しく低下するものの,数年経過すると健康人とほぼ変わらなくなることが示唆されている。ただし,慢性リンパ性白血病の場合は,健康人と比べ,がん生存者で死亡リスクが明らかに高いままであるという。

メディカルトリビューン 2012年11月22,29日