広葉樹(白) 

          

 ホ−ム > 医学トピックス > バックナンバ−メニュ− > 2016年1月〜2016年12月



2016年1月 文献タイトル
年1回の血液検査で卵巣がんによる死亡を20%減らせる可能性 スクリーニングプログラム実施への展望
双子のがんリスク、片方発病で上昇 大規模調査
糖尿病予備軍でがんリスクが上昇 多目的コホート研究より
消化管バリウム造影は消える どうなる?10年後、20年後
アスピリン常用、前立腺癌死抑制【米国臨床腫瘍学会】 前立腺がん診断後の進行も抑制
2016年の新規癌発症、癌死予測を米国癌協会が報告
40代のマンモ検診に結論【米国癌協会】 マンモ検診、推奨年齢の相違も学会評価
2016年2月 文献タイトル
多くの高齢者が不要な前立腺がん・乳がん検診を受けている 余命10年未満にもかかわらず受診する人が15%超
がん、抗がん剤や手術が寿命を縮める? 「何も治療しない」が正しい場合も?
がんは死の宣告ではない
便潜血検査は大腸がんの検出に有効 内視鏡検査と選べるようにすれば受診率を向上できる?
がんの有無はDNA、血液1滴で分かる時代
がん治療を受けて長生きする人はどんな人? がん患者73人を対象に検証
抗癌剤をビフィズス菌に内包 シンバイオ−帝京平成大、共同研究の開発を開始
非小細胞肺癌患者にワクチン投与 東大など、医師主導で共同治験
がん細胞だけ狙い撃ちする治療法 副作用少なく、実現性も高い
乳がん予防は高校生時の食事から 1日10グラムの食物繊維を
他のがん治療にも効果期待 膵がんの「ナノナイフ治療」
「患者参加型医療」を促進 愛知のがん医療機関、タブレットで患者が症状を自己管理
ランニングでがん細胞の増殖を抑制できるかもしれない
がん治療後の生存期間が長い患者の特徴は? リハビリによって自立して生活している人
がん発症と人工芝に使われるゴムチップの関連性
がん治療で不安に思うこと、「費用」「副作用」を抑えた1位は?
コカ・コーラでがん治療薬の効果が向上する? PPI併用時のエルロチニブの吸収率を改善
がん死亡率改善度1位 なぜ広島県の人は死ななくなったのか
2016年3月 文献タイトル
米国で乳房切除術を選択する女性が増加 2005〜2013年で36%増加
がん治療装置「中性子」の活用準備進む 日本が世界をリードできる分野
癌細胞死滅と癌免疫向上に同時成功 千葉大がDGKα阻害化合物を発見
がんになりやすいが死亡しにくい?! 積極的な人は不思議なパワーを持つ
女性の死亡者数が最も多い「大腸がん」リスクを高めるNG習慣
ランニング 新発見!走るとがん細胞が縮小する アドレナリン分泌でみなぎる「戦闘力」
1型糖尿病でがんリスクは高まるのか? がん種により異なると判明
タバコだけじゃない! 死亡者数1位「肺がん」リスクを高めるNG習慣3つ
低用量アスピリンの服用で一部のがんリスクが低減 特に大腸・消化管がんで強い効果
大腸がんの「化学予防」に糖尿病治療薬が有用な可能性 横浜市立大の研究グループが発表
大腸がんリスクを低減する6つの方法 特に減量と身体活動が重要な役割
乳癌患者の妊娠出産手引きを公開 医療情報サービス(Minds)、適切な情報提供のあり方を解説
メラノーマ7割超で異常なほくろ認めず【米国癌協会】 メラノーマは「ほくろの数が少ない」ことも判明
飲酒で顔赤くなる人、毎日飲むと「がん発生率」急増…赤くならない人も危険、どうすべき?
2016年4月 文献タイトル
健康的な生活習慣で「がん」は本当に防げるのか? 30年も研究した結果
白色の光でがん患者の疲労改善=米臨床試験
肥満が子宮がん増加に関連か=英研究
夜の間食で乳がん再発リスク上昇 夜の絶食時間が13時間未満だとリスクが36%高い
妻に愛されている男性は大腸内視鏡検査の受診率が高い? 一方、女性では結婚状態による差みられず
知っておきたい、がんになりやすい4つの原因 日本人とがんについて
1日2杯以上のコーヒーで腸がんを50%も防げることが明らかに
がんを防ぐために摂りたい果物 美白効果などの効果も
癌免疫の次世代療法2017年治験へ 三重大、ワクチンなど組み合わせ
血糖管理と癌のエビデンス「不十分」 日本糖尿病学会・日本癌学会が合同報告書第2報を公表
2016年5月 文献タイトル
夏に急上昇する「がんリスク」を予防する旬の食品4つ
がんになっても生き残るための方法 まず第1に
有名人の両乳房切除術、患者の治療選択にも影響か 報道の偏りもみられる
潜血+癌DNAの便検査で精検受診9割超【米国癌学会】 医療保険DBの後ろ向き解析による“リアル”の成績
「がん治療と仕事両立」民間調査 勤務先を変えた人の4割が非正規に
くるみの摂取で結腸がんリスク要因が抑制できる?
10代で果物をたくさん食べると乳がんリスクが低下 1日3皿分の摂取で25%減
アスピリンのゲノム医療で癌予防を J-CAPP Study II、7000人目指し登録開始
運動で13種類のがんのリスクが低減 早歩き、テニス、ジョギング、水泳などで効果
2016年6月 文献タイトル
大腸内視鏡検査の前日の絶食は不要? 少量の低残渣食のほうが適している可能性も
全世界のがん治療薬費用、20年には1500億ドル超に
余命12カ月宣告。大腸がんの”ステージ4”から328日で劇的に寛解した がんサバイバーが実践したシンプルな「7つの習慣」とは?
「携帯電話で脳腫瘍?」研究結果に米専門家ら疑問 電波に曝露した群のほうが寿命が長いことなどを指摘
検索ワードでがんの兆候がわかることをMicrosoftが発見
脳腫瘍に対するウイルス療法、早期試験で有望性を確認 再発性膠芽腫患者で生存延長
8割以上が手術不可能な膵がん 新薬で可能に
尿で癌早期発見、検査キット実用化急ぐ 日立製作所−住商ファーマ、健常者と癌患者の尿検体識別技術を開発
コーヒーはがんの原因にならないことを世界保健機関が発表 ただし熱すぎる飲み物はがんの原因になる
歯周病が膵臓がんに関係? 2つの口内細菌保持者のがん発生率が高い
腫瘍DNAの変異を予測、薬剤耐性への個別化医療に有用である可能性
がん検出率95%!人工知能を用いてがん細胞を特定する方法を米科学者が発明
「クレソン」って何だか地味な野菜 実はがん予防に効果ありそう
歯磨きががん予防になるかも?頭頚部がんとの関連を調査 2万人のデータの解析から
2016年7月 文献タイトル
がんの最新治療方法!水素療法は効果アリ?ナシ?
ブサカワネズミががんから人類を救う
乳房MRIの撮影時の姿勢が精度に影響 伏臥位により腫瘍位置が変化する可能性
寄生虫が救世主!? 成功率95%のがん検査方法とは?
心臓の保護、がん予防にも?コーヒーのもつ意外な効果
尿を調べればがんがわかる? 尿でがんの早期発見をめざす新検査
本当は手術しないほうがいい「がん」? 「とにかく切らなきゃ!」は日本のおかしな風習だ
新聞のがん報道は裁判と芸能人ばかり 早稲田大教授「もっと予防の記事も」
がん治療にiPS効果 京大研の金子准教授(松山出身)講演
「がんにならない県第1位」鹿児島県の健康のヒミツに迫る
オメガ3脂肪酸、大腸がん患者の死亡リスク低減に寄与か
国がん、癌罹患数予測で初の100万例突破
アルコール、がんの直接の原因と認定
「喫煙」は乳がん患者におけるアロマターゼ阻害薬の効果を弱める 非喫煙者に比べて再発率が上昇
癌5年相対生存率が60%超え 国がん公表、男性59.1%、女性66.0%といずれも上昇
大腸癌検診受けない理由トップ5【米国癌協会】 ほぼ全員が「受けるべき」と認識しているものの…
2016年8月 文献タイトル
地中海食はたとえ高脂肪でも健康によい 糖尿病、心疾患、乳がんの予防に効果
「がんになったからこそ、できること」イノベーション女子の思いとは
米国で飲酒年齢を引き上げたら・・・ がん、肝疾患による死亡率が低下?
光でがん退治、転移にも効果 マウス実験で確認 米国立衛生研究所
オンラインサポートを受ける乳がん患者は治療満足度が高い 多くの女性が診断後にサポート利用
罹患者急増のいま…江原啓之さんに聞く「がんとの向き合い方
大腸癌「左右で予後に差」のインパクト 沖 英次・九州大学消化器・総合外科診療准教授に聞く
適度な運動が乳がん患者の「ケモブレイン」を改善する 記憶障害を低減
過体重でリスク高まるがん、新たに8種 研究
飲酒や喫煙で食道異型上皮リスク増 京大、禁酒で食道癌の再発抑制可能と指摘
2016年9月 文献タイトル
がん治療にGoogleの人工知能が活躍!
成人期に太りすぎの期間が長いと、閉経後に一部がんリスクが上昇する WHI研究7万人超の解析
受動喫煙による肺癌リスク「確実」に 国がん、メタアナリシス研究でリスク約1.3倍
日本は「外科至上主義」
放射線科医は「0.5秒」で乳がんを見分けられると判明 何らかの異常を検出している
がん生存者は肥満になりやすい とくに大腸がん、乳がんで高いリスク
進行癌患者の介護家族、2-3割に強い抑うつ【米国臨床腫瘍学会】 介護時間延長でセルフケア時間が短縮
医師も避けたいつらい死に方 すい臓がんや大動脈解離は激痛
Microsoftが人工知能を使ったがん治療への取り組みを開始
2016年10月 文献タイトル
禁煙30年後も遺伝子に「足跡」【米国心臓学会】 フラミンガム心臓研究含むゲノムコホートのメタ解析
新しい放射線療法で高齢肺がん患者の生存率が改善 ASTRO発表の2報から
元国立がんセンター病院長の本音「確かにダメな外科医が多すぎます」 日本の医療はどこが歪んでいるのか?
癌転移抑制に風邪薬成分が有効 北大、膀胱癌モデルマウスで抗癌剤の効果が回復
受動喫煙のリスクは「確実」 がん、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群
オプジーボが再発NSCLC患者に奏効中 BMS、2件のP3最新結果を公表
がんの二大名医が明かす「医者の選び方・薬の飲み方・理想の逝き方」 本音のスクープ対談
肥満と2型糖尿病の患者は肝臓がんになりやすい 肥満に糖尿病を合併するとオッズ2.6倍に
乳房再建はすぐに受けるべき? 再建の遅れが患者の不安増につながる 乳がんに対する乳房切除術後の治療
食道癌予後不良に腸内・口内細菌関与 熊本大、リアルタイムPCR法で組織内のフソバクテリウムを検出
オプジーボの新規作用を発見 京大、Th9細胞に作用して悪性黒色腫に効果
2016年11月 文献タイトル
がん細胞 手術せずにその場で可視化する技術 東工大が開発
飲酒によるがん死者、2012年に36万人 国連機関調査
揚げ物、米では前立腺がんのリスクを増大させるとの研究も
がん細胞を兵糧攻め!「究極糖質制限」の威力 初の臨床研究で約7割の末期がんが改善した
「お年寄り進みが遅い」 がんの進行スピードは年齢で違う?
大腸癌の転移促進物質を発見 阪大、癌細胞の代謝物質オンコメタボライトD-2HG
傷跡を自然にする「医療補助タトゥ」で患者満足度が向上 頭頸部腫瘍の手術を受けた患者で
1日1箱の喫煙で肺に年間150個の遺伝子変異 5,000例以上を分析
肝臓がんにも「放射線治療」 局所制御率9割以上
細胞癌化させる新遺伝子発見 九州大ら、「GRWD1」がp53タンパク質量を減少させ癌化促進
癌医療にAI活用へ 国がん、5年後に実用化を目標
2016年12月 文献タイトル
ロボット支援腎部分切除術で優れた周術期転帰 腹腔鏡・開腹手術への移行、合併症、断端陽性のリスクが低い
乳房再建は高齢女性にも恩恵をもたらす 若年患者に比べて合併症リスクは上昇せず、便益も同程度
卵巣温存は子宮頸癌の予後に影響しない 転移の危険因子はステージIIB、頸部間質浸潤、リンパ節転移
がん転移と脂肪摂取の関連性、マウス実験で確認 研究
悪性脳腫瘍の新治療法を開発 名古屋市大、ターゲットは「長鎖非翻訳RNA」
「マジックマッシュルーム」でがん患者の絶望感を緩和 抑うつや不安が数カ月にわたり低減
被ばく同量でも“小分け”なら、がん発生率低下 量研機構が解明 自然に発生したがんと被ばくに起因するがんの識別の原理
手術時に癌細胞をpHセンサーで識別【米国癌学会】 感受性88%、特異性90%
薬剤の癌細胞選択的運搬技術を開発 岡山大、新規制御性T細胞「HOZOT」により
胃癌の発育に神経ストレスが関連 東大、癌細胞が「神経成長因子」を産生
がんに対するワクチン療法の有効性がマウスで確認

年1回の血液検査で卵巣がんによる死亡を20%減らせる可能性
スクリーニングプログラム実施への展望
 閉経後女性に年1回の卵巣がんスクリーニング検査を実施することにより、卵巣がんによる死亡を20%低減できる可能性があることが、英国の大規模研究で示唆された。

 卵巣がんはほとんどが進行した段階で診断され、患者の60%は5年以内に死亡している。しかし、新たに開発されたソフトウェアを用いて血液検査結果を分析することにより、定期的な検査でがんを早期に発見でき、死亡率の大幅な低減が期待できるという。

 研究を率いた英ロンドン大学(UCL)教授のIan Jacobs氏は、「いずれ乳がんや子宮頸がんのように、国による卵巣がんスクリーニングプログラムが利用できるようになる展望が開かれた」と述べている。この研究は「The Lancet」オンライン版に12月17日掲載された。

 今回の試験では、2001〜2005年に50〜74歳の女性20万人以上を登録し、スクリーニングを受けない群(全体の50%)、血液マーカー(CA125)と超音波による検査を年1回受ける群(25%)、超音波検査のみ受ける群(25%)の3群に無作為に割り付けた。この新しい検査法は1回限りの血液検査ではなく、CA125を経時的に分析して著明な増大を検知するもの。約11年の追跡期間中に、スクリーニングを受けなかった群では630 人、血液検査群では338人、超音波検査のみの群では314人が卵巣がんと診断された。

 初回の分析では、スクリーニングによる有意な救命効果はないようにみえたが、登録時点で未診断の卵巣がんがあった女性を除外すると、平均20%の死亡率低減が認められた。Jacobs氏によると、卵巣がんによる死亡を1件防ぐのに641人のスクリーニングを実施する必要があるというが、米国がん協会(ACS)のRobert Smith氏は、「追跡期間が長くなるほどこの数字は小さくなると思われる」と述べている。

 今回の研究では、血液検査を受けた女性において、1万人あたり14人が不必要な外科手術を受け、そのうち3%が術後に主な合併症をきたしていた。Jacobs氏は、さらに追跡を続ければ、スクリーニングのリスク・ベネフィット比や費用対効果に関する疑問も解消されるはずだと述べている。

 付随論説を執筆したUMCユトレヒトがんセンター(オランダ)のRene Verheijen氏は、「卵巣がんのスクリーニングと早期発見が、高額にもかかわらず生存率向上にさほど効果を上げていない治療に代わる、有効な対策となる可能性がある。一方で、すべての女性で同じ結果が得られるかどうか、さらに研究を重ねる必要がある」と指摘している。

m3.com 2016年1月5日

双子のがんリスク、片方発病で上昇 大規模調査
 同じ遺伝子を持つ双子の一方ががんになった場合、もう一方の発病リスクも高くなるとする調査結果が5日、発表された。調査は、20万人を対象に行われた。

 だが、米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association、JAMA)に発表された研究論文によると、双子の一方の発病は、必ずしも、もう一方が同じがんや何らかのがんになることを意味するものではないという。

 実際、一卵性双生児の一方ががんと診断された場合、もう一方のがんリスクは14%ほど上昇するのみだった。一卵性双生児は同一の卵細胞から成長する双子で、2人とも全く同じ遺伝物質を持っている。

 2個の卵細胞から成長し、通常の生物学的きょうだいと同程度の遺伝的類似性を持つ二卵性双生児では、片方が発病した際のもう一方のがんリスクの上昇は5%程だった。

 調査対象の双子は、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーの出身で、1943年〜2010年までの期間にわたり追跡調査が実施された。これらの国々はすべて詳細な保健記録データベースを保持している。

 グループ全体のがん発症率は、約3人に1人の割合(32%)だった。それを基に計算すると、片方ががんと診断された一卵性双生児のもう片方のがんリスクは46%と算出された。

 二卵性双生児の場合、片方ががんと診断された双子のもう片方のがん発症リスクは37%だった。

 また、2人とも同一のがんと診断された割合は、一卵性双生児で38%、二卵性双生児で26%だった。

 双子で同じがんになる確率が高かったのは、皮膚メラノーマ(悪性黒色腫、58%)、前立腺がん(57%)、非メラノーマ皮膚がん(43%)、卵巣がん(39%)、腎臓がん(38%)、乳がん(31%)、子宮がん(27%)などだった。

 論文の共同執筆者で、南デンマーク大学(University of Southern Denmark)のヤコブ・イェルムボルグ(Jacob Hjelmborg)氏は「今回の研究は規模が大きく、追跡期間が長いため、多くのがんに対する重要な遺伝的影響をみることができる」と述べた。

 世界では毎年約800万人ががんで死亡している。今回の成果は、この疾患の遺伝的リスクについて、患者や医師が理解を深めるのに一助となる可能性があると研究チームは話している。

AFPBB News 2016年1月6日

糖尿病予備軍でがんリスクが上昇
多目的コホート研究より
 糖尿病患者だけでなく、HbA1c値が6.0〜6.5%以上など糖尿病の可能性が否定できない、あるいは強く疑われる「糖尿病予備群」でもがんリスクが上昇することが、国立がん研究センターや国立国際医療研究センターなどの検討でわかった。詳細は「International Journal of Cancer」オンライン版に12月1日掲載された。

 これまで糖尿病患者では、糖尿病既往のない人に比べてすべてのがん罹患リスクが1.2倍高く、なかでも大腸がんや膵がん、肝がん、子宮内膜がんなどのリスクは1.5〜4倍高まることが報告されている。今回、研究チームは多目的コホート研究(JPHC Study)の糖尿病調査のデータを用いてHbA1c値とがんリスクの関連を検討した。

 1998〜2000年度および2003〜2005年度に実施された糖尿病調査の参加者中、HbA1c測定データがあり、初回の調査時までにがんに罹患していなかった2万9,629人(男性1万1,336人、女性1万8,293人)を対象にHbA1c値とがん罹患リスクの関連を検討した。HbA1c値を(1)5.0%未満、(2)5.0〜5.4%、(3)5.5〜5.9%、(4)6.0〜6.4%、(5)6.5%以上、(6)既知の糖尿病の6群に分けてがん罹患リスクを分析した。

 追跡期間中に1,955件のがんが発生していた。年齢や性別、BMI、身体活動度などさまざまな因子を調整した解析により、HbA1c 5.0〜5.4%群に比べて5.0%未満群(ハザード比1.27)、6.0〜6.4%群(同1.28)、6.5%以上群(同1.43)、既知の糖尿病群(同1.23)でがんリスクが上昇しており(5.5〜5.9%群のハザード比は1.01)、糖尿病とは診断されないが糖尿病が疑われるHbA1c高値(6.5%以上)でもがんリスクが上昇することがわかった。

 また、HbA1cが5.0%未満と低値だった群でもがんリスクのわずかな上昇がみられたが、肝がんを除いて解析するとHbA1c値は直線的にがんリスク上昇と関連していた。

 研究チームは、この結果を「慢性的な高血糖がすべてのがんリスク上昇と関連することを裏づけるものだ」としており、この機序として、高血糖はミトコンドリア代謝などを介して酸化ストレスを亢進させることでDNAを損傷し、発がんにつながる可能性があることや、がん細胞の増殖には大量の糖を必要とするため、慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を促進している可能性があることを指摘している。

m3.com 2016年1月8日

消化管バリウム造影は消える
どうなる?10年後、20年後
 近い将来、臨床現場に起こるであろう変化を領域別に予測してもらうm3.comの新年アンケート「主要医学会トップに聞く!『どうなる?10年後、20年後の医療』」。各領域からの回答を順に紹介していく(回答は各学会の公式見解ではなく、回答者個人の見解となります。ただし、匿名希望もあることから、ご回答いただいた先生の氏名は記載しません)。

粒子線施設の小型化が鍵か――日本放射線腫瘍学会

(1)10年後に大きな発展が見込まれる診断や治療の技術、方法は?

PETやCTによる分子標的や、低酸素などの画像化をターゲットにした放射線治療。

分割照射中の腫瘍の縮小やリスク臓器の位置変化に合わせて治療計画を即座に対応できる適応放射線治療(adaptive radiotherapy:ART)の実用化。

粒子線治療施設の小型化、低価格化によるさらなる放射線治療への進出。施設の小型化が進めば、陽子線治療は現在のX線治療に置き替わるかもしれない。

(2)20年後も診療の要であるだろう診断や治療の技術、方法は?

放射線治療、特に強度変調放射線治療(IMRT)および定位放射線治療(SRT)は間違いなく残るだろう。

Oncologic imagingの診断は、形態だけでなく機能画像が進歩するだろう。

イリジウム192腔内照射やヨード125組織内照射などの小線源治療もおそらく残る。若手には技術を学んでほしい。

(3)10年後には施行する機会が減ると思われる診断や治療の技術、方法、あるいは患者数が減ると見込まれる疾患は?

画像診断に関しては、バリウムを用いる消化管造影は消えていく。

セシウム針を用いた小線源治療。

肺腫瘍針生検は減っていく――日本呼吸器外科学会


(1)10年後に大きな発展が見込まれる診断や治療の技術、方法は?

ハイブリッド手術室を用いた術中ナビゲーションの一般化、およびより低侵襲の胸腔鏡手術の進歩

癌に対する分子標的療法

肺移植など臓器移植における拒絶反応の抑制などの薬物療法

(2)20年後も診療の要であるだろう診断や治療の技術、方法は?

気管支鏡によるリンパ節生検(EBUS)

胸腔鏡手術

肺移植

(3)10年後には施行する機会が減ると思われる診断や治療の技術、方法、あるいは患者数が減ると見込まれる疾患は?

縦隔鏡下の縦隔リンパ節生検

経皮的な肺腫瘍の針生検

 本アンケートは、日本専門医機構で基本領域に位置づけられている19領域、ならびに現時点でサブスペシャルティ領域に位置づけられている29領域の専門医を認定する計50学会の代表者個人を対象に行いました(初期回答期間2015年11月20日〜12月25日)。

m3.com 2016年1月12日

アスピリン常用、前立腺癌死抑制【米国臨床腫瘍学会】
前立腺がん診断後の進行も抑制
 米国臨床腫瘍学会(ASCO)は1月4日、日常的なアスピリンの服用で前立腺癌による死亡リスクが減少できる可能性があるとする大規模な長期観察研究の結果を紹介した。サンフランシスコで開催された泌尿生殖器癌シンポジウム(ASCO-GU)2016で発表された。

 研究では、Physicians’ Health Studyに登録された2万2071人のデータを解析。27年間の追跡調査で前立腺癌と診断されたのは3193人で、うち403人が致死的な前立腺癌(転移あるいは前立腺癌死)だった。

 年齢、人種、BMI、喫煙状況で調整した結果、前立腺癌と診断を受けていない男性で週3回以上日常的にアスピリンを服用している群では、致死的な前立腺癌のリスクは24%低下した。また、前立腺癌と診断後に日常的にアスピリンの服用を開始した群でも、前立腺癌による死亡は39%低下した。しかし、アスピリンの日常的服用と前立腺癌全体の発症率には関連性は認められなかった。

 研究者のChristopher Brian Allard氏は、「致死的前立腺癌の予防にアスピリンを推奨するのは時期尚早だが、心血管系への効果を得る可能性のある前立腺癌患者には日常的なアスピリン服用を検討するもうひとつの理由になる」と説明。さらに「アスピリンは前立腺癌の進行を抑制しているかもしれない」と述べている。

m3.com 2016年1月20日

2016年の新規癌発症、癌死予測を米国癌協会が報告
 米国癌協会(ACS)は1月7日、2016年の米国における新規癌発症数と癌死を予測する統計報告を紹介した。A Cancer Journal for Clinicians誌に掲載。

 ACSの報告「Cancer Statistics, 2016(癌統計2016年)」および関連記事「Cancer Facts & Figures 2016(癌の概要とデータ2016年)」によると、米国での癌死亡率は着実に低下。癌死亡率は、2012年にはピークだった1991年から23%低下し、この間に170万人が癌死を免れた試と算された。また、2016年の新規癌発症は168万5410件、癌死は59万5690人と予測されている。

 米国では、肺癌、大腸癌、前立腺癌、乳癌の4種で男女を合わせた癌死の約半数を占め、特に肺癌による癌死は4人に1人にのぼる。2016年の予測によると、男性では前立腺癌、肺癌、大腸癌が新たに診断される癌の44%を占め、そのうち5人に1人が前立腺癌と予測。女性では乳癌、肺癌、大腸癌の3種で全症例の約半数を占め、新たに診断される癌の29%を乳癌が占めると予測されている。

 2009-2012年のデータを見ると、男性では新規癌発症が毎年3.1%減少したが、女性ではほぼ横ばいだった。男性で新規癌発症が減った原因として、前立腺癌の検診に過剰診断率が23-42%と高いと言われるPSA検査が推奨されなくなったことが挙げられている。一方、肺癌の発症は、喫煙者の減少に伴い男女ともに低下。大腸癌の新規発症も急速に減ったが、その一因として検診時に大腸ポリープを予防的に切除できる大腸スコープの普及が寄与したと分析している。

 一方、2003-2012年に発症率が上がったのは、白血病、舌癌、扁桃癌、小腸癌、肝癌、膵癌、腎癌、甲状腺癌だった。男女別で見ると、男性ではメラノーマ、多発性骨髄腫、男性乳癌、睾丸癌、咽頭癌および下咽頭癌が増え、女性では肛門癌、外陰癌、子宮内膜癌が増加した。

 ACS会長のGary Reedy氏は、「癌死が低下し続けることは喜ばしいことだが、依然、癌死は死因の第一であり、この事実からも戦いはまだ終わっていない」と述べている。

m3.com 2016年1月22日

40代のマンモ検診に結論【米国癌協会】
マンモ検診、推奨年齢の相違も学会評価
 米国癌協会(ACS)は1月11日、乳癌検診に関する米国予防医学作業部会(USPSTF)の新勧告の発表を受けて、「USPSTFの勧告とACSの乳癌検診の推奨時期に違いはあるが、定期的なマンモグラフィ検診の価値と重要性は、ACSも他団体も認めている」と、同勧告に賛同する姿勢を示した。新勧告は、2015年4月発表の草案に基づく最終勧告で、Annals of Internal Medicine誌に掲載された。

 ACSが2015年10月に作成した乳癌検診ガイドラインでは、45-54歳の全女性に毎年のマンモグラフィ検診を推奨。40-44歳女性であっても希望者は毎年のマンモグラフィ検診の選択が可能になり、55歳からは隔年検診への切り替えも選択可能としている。

 一方、USPSTFの新勧告は2009年の勧告と同様に、乳癌リスクのない50-74歳の女性に対しては隔年検診を推奨。検診には早期発見のメリットがある一方で、偽陽性のリスク、過剰診断、過剰治療などのデメリットがあるとして、「50歳以前の検診については、検診のメリットとデメリットを勘案した上で個別に判断すべき」と、40代には隔年検診の選択肢を認めている。また、第1度近親者(親、子、同胞)に乳癌患者がいる40-49歳の女性については、50歳以前にマンモグラフィ検診を受けることにメリットがあることも明記した。

 ACSは「40代後半では前半よりも乳癌発症リスクが高いことを明確に示す文言を加え、希望者がこの時期いつでも検診を開始できることを示している」と、新勧告案を評価する考えを示している。

m3.com 2016年1月27日

多くの高齢者が不要な前立腺がん・乳がん検診を受けている
余命10年未満にもかかわらず受診する人が15%超
 多くの高齢者が、不要な治療につながる可能性のある前立腺がん・乳がんスクリーニングを受けていることが、米国の研究で判明した。米国の医療制度ではこの問題により年間12億ドル(約1,400億円)がかかっているという。

 今回の研究は米ヘンリーフォード・ヘルスシステム(デトロイト)のFiras Abdollah氏らによるもので、論文は「JAMA Oncology」オンライン版に1月21日掲載された。

 研究では、2012年の行動危険因子サーベイランスシステム(BRFSS)調査に回答した65歳以上の高齢者15万人のデータを収集した結果、対象者の51%は前年に前立腺特異抗原(PSA)検査またはマンモグラフィを受けていた。これらの検診を受けた人のうち約31%は余命10年未満であった。

 「余命が10年あること」はスクリーニングを行うかどうかの基準であり、複数のガイドラインが余命10年未満の人には前立腺がん・乳がんのスクリーニングを行わないことを推奨している。高齢者の15.7%は非推奨のスクリーニングを受けていたことになる。

 非推奨のスクリーニング実施率は、コロラド州の11.6%からジョージア州の20%強まで、全米でばらつきがあった。前立腺がんの非推奨スクリーニング実施率が高い州では、乳がんでも非推奨スクリーニング実施率が高かった。

 Abdollah氏は、「医師も患者も、余命を検討したうえで前立腺がんや乳がんのスクリーニングの必要性を決定すべきだ。スクリーニングは、生命を脅かさない低リスク腫瘍をも発見し、不必要な治療により副作用やQOL低下などを生じさせる可能性がある」と話している。

m3.com 2016年2月1日

がん、抗がん剤や手術が寿命を縮める?
「何も治療しない」が正しい場合も?
新見正則 帝京大学医学部外科医師

 さて、今日はがん治療の話題で盛り上がっています。“極論君”は「漢方だけで治す」と言っています。“非常識君”は「何も治療をしないで自然治癒を期待する」という意見です。そして“常識君”は「西洋医学的治療を優先して、そしていろいろといいことを加えていこう」という作戦です。

 まず、極論君が言うように漢方だけでがんが治るのでしょうか。保険適用漢方薬にがんが保険病名として含まれているものはありません。少なくとも厚生労働省は、漢方にがんを退治する直接の効果を認めてはいません。

 また、有吉佐和子さんの小説『華岡青洲の妻』でも有名な江戸時代の漢方の名医であった華岡青洲は、なぜ実母や妻を実験台にして全身麻酔を完成させたのでしょう。乳がんが漢方だけでは治らないから、摘出手術をしたかったのです。漢方だけで乳がんが治れば、全身麻酔などは不要なはずです。つまり、極論君が言うようにがんを漢方だけで治すことは無理でしょう。

 一方で、漢方を併用することは意味があると思います。抗がん剤の副作用を軽減したり、免疫力、つまり健康力を維持増進したりするには相当期待できると思っています。

 しかし、免疫力という言葉は通常は健康力の意味で使われています。もしも免疫力が上がるというコメントを見聞したら、何が上がるのか、何が変化するのかを確かめてください。多くの場合、そのあたりを曖昧にして免疫力という文言は適当に使われています。

「何もしない」が正しいこともあり得る

 では、非常識君の発言はどうでしょう。「何もしないで経過をみる」ということですね。これは早期のがんであれば、実はそれが正しいこともあり得ます。ここで問題となるのが、何が早期かということです。がんは「悪性腫瘍」ともいわれますが、悪性という意味は、転移や浸潤をするということです。良性の腫瘍は転移や浸潤はしません。有名な良性腫瘍は子宮筋腫で、相当大きくなっても実は問題がないことも多いのです。女性が妊娠して3キログラムの赤ちゃんをお腹に入れても元気なことを想像すれば、子宮筋腫の大きさだけでは特別な影響は少ないと理解できます。

 がんが悪性たる所以は転移と浸潤ですが、それが発生していない段階では、いつそのがんが悪性になるのか、つまり転移や浸潤をする正確な日時は不明なのです。ですから、医師も患者も、がんと診断がついて放置するという勇気を持てず、さっさと手術をして楽になろうとするのです。

がん患者のなかには無治療で長生きする人も

 そこで、非常識君のようにがんを放置した場合は、その後どうなったかという結果を社会で共有する必要があるのです。がんの患者さんのなかには、無治療で予想外に長く生きる方もいます。そんな希な症例が、実は奇跡的に少ない数字なのか、それとも結構な頻度で起こっていることなのかも実はわかっていないからです。将来的にがんの転移の時期が予想できるほどサイエンスが進歩すれば、非常識君が主張するような立ち位置も有効な選択肢のひとつになります。

 一方で、がんが相当進行して手術をしても、また抗がん剤治療をしても手遅れだと感じられることもあります。そんなときに「他に治療がないから」という理由で手術や抗がん剤治療をあえて行うことは間違っています。せっかく残った命を縮めてしまうからです。何も治療しないことが、実はがんをたくさん治療している施設では常識だということもあり得ます。であれば、非常識君の意見は正しいということになります。

 結局は、今回も常識君の意見に集約されます。基本は西洋医学的治療で公に認められているものに頼りましょう。そして、補完医療として漢方治療を選択することには大賛成です。また、明らかに有効な治療がないときや、まだがんと確定診断がつかない段階などでは、無治療という選択肢もあり得るのです。

●新見正則(にいみ・まさのり)
1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年〜 慶應義塾大学医学部外科
1993年〜1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年〜 帝京大学医学部外科に勤務

幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

Business Journal 2016年2月2日

がんは死の宣告ではない
 2月4日は、「世界対がんデー」だ。世界では毎年およそ1300万人が、がんと診断されており、750万人以上が、がんによって死亡している。ガンに国籍は関係なく、子供だから、高齢者だからといって大目に見てもらうこともできない。

 「世界対がんデー」は、国際対がん連合(UICC)によって実施されている。この日UICCは、この問題に人々の注目をひきつけるためにキャンペーンを展開している。またこの日は、がんの診断、治療、予防のための新たな方法について幅広い議論を行い、意見交換するきっかけにもなっている。

 2016年の「世界対がんデー」のスローガンは、「これは我々の手に負える」。同スローガンは、医師と科学界が力を合わせることで、がんの発症率とがんによる影響を低下させることができることを指摘している。モスクワ市腫瘍病院62番のアナトーリー・マフソン院長は、次のように語っている−

「世界で最も多い死因は、心血管疾患で、2位が悪性疾患です。ロシアでは毎年およそ50万人が悪性腫瘍の診断を受けており、そのうち25万人以上が亡くなっています。ロシアだけでなく、世界中で悪性腫瘍が増え続けています。最近7年間だけでも悪性腫瘍の発症率は11パーセント増加しました。理由はいくつかあります。平均寿命が延びたこともその一つです。すなわち平均寿命が高い国ほど、がんの発症率も高いということです。そのため世界では悪性腫瘍との闘いが重要な課題となっており、『対がんデー』が定められたのです」。

 もちろん科学も医療も進歩を続けている。大阪大学は最近、息をしてがんを判定する高精度センサーの開発プロジェクトを発表した。同センサーは、がんの疑いがあるかを個人でもチェックすることを可能とする。学者たちはまた、どの内臓ががんに冒されているのかも判定できるようにする方針だという。

 内臓にがん細胞があることを判定する「電子鼻」の製造は、イスラエル、ドイツ、ロシアでも行われている。ロシア・シベリア連邦管区ノヴォシビルスクの学者たちは、唾液、血液、組織、呼気などで腫瘍マーカーの検出を可能とする小型で安価な機器を、事実上生産へ導入する段階に達したと発表した。

 統計情報によると、日本では毎年およそ40万人が、がんによって死亡している。また日本とロシアの医師たちは、国民が自分の健康にあまり注意を払っていないとして懸念している。一方で「がん」という言葉は、がんと診断された人々をショックに陥れる。マフソン院長は、次のように語っている−

「最近まで胃がんの発症率で世界一だった日本は、次のようなことを行った。日本は、職員の定期検査を行わない雇用主にとって不利となる法を採択したのだ。そのため今日本の胃がんの59−61パーセントが初期段階で発見されており、手術は内視鏡で行われている。すなわち、治療の有効性は、進行度にかかっているということだ。一方で人々には未だに、がんになったということは、死を宣告されたということだ、という感覚がある。これは大きな誤解だ。最新データによると、私たちはがん患者の半数以上を完治させている。一方で、『がん』という言葉の下には、100以上の病気が隠れていることを理解する必要がある。それらの病気は、様々な形で浸透し、様々な方法で治療される。その中には、90パーセントの割合で完治する病気もある。今から40年前の私がまだ学生だった頃、子宮がんの女性の90パーセントが亡くなっていた。だが私たちは今、子宮がんの女性の98パーセントを完治させている。しかも、ただ完治させるだけでなく、女性たちはその後、健康な子供を出産している。皮膚がんや乳がんも同じだ。早期の段階の完治率は、90パーセント以上だ。がんは、死の宣告ではない。人々はこれを知る必要がある。それを伝え、説明する必要がある… そのためにも『対がんデー』が必要なのだ」。

Sputnik 2016年2月3日

便潜血検査は大腸がんの検出に有効
内視鏡検査と選べるようにすれば受診率を向上できる?
 年1回の便潜血検査による大腸がんの検出率には一貫性が認められ、2〜4年目のスクリーニングも有効であることが、新たな研究で報告された。

 研究共著者の1人である米カイザー・パーマネンテ(カリフォルニア州)のDouglas Corley氏によると、医師らの間では、便潜血検査の有効性が年々低下する可能性が懸念されていたという。大腸の腫瘍やポリープは、大きくならなければ便に血液が混じることはないため、初回の検査で大きな腫瘍がすべて発見され、切除された場合、翌年以降のがんの検出率が大幅に低下するのではないかと考えられていた。

 今回の研究では、カイザー・パーマネンテ健康保険の加入者約32万5,000人に対して実施された年1回の便潜血検査を4年間追跡。1年目には、便潜血検査により、後に大腸がんと診断された患者の84.5%にがんが検出された。初年の検出感度が高いのは予想どおりであったが、2〜4年目にも73〜78%の有効性が認められ、新たに大きくなったがんを持続的に検出できることが示されたと、研究グループは述べている。この知見は「Annals of Internal Medicine」に1月25日掲載された。

 米国がん協会(ACS)のRichard Wender氏は、「便潜血検査を10年間受ければ、死亡を防ぐ効果は10年に1回の大腸内視鏡検査と同程度と考えられる」と述べている。大腸内視鏡検査は、10年に1回の受診でほぼ100%のがんやポリープを発見できるという利点があるが、選択肢が1つしかない場合、内視鏡検査に抵抗のある患者はスクリーニングを受けない可能性がある。

 内視鏡検査は侵襲的な処置であり、鎮静剤の使用や強力な下剤の服用による準備が必要だが、便潜血検査は不快感もなく、自宅で検体を採取できる。大腸がんスクリーニングでは便潜血検査と内視鏡検査の両方を提案し、各自が自分に適した検査を選べるようにすれば、受診者が増えるはずだとCorley氏らは指摘している。ただし、便潜血検査で陽性となった患者には必ず内視鏡検査を実施しなければ意味がないとWender氏は述べている。

 今回の研究は、標準的な便潜血検査に焦点を当てたものであり、米国食品医薬品局(FDA)が新たに承認した「Cologuard」と呼ばれる検査については検討していない。Cologuardは潜血検査とDNAバイオマーカーの検査を組み合わせたもので、標準の検査よりも高い検出率が認められているが、効果的な受診頻度については未だ明らかにされていない。

m3.com 2016年2月4日

がんの有無はDNA、血液1滴で分かる時代
 日進月歩で進化するがんの早期発見法。中でも、がんができる前にがんを発見する究極の早期発見法が、【DNA検査】である。

 がんの先天的リスクを判定するために、血液中の細胞のDNAを検査する方法だ。血液を採取して検査機関に送る方式で、1か月程度で結果が出る。

 費用は検査内容やクリニックごとに違い、5000円程度から20万円まで幅広い。米国では盛んに行なわれ、女優のアンジェリーナ・ジョリーが検査を受けて「がん予防のための乳房切除」をした。

 血液だけでがんが発見できる――日本発の検査技術で、いま非常に大きな注目を浴びているのは【マイクロアレイ血液検査】である。

 がんが発生するとがんを攻撃する血液の細胞に遺伝的な変化が起こるという研究成果を応用した検査法で、マイクロRNAと呼ばれる遺伝物質を調べてがんの発生を見極める。金沢大学発のベンチャーであるキュービクスが開発した。

 胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がんなど消化器系がんが主な対象で、研究グループは、早期発見が難しい膵臓がんを含めた早期がんを発見する確率が98%近くになると報告している。

 すでに実用化されていて、血液採取だけですむので非常に手軽だが、料金は10万円ほどと少々高額。検査が改良されれば、価格は下がっていくだろう。

 血液検査のなかでもわずか一滴でがん発見できるというのが、兵庫県のベンチャー企業「マイテック」と昭和大学のグループが取り組んでいる【バイオチップ血液検査】だ。

 血液1滴をバイオチップ(DNAやタンパク質、糖鎖などで構成された基板)に乗せると、3分以内にがんの有無を検診できるという。実験では、直径0.1mm以下のステージ0のがんを判定したとされる。年内に実用化が予定されており、検査費用は数万円と想定されている。

週刊ポスト2016年2月5日号

がん治療を受けて長生きする人はどんな人?
がん患者73人を対象に検証
 がん治療を受けた人はどのような人が長生きしやすいのでしょうか?がん治療後に、どのような要素が長生きに関係しているかが検証されました。

◆がん治療のリハビリで長生き

 今回紹介する研究は、がんによる健康状態の悪化などに対してリハビリを受けている73人のがん患者を対象としました。患者の基本的なプロフィール、退院後の経過、生存期間や運動機能状態などのデータが集められ統計的解析が行われました。

◆運動機能が高いと長生きする

 次の結果が得られました。

 機能的自立度評価表において合計点数が80点以上の患者は、80点未満の点数を出した患者より有意に長生きした(p = 0.002)。

 退院時での機能的自立度評価の運動スコア(p=0.004)、機能自立度評価効率 (p=0.001)、カルノフスキーのパフォーマンスステータス(p=0.022)、歩行能力(p=0.026)、帰宅(p=0.009)、そして、在宅医療を受けること(p=0.045)は有意に生存と関連していた。

 がん患者のうちで、リハビリを受けた後に高い歩行能力、運動機能が見られた人、また、在宅医療を受ける人などが長生きしているということが報告されました。

 この研究結果から、研究者たちは「入院患者のリハビリによる運動機能向上はがん患者の長生きと関連している。がん患者においてリハビリにより自立が促進されていることは、予後良好である見込みが大きい患者の目印となりうる」と見解を述べました。

 リハビリにより高い運動機能を得た患者は長生きする可能性が高いかもしれません。がん患者がリハビリをすることは、余命を伸ばすためにも意味があることなのかもしれません。

medley 2016年2月7日

抗癌剤をビフィズス菌に内包
シンバイオ−帝京平成大、共同研究の開発を開始
 シンバイオ製薬は、帝京平成大学と共同で新規抗がん剤の共同研究開発を開始する。ビフィズス菌を輸送手段としたアゴニスト分子を薬効成分にするという、これまでにない作用機序を持つ。開発した同大学から、開発の進捗に応じ全世界における開発・製造・商業化に関する独占的ライセンスを取得する権利も得た。

 共同研究開発するのは、腫瘍壊死因子の一種であるTTR1の受容体の一つTRAIL−1に結合する分子を薬効成分とする薬剤。同受容体はがん細胞やがん幹細胞に発現しており、これを標的に同分子が結合すると、がんのアポトーシスを誘導する。

 通常、TRAILは受容体に結合した後、受容体を3量化してからアポトーシスを誘導する。ところが通常の抗TRAIL−1抗体は3量化が難しくアポトーシス誘導性が弱かった。これに対し、帝京平成大学薬学部の石田功教授らは、アルパカなどラクダ科の抗体が単一ドメインからなり改変容易である点に着目。抗原認識部位を取り出し、通常の抗体より分子量が小さく安定性や組織への湿潤能に優れた「ナノアゴニスト分子」とすることに成功した。

 さらに、このナノアゴニスト発現機能をビフィズス菌に組み込んだ。すい臓がんをはじめ多くのがんは酸素のない環境に好んで生息。一方、ビフィズス菌も嫌気性菌のため、静脈投与するとがん組織が潜んでいるのと同様の場所に選択的に生息し始め、TTR1ナノアゴニストを発現する。

 動物モデルでは、このTTR1ナノアゴニスト発現ビフィズス菌は低酸素状態にあるがん組織において選択的に増殖、抗がん作用、安全性が確認されている。両者は臨床試験開始に向けた前臨床試験に関連した取り組みを共同で推進。画期的新薬の開発につなげる。

m3.com 2016年2月10日

非小細胞肺癌患者にワクチン投与
東大など、医師主導で共同治験
 東京大学医科学研究所附属病院、神奈川県立がんセンター、国立がん研究センター東病院の3機関は8日、非小細胞肺がんに対するがんワクチン療法の多施設共同医師主導治験を開始したと発表した。肺がん細胞で高頻度に発現する複数の抗原を標的とする、がん治療用ワクチンの第2相(P2)となる。2年間を通じ、無再発生存期間を指標に、プラセボ群との比較によりがんワクチンの有効性を評価する。

 同治験では、手術でがんの完全切除がなされ、その後、術後補助化学療法を実施した非小細胞肺がん患者が対象。60例を予定している。

 同療法に使うがん治療用ワクチンはがんペプチドワクチンで、細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導することにより抗腫瘍効果を発揮。

 投与した腫瘍抗原分子のペプチドが樹状細胞に取り込まれ、その細胞表面に形成されるエピトープペプチドと主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラス1,分子の複合体がCTLに認識されることにより、その腫瘍抗原に特異的CTLを誘導する。このCTLは、同様にエピトープペプチドとMHCクラス1,複合体が細胞表面に提示されている標的腫瘍細胞に対して細胞傷害活性を示す。

m3.com 2016年2月10日

がん細胞だけ狙い撃ちする治療法
副作用少なく、実現性も高い
【羽鳥慎一モーニングショー】(テレビ朝日系)2016年2月3日放送
「がん細胞を一つ一つ撃退する放射線治療はできないのだろうか?」

 今日、がんの治療として行われている放射線治療は、体の外から放射線を当てて体内のがん細胞に届かせる。しかし、がん細胞の手前に正常な細胞があると、それも傷つけてしまうのが難点だ。

 テレビ朝日のコメンテーター、玉川徹は京都大原子炉実験所を訪ねた。現状の放射線治療の弱点を解決する「ホウ素中性子捕捉療法」を、鈴木実教授に聞いた。

がん細胞が取り込みやすいホウ素の薬剤を投与

鈴木「がん細胞が取り込みやすいホウ素の薬剤を、全身に点滴で投与して、がん細胞にできるだけホウ素の薬剤が集まった状態を準備します」

 次に、加速器という機械を使って中性子を体に照射する。中性子はホウ素と反応すると重粒子線が発生するが、これはがん細胞を破壊する力が強い。しかも、細胞内で発生した重粒子線が届く距離は、その細胞1個分にとどまるため、隣に正常な細胞があってもそこまで届かない。いわば、がん細胞だけを狙い撃ちできる治療法なのだ。

玉川「治療成績はどうなんでしょう」

鈴木「脳腫瘍や頭頸部腫瘍は......従来よりは良い成績が出ています」

 まだ症例数が少ないが、将来性は期待できる。現在、臨床試験の最終段階にある。気になる副作用についても、がん細胞だけを破壊して正常な細胞への放射線量を低く抑えられるので、小さくできるようだ。

 ただ、現段階ではひとつ弱点があるという。中性子は、体の表面から6〜7センチの場所までは届くが、それより深いところにはなかなか到達しない。がん細胞の位置によっては、この治療法が有効に機能しない恐れがある。

ホウ素の「的」増やして中性子当たる確率増やす

 この「7センチの壁」を超えるための研究が、東京大の片岡一則教授の下で進められている。片岡教授は、抗がん剤を極小のカプセルで包んだ薬剤「ナノマシン」を開発したが、これを応用しようというのだ。つまり、ホウ素製剤をカプセルにくるみ、がん細胞に集中的に届ける。

片岡「(中性子照射の前に、ホウ素の)的を増やすわけです。すると、より効率よく中性子がそこに反応して、放射線が出る」

 この方法なら、現在の方法と比べてホウ素の集積度が20倍に上がる可能性があるそうだ。すると、たとえ7センチより深い場所に届く中性子が少ないとしても、「的に当たる」確率はぐっと高まる。

 ホウ素中性子捕捉療法は臨床試験の最終段階で、ナノマシンも「ホウ素の製剤をカプセルに入れて使えばいい」状態。つまり、実用への見通しも立ってきているそうだ。安全性の確認を十分に行う必要があるが、片岡教授は5年ほどで十分に臨床までいける可能性があるという。

 スタジオでは玉川リポーターに、コメンテーターで女優の高木美保、羽鳥慎一アナ、宇賀なつみアナが質問をぶつけた。

高木「あの機械(加速器)、いくらぐらいですか」

玉川「10億くらい...だからお金はかかります。その代り小さいので、でっかい施設はいりません」

羽鳥「治療はやっぱりお金がかかる?」

玉川「最初は先進医療にはなるんじゃないでしょうかね」

宇賀「今の若い人たちが40、50代になるころには、常識がガラっと変わっているわけですよね」

玉川「変わっていると思います」

J-CASTニュース 2016年2月11日

乳がん予防は高校生時の食事から
1日10グラムの食物繊維を
 乳がんは日本人女性が発症するがんの1位で、12人に1人が生涯にかかるといわれる。しかも、女性ホルモンが影響するといわれ、若い世代の発症率が高いのが特徴だ。

 その乳がんを防ぐには、高校生の時から食物繊維の豊富な食事をとると効果があることが初めてわかった。米ハーバード大のチームが研究をまとめ、米小児科学誌「AAP」(電子版)の2016年2月8日号に発表した。

若い時から乳がん予防を意識してサラダを食べよう
閉経前の若い時期での発症リスク24%減


 研究チームは、しっかりした健康記録がある米国看護師健康調査の中から1991年当時27〜44歳だった女性9万534人を対象に、食生活と乳がんの発症率の関係を20年間追跡した。そして、4年ごとに乳がんの発症と食事に含まれる食物繊維の量、肥満度を示す体格指数(BMI)、体重変化量、月経の頻度、アルコール摂取量、乳がんの家族歴などとの関連を調べた。また、対象者に「思春期の食生活調査」を行ない、高校時代の食事内容を聞いた。

 その結果、食物繊維が多いものを食べていた女性では、少ない女性に比べ発症リスクが12〜19%低くなった。特に高校時代に食物繊維を多く摂(と)っていた女性は、少ない女性に比べ、全体のリスクが16%低くなるばかりか、閉経前の若い時期での発症リスクが24%も下がった。また、高校時代の食事に1日10グラムの食物繊維を追加すると、リスクが13%減ることもわかった。

将来の乳がん発症と「思春期の乳房」の関係は

 乳がんは、女性ホルモンのエストロゲンが発症に強く関係しており、食物繊維がエストロゲン値を抑えることが知られている。

 今回の研究について、同大のウォルター・ウィレット教授はこう語っている。

「乳がんの予防には、若い頃から果物や野菜を食べることが有益であることを証明しました。食物繊維がエストロゲン値を下げ、発がん性物質を減らすためと考えられます。これまでの研究から、乳房の細胞の発達は、特に思春期に発がん性物質と抗発がん性物質双方の影響を受けることがわかっています。だから、高校時代の食事が将来の乳がん発症リスクを抑えるためにとても大切なのです」

 食物繊維の多い食べ物は、イモ、海藻、キノコ、野菜、果物、豆腐などだ。あなたの思春期のお嬢さんの食卓にもう1品サラダ類を加えてあげよう。

J-CASTニュース 2016年2月13日

他のがん治療にも効果期待
膵がんの「ナノナイフ治療」
 近年になり、早期発見が難しい膵がんに対し、特異的なタンパク質が発見され、腫瘍マーカーとして早期発見の有力な手段となっている。しかし、今のところ手術可能なステージ3までの膵がんの発見は約15%で、残りの約85%は手術不能である。だが、抗がん剤しか治療選択肢のなかったステージ4Aの膵がんに対し、ナノナイフ治療の臨床研究が始まっている。

 これは、がん細胞に体外から針を刺し、針の先端の電極に3000ボルトの電流を短時間通電させることにより細胞に孔(あな)を開け、がんを死滅させる治療だ。東京医科大学病院消化器内科の森安史典主任教授に話を聞いた。

「ナノナイフ治療については、18例の肝がんに対して臨床研究を実施し、有効性と安全性が確認できました。そこで、昨年4月から局所進行性で遠隔転移のないステージ4Aの膵がんに対し、8例を目標として臨床研究を行なっています。現在6例に実施しましたが、その多くの症例で腫瘍が小さくなっています。この治療は転移のあるステージ4Bには適応しません」

 膵がんのナノナイフ治療は、全身麻酔を行ない、身体の表面から超音波の画像を見ながら針を刺す。膵臓の周りには胃や十二指腸があるが、それらを貫通して注射針程度の太さの針を、がんを取り囲むように刺す。

 例えば3センチの膵がんの場合、がんを取り囲むように2センチの間隔で4本の針を刺す。針の先端の1.5センチだけ電気が流れる構造で、プラスの針からマイナスの針に向かって電気が流れる。3000ボルトの高電圧で、1対の針の間に1万分の1秒という短時間で80発から160発通電すると、がん細胞にナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の孔が開き、細胞質が溶け出す。

 これで臓器を壊すことなく、がん細胞だけをすべて死滅させられる。ナノナイフ治療は、2008年にアメリカで始まり、当初は肝がん治療が主だった。

「ケンタッキー州ルイビル大学のマーチン博士のグループは、ステージ4Aの膵がん200例にこの治療を実施しました。50例で腫瘍が縮小し、手術可能となり、残り150例は抗がん剤併用で延命が得られています。

 平均生存期間は、抗がん剤単独に比べて約2倍の24か月に延びています。局所の再発は3%で、ナノナイフ治療は膵臓にとどまっているがんを強く抑える効果(局所制御能)があることも実証されました。そのためアメリカでは、膵がん治療に使われる例が多くなっています」(森安主任教授)

 膵がんのナノナイフ治療は、10日から2週間程度の入院を要する。通電範囲では、がん細胞と周辺の正常細胞も死滅するため、胃や腸の粘膜に潰瘍が生じたり、膵炎が起きたりするからだ。これらの回復のため安静と絶食が必要で、肝がん治療よりも若干入院期間が長い。欧米では肺がん、前立腺がん、腎がんなどの治療に用いられており、今後は日本でも導入されることが期待されている。

NEWSポストセブン 2016年2月14日

「患者参加型医療」を促進
愛知のがん医療機関、タブレットで患者が症状を自己管理
 富士通と富士通フロンテックは、愛知県がんセンター中央病院の入院患者向けベッドサイドシステムを構築。「患者と電子カルテの情報を共有し、患者参加型医療を促進する」(富士通)目的で、2月から運用を開始する。

 入院患者が、自分の病室で、がんセンター中央病院から貸与されるタブレットを利用。病院の診療方針、医療費概算などの伝達事項、診療スケジュール、診療・治療・検査室への案内表示、過去の診療・検査記録などが確認できる。体の症状、食事量、飲水量なども患者自身がタブレットから電子カルテに入力できるため、症状の変化の認識や自己管理意識が高まり、治療への主体性を育めるとしている。

 また、入院環境の利便性を高めるため、院内の売店へのデリバリー発注や理容室のシャンプー予約などの機能も備えるという。入院中に日用品が不足した場合、患者自身が売店まで行くことが難しかったり、着替えがおっくうなことがある。また、せっかく理容室まで移動してみたが満席だったということもある。そうした事態を避けられるという。

 一方、看護師にとっては、事務的作業負荷の軽減が可能となる。看護師は従来、患者の体の症状、食事量、飲水量などをベッドサイドでヒアリングし、ナースステーションに戻って電子カルテに入力していた。診療スケジュールの説明なども患者1人ひとりに口頭で行なっている。

 本システムを利用すると、患者がタブレットから電子カルテシステムへ入力するのをサポートするだけでよく、こうした作業負荷が軽減され、患者とのコミュニケーションとより手厚いケアに注力できるという。

 タブレットには、富士通の10.1型ワイド「ARROWS Tab Q555/K32」を採用。約630gの軽量で、バッテリ駆動時間は約11時間のため、患者の起床から就寝まで安心して利用できるとしている。

 国内のがん患者数は増加傾向にあり、1981年に日本人の死亡原因の1位となった。2015年には、羅患数が98万例、がんによる死亡は37万人になると予測され、増加し続けているがん患者に、最適な治療を効率的に適応する工夫が求められている。がんセンター中央病院では、安全な医療を提供するだけでなく、「患者の積極的な治療への参加」を促し、治療にも好影響を与える環境を提供したい考え。


ASCII.jp 2016年2月16日

ランニングでがん細胞の増殖を抑制できるかもしれない
 がん細胞の増殖を抑えることで知られる免疫細胞が「ナチュラルキラー細胞」ですが、ランニングなどの運動により、ナチュラルキラー細胞が活発化し、がん細胞などの腫瘍の増殖を抑制できる可能性が、マウスによる実験で示されました。

 コペンハーゲン大学はマウスを回し車で走らせ、がん細胞を攻撃する免疫系統に運動が与える影響を調査しました。その結果、毎晩4km〜7km走ったマウスの免疫系統が活発化し、新しい腫瘍の増殖を予防したほか、既存の腫瘍の成長を最大で60%抑制できることがわかったとのこと。コペンハーゲン大学のPernille Hojman氏は「運動が腫瘍の成長率を直接的にコントロールできることを初めて示すことができました」と話しています。

 研究チームは皮膚・肺・肝臓など5種類のがんを患ったマウスを使って運動との関連性を実験しました。運動によりアドレナリンが放出されることで、血流でがん細胞と戦うナチュラルキラー細胞を送り出す免疫系が刺激されるため、腫瘍の増殖を抑えることができるとのこと。また、運動中の筋肉からインターロイキン-6(IL-6)という物質が放出されており、ナチュラルキラー細胞に腫瘍を攻撃させる指示を出していることがわかっています。

 これまで運動でナチュラルキラー細胞が活性化することは指摘されていましたが、運動により放出されるストレスホルモンが、がん細胞を攻撃する指示を出していることが初めて示されたことになります。人間に対して同じ効果があるかはまだ研究されていませんが、運動が閉経後の結腸直腸がんや乳がんを予防できるという研究結果もあることから、Hojman氏の研究チームは、がん患者の運動パターンを調べ、今回のマウスと同様の影響があるかどうかを調査していくとのことです。

GIGAZINE(ギガジン) 2016年2月18日

がん治療後の生存期間が長い患者の特徴は?
リハビリによって自立して生活している人
 国立精神・神経医療研究センター病院の早乙女貴子医師と、豪シドニー大学のリンダ・クライン博士らの研究チームは、運動機能などを回復させるリハビリテーションを受け、在宅医療などで自立した生活をしているがん患者は、その後の生存期間が長くなっていたと発表した。

 研究では、がん治療を受け、体調不良や身体機能が低下していたことで、リハビリを受けている日本、豪州のがん患者72人を対象に、運動機能の回復状況や日々の活動能力、退院後の健康状態、生存期間などを、最大で25か月間調査した。

 調査の結果はスコア化するため、「機能的自立度評価法(FIM)」という、運動や食事など日常生活を18項目に分類し、それぞれの介護量に応じて「完全自立」から「全介助」までの7段階で示す評価法を利用している。

 その結果、リハビリによってFIMのスコアが80点以上(ある程度自立できている)だった患者は、80点未満(介護がなければ生活が難しい)の患者よりも生存期間が長かった。 また、スコアが高かった患者の特徴を分析したところ、リハビリによって「病院と自宅を行き来できる歩行能力」、「軽い運動ができる身体能力」まで回復している、在宅医療を受けている、といった傾向が見られたという。

 研究者らは、「がん患者がリハビリを積極的に受け、自立した生活を送る能力を回復することは、予後を良好にする可能性を示唆する」とコメントしている。

 発表は、国際がんサポーティブケア学会誌「Supportive Care in Cancer」2015年10月号(Volume 23, Issue 10)に掲載された。

Aging Style 2016年2月21日

がん発症と人工芝に使われるゴムチップの関連性
 何年も前からその安全性について懸念の声が上がっていた人工芝の問題について、米政府がようやく重い腰を上げたようだ。米消費者製品安全委員会(CPSC)は2月12日、環境保護局(EPA)、疾病対策センター(CDC)と共同で、人工芝の充填剤の原料として使用されている古タイヤに含有される化学物質の危険性について、調査を開始すると発表した。

 米国では2014年、NBCテレビが女子サッカー選手のがん発症と人工芝に使われるゴムチップの関連性について報じた。番組に登場したワシントン大学の女子サッカーチームの准ヘッドコーチ、エイミー・グリフィンによると、人工芝の上でプレーをしていた学生たちが「次々と」がんを発症。こうした学生ら38人のうち、34人がゴールキーパーだった。

 また、この中にはワシントン州でプレーしていた選手も十数人いたが、全米各地でも同様に、がんを発症した学生たちが確認されている。大半はリンパ腫や白血病など、血液のがんを罹患したという。

 また、米紙USAトゥデーは2015年3月、「全米各地の学校や子どもたちの遊び場、保育園で使われている人工芝から、健康に害を及ぼす危険性がある高濃度の鉛が検出された。それでも米連邦政府の2機関は、人工芝は安全だとして使用を推奨している」「充填剤としてゴムチップを使用している人工芝の利用が拡大していることに関連して、主に選手のけがや皮膚感染症、がんをはじめとする健康上の懸念が浮上している。人工芝を利用している競技場は全米に1万1,000か所以上あり、これらの人工芝をすべて撤去して入れ替えるには、100万ドル(約1億1,260万円)を超えるコストがかかる」などと伝えた。

 さらにこの1年後にNBCは、「NBCニュースは人工芝の危険性について不安が高まっていることを繰り返し報じてきたが、連邦規制当局はこれについて、ほぼ沈黙を貫いている。EPA長官もカメラの前でのインタビューを拒否した」と報道した。これを受け、米下院エネルギー・商業委員会はEPAの担当部門に書簡を送付。2015年11月6日までにゴムチップを使用した人工芝を採用している競技場の安全性に関するさらなる情報の提出を求めた。しかし、EPAはこの要請にも応じていなかった。

Forbes JAPAN 2016年2月21日

がん治療で不安に思うこと、「費用」「副作用」を抑えた1位は?
 医療情報調査研究会はこのほど、医療情報サイト「imedi(アイメディ)」上で実施した「がんの治療や予防」に関する調査結果を発表した。調査期間は2015年12月16日〜2016年1月31日で、有効回答は1,097票。

 「がんの早期発見のためにおこなっていること」を尋ねたところ、「定期的な検診」が598票で「とくになし」(499票)を上回った。

 続いて「がん治療に関して不安に思うこと」を複数回答で聞くと、「転移」(475票)が最も多く、以下に「費用」(466票)、「副作用」(362票)が続いている。

 がん予防のためにしていることを複数回答で聞いたところ、「食事に気をつけている」が452票で最多。次いで「禁煙」(343票)、「飲酒の制限」(285票)、「運動」(198票)となっている。「とくになし」という回答も125票あった。

 がん治療には、標準治療(手術・抗がん剤・放射線)のほかに、自分の免疫細胞を使ってがんを攻撃する免疫細胞治療などがある。そこで、「がんの標準治療以外の治療法」を知っているか尋ねると、「知っている」(545票)が最も票を集めた。「よく知っている」(216票)と合わせると、「知らない」(336票)より、知っている人の方が2倍以上多い結果となっている。

 現在、がんを治療中の人が身近にいるか聞いたところ、「いる」の合計は657票(本人230票、友人知人199票、家族・親族228票の合計)だった。「いない」(440票)に比べて多くなっている。

 「imedi」では、がんや生活習慣病などについて詳しい情報を発信している。

マイナビニュース 2016年2月24日

コカ・コーラでがん治療薬の効果が向上する?
PPI併用時のエルロチニブの吸収率を改善
 コカ・コーラが肺がん治療によくみられる難題の解決に有用である可能性が、新たな研究で示唆された。

 非小細胞肺がんの強力な治療薬であるタルセバ(一般名:エルロチニブ)の効果は、胃のpH値によって左右される。しかし、タルセバを使用する患者の多くはプロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる胸焼け防止薬を服用する必要があり、PPIによって胃のpHが高くなる(アルカリ寄りに傾く)と、タルセバの吸収率は低下し、効果が低減してしまう。ある研究では、PPIの使用によりタルセバの血中濃度が61%低下することが明らかにされている。

 エラスムスMCがん研究所(オランダ、ロッテルダム)のRoelof van Leeuwen氏率いる研究グループは、酸性飲料であるコーラをタルセバと一緒に服用することにより、胃のpHを逆転させることができないかと考えた。

 研究では、タルセバを併用する非小細胞肺がん患者28人を対象とし、被験者の半数にはPPIを服用してもらった。最初の7日間は薬剤とともに約230mlの水を飲み、次の7日間は同量のコカ・コーラ・クラシックを飲む群と、逆の順序で飲む群に、患者を無作為に割り付けた。

 その結果、コーラの摂取によりタルセバの吸収率に、臨床的にも統計的にも有意な上昇がみられたという。この結果は「Journal of Clinical Oncology」オンライン版に2月8日報告された。

 研究著者らは、PPIを服用する患者でタルセバの効果を最大に高める方法として、1缶未満のコーラを飲んでもらうことは容易に実行できると述べている。米ノースウェル・ヘルス・プレインビュー病院(ニューヨーク州)のAlan Mensch 氏は、「タルセバを必要とする患者の多くは、胃炎や鎮痛薬による胃酸を減らすためにPPIを服用する必要がある。その対策としてコーラを利用することは興味深い」と説明している。

 コーラが選ばれたのは、オレンジジュース、セブンアップ、ドクターペッパーなどの他の飲料に比べて胃の酸性度を一時的に増大させる効果が強かったためだという。

 患者の感想としては、250mlのコーラの忍容性は良好であった。研究グループは、胃のpHに依存する他のがん治療薬に対してもこの戦略が有効である可能性があるとし、該当する薬剤としてダサチニブ、ゲフィニチブ、ニロチニブなどを挙げているが、今後の研究で評価していく必要があると強調している。

m3.com 2016年2月25日

がん死亡率改善度1位 なぜ広島県の人は死ななくなったのか
 昨年、国立がん研究センターが、都道府県のがんに関する状況を示すデータを発表した。そこでは広島が“がんにかかっても死なない”県であることがわかった。

 がん死亡率が1995年の39位から2014年の8位へと大きく順位を上げた広島。これは全国一の改善率で、この勢いが続けば長野を追い越すのも時間の問題だ。平均寿命は男性12位、女性6位、喫煙率(男性)は41位、野菜摂取量は23位(男性)、36位(女性)、食塩摂取量は25位(男性)、35位(女性)と、平均的な県のどこに、がんで死なないヒントが隠れているのだろうか。

 広島駅に降り立った記者。タクシーに乗ると、さっそく運転手(60代・男性)に話を聞く。男性は大手企業を退職後に運転手に。妻には先立たれ、娘は結婚。男おひとりさまだ。酒は飲まないが、たばこは1日2、3箱。がん検診は「受けたことがない」と話す。

「健康なので必要ない。がんになったら、病院で診てもらえばいいだけのこと」

 と笑う。ん? がん死亡率改善度1位からくる印象とはほど遠い。疑問を抱えながら県庁を訪ね、健康福祉局がん対策課課長の佐々木真哉さんに聞いた。

「確かに、広島県のがん検診の受診率は、平均かそれより下が続いていました」

 10年以降は受診率向上の取り組みを強化し、12年からはデーモン閣下が県のがん検診啓発特使に“就任”。インパクトのある情報発信を試みる。

「それが功を奏しており、関心を持つ人が増えてきました」(佐々木さん)

 広島県のがん医療の拠点、広島大学病院の杉山一彦さん(がん治療センターセンター長)は、「医療機関へのアクセスと連携の良さ」を指摘する。県内には16のがん診療連携拠点病院があり、連携する診療所の数は全国8位。「何かあったらすぐに診てもらう」。その県民の意識が連携する拠点病院への紹介につながり、がんの早期発見、早期治療をもたらす。

 受診のハードルが低い背景には、被爆地である広島の特性もあるという。

「被爆体験を持つ祖父母世代と医療の関わりは深く、かかりつけ医との信頼関係ができています。次世代も同じ医療機関を受診する傾向があります」(杉山さん)

 夕食のために立ち寄った広島の名物料理を提供する居酒屋「四季や」の店長(39)は、「確かに病院の数は多い」と話す。「何かあったら、仕事終わりの夜間でも、診てもらいますね」

 県はがん診療を専門としない医師が、患者のがん相談に乗る「がんよろず相談医」を12年から開始した。特定の研修を受け認定された相談医は、現在658人が活動している。

 勝谷・小笠原クリニック(廿日市市)院長の小笠原英敬さんも相談医の一人。こんな経験を話す。

「高血圧と高コレステロール血症の治療で長年診ている男性患者さん(60代)との雑談の中で、がん検診の話が出たんですね。一度も受けたことがないというので、超音波検査を受けてみたらと勧めました」

 かかりつけ医の後押しもあって、男性が検診を受けると、なんとすい臓にがんが見つかった。早期発見で手術ができたため、1年ほど経った今も元気だ。ほかにも、胃がんや大腸がんが見つかった例もある。

 広島市の特徴は、全国に先駆けて「がん登録」が行われている点だ。原爆の放射能によるがんの影響を調べることを目的に、広島市医師会が1957年から実施。「医療者のがんに対する意識が高い」と話すのは、広島市立広島市民病院副院長の二宮基樹さんだ。

「市内にはがん拠点病院が多い。お互いに切磋琢磨し、それが医療の質の高さにつながっている。大病院が一つしかないというような、お山の大将でないのが、いいのかもしれない」

 湯崎英彦知事は選挙公約で「がん対策日本一」を謳(うた)う。長野を越える日はくるのだろうか。

dot.ドット 2016年2月26日

米国で乳房切除術を選択する女性が増加
2005〜2013年で36%増加
 米国では、全体的な乳がん発症率は横ばいであるにもかかわらず、乳房切除術を受ける女性の比率は2005年から2013年までに36%増加していることが、米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)のデータにより明らかにされた。女性10万人あたりでいえば66人から90人に増加したことになり、なかでも両側乳房切除は10万人あたり9人から30人へと3倍以上に急増。2013年には両側切除が全体の3分の1を占めるまでになっている。

 両側乳房切除を受ける年齢が低下していることもわかった。2013年に両側切除を受けた女性の平均年齢は51歳で、片側切除を受けた女性の61歳よりも10歳若かった。

 がんがなくても予防的に両側切除を受ける女性も、10万人あたり2人から4人以上へと倍増した。乳がんの遺伝的リスクのある女性は予防措置として両側切除を受けることがあり、2013年には女優で映画監督のアンジェリーナ・ジョリーもこの手術を受け話題となった。また、両側・片側のいずれの乳房切除術も外来での実施が増えており、2013年には全体の45%が外来処置であったことも報告された。

 このデータは、乳がん治療のパターンが変化していることを示すものであり、健康、福祉、安全のための女性の選択の有効性について、さらに明確な根拠が必要であることが浮き彫りにされたと、AHRQの理事であるRick Kronick氏は述べている。

 米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のStephanie Bernik氏によると、乳房切除術を選ぶ患者と乳房温存術を選ぶ患者で、全体的な生存率はほぼ同程度であるという。それでもこのような傾向がみられる理由としては、遺伝子スクリーニングの増加、再建治療の向上、がんのない側の乳房のがん発症リスクを低減したいという女性の要求などがあると、同氏は説明している。

 米ウィンスロップ大学病院ブレスト・ヘルスセンターのFrank Monteleone氏は、必ずしも乳房切除術が必要でなくても、後に何度もマンモグラフィや生検を受け、そのたびに不安になるよりは、切除してしまうほうがよいと考える女性もいると述べている。今回の報告は、米国人口の25%以上を占める13州のデータに基づくもの。AHRQは米国保健社会福祉省に属する機関である。

m3.com 2016年3月3日

がん治療装置「中性子」の活用準備進む
日本が世界をリードできる分野
世界初の病院設置型BNCTシステム(国立がん研究センター)
陽子線で相次ぎ新技術


 陽子線がん治療システムを手がける日立製作所。既に海外展開で先行しており、国内外で10施設以上からの受注実績がある。国内では近年、名古屋陽子線治療センター(名古屋市北区)や北海道大学に納入した設備が稼働している。名古屋陽子線治療センターにはがん細胞を塗りつぶすように陽子線を照射するスポットスキャニング照射システムを提供。北大とは呼吸で動く臓器への集中照射を可能にした動体追跡陽子線がん治療システムを共同開発するなど新技術を相次ぎ誕生させている。

 特に動体追跡陽子線がん治療システムの完成は海外受注の呼び水になり、米国の医療施設への新たな導入も決まった。同システムはがん周辺の正常部位に直径1・5ミリメートルの金マーカーを置き、その位置をCTで確認し呼吸で動くがんを追跡する。がんの位置を自動検出し、がんの動きと陽子線の照射タイミングを同期させる。金マーカーが治療計画の範囲にある時だけ陽子線を照射し、正常細胞への照射影響を低減させる。

 北大では同治療システムを14年から運用。国内では京都府内でもスポットスキャニング照射技術と動体追跡照射技術を搭載した新システムが18年度中に稼働する予定。海外受注はこれまで米国が中心だったが、新システムで今後はアジア市場からの受注も狙う。

がん細胞だけ選択し照射、「BNCT」16年度にも臨床

 放射線がん治療分野では重粒子線や陽子線を腫瘍に照射する方法のほか、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)システムも国内で実用化への準備が着々と進んでいる。

 国立がん研究センター(東京都中央区)では直線加速器を使った病院設置型BNCTシステムの臨床試験が早ければ16年度内に実施される。

 同システムは、体内投与した薬剤(ホウ素薬剤)を腫瘍細胞に集積させ、中性子を照射する。粒子線がん治療システムは腫瘍のある場所を照射するため、がん細胞周辺の正常細胞への照射影響を低減させる技術の開発が不可欠になる。

 一方、BNCTシステムは選択的にがん細胞だけを照射できる。患者にはがんに選択的に集積するホウ素化合物を事前投与し、ホウ素化合物が集積した段階で中性子を照射する。正常細胞への影響をさらに減らせ、副作用が少ない。

病院内に“原子炉”

 国立がん研究センターの治療装置はCICS(同江東区)が開発したリチウムターゲットシステムと、日立の米国子会社の直線加速器を組み合わせて製作。小型の直線加速器で加速した陽子線をリチウムターゲットに衝突させて中性子を生成する。従来は安定した熱外中性子を得るために原子炉が必要だった。

 ただ原子炉は医療施設にはなく、治療技術の研究開発を進めるには患者を原子炉施設に移送しなければならなかった。原子炉は核燃料の安全性の問題もあり、これまで医療分野での実用化が難しいと言われていた。

 新システムは直線加速器を使うため小型化が可能で、核燃料の心配もない。融点が低いリチウムの使用に向け専用の冷却システムや放射線同位元素の自動洗浄設備も開発し、病院内への設置を可能にした。

 BNCTシステムは欧米でも研究開発がそれほど進んでおらず、日本が世界をリードできる分野として期待できる。今後は臨床試験に加え、新たなホウ素薬剤の開発など実用化までの道のりは平たんではないが、「日本発の新規治療技術を世界に発信できる」(伊丹純国立がん研究センター中央病院放射線治療科長)と強調する。

ニュースイッチ 2016年3月6日

癌細胞死滅と癌免疫向上に同時成功
千葉大がDGKα阻害化合物を発見
 千葉大学大学院理学研究科は、がん細胞を直接死滅させると同時に、がん免疫を高めることに成功した。がんの増殖と免疫機能の低下にかかわる酵素を阻害する化合物を発見した。相乗効果により、がん細胞を効果的に死滅させられる可能性がある。これまでの抗がん剤は正常な細胞の増殖機構にも作用してしまう。とくに脊髄細胞では、分化増殖能が低下して免疫系の不全の引き金となっていた。分子標的治療薬は、正常細胞に標的たんぱく質が発現しているなどの課題があった。

 坂根郁夫教授らの研究グループが酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)の一つであるαアイソザイム(DGKα)を阻害する化合物を発見。がん細胞の細胞死を直接誘導するとともに、がん免疫の亢進作用があることを突き止めた。

 DGKαは、悪性黒色腫や肝細胞がんの増殖を強力に促進させるだけでなく、免疫機能を担うTリンパ球の増殖停止や不活性化を誘導することが知られている。DGKαの活性を阻害できれば、がん細胞死の直接誘導に加え、がん免疫を高めることで、がん細胞死を促進することが見込まれる。DGKα阻害剤は夢のがん治療薬となることが期待される。

 最新のハイスループットスクリーニング系を用いて東京大学創薬機構の化合物ライブラリーを探索、DGKαを特異的に阻害する化合物をみつけた。得られた化合物は実際にがん細胞の死滅を促し、Tリンパ球を活性化することも確かめた。化合物の最適化などに取り組み、次世代抗がん剤の早期開発を目指す。

m3.com 2016年3月7日

がんになりやすいが死亡しにくい?!
積極的な人は不思議なパワーを持つ
 日常生活の何事にも積極的で、計画を立てて実行する人は、そうでない人と比べ、一部のがんの発症リスクは高いが、全体でみるとがんで死亡するリスクが15%も低いという不思議な結果が出た。

 国立がん研究センターなどのチームが研究をまとめ、2016年3月5日発表した。このタイプの人は検診を積極的に受けるため、がんが見つかる率は高くなるが、その分がんが進行していない状態で発見されることが多いからだ。

人生に積極的だと長生きする理由がわかった
脳卒中や心筋梗塞の死亡リスクも26%低い


 研究チームは、北は岩手から南は沖縄まで、全国8つの都府県の男女5万5130人を8年間にわたって追跡した。追跡期間中に5341人ががんを発症、うち1632人が死亡した。対象者には自記式アンケート用紙を送り、日常生活で経験する出来事や問題に対する対処の方法を聞き、性格を調べた。

 具体的には、問題が起こった時どう対処するか、次の6つの行動パターンを示し、それぞれ自分にあてはまる頻度を聞いた。(1)解決する計画を立て、実行する(2)誰かに相談する(3)状況のプラス面を見つけ出す努力をする(4)自分を責め、非難する(5)変えることができたらと空想したり願ったりする(6)そのことを避けて他のことをする、の6つだ。

 そして、「積極的・計画的」に対応するタイプを「対処型」、「消極的・場当たり的」に対応するタイプを「逃避型」と名付け、その性格パターンとがん発症、死亡のリスクを比較した。

 すると、「対処型」の人は「逃避型」の人に比べ、がん全体の発症リスクはほぼ同じだったが、まだ他の臓器に転移していない段階の早期がん(限局性がん)を比較すると、発症率(見つかる率)が約13%高かった。しかし、逆にがん全体の死亡リスクは約15%低かった。また、「対処型」の人は検診でがんが見つかる率が35%も高かった。

 研究チームでは「性格によってがんにかかるリスクに差はないが、対処型の人は検診にも積極的だから、がんの早期発見につながり、命が助かる人が多くなる」とコメントしている。

 ちなみに今回の研究では、脳卒中や心筋梗塞のリスクも比較している。「対処型」の人は「逃避型」の人に比べ、脳卒中や心筋梗塞で死亡するリスクは26%低くかった。こうなると、性格の差が寿命に影響してくるといえそうだ。

J-CASTニュース 2016年3月9日

女性の死亡者数が最も多い「大腸がん」リスクを高めるNG習慣
ざっくり言うと

女性の死亡者数が多い「大腸がん」のリスクを高めるNG習慣を紹介している
毎日お酒を飲んでいる、肉やソーセージなどを毎日のように食べている
タバコを吸っている、運動不足が続いて肥満になっているの4つ


 突然ですが、日本人女性にとって、最も死亡者数の多いがんの部位はどこだと思いますか?

 「乳がん、かな……?」「胃じゃないの?」などといろいろな意見があるかと思いますが、2013年の時点で女性の死亡者数が最も多い部位は大腸です。

 そこで今回は国立がん研究所(米国)などの情報を参考に、大腸がんリスクを高めてしまう生活習慣をまとめました。

■1:毎日お酒を飲んでいる

 お酒を飲みすぎると、大腸がんリスクが高まるといわれています。「飲みすぎってどのくらい?」という方、国立がん研究所(米国)によれば、1日に3杯以上のアルコールが要注意だとか!

 ただ、女性は生まれながらにしてアルコールを処理する能力が男性より高くないとされています。その意味では、多くても半分程度にとどめてみては?

■2:タバコを吸っている

 国立がん研究所によれば、タバコは大腸がんの死亡リスクを高めるとされています。

 世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関からは、大腸のみならずさまざまな部位のがんリスクを高めると指摘されています。

 喫煙者は今すぐ禁煙を開始し、そうでない人も周りの人の煙に注意したいですね。

■3:運動不足が続いて肥満になっている

 運動不足や肥満は大腸がんリスクを高めると、各種の研究機関から警告が出されています。

 世界保健機関(WHO)によれば、食道がん、乳がん、腎臓がんなどのリスクまで高めるとか。運動不足を甘く見てはいけないのですね。

■4:肉やソーセージ、ハムなどを毎日のように食べている

 赤肉やソーセージ、ハムなどの加工肉を食べすぎると、大腸がんリスクが高まる研究結果が出ています。

 国立がん研究所(米国)はあくまでも“可能性”という範囲で触れていますが、世界がん研究基金とアメリカがん研究協会によれば、“確実な”リスク要因だとされています。

 ちなみに国立がん研究センター(日本)の研究では、肉類全体の摂取量が多いとされる量を1日100g以上としています。100gとは、意外とすぐに摂取をしてしまいそうな量ですよね。

 毎日の様に、赤肉や加工肉を食べ続けるような生活は、ちょっと気をつけた方がいいかも……。

 以上が大腸がんリスクを高める生活習慣でしたが、いかがでしたか? 過去に大腸がんを患った家族がいる場合は、いっそう気をつけたいですね。

ライブドアニュース 2016年3月14日

ランニング 新発見!走るとがん細胞が縮小する
アドレナリン分泌でみなぎる「戦闘力」
 ウォーキングと並んで、国民に人気の2大スポーツのランニング。認知症になりにくい、老化を遅らせる、明るく前向きになる......など多くの健康効果があるが、最近、がん細胞を縮小させるという嬉しい研究が発表された。

 まだマウスの実験段階だが、負荷の強い運動をすると分泌されるアドレナリンが、免疫システムの攻撃役「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」を活発化させ、がん細胞を死滅させるためだ。ランナーにとって走る楽しみがまた増えた。

ランニングの健康効果がまた1つ増えた
マウスの実験では、がん細胞が50%縮まった


 研究をまとめたのは、デンマーク・コペンハーゲン大学のペルニール・ホイマン博士らのチーム。回し車でランニングを続けたマウスは、何も運動をしなかったマウスに比べ、がん細胞が50%も縮小したという実験結果を、国際医学誌「セル・メタボリズム」(電子版)の2016年2月16日号に発表した。

 チームは、アドレナリンががん細胞に及ぼす影響を調べるため、肺がん、肝臓がん、皮膚がんなど5つのがんにかかったマウスを、それぞれ回し車でランニングするグループと運動をしないグループの2つに分けた。人間がランニングをするとアドレナリンが分泌されるが、その状態を再現するため、ランニング組のマウスに人間並みの量のアドレナリンを注射した。

 その結果、ランニング組のマウスは、運動をしなかったマウスに比べ、5種類のがん細胞の大きさが平均で50%縮小した。がん細胞を攻撃するNK細胞がアドレナリンによって増加したからだ。マウスの体内を調べると、NK細胞が血液の中を移動し、がん細胞を探し当てて集結、攻撃する様子が観察された。

 次にNK細胞が欠乏したマウスを使い、ランニングをさせる実験をしたが、がん細胞は縮小しなかった。また、アドレナリンの働きを止めたマウスにも同じ実験をしたが、やはりがん細胞は縮小しなかった。ランニングでがんを抑制するには、十分なアドレナリンの分泌とNK細胞が必要だとわかった。

 ところで、なぜアドレナリンががん細胞を縮小させるのか。よく強壮剤のコマーシャルなどに「アドレナリン出た〜!」というキャッチコピーがある。アドレナリンは、山道でクマに遭った時のように、驚き、恐怖、怒り、興奮状態になると副腎から分泌される。「命の危機」の時に反射的に出るため「闘いホルモン」と呼ばれる。俗にいう「火事場の馬鹿力」の源だ。これが、がん細胞やウイルスを攻撃するNK細胞を増やして活性化、「闘争力」に火をつけるわけだ。

「侍」と「忍者」の協力軍が「がん細胞」城を攻撃

 研究チームは今回、インターロイキン6(IL-6)という免疫伝達分子が、アドレナリンとNK細胞の「がん細胞死滅共同作戦」に一役買っていることを発見した。IL-6は、ランニングなどの強い運動をすると筋肉組織から放出される。脂肪を燃焼したり、血管の炎症を防いだり、体にいい働きをするのだが、がんとの関連はわかっていなかった。ところが、なんとNK細胞をがん細胞の場所に案内するガイド役を務めていたことが判明した。

 「IL-6ががんの発症地点までNK細胞を導く証拠もあります。我々にとって、このメカニズムは驚きでした。なぜIL-6がそんな役割を演じるのか、今後の研究課題です」と、ホイマン博士は語っている。

 つまり、こういう図式だ。ランニングをするとアドレナリンが分泌され、がん細胞を斬る侍「NK細胞」が増える。一方、筋肉からがん細胞の隠れ場所を突きとめる忍者「IL-6」が放出される。走ることで、侍と忍者が次々とがん細胞退治に乗り出していくわけだ。

 ホイマン博士は「マウスの実験段階ですが、アドレナリンを十分に放出する運動が、がん細胞の縮小に有効であることが示されました。これまで、がん患者にどんな運動がいいかアドバイスするのが難しかったですが、ランニングのようなある程度負荷のある運動を勧められます」と語っている。

J-CASTニュース 2016年3月14日

1型糖尿病でがんリスクは高まるのか?
がん種により異なると判明
 1型糖尿病患者では、一般集団に比べて発症頻度が高まるがんがある一方で、一部のがんではリスクが低下することが、新しい研究で示された。1型糖尿病患者では、胃がんや肝臓がん、膵臓がん、子宮体がん、腎臓がんの発症リスクは高まるが、前立腺がんや乳がんのリスクは低下していたという。この知見は、「Diabetologia」オンライン版に2月29日掲載された。

 研究著者の1人、英エジンバラ大学(スコットランド)教授のSarah Wild氏によれば、今回示されたがんリスクの傾向は2型糖尿病や肥満の患者でみられるものと類似しており、インスリン治療でがんリスクが上昇する可能性は少ないとしている。

 なお、同氏は、今回の知見は1型糖尿病とがんリスクの関連性を示しただけで、これらの因果関係を証明したものではないと断っている。

 米モンテフィオーレ医療センター(ニューヨーク市)臨床糖尿病センター長を務めるJoel Zonszein氏は、「今回の研究では、1型糖尿病患者でがんリスクが上昇する理由が説明されていない」と述べており、全対象患者がインスリン治療を受けており、対象者の中に2型糖尿病患者が混在していた可能性があるとも指摘している。

 この研究では、オーストラリア、デンマーク、フィンランド、スコットランド、スウェーデンの5カ国から1型糖尿病患者のデータを収集した。この1型糖尿病の患者集団と一般住民の集団との間でがん発症率を比較した。3900万人・年の追跡期間中、1型糖尿病患者のうち約9,000人ががんを発症した。

 その結果、男性の1型糖尿病患者ではがん全体のリスク上昇は認められなかったが、女性では7%のリスク上昇が認められた。Wild氏によると、男性では前立腺がんリスクが44%低下しており、これにより全体のがんリスクに上昇がみられなかったとしている。前立腺がんや乳がんといった男女で特異的ながんを解析から除外すると、がん全体のリスクは男性で15%、女性では17%上昇していた。

 がん種類別にみると、胃がんリスクは男性で23%、女性では78%上昇し、肝臓がんリスクは男性で2倍に、女性では55%上昇していた。一方で、女性の乳がんリスクは10%低下していた。ただし、多くのがんは発症頻度が低く、実際のリスクはわずかなものだという。

 また、がんリスクは1型糖尿病の発症直後で最も高くなり、1型糖尿病と診断後1年以内のがんリスクは男女とも2倍以上に上った。糖尿病罹病期間が長いほどがんリスクは低下し、男性の場合は診断から20年後、女性では診断から5年後に一般集団レベルにまで低下していた。ただし、診断後にリスクが高かったのは、既存のがんが検出されたことによる可能性もあるという。

 2型糖尿病とは異なり、1型糖尿病は生活習慣には関連していないが、「禁煙や減量、運動などの生活習慣の改善はがんリスクの低下につながるもので、1型糖尿病患者にとっても重要だ」と、Wild氏は述べている。

m3.com 2016年3月14日

タバコだけじゃない!
死亡者数1位「肺がん」リスクを高めるNG習慣3つ
 日本人の主な死因が何かご存じですか? 自殺や不慮の事故を除くと、20代から80代の全年代で“がんによる死亡”が多いと発表されています。

 がんの種類別に見ると、最も死亡者数が多かった部位は2013年では男女合計で肺がんが最多になっています。

 そこで今回は、国立がん研究所(米国)や世界保健機関(国連)などの情報を基に、肺がんリスクを高めてしまうNG習慣をまとめます。

■1:喫煙をしている/家や職場で誰かのタバコの煙を吸っている

 肺がんのリスクを高める確実な要因は、やはり喫煙。

 自分が吸っている場合はもちろん、家族や職場で誰かが吸っているタバコの煙を間接的に吸っている場合も、肺がんリスクを高めると分かっています。

 周りが吸っている場合は、喫煙場所を変えてもらうなど働きかけたいですね。

■2:フルーツや野菜を十分に摂取していない

 フルーツや野菜を十分に摂取すると、一部の研究で肺がんのリスクを下げられるという結果が得られています。

 世界がん研究基金なども、果物の摂取が肺がんを予防してくれる可能性があると情報を発表しています。

 世界保健機関(国連)は、十分な野菜や果物を口にすると、口腔(こうくう)がん、食道がん、胃がん、大腸がん(結腸、直腸)などを予防できる可能性が高いとしています。

 たくさん食べても損はしませんので、意識的な摂取を心掛けたいですね。

■3:運動不足が続いている

 一部の研究では、十分な身体活動が肺がんを予防してくれる可能性が示されているんだとか。

 確実に予防する効果がなくても、十分な運動は健康に大きなメリットがあります。世界保健機関(国連)や世界がん研究基金によれば、身体活動は大腸がんを予防するとされています。また、乳がんも予防してくれる可能性が高いとか。

 食道がんなど各種のがんリスクを高めたり肥満の予防にもなったりしますので、ぜひとも運動を始めたいですね。

 以上、肺がんのリスクを高める生活習慣をまとめましたが、いかがでしたか? 肺がん以外の病気の予防にも役立ちますので、注意してみてくださいね。

日刊アメーバニュース 2016年3月16日

低用量アスピリンの服用で一部のがんリスクが低減
特に大腸・消化管がんで強い効果
 低用量アスピリンを毎日服用することにより、大腸がん、消化管がんをはじめとして、がん全体のリスクが3%低減する可能性があることが報告された。ただし、便益が認められるのは6年以上服用した場合に限られるという。

 アスピリンはがんを引き起こす特定の生物学的経路に作用するほか、炎症や発がん性蛋白質の量を軽減すると、米マサチューセッツ総合病院(ボストン)のAndrew Chan氏は説明している。

 「JAMA Oncology」オンライン版に3月3日掲載された今回の研究は、アスピリンの服用とがんリスク低減の関連を示すにとどまり、因果関係を裏づけるものではないが、他の研究でも同様の結果が得られているという。

 付随論説の著者の1人である米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのErnest Hawk氏は、「本研究は、心筋梗塞リスクの低減や関節炎治療、疼痛緩和など、他の理由でアスピリンを服用する人において、消化管がん、大腸がんが低減することを示唆する新たな知見である」と述べている。

 今回の研究では、看護師健康調査(NHS)および医療従事者追跡調査(HPFS)に参加した13万人超の男女を対象として、アスピリンとがんの関連を検討した。30年以上の追跡期間で、女性8万8,000人強のうち2万人強、男性4万8,000人弱のうち7,500人強ががんを発症した。

 低用量アスピリンを週2回以上服用した場合、アスピリンを定期的に服用していなかった場合に比べてがん全体のリスクが3%低く、消化管がんで15%、大腸がんで19%のリスク低減がみられた。しかし、乳がん、前立腺がん、肺がんなどの主要ながんのリスク低減は認められなかった。

 また、アスピリンを定期的に服用することにより、大腸内視鏡によるスクリーニングを受けていない場合は17%、受けている場合は8.5%の大腸がんを予防できる可能性があるという。

 米国がん協会(ACS)のEric Jacobs 氏によると、同協会は現在のところアスピリンの使用について、賛成も反対も表明していないという。心筋梗塞や脳卒中の既往のある人は、一般的にアスピリンを処方されるが、そうでない人は、胃出血などのリスクと疾患予防の便益とのバランスを検討する必要があると同氏は述べている。

 アスピリンを服用すべきか迷っている人は、まず医師に相談するようJacobs氏は勧めている。また、アスピリンを服用していても大腸がんスクリーニングを受けなくてよいわけではないと同氏は述べ、「50歳以上の人はもれなく大腸がん検査について医師に相談すべきだ。ポリープが見つかればがんになる前に切除できる」と説明している。

m3.com 2016年3月17日

大腸がんの「化学予防」に糖尿病治療薬が有用な可能性
横浜市立大の研究グループが発表
 糖尿病治療薬のメトホルミンを服用すると、大腸腺腫切除後に、がん化するリスクが高い腺腫の新規発症および再発率が抑制されるとの研究結果を、横浜市立大学肝胆膵消化器病学の中島淳氏らが報告した。安価な既存薬による大腸がんの「化学予防」の実現につながるものと期待される。詳細は、「Lancet Oncology」オンライン版に3月2日掲載された。

 がん撲滅は世界中で喫緊の課題とされている。なかでも大腸がんは、生活習慣の欧米化を背景にわが国でも患者数が急増しており、新たな対策が求められている。

 中島氏らは、がんの究極な対策は予防にあるとし、薬剤を用いた「化学予防」に着目。これまで、糖尿病治療薬のメトホルミンによる大腸がん抑制効果を示唆する数多くの研究が報告されているものの、基礎研究レベルの結果にとどまっていたことから、今回、大腸ポリープ切除術を施行した患者を対象に、術後のメトホルミン投与の有効性と安全性を検討するランダム化プラセボ対照二重盲検デザインの比較試験を実施した。

 対象は、大腸腺腫またはポリープを内視鏡で切除した非糖尿病患者151人。対象患者をメトホルミン250mg/日を服用する群(79人)とプラセボを服用する群(72人)の2群にランダムに割り付けた。服薬開始から1年後に内視鏡検査を実施し、大腸前がん病変である腺腫またはポリープの新規発症率、再発率を比較検討した。

 その結果、服薬開始から1年後の腺腫の新規発症および再発率は、プラセボ群に比べてメトホルミン群で約40%有意に低下していた(30.6%対51.6%、リスク比0.60、95%信頼区間0.39〜0.92、P=0.016)。大腸ポリープの新規発症および再発率も同様に、プラセボ群に比べてメトホルミン群で約33%低いことがわかった(38.0%対56.5%、同0.67、0.47〜0.97)。なお、メトホルミンの服用による重篤な有害事象は認められなかった。

 同氏らは「大腸腺腫やがんを切除後もがんリスクは高いとされており、メトホルミンの服用が大腸がんリスクの低減につながると考えられる」と述べている。また、同氏はHealthDayの取材に応じ、メトホルミンは化学予防薬の4つの必須条件(副作用が少ない、作用機序が明らか、服用しやすい、安価)を満たしていることから、「心筋梗塞や脳梗塞の予防にアスピリンが使われているように、がんの予防にも、ハイリスク患者には薬剤による予防介入が実用化されるのもそう遠くないと考えている」と期待を示している。

m3.com 2016年3月18日

大腸がんリスクを低減する6つの方法
特に減量と身体活動が重要な役割
 がんと栄養学の専門家によると、大腸がんリスクを軽減するための6つのステップが明らかになっており、これに従えば、大腸がん症例の半数は予防できるという。

 米国の統計では、大腸がんはがん死亡原因の第2位であり、患者数も3番目に多い。米国立がん研究所(NCI)の推定では、2016年の大腸がん患者数は13万4,000例を超える。米国がん研究協会(AICR)のAlice Bender氏は、「これまでの研究で、食事・体重・身体活動によって、米国の大腸がんの50%は予防できることが示唆されている。これは毎年約6万7,200例に相当する」と話している。

 エビデンスに裏づけられた6つの方法は以下の通り。

@ 健康体重を維持し、腹部の脂肪量をコントロールする。腹部の脂肪は、体重にかかわらず大腸がんリスク上昇に関連する。

A 適度な運動を定期的に行う。家の掃除からランニングまで、さまざまな活動が考えられる。

B 繊維質の豊富な食べ物をたくさん摂る。1日あたり食物繊維10g(豆であれば1カップ弱)を摂ると、大腸がんリスクが10%低下するという。

C 赤肉の摂取量を減らし、ホットドッグやベーコン、ソーセージなどの加工肉を避ける。同じ重量で比較すると、加工肉による大腸がんリスクは赤肉の2倍にもなる。

Dアルコールは止めるか、控えめにする(男性は1日2杯、女性は1杯)。

Eニンニクをたっぷり摂る。エビデンスは、ニンニクの豊富な食事が大腸がんリスクを低減することを示唆しているという。

 3月は全米大腸がん啓発月間。これに伴い米国がん協会(ACS)は、50歳以上の人は大腸がんスクリーニングについて医師に相談するよう勧めている。スクリーニングにより症状が出る前にがんが見つかれば、治療しやすくなり、生存率も高まる。

m3.com 2016年3月22日

乳癌患者の妊娠出産手引きを公開
医療情報サービス(Minds)、適切な情報提供のあり方を解説
 医療情報サービス(Minds)はこのほど、「乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き 2014年版」をオンラインで無料公開した。生殖の適齢期にある乳癌サバイバーの増加に伴い、日本がん・生殖医療研究会(現日本がん・生殖医療学会)などが編集したもので、乳癌患者の妊娠出産を考える際に医療従事者が提供する情報を正しく理解し、適切に判断して選択を進めていくプロセスを紹介している。

 この手引きは、平成24-25年度厚労科学研究費補助金「乳癌患者における妊孕性保持のための治療選択および患者支援プログラム・関係ガイドラインの開発」班と同学会が初めて編集した。日本乳癌学会乳腺専門医への調査で乳癌患者の8割近くが妊孕性に関する話題を診察室で持ち出さなかったり、乳癌患者に妊孕性の問題が生じても生殖医療医にコンサルテーションを行うと回答した乳腺専門医が24%にとどまったりしたことが手引き作成のきっかけになったという。

 手引きの想定利用者は、挙児希望のある乳癌患者の診療に携わる乳癌治療医、生殖医療医とメディカルスタッフとしている。患者への情報提供や医療者のコミュニケーション、乳癌と診断された患者の将来の妊娠、挙児希望を有する乳癌患者に対する癌治療など、5つの大項目で計31のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、診断時から妊娠中・出産後の管理まで解説している。

m3.com 2016年3月23日

メラノーマ7割超で異常なほくろ認めず【米国癌協会】
メラノーマは「ほくろの数が少ない」ことも判明
 米国癌協会(ACS)は3月8日、ほくろが多いとメラノーマ(悪性黒色腫)発症リスクが高いと考えられていたが、逆にメラノーマにはほくろの数が少なく、7割超で異常なほくろが全くない場合もあるとする研究を紹介した。ADDは、ほくろの数に限らず、定期的な自己チェックを勧めている。

 この研究では、メラノーマ患者566人を対象に皮膚科専門医がほくろの数を数え、(1)正常なほくろ、(2)正常に見えるがメラノーマの特徴も示すほくろ――に分類した。その結果、メラノーマ患者の66%はほくろが全くないか20個未満で、77%にはメラノーマの特徴を示すほくろは全く認められなかった。その一方で、メラノーマの特徴を示すほくろ数が5個以上ある患者は、予後の悪化傾向が確認された。同研究は3月2日にJAMA Dermatology誌に掲載された。

 研究者のAlan C. Geller氏は「ほくろが多ければ検診を受ける必要がないというわけではないが、ほくろの数は必ずしも決定的な因子ではない」と結果を分析した上で、「皮膚の色が薄い人は、ほくろの数にかかわらず全員が皮膚検診を受け、自己チェックの方法も知っておく必要がある」と述べる。

 ADDは、皮膚の自己チェックを月に1度、全身が映る鏡を使って明るい部屋で行うことを推奨。見えにくい部位は、手鏡で観察を勧めている。自己チェックの詳細は下記の通り。

【ADDが自己チェックに勧める「メラノーマの特徴ABCDE」】

 A:Asymmetry(非対称性) ほくろの片側が異なる

 B:Border(辺縁) 辺縁が不鮮明、もしくはギザギザして不整になる

 C:Color(色調) 色が不均一で、茶色や黒が混じったり、ピンクや赤、白、青などで覆われることもある

 D:Diameter(直径) 直径が6 mm超、鉛筆についている消しゴムを超える大きさがある

 E:Evolving(進化) 拡大傾向や形や色調の変化が認められる

 ADDは、自己チェックで異常があれば、直ちに皮膚科専門医への受診を推奨するとともに、上記の特徴に限らず、以下のような症状があれば専門医に相談することも勧めている。

新しく出来たほくろ

ほかの部位にあるものと外観が異なるほくろ

治らない傷や腫れ物

ほくろの辺縁を超える発赤や新たな腫れ

かゆみ、痛み、圧痛

しみ出しや落屑、出血の出現

m3.com 2016年3月23日

新見正則「医療の極論、常識、非常識」
飲酒で顔赤くなる人、毎日飲むと「がん発生率」急増…赤くならない人も危険、どうすべき?
新見正則/医学博士、医師

 今回は、アルコールとがんの話で盛り上がっています。2月に松尾恵太郎・愛知県がんセンター研究所遺伝子医療研究部部長らが発表した、酒を飲んで顔が赤くなる人が大量飲酒を続けると80歳までに20%の人が食道や喉のがんになるという件についてです。同研究所が正式に発表した報告なので、信憑性がありますね。

 この報告において「大量飲酒」とは、アルコールの量が1日量で46グラム以上となっています。1合は180ミリリットルですから、約13%のアルコール度の日本酒で換算すると、ちょうど2合になります。ビールはアルコール度数約5%なので、約1リットルになります。顔が赤くなる人が、毎日日本酒2合またはビール1リットルを週5日以上飲み続けると20%の人が80歳までにがんになるそうです。

 しかし、アルコールが23〜46グラムで週5日以上では、20%が約5%に激減します。また、顔が赤くならない人が大量飲酒(46グラム以上を週5日以上)しても80歳までに食道や喉にがんができる確率は3%だそうです。

 この発表を受け、“非常識君”は「僕は顔が赤くならないから、いくら飲んでもたった3%しか食道や喉のがんにはならないのか。顔が赤くなる人の7分の1の確率だから、がんがんアルコールを飲む」と主張しています。“極論君”は「僕は顔が赤くなるから、今日からアルコール量が45.9グラム以下となるようにしっかりと計算して飲む。46グラム以上で20%、それ未満では5%だから超意味がある行為だ」と自慢しています。“常識君”は、「各人がほどほどの量のお酒をたしなめばいいんじゃないの」といつものように大人のコメントです。

 おもしろいですね。アルコール度数の高いお酒を飲む習慣がある地域には食道がんが多い、といったことを筆者は医学生の頃に習いました。しかし、今回の研究は直接に粘膜をアルコールが刺激してがんが発生するというストーリーではなく、体に吸収されたアルコールが食道や喉のがんを引き起こしているということだそうです。だからこそ、アルコールを代謝できる人、つまり顔が赤くならない人はアルコールの害が少なく、アルコールを代謝できない人、つまり顔が赤くなる人は1日量46グラムを超えるとがんの発生率が急激に上昇します。ともかく、顔が赤くなる人は要注意というメッセージですね。

がんにならないアルコールの正しい飲み方

 では、非常識君のように顔が赤くならない人は、アルコールの量に制限はないのでしょうか。この研究は食道と喉のがんに関して、顔が赤くならない人は少々飲んでも、顔が赤くなる人がお酒を控えた場合と差はあまりありませんよ、という結論です。

 アルコールは基本的に蓄積毒です。人が一生に飲めるアルコールの量は決まっているといわれていますが、その量をあらかじめ正確に知ることはできません。アルコールを飲みすぎると、肝炎から肝硬変、そして肝がんなどで死亡します。つまり食道や喉に限っては大した問題ではない顔が赤くならない人の飲酒も、肝臓そのものに対する危険はあるのです。

 肝臓は8〜9割の機能がなくなってようやく不具合が認められるともいわれます。生体肝移植では自分の肝臓の約半分を切り取って、そして移植用に提供します。こんなことをしても、提供者の肝機能はそれほど問題ありません。つまり、結構な予備能力が肝臓にはあるので、「沈黙の臓器」などともいわれます。

 極論君は45.9グラムのアルコールを飲むという主張ですが、その線引きもひとつの基準で、実は人それぞれなのです。そして、45.9グラムを正確に量ることも結構面倒です。何より、そんな飲み方ではお酒もおいしくありません。

 結論は、深酒しないように、アルコールを楽しみながら少々いただくことが、「酒は百薬の長」ともいわれる所以だと思います。アルコールは蓄積毒ということを念頭において、ご自身の体と相談しながら、それぞれの適量の範囲で楽しみましょう。結局、常識君の言う通りです。

●新見正則(にいみ・まさのり)
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1993〜1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年〜 帝京大学医学部外科に勤務

Business Journal 2016年3月26日

健康的な生活習慣で「がん」は本当に防げるのか?
30年も研究した結果
 日本人の死亡原因1位のがん。長年の研究で治療法はかなりの進歩を遂げていますが、まずは「がんに罹らないこと」が一番ですよね。『Dr.ハセのクスリとサプリメントのお役立ち最新情報』では、生活習慣ががんの罹患率とどのように関係するのか30年にわたって調査したイスラエルのグループの報告が紹介されています。

やっぱり、がんを防ぐには健康的な生活習慣が一番

 私が今一番気になる病気はがんと痴呆症で、何とか避けたいと願っています。そこで今日は、がんについてのお話を。

 がんは代表的な生活習慣病の1つですので、健康的な生活習慣が、がんの予防には一番という内容です。

 これはがんと栄養の関係を取り扱っている専門誌Nutr Cancer誌に、イスラエルのグループ(Tel Aviv University)が報告したものです。

 研究では、30年間にわたって生活習慣とがん罹患率との関連を調べました。1982年の研究開始時に、健康な男女632名(40-70歳)を対象に、食事調査や身体活動などの調査、血圧、体重、身長、血液検査が行われました。

 その際、1年以内にがんと診断された13名、および極端な摂取カロリーの4名は除外されています。

 その後、平均24.2年間の追跡調査したところ146名(23.7%)が、がんに罹ったことが明らかになりました。

 次に、食事内容などの生活習慣に関する解析を行ったところ、比較的よく野菜を摂っているグループでは、ほとんど摂らない群に比べて、全がんリスクが38%も低いことが分かったそうです。

 なお、興味深いことに、果物をあまり多く摂るグループでは、逆にリスクの増加が認められています。

 以上の結果から、がんを防ぐ生活習慣・ライフスタイルとしては、

 BMIが正常範囲

 タバコは吸わない

 食物繊維と野菜の摂取が多い

 運動習慣

が重要であることが分かりました。

 また、このような健康的な生活習慣・ライフスタイルを行えば、全がんリスクも37%に低下すると結論されています。

 やっぱり、がんを防ぐには健康的な生活習慣が一番という訳ですね。

まぐまぐニュース! 2016年4月12日

白色の光でがん患者の疲労改善=米臨床試験
 ニューヨーク市の法律事務職員ワンダ・クウィチェックさん(64)は血液のがんの一種である多発性骨髄腫の患者だ。2014年に化学療法による治療を受け、幹細胞移植も受けた。治療を受け始めると、眠れなくなり、精神的にも消耗した。仕事から帰ると疲れ切っていて、すぐに横になって休むようになった。

 クウィチェックさんは昨年、マウント・サイナイ・アイカーン医科大学の臨床試験に参加した。試験の目的は、定期的に明るい白色の光を照射することで多くのがん患者を悩ませている極端な疲労や気分の落ち込みを緩和できるか確かめることだ。

 4週間にわたって毎朝30分、強い白色の光を放つ特別な照明装置の近くに座った。光を浴びている間はコーヒーを飲んだりテレビのニュースを見たりすることが多かった。クウィチェックさんはすぐに症状の改善を実感した。以前よりよく眠れるようになり、日中の疲労も改善した。「幸福感が増した。光を浴びると以前よりも元気になった」。

 直近の臨床試験には54人のがん患者が参加。うち約半数は明るいの白色の光を、残りの被験者は薄暗い赤い光を浴びた。研究チームのリーダーの1人で、マウント・サイナイの腫瘍科学助教授、Heiddis Valdimarsdottir氏が先月の米心身医学会議(APS)年次会合で報告した中間結果によると、白色の光を浴びた患者では落ち込みの症状が大きく緩和されたが、赤い光を浴びたグループには実質的な変化は見られなかった。

 マウント・サイナイの心理学者で内科教授のウィリアム・レッド氏は「ガン患者は光が不足することが分かっている」と話す。光療法は「疲労と気分の落ち込みがあるがん患者に大きな効果があった」という。レッド氏もこの研究チームのリーダーの1人だ。

 季節性情動障害(SAD)――日照時間が短くなる冬に起きるうつ――や時差ぼけの影響などさまざまな症状の治療に明るい光が効果をもつ可能性があることは以前から研究者が指摘していた。英王立精神医学会のオンライン誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サイカイアトリー・オープン」は先月、患者900人前後が参加した20の研究についての分析を取り上げた。これによると、光療法は季節を問わない典型的なうつに対しても「追加的な治療介入」として役立つ可能性があるという。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校の名誉教授ソニア・アンコリ=イスラエル氏によると、光療法は全ての患者に効果があるとは言い切れない。重度のうつには効かない可能性があり、必ずしも薬や従来の治療法の代わりにはならないそうだが、光療法には「ガン患者の生活の質を改善する潜在的な力」があるという。アンコリ=イスラエル氏はマウント・サイナイの研究チームと連携している。

 光を浴びると患者の気持ちが晴れるメカニズムはまだ完全には解明されたわけではないが、光療法は睡眠に影響する「サーカディアンリズム」と呼ばれる24時間周期の生物のリズムなどに作用して効果をもたらす可能性があると考えられている。Valdimarsdottir氏によると、がん患者はこのリズムが乱れていることが多い。

 最新の研究はがん患者のうつの兆候に注目し、被験者に疲労の度合い、うつの症状、睡眠に関する問題についてのアンケート調査を行った。その結果、全ての患者が治療が必要なほどの疲労に悩まされていることが分かった。

 被験者は毎日30分、大学が用意した特別な照明機器の近くに座るよう指示された。顔から約18インチ(46センチ)の距離に45度の角度で機器を置き、じっと座っているかぎり、コーヒーを飲んだり本を読んだりしてもかまわない。機器が発する光の明るさは1万ルクス。例えば、室内の明るさは200ルクス未満が普通で、晴れた日に屋外を散歩すれば1万〜5万ルクスかそれ以上の明るさの光を浴びることになる。研究チームは被験者がいつ、どのくらいの時間、光を浴びたかを追跡した。

 研究チームは米国立がん研究所から獲得した340万ドル(約3億7000万円)の補助金で光治療について5年がかりの研究を始める。この研究もがん患者の疲労、落ち込み、睡眠障害、サーカディアンリズムについて行われ、マウント・サイナイとメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターで募った200人の患者が参加する予定だ。

 研究に関わるスローン・ケタリングの心理学者キャサリン・デュアメル氏は「薬も認知行動療法もあるが、(光療法は)非常に手軽」と話している。

 マウント・サイナイの臨床試験に被験者として参加したニューヨークの映像編集者ショーン・メリアムさんは(48)は多発性骨髄腫の治療で疲れ切っていたという。昨年、幹細胞移植を受けたあとは疲れはさらにひどくなった。

 はじめは光治療の効果を疑っていたそうだが、効果はあった。ただ変化が少しずつ起きたため、試験が終わるまで症状がどの程度改善したか気づかなかった。「(光治療を)やめると違いを感じた。『また疲れている』と思った」。

ウォール・ストリート・ジャーナル 2016年4月12日

肥満が子宮がん増加に関連か=英研究
 慈善団体「英国がん研究所」は、肥満が子宮がんの増加と関連している可能性があると警告している。

 同研究所によると、1990年代には10万人に19人の割合で子宮がんと診断されていたが、2013年には10万人に29人の割合まで増加した。

 研究者らは、肥満と子宮がんとの関連性は明確になっていないものの、脂肪から出るホルモンが影響を及ぼしている可能性があると話す。ただし、さらに研究が必要だと認めている。

 英国では、毎年約9000人が子宮がんと診断され、約2000人が死亡している。

 研究者らは、過去20年間の治療法向上で生存率が上昇しているものの、子宮がんにかかる女性の数がなぜ増えているのか、さらなる研究が必要だと指摘した。

 英国がん研究所のジョナサン・リーダーマン教授は、「子宮がんの症例がこれほどまで急増しているのは懸念される」と言い、「すべての理由は分かってはいないが、約3分の1の症例は肥満との関連が見られる。このため、子宮がんの症例増が肥満度の上昇と連動しているのは意外ではない」と述べた。

 専門家らは、余分な脂肪が出すホルモンや成長因子が細胞の分化を促し、腫瘍が形成される確率を引き上げている可能性があると指摘している。このほか、運動不足や年齢、遺伝子なども要因だとされている。

 英公衆衛生局(PHE)のアリソン・テッドストーン博士(栄養学)は、「太り過ぎや肥満が一部のがんのリスクを高めることは分かっている。そのため、食べる量や摂取カロリー、糖分、脂肪に気を付けることは重要だ」と述べた。

提供元:http://www.bbc.com/japanese/36033990

WEDGE Infinity 2016年4月13日

夜の間食で乳がん再発リスク上昇
夜の絶食時間が13時間未満だとリスクが36%高い
 夜中の間食が好きな乳がん患者では再発リスクが高い可能性が、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)ムーアズがんセンターのRuth Patterson氏らの研究でわかり、研究論文が「JAMA Oncology」オンライン版に3月31日掲載された。

 ラットを用いた過去の研究で、夜間の絶食時間が長いと、がんの転帰不良につながる血糖値上昇、炎症、体重増加を予防できることが示されている。そのためPatterson氏らは、1995〜2007年にWomen's Healthy Eating and Living(WHEL)試験(女性の健康的な食事と生活に関する臨床試験)に登録し、初期の乳がんと診断された27〜70歳の女性2,400人超のデータを検討した。

 自己申告による食事データを用いた結果、全体では、夜間の絶食時間は平均12.5時間だった。夜間の絶食時間が13時間未満の女性では、13時間以上の女性と比べて、約7年間の追跡期間における乳がん再発リスクが36%高かった。

 なお、同部位のがんまたは新たな原発がんを再発とみなし、間食は午後8時以降における合計25kcal以上の摂取とした。絶食時間が長い女性では、過去3カ月の血糖値を示すHbA1c濃度も低く、睡眠時間も長かった。

 ただし、夜間の絶食時間の長さは、追跡期間中の乳がんによる死亡、原因を問わない死亡のリスクには影響しなかった。Patterson氏は、「今回の研究は絶食時間の短さと再発の関連性を見出したに過ぎないため、絶食を推奨するには時期尚早だ。しかし、血糖は腫瘍を増殖させる燃料となる可能性があり、また睡眠の質や量の不足ががんリスクを上昇させるとの既存報告は多い」と述べている。

HealthDay News 2016年3月31日

m3.com 2016年4月15日

妻に愛されている男性は大腸内視鏡検査の受診率が高い?
一方、女性では結婚状態による差みられず
 高齢男性の場合、幸せな結婚生活を送り、妻が高学歴であると、内視鏡による大腸がん検診を受ける可能性が高いことが、米シカゴ大学老年医学・緩和医療科長のWilliam Dale氏らの研究でわかった。

 55〜90歳の全米の男女カップル800組超を検討した結果、過去5年間の大腸内視鏡検査の受診率は、既婚男性では独身男性に比べて20%近く上昇した。さらに、既婚男性の受診率は、妻が夫婦関係を幸せだと思っている場合は約30%、妻が高学歴である場合は約40%、それぞれ上昇していた。

 一方、既婚女性の受診率は、夫の幸福度にかかわらず独身女性と同程度であり、夫の学歴で差が生じることもなかった。

 Dale氏は、「多くの家庭では女性が医療費を管理している。そのため女性は、夫の健康に関する選択を差配し、決定する余地をもつ管理者となる。女性では結婚による健康への利益はあまり認められなかったが、これは女性のほうが友人や他の親族など、夫以外の人の助けを頼っているためではないか」と話している。

 配偶者の影響について理解を深めることで、大腸がんスクリーニングを向上できるかもしれない。米国では、大腸がんはがん死亡原因の第2位だが、推奨のスクリーニング検査を受けていない人は40%近くに及ぶ。米国疾病管理予防センター(CDC)は、基本的に50歳以降は10年ごとに検査を受けるよう勧めている。

 「結婚生活を大切にする気持ちをもつ妻ほど、夫に健康的な行動をしてもらいたいと促し、妻が協力的だと考えている夫ほど、その助言を受け入れる可能性は高い」とDale氏は話し、この知見から、適切な促しと配偶者の助けがあれば、男性の検診受診率は向上することが示唆されたと述べている。

m3.com 2016年4月18日

知っておきたい、がんになりやすい4つの原因
日本人とがんについて
 国立研究開発法人国立がん研究センターの2015年の発表によると、日本ではがんの罹患数は約98万例にのぼるとされ、そのうち37万人近くの人が亡くなると予想しました。日本人の3人に1人が、がんが原因で亡くなっているとも言われています。

 がんという病気は、一体どんな原因で起こる病気なのでしょうか。今回は、がんの原因について詳しくご紹介します。

1.喫煙

 近年、さまざまな研究結果によって、がんは生活習慣の改善から予防できる病気であることがわかってきました。

 がんの一部は遺伝性のものもありますが、遺伝子的な要因よりも生活習慣における要因のほうが大きいとされています。

 生活習慣における要因の中でも、最も影響があるとされているのが喫煙です。

 たばこは発がん性のある物質としても知られており、たばこの煙には400種類以上の化学物質が含まれていて、そのうちの60種類には発がん性が確認されているといわれています。

 たばこの煙は吸っている人のみに限らず、周りにいる人も受動喫煙によって体内に取り込む危険性があります。

2.食生活

 食生活において、塩分の取り過ぎは胃がん、熱し過ぎる食べ物や、スパイスなどの刺激がある辛い食べ物の食べ過ぎは食道がんのリスクが高まります。他にも野菜不足や動物性食品の過剰摂取、大量の飲酒もがんを引き起こす原因につながります。

 また、加工食品に含まれている食品添加物には、発がん性のある物質が含まれていると主張する人もいます。

 主な発がん性が疑われる食品添加物として、マーガリンに含まれているトランス脂肪酸や、ハムやベーコンなどの加工に使用される発色剤の亜硝酸ナトリウム、砂糖の代わりに使用する人工甘味料であるアスパルテームなどがあげられます。

3.ウイルスや細菌などへの感染

 がんの主な原因は、生活習慣によるものとされていますが、その一部はウイルスや細菌などへの感染が影響している場合があります。

 ウイルスや細菌などから引き起こされる主ながんの種類として、肝炎ウイルスからくる肝臓がん、ピロリ菌からくる胃がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)からくる子宮頸がんなどがあげられます。

4.ストレス

 ストレスは、がんに大きな影響を与える原因とされています。

 通常は発生した活性酸素(酸化ストレス)は速やかに消去されますが、ストレスがたまると、体が持つ抗酸化力以上に活性酸素がたまりやすい状況となり体内に蓄積されることによって、遺伝子を傷つけ、がんを促進させるのです。

 特に、40歳以上になると体内で活性酸素が増えやすくなります。

生活習慣に気をつけてがんを予防しよう

 このように、がんは私達の日々の生活習慣の積み重ねが大部分の原因になっているのが現状です。

 喫煙や飲酒はなるべく控え、バランスのよい食事を取ることや、日頃からストレスをためないような時間の使い方をすることが大切です。少しずつできることから生活週間を見直すことで、がんの予防を心がけていきましょう。

healthクリック 2016年4月13日

1日2杯以上のコーヒーで腸がんを50%も防げることが明らかに
 みなさんは1日に何杯のコーヒーを飲みますか?

 朝は目を覚ますために、仕事中は集中力を高めるために飲むかたも多いと思いますが、コーヒーを1日2〜3杯飲むだけで、腸のがんが防げるという説が発表されました。

■1日数杯のコーヒーで腸のがんリスクが下がる

 アメリカの南カリフォルニア大学で、一日ほんの数杯のコーヒーで大腸がんや直腸がんが防げるという新しい研究結果が出たのです。

 腸のがんは、アメリカでは男女ともにかかりやすいがんの第3位。日本でも1980年ごろにくらべ、特に大腸がんの死亡者数は男女ともに約3倍に増えています。

 もしもコーヒーを飲むだけで、リスクを下げることができるなら、こんないい話はありません。

■がん患者と健康な人のコーヒー消費量を調査!


 アメリカ癌学会によれば、この1年だけで95,000人以上が結腸がんに、39,000人以上が直腸がんの診断を受けていて、腸のがんは依然増える傾向にあります。

 研究者たちは、過去6ヶ月以内に腸のがんと診断を受けた5,100人の男女と、腸のがんの既往歴のない4,000人の男女とを対象に比較調査。

 参加者達は1日に飲んだエスプレッソやインスタントコーヒー、また、ノンカフェインのコーヒーおよびフィルターコーヒーなど、どんな種類のコーヒーでもすべて報告することになっていたそうです。

 さらに、がん患者の家族歴、食生活、運動と喫煙の有無等も調べました。

 その調査結果によると、コーヒーを飲むことで、腸のがんのリスクを減らすことがわかったというのです。1日に1〜2杯飲むだけでも、腸のがんのリスクは26%下がり、1日に2杯以上飲むと50%まで下がるそうです。

■カフェイン入りもノンカフェインも効果は同じ

 さらに、カフェイン入りかノンカフェインかに関係なく、どちらのコーヒーにもリスクを減らす効果があることもわかりました。

 コーヒーに含まれる他の物質が人の腸の健康を高めているようです。カフェインやポリフェノールは抗酸化作用があり、潜在的な結腸がん細胞の成長を阻んでいるのではないかと研究者たちは考えています。

 たとえば、コーヒーの焙煎の過程で生じるメラノイジンが腸の可動性を促進し、またジテルウペン(コーヒーのエキスに含まれるカフェストールとカフェオールという物質)には人体の酸化的損傷を防ぐ効果があるため、がんの発病が免れるのではないかというのです。

■どんなコーヒーでも腸のがんリスクを減らせる

 この研究論文の第一著者であるステファニー・シュミット博士は、「コーヒーにどれくらいガンに効く成分が含まれているかは、コーヒーの豆、焙煎、醸造方法によって変化します。

 また、都合のよいことに、コーヒーがどんなフレーバーであろうと、どんな形態であろうと(たとえば、カプチーノやエスプレッソなど)、関係なく腸のがんにかかるリスクを減らせるということです」と述べました。

 南カリフォルニア大学と共同で、この研究をさらに大規模に進めているのがイスラエルの国立癌コントロールセンターのレナート博士です。

 「イスラエルでは、コーヒーの消費量がアメリカより少ないのですが、バリエーションはアメリカよりも多く、いろいろなコーヒーがあります。それでも結果は、アメリカと同じでした」と述べています。

 グラバー博士は、「コーヒーががん予防になることを証明するためには、さらなる調査研究が必要になります」とし、最後に「コーヒーが健康に悪影響をもたらすことはほとんどありません。

 毎日のコーヒーが腸のがんにかかるリスクを減らす可能性が高いので、コーヒー好きの人にはどんどんコーヒーを楽しんでほしいです」といっています。

 欧米型の食事が定着して以来、日本でも大腸がん患者はうなぎのぼりに増えています。もしこの研究成果が本当なら、多くの人の命がコーヒーによって助かることになるかもしれません。みなさんもがん予防のために、コーヒー習慣を取り入れてみませんか?

ウーマンエキサイト 2016年4月18日

がんを防ぐために摂りたい果物 美白効果などの効果も
ざっくり言うと

がんを防ぐために摂取したい果物を紹介している

バナナはがんの予防はもちろん、美白効果などの効果が期待できると筆者

食物繊維も豊富で便秘を予防し大腸がんを防ぐ作用のあるアボガドの2つ

大腸癌になりたくない人、腸内細菌を増やしたい人が摂るべき果物は?


 季節の変わり目に加え、新年度で何かと忙しく体調を崩しがちなこの時期。手軽に摂れる食べ物で体調をいい方向にもっていけたらこれほどありがたいことはないですよね。無料メルマガ『美容と健康ひとくちメモ』では、健康維持や生活習慣病に役立つ、どこにでも売っている果物を紹介しています。

熟したバナナと青いバナナ

 季節の変わり目で気温の変化が激しく、体調管理が難しい季節。ここ一番という大事なときに体調を崩さないために、どんな季節でも体調を維持し、うまく乗り切るための手軽な食べ物として注目されているのがバナナなのだそう。

 バナナは、食物繊維が豊富で、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があるそうですが、バナナはこの2種類の食物繊維を含んでいるらしいです。どちらも腸内の乳酸菌やビフィズス菌を増やしてくれ、特に水溶性食物繊維は、水に溶けるとゲル状になり、腸内で余分な脂質(コレステロール)を吸着して包み込み便として体外へ排泄する働きが。

 特に青いバナナには、食物繊維と同じ働きをする難消化性デンプンが多く含まれていて整腸効果が期待できるので、便秘に悩んでいる人におススメだそう。他にも、ポリフェノールも含まれ、脂肪の吸収抑制、血圧低下作用、老化抑制、がんの予防、美白効果などの効果が期待でき、ポリフェノールを摂りたければ、熟したバナナがオススメとのこと。

 バランスがいい食事が難しい方、体調管理に不安を感じている方、バナナいかがですか。

 「森のバター」とも呼ばれるアボカドは、世界一栄養価の高い果物で、コレステロールを下げる不飽和脂肪酸のオレイン酸やリノール酸、リノレン酸をはじめ、老化防止に役立つビタミンEやビタミンA・C、カリウム、マグネシウム、リンなどのミネラルを多く含んでいるうえに、アボガドの脂肪はノンコレステロールであり、動脈硬化症を予防する不飽和脂肪酸なのだそう。

 なので、お肉などと違って、コレステロールの摂りすぎを心配する必要もなく、カラダにとってものすごくヘルシーな食材らしいです。

 食物繊維も豊富で便秘を予防し大腸がんを防ぐ作用があり、不規則な食生活やダイエットなどで栄養が不足しがちな方に、また生活習慣病(成人病)対策にアボガドは非常に効果的に働く食品なのだそうです。

ライブドアニュース 2016年4月19日

癌免疫の次世代療法2017年治験へ
三重大、ワクチンなど組み合わせ
 三重大学複合的がん免疫療法研究センターは、がんワクチン、アジュバント、腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)改変T細胞輸注の3つのがん免疫療法を組み合わせたTriCombo療法を開発し、2017年度中に固形がん適応を目指す治験に入る予定だ。製薬企業との連携も検討し始めている。同センターの珠玖洋教授は、奏効率などに課題が指摘されている免疫チェックポイント阻害薬を超える次世代のがん免疫療法と位置付けている。

 抗PD−1抗体など免疫チェックポイント阻害薬の登場でがん治療が大きく変わるとみられるものの、奏効を期待できる患者層が限られるなどの限界も指摘されている。三重大学複合的がん免疫療法研究センターの原田直純特任講師、村岡大輔助教(現・静岡県立大学薬学研究院)らは、それらの弱点を解決すべく次世代の複合的免疫療法の開発を進めてきた。

 原田氏らは、腫瘍組織の微小環境が免疫的に不活性になっているために免疫チェックポイント阻害薬が効かないことを見いだした。そこでワクチンとアジュバントを用いて微小環境の免疫を活性化し、そこにTCR改変T細胞輸注療法を組み合わせることを考案した。

 ワクチンは、独自のデザイン技術で高性能化したペプチド抗原と、腫瘍組織に浸潤しているマクロファージを抗原提示細胞として利用できるデリバリーシステム(京都大学大学院工学研究科・秋吉一成教授と共同開発)を用いて新規設計した。アジュバントは病原体を感知するToll様受容体(TLR)のアゴニストとなるCpGオリゴDNA(医薬基盤研究所・石井健リーダー開発)を使っている。マクロファージはワクチンとアジュバントによって活性化されて腫瘍組織内で抗原提示を行い、これによってTCR改変T細胞の腫瘍組織への浸潤が促されると考えている。

 がん精巣抗原やネオアンチゲンなどの腫瘍組織に特異的に発現する抗原に対するTCR遺伝子を組み込んだT細胞は腫瘍への攻撃力が高められており、それらのコンビネーションで治療効果が高まると予想されていた。実際にチェックポイント阻害薬に著しい耐性を示す腫瘍を移植したマウスに投与すると、腫瘍組織がほぼ完全に消失しており、微小環境の免疫的な不活性状態を変えて強力な抗腫瘍効果を示すことを確認した。

 非臨床安全性試験などの治験に向けた準備を進めており、同センターは提携企業と協力して17年度の治験開始を計画している。T細胞等を用いる細胞療法は血液がん治療への可能性が高いとされているが、同センターはワクチンとアジュバントを適切に組み合わせることで固形がんにも著効する治療法を狙っている。

 免疫チェックポイント阻害薬は、がんの治癒をも期待できる持続的効果などが注目されているものの、奏効率が20〜30%にとどまることや、膵がん、大腸がん、前立腺がんなどがん種によっては効果が低いことが課題になっている。TriCombo療法はそうした問題点を克服できる可能性がある。

m3.com 2016年4月25日

血糖管理と癌のエビデンス「不十分」
日本糖尿病学会・日本癌学会が合同報告書第2報を公表
 日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会は4月21日、糖尿病患者の血糖管理と癌罹患リスクについて「現時点で質の高いエビデンスは存在しない」と結論付ける「糖尿病と癌に関する委員会報告第2報」を公表した。2013年7月に発表された初の委員会報告では、日本国内における疫学報告の評価に基づき「糖尿病が全ての癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌のリスク増加と関連していた」との見解を示していた。

 第2報では、厳格な血糖管理と従来型の血糖管理による血管イベントの評価を目的に行われた7件のランダム化比較試験(RCT)の癌死亡または癌罹患リスクについてのメタ解析に言及した。

 4件のRCT(UKPDS33、UKPDS34、ACCORD、VADT)の3.5-10.7年間の追跡期間における癌死亡の割合は、厳格血糖管理群5万3892人年中222例、従来管理群で3万8743人年中155例。変量効果モデルによる統合リスク比は1.00(95%CI 0.81-1.24;I2=0%)だった。別の3件のRCT(ADVANCE、PROActive、RECORD)の2.9-5.5年の追跡期間における癌罹患の割合は厳格管理群4万7924人年中357例、従来管理群4万5009人年中380例で統合リスク比は0.91(95%CI 0.79-1.05;I2=0%)だった。

 ただし、これらのRCTは癌が主要評価項目ではないこと、追跡期間が十分でない他、非盲検化試験が含まれていることなどから報告書は「現時点で血糖管理による癌罹患リスクを評価する質の高いRCTは存在しない」と記している。

 委員会ではさらに、香港、スウェーデン、米国における3件の観察研究報告をレビューしたが、血糖コントロールと癌罹患リスクの関連に一致した結果は見られず、「現時点では質の高い疫学研究結果が集積していない状況」と結論。「今後、綿密に計画されたRCTや観察研究の実施が期待される」としている。

m3.com 2016年4月28日

夏に急上昇する「がんリスク」を予防する旬の食品4つ
 「旬食材にはその時に必要な健康効果がある」とはよく言います。ちょっと前は、たらの芽や菜の花などが旬食材で、“老廃物を排泄する働きがあるもの”が多くありました。

 そして、これから夏にむかって美味しくなる旬食材は、暑さから体を守ってくれるものがたくさん出回ります。ただ、夏は暑さだけでなく“がんリスク“を高める紫外線などの要因もあるんです!

 折角であれば、食事から“がんリスク“に対しての健康効果を期待できると嬉しいですよね?

 そこで今回は、管理栄養士である筆者が、夏のがんリスクを高める要因と“がん予防”になる旬の食品についてご紹介致します。

■がんリスクを高める夏の生活習慣

 開放的な夏は楽しいこともたくさん。ただ、気をつけないと“がんリスク”を高めることもあるので要注意です!

 ではどんな夏の習慣が、がんリスクを高めてしまうのでしょうか?

(1)夏バテ

 猛暑が続く近年、夏バテになる方も多くいます。特に日頃から運動や仕事などで汗をあまりかかない人は、夏バテリスクも高まります。疲れた体は免疫力が低下しやすく、肌荒れや風邪をはじめ、さらにはがんなどの病気リスクを高めてしまいます。

 夏バテで食欲不振になると、がん細胞に打ち勝つ強い体から遠のいてしまいます。そして怖いのは、夏バテを放っておくこと。

 夏バテは食欲不振が代表的な症状ですが、胃がんの症状にもこの食欲不振があります。「食欲がない=夏バテ」と思っていたら、胃がんに罹患していたなんてこともあります。

 体調に異変を感じたら、早めに医療機関にいくようにしたいですね。

(2)薄着

 キャミソールやタンクトップなど、薄着になる季節。しかし、夏は紫外線が1年の中で一番多い季節でもあります。

 1日15分ほどの紫外線であれば問題はありませんが、長時間紫外線にあたれば、シミになるどころか皮膚ガンのリスクを大幅に高めてしまうのです。

(3)暑気払い

 暑気払いで楽しい宴会が続くことも多い季節。暑さで冷えたビールがいつも以上に美味しく感じますよね。特に夏は19時頃でも明るいので、飲み始めが遅くなったり、長時間の宴会になったりと深酒になりやすく肝臓ダメージが大!

 そして宴会となるとタバコを吸う人も多く、吸わない人でも他人のタバコの煙で肺がんリスクを高めてしまいます。さらに、〆にラーメンを食べれば、おつまみとラーメンの塩分で胃がんリスクを高めます。

(4)冷たい食べ物

 冷たいものを食べる機会も夏は増えますよね。特に体を冷やすアイスクリームやシロップたっぷりのかき氷は糖分もたっぷり!

 がん細胞は冷たいものや糖分が大好きなので、これらを頻繁に食べると、がん細胞を元気にさせてしまうリスクを高めてしまいます。

■がんリスクを抑える夏が旬の食品4つ

 これらのがんリスクの多い夏、旬食材を積極的に食べてがん細胞に対抗したいですよね? 特にオススメの食品を4つご紹介致します。

(1)トマト

 β-カロテンたっぷりのトマトは、水々しくて夏に丸かじりするのも美味しいですよね。特にファイトケミカルの1つでもあり、ポリフェノールの1種でもある“リコピン”は抗酸化力が強く、元気な細胞を作る手助けをしてくれます。

 オリーブオイルで炒めたり、ミキサーにかけて砕きスープとして飲んだりすると、栄養分を効率的に摂ることができます。

(2)梅干し

 梅干しは疲れを取ってくれる“クエン酸”を多く含みます。夏の疲れがたまってしまうと、代謝サイクルも円滑に回らなくなってしまいますが、クエン酸はその疲れを改善してくれ、代謝を上げてくれます。

(3)にんにく

 食欲不振の夏は、是非にんにく料理で活力をつけたいもの。様々な研究で、にんにくを摂取することによって、乳がんリスク低減、胃がんリスク低減などがわかってきています。しかも、にんにくは米国立がん研究所が推奨する“がん予防に推奨する食品群”の中でトップクラスの食品です。

 にんにくは生の状態であれば1日1片、ガーリックオイルでは1日2?5g(小さじ1)を目安に食べるといいですね。

(4)しょうが

 しょうがは、にんにく同様“がん予防に推奨する食品群”に存在する野菜。

 さらに、しょうがには強い殺菌作用があるので、夏バテで体力が弱まり免疫力が下がりがちな体を元気にします。その強い殺菌力が、がん細胞の増殖や活性化を防ぐと言われています。

 夏はそうめんや冷やしうんどん、冷奴などシンプルな料理が多いですが、是非このような薬味を使いながら食べるといいですね。

■ガンリスクを抑える夏の生活習慣
 また、夏は体を冷やしすぎないように気をつけたいところ。体を冷やしすぎないことは夏バテ予防にもなります。

 特に下半身が血行不良になってしまう人も多いので、下半身は厚着、上半身は基本薄着でも構いませんが、肩周りだけは温めるように服選びをするのもコツになります。

 冷房がキツい場所も多いので、羽織ものを常に持ち歩くようにするといいですね。冷たいものを食べたあとは、人肌程度のお茶を飲むのもオススメです。

 夏は日照時間が長いのでつい夜更かししてしまいがちですが、毎日の疲れをしっかりと取るためにも、明るさではなく時計を見ながら生活リズムを整えていくようにすると、深酒をすることもなく、夏バテ予防になります。

 いかがでしたか? 今回は旬のがん予防についてご紹介致しました。たくさんの種類の旬素材を食べることが私たちの元気な体を作ってくれます!

 特に、食欲不振のときは賢い食材の選び方をしてくださいね。

ライター 望月理恵子

日刊アメーバニュース 2016年5月6日

がんになっても生き残るための方法 まず第1に
 超高齢者医療のこの時代。27年前には症例報告レベルだった(とても珍しいということ)多重がんが当たり前の時代になっています。(同時に2つ以上の悪性新生物を持つということ)つまり加齢は遺伝子異常であるがんを増やします。

 高齢者血液疾患患者の他のがんの合併も最近よく出くわします。(肺がん、胃がん、大腸がんと白血病、リンパ腫、骨髄腫など)高齢者のがん治療、1つでも大変です。それが2つ以上になると本当綿密な計画が必要になります。

 では患者さんはどうすればいいのでしょう。もう今にも倒れそうなヨボヨボの患者さんだったとしましょう。医療者はもう病気を治しても医療では治せない老衰が進行していることを考え、これ以上の治療はかえって全身の状態を悪化させると判断してしまいます。つまり手術することでダメになりそうな人は手術をしないという選択をします。それゆえ血液の病気も積極的な治療(治癒を求める治療)を行わないことが選ばれ、治癒のための治療という土俵に上がることができません。土俵に上がることができなければ最終的にがんで命を落とします。(年月はがんの種類で変わります)つまりまず土俵に上がる状態を作ることが患者さんにとって生き残る方法なのです。

 どのがんであっても年齢、PS(普段どれぐらい元気か)が治療におけるリスクファクターとしてあげられます。年齢はどうしようもないですが、あとは寝たきりにならない、ボケないなどPSを維持すること、年齢の割に若いですねと言われる生活を続けることが土俵に上がるポイントになります。

 そのためには普段から運動して、規則正しく生活することです。そしてテレビ、新聞、ネットなんでもいいですから頭を使い続け、人といっぱい話しをして頭を鍛えることで認知を含めたPSを維持改善できます。その結果見た目が若くなり、医療者も治療できるのではと判断します。

 健康食品で何がいいですかとよく聞かれますが、そんなものより自然に取れた野菜、魚、肉を満遍なく食べましょう。きっとコストパフォーマンスはそれが一番ですと伝えています。また90以上の方がこれからさらに長生きするためには何をすればと聞かれたら、今まで生きてきた生活を繰り返してください。これだけ元気な90はそういない。だからこの病気でもピンピンしていると笑い飛ばしています。

 以前書いたように(自然に治る悪性腫瘍 いわゆるがんもどきはあるが全く医療を行わないは間違い)生命に直結しないがんと合併されている血液患者の場合(前立腺がんや甲状腺がんなど)はまず血液の治療を行うのですが、血液疾患の進行がゆっくりな場合(濾胞性リンパ腫や慢性リンパ性白血病など)などはがんの手術を優先することが多いです。そのように患者さんごとに合わせることで2つ以上のがんを克服した人間が外来に2桁いました。

教科書はないわけではないのですが、どうしても教科書に合わない患者さんはたくさんいます。実臨床ではここに医療費などの社会的要因も入ってきます。本当判断が難しいのですが、患者さんと話し合いながら医療を行っています。正解はその患者さんごと、病気ごとで違います。

 前回の記事(医療ミスで死亡第3位 米国における医療安全啓蒙でデータは今ひとつ飛躍?)もerrorというのはどうかと書かせていただいたのも手探りでの医療をやっている現場に対して後出しで評価するなよという抗議みたいなものです。

livedoorニュース 2016年5月8日

有名人の両乳房切除術、患者の治療選択にも影響か
報道の偏りもみられる
 有名人のがん治療に関する報道が、両乳房切除術の増加の一因となっている可能性があることが、新たな研究で示唆された。研究著者である米ミシガン大学総合がんセンターのMichael Sabel氏は、両乳房切除術が最善の治療であるかのような偏った報道がみられると指摘している。ただし、今回の研究では因果関係は明らかにされていない。

 今回の研究では、2000〜2012年に乳がんの診断を受けた米国の有名人17人の情報を収集した。うち4人が両乳房切除術を受けており、彼女らの治療に関する報道の45%はこの手術にも言及していた。一方で、10人は片側のみの乳房切除術または乳房温存療法を受けていたが、報道では手術への言及は26%にとどまることが判明した。この期間に、同センターでの両乳房切除術の実施率は4%から19%へと5倍に増加したという。

 強い家族歴のある患者や、BRCA遺伝子変異をもつ患者など、両乳房切除術が妥当とされる症例も一部にはあるが、「リスクの高くない患者でも著しい増加が認められる」とSabel氏は指摘する。多くの女性は受診時点で意思を固めており、他の選択肢について尋ねることなく希望を述べるという。Sabel氏らはメディア報道がその一因となっているのではないかと考え、今回、主要な印刷出版物(Chicago Tribune、Los Angeles Times、USA Todayなど)に掲載された700件以上の記事を分析した。

 たとえば、女優クリスティナ・アップルゲイトは36歳で乳がんと診断され、2008年に両乳房切除術を受けた。しかし、この女優にBRCA変異や家族歴があり、再発リスクが高かったことを報じたメディアはごく一部であったという。

 「このような歪んだ報道は、早期乳がん患者はもれなく両乳房切除術を受ける必要があるとの印象を与えてしまう」とSabel 氏は言う。侵襲性の高い治療を選ぶ女性が増えたその他の要因としては、遺伝的リスクに関する情報の増加や、乳房再建の向上などが挙げられている。

 Sabel氏は、両乳房切除術が常に最善だという誤解をなくすように、医師がメディアに伝えていく必要があると指摘する。さらに、女性は先入観をもたずに、あらゆる選択肢について医師と話し合うべきだと付け加えている。この研究は「Annals of Surgical Oncology」オンライン版に4月に掲載された。

 今回の研究を受け、シティ・オブ・ホープ国立医療センターのCourtney Vito氏は、「一部の患者は両乳房切除術を基準に考えているが、この手術は医学的に適応とならないこともある。乳がん治療はさまざまな因子を考慮して個別に決定されるものであり、患者と協力関係を築くことのできる医師を選ぶことが重要である」とコメントしている。

m3.com 2016年5月10日

潜血+癌DNAの便検査で精検受診9割超【米国癌学会】
医療保険DBの後ろ向き解析による“リアル”の成績
 米国で2014年に承認された便潜血と大腸癌に関連したDNA変異を同時に探索するマルチターゲット便DNA検査(multi-target stool DNA test;mt-sDNA、商品名Cologuard)。1万人を対象とした臨床試験では結腸直腸癌の検出感度92%、前癌病変の検出感度42%、同特異度が87%との成績が報告されている。

 このほど、メディケアデータベースを用いた後ろ向き研究による実臨床での成績が米国癌学会(AACR)年次総会で発表された。同学会が4月19日付リリースで紹介した。同検査の完遂率は約88%、陽性例の精密検査受診率は90.2%で、研究グループは検診率の向上に寄与するのではないかとの見方を示している。

 対象は自覚症状がなく、大腸癌やポリープの罹患歴、家族歴のない平均的リスクのメディケア受益資格を有する受診歴のある患者。2014年10月から15年8月にmt-sDNA検査がオーダーされた393件の同検査完遂率は88.3%。うち51例(14.7%)が同検査陽性で、大腸内視鏡による精密検査が必要と判定された。

 また、51例のうち46例(90.2%)が内視鏡検査を受け、3例が同検査の実施に同意せず、2例は受診に現れなかった。

 内視鏡検査を受けた46例のうち4例が大腸癌と診断、21例に進行腺腫またはポリープが、9例に非進行性腺腫が見つかった。12例は陰性と判定された。

 「mt-sDNAの実臨床での成績が臨床試験と同様なのか、関心があった」と研究グループ。様々な大腸癌検査が登場しているにもかかわらず、米国における受診率は60%程度にとどまっている。今回の研究成績を踏まえ、非侵襲的で患者に優しい同検査により検診率の向上が期待できるのではないかと述べている。

m3.com 2016年5月11日

「がん治療と仕事両立」民間調査
勤務先を変えた人の4割が非正規に
 正社員として働いていた時にがんにかかり、その後も仕事を続けている人は、再発への不安だけでなく「治療・経過観察・通院目的の休暇・休業が取りづらい」「働き方を変えたり、休職したりすることで収入が減少する」といった就業上の悩みが少なくない――。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2016年3月4日に発表した「がん治療と仕事の両立に関する調査」で、このような実態が明らかになった。

がん進行度「2期以降」は体力面から働き続けるのが困難

 調査に協力した男女978人のうち、がんにかかった年齢は男性が40、50代を合わせると85.7%に達した。女性は40代以下が77.6%を占める。がんの種類では、男性は大腸がん、女性は乳がんが最も多かった。

 がんに罹患してから1年間は、労働時間を「週40時間未満」と一時的に抑えた人の割合が41%に上った。働き方については、「軽微な業務への転換や作業の制限など、仕事内容の変更」と「勤務時間の短縮」があったと答えた人がそれぞれ2割になった。

 勤務先は、罹患後も同じ職場で働いている人が86%、退職の後に転職・再就職して現在も働いている人が14%だった。転職せず同じ職場に残っている人は、9割が正社員のままなのに対して、転職者は約4割が正社員からパートやアルバイト、契約社員、派遣社員といった非正規社員に変わっていた。

 罹患時の職場を退職した理由で最も多かったのは、がんの進行度が「1期」以前では、「治療と仕事を両立するために活用できる制度が勤務先に整っていなかったため」が最も多く、17.2%だった。「2期以降」になると「体力面等から継続して就労することが困難であったため」が多くなり、32.8%に上った。

J-CASTニュース 2016年5月14日

くるみの摂取で結腸がんリスク要因が抑制できる?
 韓国の学術誌『フードサイエンス・アンド・バイオテクノロジー』の最新号にこのほど、韓国の研究者によるくるみの研究結果が掲載された。くるみは、結腸がん幹細胞を標的にがんを抑制する可能性があるという。

図 くるみを使った料理「鮭と野菜のくるみみそ煮」

 掲載された論文は「くるみの脂質抽出物の組成分析および自己複製能の抑制によるがん幹細胞の増殖に対する抑制因子としての特性」。

 梨花女子大学の栄養科学・食品マネジメント学部のキム・ユリ教授の研究チームは、くるみの脂質抽出物(WLE)の成分に結腸がん細胞の増殖抑制効果があるかを調べたという。くるみの脂質抽出物には、脂肪酸やトコフェロールなどさまざまな成分が含まれている。

 結腸がん幹細胞は腫瘍の中に存在する小さな細胞の亜集団で、自己複製能を持つ。そのため、腫瘍の転移率を高め、放射線や抗がん剤に対する抵抗力を強める可能性があるとのこと。論文では、くるみの脂質抽出物が、「結腸がん」の幹細胞(CSC)の自己複製能を抑制する効果がある可能性を明らかにしている。

 キム教授は、「結腸がんは有効な治療法が限られており、がんによる主要な死因のひとつになっています。今回の研究によって、結腸がんの治療にくるみが効果的である可能性が示されました」と語った。

 さらに「この研究成果は、結腸がん、乳がん、前立腺がんの分野における過去の研究の上に築かれたものであり、くるみのがん予防効果を理解する上で、一歩前進したことになります」とも付け加えいる。

マイナビニュース 2016年5月15日

10代で果物をたくさん食べると乳がんリスクが低下
1日3皿分の摂取で25%減
 10代女児が果物を大量に食べると、将来の乳がんリスクが低下する可能性があることがわかった。思春期でのリンゴ、バナナ、ブドウの摂取が乳がんリスク低下に強く関連し、1日約3皿分を摂取すると、0.5皿分のみ摂取する人に比べて、中年期のリスクが25%低下したという。

 若年期でのオレンジやケールの摂取も、わずかに乳がんを予防する効果があるが、フルーツジュースには効果を認めなかったという。

 研究では、看護師健康調査(NHS)IIに登録した 27〜44歳の女性9万人超について、その2年後の1991年に記入してもらった若年成人期の食生活に関する質問票を分析した。さらに1998年、4万4,000人超の女性に2回目の調査を行い、思春期の食生活を思い出してもらった。また、1991〜2013年まで4年ごとに飲食物の摂取状況を調べ、前年の食生活を思い出してもらった。乳がんの発症状況は2年ごとに確認した。

 20年間の研究で、3,200人超が浸潤性乳がんを発症し、うち1,350人では思春期の食生活の情報を入手できた。これらの解析の結果、思春期の果物の摂取量が多いほど乳がんリスクは低いと結論づけられたという。

 研究著者の米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院(ボストン)のMaryam Farvid氏は、「この研究は観察研究であり、因果関係のエビデンスは提供できないが、果物の摂取と乳がんリスク低下の関連性が示された」と述べている。この研究報告は「BMJ」5月11日号に掲載された。

m3.com 2016年5月24日

アスピリンのゲノム医療で癌予防を
J-CAPP Study II、7000人目指し登録開始
石川秀樹氏 京都府立医大分子標的癌予防医学

 2016年4月、米国予防医学専門委員会(USPSTF)が、心血管疾患と大腸癌の一次予防目的での低用量アスピリンの使用に関し、新たな勧告を発表した。心血管疾患および大腸癌の一次予防※のための同薬使用が勧告された。

 日本では心血管疾患の予防に広く使用されているが、大腸癌に関しては導入の見込みはあるのか。国内で臨床試験を進める京都府立医科大学分子標的癌予防医学の石川秀樹氏に話を聞いた。(※心血管疾患の場合の一次予防と異なり、大腸癌の一次予防は「癌」の発生を予防する点で定義が異なる)

日本でも近い将来高リスク例に推奨の可能性

――今回、米国では50歳代、60歳代の人に新たに大腸癌の一次予防※に対するアスピリンの予防内服が勧告されました。日本で同様の予防内服が導入される可能性はどの程度あるのでしょうか。

 多くの臨床試験により、低用量アスピリンが大腸癌や大腸腺腫の発生を抑制することは間違いないと考えています。したがって、日本においても近い将来、大腸癌のリスクの高い人に対しては、リスク軽減のためにアスピリンの服用を推奨されるようになると思います。ただし、どのような人が、いつ頃から、どの程度の期間服用するのが良いかは、まだ、確定していません。それらを明らかにするために、現在、7000人の患者さんに対する臨床試験(J-CAPP StudyII)を実施中です。

解熱剤として販売されているアスピリンの使用はNG

――導入に当たって解決すべき課題や米国とは事情が異なる点はありますか。

 大腸癌や大腸腺腫予防に対する同薬のエビデンスは確立されつつあります。しかし、日本の保険診療では大腸癌予防のためにアスピリンを処方することは認められていません。現時点では、あくまでも臨床試験として患者さんに投与する段階です。

 前述の通り、同薬を「どのような人に」「いつ頃から」「どの程度の期間」使用することが、最も効率的で安全かが分かっていません。これらが日本で解決すべき課題です。米国人に比べ、日本人は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に対する副作用が発生しやすい可能性も考えられるため、日本人でのデータを出すことは重要と思います。

 また、米国では薬局などで低用量アスピリンを比較的容易に入手することが可能ですが、日本では薬局で低用量アスピリンを購入することはできません。一般用医薬品の解熱鎮痛剤として販売されているアスピリン錠は含有量が多く、腸溶錠になっていないものもあります。解熱鎮痛剤として販売されているアスピリン錠を大腸癌予防のために服用するのは危険であり、この点は注意が必要です。

全例が低用量アスピリン群に登録、24時間の相談体制も

――J-CAPP StudyIIは7000例とかなりの規模の登録者を予定しているとのことですが、現在の募集状況、予定登録症例を達成するための工夫などあれば教えてください。

 昨年(2015年)末から登録を開始し、現在、800人程度の方が参加しています。比較的順調に進んでいると思います。しかし、予定登録数は7000人ですので、まだまだ頑張って募集する必要があります。登録者数を増やすために、ポスターやチラシの作成、本試験を紹介する動画の作成、その動画をタブレットや病院の待合で放映するなどの工夫をしています。また、マスメディアにも本試験の話題を何度も取り上げていただいたので、認知度が高まったことによってもエントリーしやすくなっています。

 本試験はプラセボ群を設定せず、全員が実薬群で低用量アスピリンを服用できるようにデザインしています。また、1シート31錠のカレンダーシートの両面アルミPTP包装を作り、長期間の保管も比較的安定なため、1年分のアスピリン投与をお渡しできること、24時間体制でどのような質問でも対応できる事務局体制を整えたこと、毎月、ニュースレターとして癌予防や大腸癌に関する情報提供を行っていること、参加者全員にアルコールの代謝酵素の遺伝子多型を測定し、飲酒によるいろいろな反応をお教えすること、などの工夫も同意率の向上に有効と考えています。

――今後の具体的な目標について教えてください。

 低用量アスピリンによる大腸癌予防の適切なリスク層別化のためには、遺伝子多型の検索から得られる知見が非常に重要です。J-CAPP StudyIIでは低用量アスピリンによる大腸癌予防効果の再確認ではなく、試験参加者の各種遺伝子を検索し、アスピリンが有効な集団を絞り込むための遺伝情報を明らかにしようと考えています。最終的には大腸癌高リスク例の中で、低用量アスピリンが有効で副作用の少ない人を遺伝子多型や生活習慣、大腸腺腫の既往などから絞り込み、同薬の効果的な投与により、大腸癌の発生を劇的に減らすゲノム医療の実現を目指しています。

m3.com 2016年5月24日

運動で13種類のがんのリスクが低減
早歩き、テニス、ジョギング、水泳などで効果
 運動によって多くのがんのリスクが有意に低減する可能性が、大規模なレビューで示唆された。週に2〜3時間の運動をするだけでも、乳がん、大腸がん、肺がんのリスクが低減するという。

 さらに、がんリスクは運動時間が増えるほど際限なく低下し続けるようだと、研究の筆頭著者である米国立がん研究所のSteven Moore氏は述べている。ただし、運動とがんリスク低減の因果関係は明らかにされていない。

 今回の研究では、定期的な運動が13種類のがんのリスク低減に関連しているとの結果が得られた。該当するその他のがんは、白血病、骨髄腫、食道がん、肝がん、腎がん、胃がん、子宮内膜がん、直腸がん、膀胱がん、頭頸部がん。

 現行の連邦政府による運動ガイドラインは、週150分の中等度から強度の運動(早歩きやテニスなど)または75分の激しい運動(ジョギングや水泳など)とされている。これは心臓の健康を目的とするものだが、がん予防にも有用だとMoore氏は指摘している。

 今回焦点を当てたのは、仕事や家事を除く余暇時間に、健康向上のために自主的に行う運動だ。著者らによると、米国成人の約半数は政府が推奨する最低限の運動時間を満たしていないという。

 研究グループは、米国およびヨーロッパの12件の研究データを統合し、19〜98歳の成人140万人のデータベースを作成。自己申告された運動の内容によって、26種類のがんのリスクに差がみられるかどうかを検討した。

 検討したがんのうち、半数のリスク低減に運動との関連がみられ、多くは肥満や喫煙歴などの因子を考慮しても有意な低減が認められた。がんリスクは全体で7%低減し、リスク低減の範囲は42%(食道がん)から10%(乳がん)に及んだ。大腸がんと肺がんは、それぞれ16%、26%低減した。この知見は「JAMA Internal Medicine」オンライン版に5月16日掲載された。

 「今回、運動ががん予防に役立つ理由は明らかにしていないが、運動をするとさまざまながんとの関連が認められているホルモンの値が低下するほか、インスリンおよびインスリン様増殖因子の値も制御される」とMoore氏は話す。

 付随論説の著者の1人である米ノースカロライナ大学(チャペルヒル)教授のMarilie Gammon氏は、「運動する人の細胞は酸化ストレスを受けにくく、DNA損傷を修復する能力も高い。食道がんをはじめとする致死率の高いがんに大幅なリスク低減が認められたことは非常に喜ばしい」と説明している。

m3.com 2016年5月26日

大腸内視鏡検査の前日の絶食は不要?
少量の低残渣食のほうが適している可能性も
 大腸内視鏡検査で、胃を空にするつらい準備は必要でない可能性が、新たな研究で示唆された。通常、内視鏡検査の前日には固形食を控えて清澄流動食を摂取し、下剤を飲む必要がある。しかし今回の研究では、少量の低繊維食を摂取しても検査への悪影響はみられず、むしろ従来の清澄流動食を摂取するよりも、腸は検査に適した状態になることがわかった。

 研究著者である米カリフォルニア大学アーバイン校臨床助教授のJason Samarasena氏は、「大腸内視鏡検査の前日に何も食べてはいけないという思い込みは誤りである可能性がある」と述べている。

 米国がん協会(ACS)によると、米国では今年13万4,000例以上の大腸がんが診断されると推定されている。50歳以上の人には内視鏡によるスクリーニングが推奨されているが、準備が大変だという理由で検査を受けない人も多いという。

 今回の研究では患者83人を対象として、大腸内視鏡検査の前日に清澄流動食を摂取する群と、低繊維食(マカロニ、チーズ、ヨーグルト、精白パン、ランチミート、アイスクリームなど)を少量摂取してもよい群のいずれかに割り付けた。低繊維食群の患者は脂肪、蛋白、炭水化物を合わせて1,000〜1,500kcal摂取した。

 その結果、低繊維食群のほうが、清澄流動食群よりも腸の準備状態が良好な患者が多かった。また、低繊維食群は検査当日朝の疲労が少なかった。食事の満足度は低繊維食群が97%、清澄流動食群は46%であった。

 低繊維食は「低残渣食」とも呼ばれ、消化器系内で容易に液化するため、大腸から排出されやすいとSamarasena氏は説明する。一方で野菜、果物、ナッツ類、種子類、穀物などの食物繊維が豊富な食品は、腸を通過するときに未消化であることも多く、検査の妨げとなることがある。なお、固形物を食べたほうが腸が綺麗になるのは、「おそらく、食べることによって腸が刺激され、排泄が促されるためである」と同氏は述べている。

 今回の研究は小規模なものだが、他の研究でも同様の結果が出ているとSamarasena氏は指摘する。米カイザー・パーマネンテ医療センター(カリフォルニア州)のTheodore Levin氏は、「この知見は有益だが、内視鏡検査の準備方法を変更する場合は事前に医師に相談する必要がある。特に糖尿病患者などでは、低繊維食を検討する価値がある」としている。

 この知見は米サンディエゴで開催された米国消化器病週間(DDW)会議で発表された。

m3.com 2016年6月2日

全世界のがん治療薬費用、20年には1500億ドル超に
 医療情報会社のIMSヘルス・ホールディングス(IMS.N)は2日、全世界のがん治療のための医薬品費用は、高額な免疫治療の出現で、2020年までに1500億ドルを上回ると予想する報告書を公表した。

 2020年まで毎年7.5─10.5%増となることを示すもので、18年まで6─8%増としたIMSの昨年の予想を上回る。

 これらの数値は、値引きや払い戻しを除いた治療薬の市販価格に基づいており、化学療法など様々な治療法に付随する吐き気や貧血といった副作用に対処するための治療薬の費用も含まれている。

 IMSによると、過去5年間で20以上の腫瘍タイプに対応した70を超える新たながん治療薬が市場に参入したことを背景に、2011年に900億ドルだった世界のがん治療薬費用は、15年には前年比11.5%増の1070億ドルに達した。

 ただ、同報告書によると、こうした新薬の半分以上は現在、わずか6カ国でのみ入手が可能で、公的保険取扱で医療費の払い戻しが受けられる薬品の数はさらに少ないという。

 一連の新薬の登場によって、患者自身の免疫システムががん細胞を攻撃する治療が可能になり、進行性黒色腫や進行性肺がんなど、最も致死率の高い病気の生存率はこれまでになく高まった。

 米医薬品大手メルク(MRK.N)とブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY.N)がこの分野では最大手だが、ロシュ・ホールディングス(ROG.S)は先週、後期膀胱癌治療では30年ぶりの新療法となる免疫療法の認可を米政府から受けている。

 IMSによると、現在511社による586のがん治療法が、開発の中期および後期ステージにある。

 同報告書は、がん治療学会では最も重要とされるアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)の米シカゴでの年次総会の直前に公表された。

ロイター 2016年6月2日

余命12カ月宣告。大腸がんの”ステージ4”から328日で劇的に寛解した がんサバイバーが実践したシンプルな「7つの習慣」とは?


[株式会社主婦の友社 ]
『がんになって、止めたこと、やったこと』2016年5月12日発売


 著者の野中秀訓氏は、起業したばかりの会社が軌道に乗り始めた2014年に大腸がんが発覚。「ステージ4」「余命1年」の宣告を受けた後、「どうしたらがんが治るか」について手探りで情報収集し、様々な治療法を模索。その中から「自分がいいと思うもの」は即座に実践し、1年後に事実上の寛解にたどり着くまでの軌跡を、本書は本人の心境を交えて記しています。

 野中氏は、その過程で「がんは生活習慣病」と捉え、生活習慣の中から「がんになる悪い『7つの習慣』」を洗い出し、「がんを治すための『7つの習慣』」に徹底改善していきます。

 糖質オフをはじめとした日々の食生活の見直しと、ストレスマネジメントを中心にするこの生活改善は、特別な方法ではありません。がんなどの告知を受け、あきらめかけていた人はもちろん、生活習慣病の予防やアンチエイジング、美容を考えている人など、日々忙しく生きる現代人ならすべての方に参考になるものがあるはず。

 「健康で自分らしい生き方をしたい」と考えるすべての人に、読んでいただきたい一冊です。

 「7つの悪い習慣」と「改善した7つの習慣」は対になっている

■がんが発覚するまでの「7つの悪い習慣」

ストレス

暴飲暴食

食に無頓着

過度な運動

休みのない生活

自律神経の乱れ

予兆の見逃し


■がんを治すために改善した「7つの習慣」

食事を改善する

早寝早起きを習慣化する

体の中の悪いものを出すため解毒する

ハーブや生薬を利用する

ヨガを行ったり、鍼、マッサージをなどを利用する

思考回路を変えてストレスをなくす

生活環境を徹底的に見直す


 がんは生活習慣病です。

 心臓病、脳卒中といった慢性疾患の発症に遺伝子が関与する割合は低く、がんでさえ5〜10%に過ぎない。

 生活習慣に起因して発病することが多いのに、その生活習慣を放置したまま、投薬などだけで治そうとするのは欺瞞です。

 がん患者の生活習慣を改めることで、遺伝子のスイッチが切り替わり、治療に結びつけられることは実証されています。

 がんなどの生活習慣病を治そうとするなら、まずは生活習慣を改めること。

 自分でがんになった責任は、自分でとらなければならないのです。

著者プロフィール 野中秀訓(のなかひでのり)

1968年生まれ。1988年、国立高専を卒業し精密機器メーカー入社。2012年、アンチエイジングのスペシャリティ成分を扱う「アンチエイジング株式会社」設立。2014年6月がん発覚。46歳、サラリーマンを辞めて9年、紆余曲折を経て、会社が軌道に乗り始め、事務所移転した矢先に突然の腹痛が発端で「大腸がんステージ4」を告知される。同時に肝臓、ウィルヒョーリンパ節、大動脈リンパ節転移。余命12カ月宣告を受けるも約1年で寛解。ブログ「癌になって、止めたこと、やったこと」が話題に。
http://ameblo.jp/hidenory88
同時期にSTORYS.JPでも「ちょうど1年前に余命12カ月宣告を受けた話。」を連載
http://storys.jp/hidenori.nonaka/


書誌情報

『がんになって、止めたこと、やったこと』
著者:野中秀訓
医学監修:斎藤糧三
定価:本体1400円+税
発売:2016年5月12日
四六判、288ページ
ISBN:978-4-07-415356-5

http://books.rakuten.co.jp/rb/14112724/


時事ドットコムニュース 2016年6月5日

「携帯電話で脳腫瘍?」研究結果に米専門家ら疑問
電波に曝露した群のほうが寿命が長いことなどを指摘
 ラットの研究で携帯電話と腫瘍の関連が示されたことが報告されているが、米国立衛生研究所(NIH)の専門家らは、この研究の妥当性に疑問を呈している。

 5月27日に米国国家毒性プログラム(NTP)が公表した研究結果によると、携帯電話で使われているものと同種の電波に曝露した雄のラットに、2種類の腫瘍(脳の神経膠腫および心臓の良性神経鞘腫)が“低い確率”で発生したという。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

 この研究は2500万ドル規模で、携帯電話の健康への影響を評価した研究としては最も大規模かつ包括的だという。「世界のモバイル通信の利用状況を考えれば、発症率がわずかに上昇するだけでも広範囲に影響が及びうる」と、NTPは述べている。

 しかし、AP通信によると、NIHの専門家らはこの研究に欠陥があると指摘している。たとえば、今回の研究では妊娠中から生後2年まで、極めて高線量の電波にラットを曝露しているが、それでも腫瘍が発生したのは雄ラットの2〜3%のみだった。雌ラットに全く腫瘍が発生していないことや、電波に曝露したラットよりも曝露しなかったラットのほうが死亡率が高かったことも奇妙だという。さらに、電波に曝露しなかったラットでは、「正常」集団で予測されるのと同等比率での腫瘍発症は認められていない。

 これらの点から、外部レビューを実施したNIHのMichael Lauer氏は、「研究著者らの結論を受け入れることはできない。この実験は検定力が大幅に不足しており、少数の陽性例には偽陽性の疑いがある。電波に曝露したラットのほうが長生きしたという事実も、疑惑をさらに深める」と述べている。

 NTPによると、この研究の最終的な結果は2017年秋までに発表される予定という。

 NIHは、「これまでの大規模研究で収集されたヒトの観察データをみると、携帯電話の使用によりがんの発症リスクが上昇することを示すエビデンスはわずかである。多くの研究では、携帯電話と有害な健康被害の関連は示されていない」と指摘する。たとえば、最近発表されたオーストラリアの研究では、約30年前の携帯電話の出現以来、脳腫瘍の罹患率は全く増えていないことが示されている。

 一方で、NTPのプロジェクトに関わっていたある専門家は、「全くリスクがないわけではないと主張した点で、この知見には価値がある」と話す。この研究が米国の連邦通信委員会(FCC)の安全規則に及ぼす影響は不明である。

m3.com 2016年6月9日

検索ワードでがんの兆候がわかることをMicrosoftが発見
 Microsoftの科学者は検索エンジンの検索ワードを分析することで、がんを患っているインターネットユーザーを早期発見できるという研究結果を発表しました。

 Microsoftの科学者である研究者であるエリック・ホルビッツ博士およびリャン・ホワイト博士らが発表した研究は、Microsoftの検索エンジンであるBingのデータから膵臓がん患者のユーザーを識別するというもの。膵臓がんは早期発見が難しい部位ですが、検索ワードを分析する手法では、まだ診断を受けていない膵臓がん患者まで識別可能で、膵臓がんの早期発見が可能になると見られています。

 膵臓がんの5年生存率はわずか3%と非常に低いのですが、初期段階で膵臓がんを発見できれば、5年生存率は5〜7%まで増加させることができます。Microsoftの科学者の手法による膵臓がんの発見率は5〜15%で、偽陽性率(診断精度)はわずか10万分の1とのこと。病院の診断でもし膵臓がんと誤診されてしまうと、さらなる検査による医療費の増加や、著しい不安の原因になります。

 一方で検索ワードを使った手法では、分析に使用されるデータは匿名化され「ユーザー名」のような識別要素は含まないとのこと。ユーザーが分析結果を知ることはなく、不用意に不安を与えてしまう心配はなし。ただし研究者も個人を特定できないため、膵臓がんが発覚したユーザーに連絡することもできません。従って、次の論理的ステップは検索ワードから識別できたデータをどのように活用するかということになります。

 ホルビッツ博士は「もしかしたらいつかの日か『Cortana for health』が生まれる可能性もあるかもしれません」と話しており、1つの方法としては、ユーザーにデータ収集の許可を求めた上で、病気の兆候が見つかった時に警告するヘルスサービスの一部として活用することが考えられています。Microsoftによって設立された「Health & Wellness」という健康情報を扱う組織のCTO(最高技術責任者)でもあるホワイト博士は、今回の研究に関する詳細の提示を断っていますが、Microsoftのサービスとしてデータを活用する案を持っているのかもしれません。

 博士らは「ウェブ検索履歴から抽出されたヘルスケアデータ」という分野は、医療の専門家にとって新しいテリトリーであると考えており、ホルビッツ博士は「主要な医学文献にこの種のデータを活用できると思っています」と話しています。

 検索ワードを分析するというアイデアは新しいものではなく、2009年にもGoogleがウェブ検索ログを分析することでインフルエンザの流行を早期発見できるという研究結果を発表しています。

 また、2013年にはMicrosoftの研究チームがウェブ検索ログからアメリカ食品医薬品局(FDA)が気付くより早く処方薬の副作用を発見するという研究結果も報告されています。今後GoogleやMicrosoftが持つユーザーのウェブ検索履歴データは、FDAに対して直接的な価値を持つデータになることや、病気の早期発見システムとして活用される可能性が見えてきています。

GIGAZINE 2016年6月9日

脳腫瘍に対するウイルス療法、早期試験で有望性を確認
再発性膠芽腫患者で生存延長
 実験段階のウイルス療法により、難治性の脳腫瘍患者で生存期間の延長が認められたという。今回の第I相試験では、よくみられる高悪性度の脳腫瘍である再発性膠芽腫の患者に遺伝子改変したウイルスを注入したところ、ウイルス療法群43人の平均生存期間は13.6カ月であったのに対し、ウイルス療法を受けていない群は7.1カ月であったという。

 研究を率いた米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のTimothy Cloughesy氏は、「今回の臨床データから、この治療を抗真菌薬と併用することにより、正常細胞を傷つけることなくがん細胞を死滅させ、がんに対する免疫を活性化できることが初めて示された」と述べている。同治療法を開発した米Tocagen社の顧問でもある同氏は、「この治療法を転移性大腸がんや乳がんなど、他のがんにも応用できる可能性がある」と付け加えている。

 治療を受けた患者の一部は2年以上生存し、副作用もほとんどみられなかったという。「脳腫瘍は致死的な疾患であり、再発すると治療の選択肢は極めて少なく、生存期間は通常は月単位である」と、研究著者の1人である米クリーブランド・クリニックのMichael Vogelbaum氏は言う。

 この治療が効果を発揮する機序は以下の通りだ。まず、注射剤Toca 511が分裂するがん細胞に能動的に感染し、シトシンデアミナーゼと呼ばれる酵素の遺伝子をがん細胞に与える。Toca 511はがん細胞がシトシンデアミナーゼを作るようにプログラムし、治療の第二段階に備える。次に、患者に抗真菌薬Toca FCを投与すると、Toca 511によって引き起こされた遺伝子の変化に基づき、がん細胞はToca FCを抗がん剤5-フルオロウラシル(5-FU)に転換する。これにより、正常細胞を傷つけずに、がん細胞を狙って死滅させることができる。

 この新規の改変ウイルスは増殖型レトロウイルスベクター(RRV)として知られるが、臨床試験の結果が発表されたのは今回が初めてという。第I相試験の目的は安全性と忍容性の評価であり、医薬品が米国食品医薬品局(FDA)の承認を得るには通常、第III相までの試験が必要となる。「今回の結果は進行中の第II/III相試験であるToca 5試験を支持するものであり、脳腫瘍患者の新たな治療選択肢への希望をもたらすものだ」と、Vogelbaum氏は述べている。この研究は「Science Translational Medicine」6月1日号に掲載された。

m3.com 2016年6月13日

8割以上が手術不可能な膵がん 新薬で可能に
 気づかないうちに進行している膵(すい)がん。発見された人のうち、手術が可能なのはわずか2割ほどだ。しかし近年、新しい抗がん剤の登場で、手術可能な患者が増えている。

 さらなる手立てを研究しているのが、名古屋大学病院消化器外科准教授の藤井努医師だ。藤井医師は腫瘍内科の範囲である抗がん剤にも精通しており、複数の治療を駆使して患者の余命期間を延ばしている。

 注目すべき治療は二つ。ひとつは、「手術不可能の膵がんを、手術可能にする」治療法だ。

「膵がんは、手術をいかに可能にするかが、完治を望めるか否かの分かれ目です」(藤井医師)

 大きく関係しているのが、4種類の抗がん剤を合わせたフォルフィリノックスと、ナブパクリタキセルという新しい抗がん剤だ。それぞれ13年と14年に国内で承認された。いずれも従来の抗がん剤より強い効果を発揮することが、臨床研究で示されている。

「従来法に新しい抗がん剤が加わり、治療の選択肢が増えました。これらを組み合わせ、手術不可能と診断された膵がんを縮小させるのです」(同)

 もともとは、「手術可能の膵がん」が対象だった。手術前に抗がん剤を投与し、場合によっては放射線治療もすることでがん細胞が縮小、手術が可能になる。こういった手法は「術前療法」と呼ばれ、まだ膵がん治療のガイドラインには定められていないが、専門医を中心に用いられている。

 さらに近年、「手術不可能の膵がん」に対しても、手術可能になることを目指して、抗がん剤投与や放射線治療がおこなわれるようになってきた。手術可能の膵がんに施すのとは違い、「どこまでやるか」の見極めが難しいが、これによって治療後の状態が大きく変わる。ただし、遠隔転移がある場合にはおこなえない。

 静岡県在住の会社員、山本弘子さん(仮名・50歳)も15年5月にCT(コンピューター断層撮影)を受けた結果、膵がんが見つかった。すでにステージ4まで進行し手術ができない。「抗がん剤を投与しても、副作用で苦しむだけ」と一時は治療を投げ出そうと考えたが、一縷(いちる)の望みをかけて藤井医師の外来を受診した。

 抗がん剤や放射線で手術可能なところまで持っていく場合、どういう「戦略」をとるかは医師の判断による。藤井医師は、フォルフィリノックスよりも副作用が軽いナブパクリタキセルから使用することが多い。

 山本さんにはナブパクリタキセルがよく効き、がんが小さくなっていった。約8カ月後には、膵臓のがん部分やリンパ節などを手術で切除。手術後から再発予防のための抗がん剤治療を受けているが、今も再発はなく、「5年生存率0%」回避の可能性が高い。週に1回の抗がん剤治療に、前向きに取り組んでいる。

 注目されている治療のもうひとつは、腹膜播種に対する新しい治療だ。腹膜播種とは、がん細胞が発生した臓器とは別の臓器などを覆っている膜に、がんが飛び火している状態だ。

 しかし藤井医師は、関西医科大学との共同臨床研究として、胃がんや卵巣がんで成果を出している治療法を応用している。

「おなかにリザーバーという差し入れ口を設け、そこから腹腔内に直接、抗がん剤のパクリタキセルを投与します」(藤井医師)

 多くの薬が血管や粘膜を通して薬剤を浸透させるのに対し、がんに向かってダイレクトに薬を付けるということになる。

 藤井医師と共同研究チームは、膵がんで腹膜播種になっている33人に実施。8人が不可能だった手術を受けられるようになった。この内容は、世界的に権威のある医学雑誌「Annals of Surgery」に掲載された。

「ただし、腹膜播種は小さいのでCTでも見つからないことが多い。なので私は、進行膵がんであれば審査腹腔鏡もおこないます」(同)

 審査腹腔鏡は、CTなどの画像診断では検出できない腹膜転移を診断できる。腹膜播種が見つからなければ、抗がん剤や放射線で手術可能に持っていく。治療方針が大きく変わるので必須の検査だという。

「膵がんで手術不可能だと言われても、決してあきらめないでほしい。『治療が難しい』と言われても、ぜひセカンドオピニオンを受けてください」(同)

dot. 2016年6月14日

尿で癌早期発見、検査キット実用化急ぐ
日立製作所−住商ファーマ、健常者と癌患者の尿検体識別技術を開発
 日立製作所と住友商事子会社の住商ファーマインターナショナルは14日、尿のなかに含まれる糖や脂質などの代謝物を網羅的に解析することで、健常者、乳がん患者、大腸がん患者の尿検体を識別する基礎技術を開発したと発表した。今後、同技術をもとに、尿を用いた簡便ながん検査方法を確立し、早期の実用化を目指す。

 日立と住商は、既存の液体クロマトグラフ、質量分析計と、両社で共同開発した解析ソフトを用いて、健常者、乳がん患者、大腸がん患者の各15尿検体に含まれる代謝物を詳細に解析した。代謝物の水溶性や脂溶性の違いに着目して測定条件を最適化することで、それぞれの尿検体から従来の2倍以上となる1300を超える代謝物を検出できた。

 そこから健常者群、乳がん患者群、大腸がん患者群の尿中代謝物を比較したところ、含有量が大きく異なる代謝物が10個程度あることが分かった。これらの代謝物を乳がん患者、大腸がん患者の尿検体を絞り込むバイオマーカーとし、主成分解析を行った結果、健常者、乳がん患者、大腸がん患者それぞれの尿検体を識別できたという。尿中の代謝物を解析することで乳がんなどを簡便に識別する基礎技術の開発は国内初となる。

 今後、がんとバイオマーカー候補となる物質との関連を詳細に調べる計画。具体的には乳がん患者、健常者の各200尿検体を用いて臨床評価試験を実施。バイオマーカーを同定し、検査キット化を目指していく。自由診療の下でのがんリスク検査として実用化するか、体外診断用医薬品(IVD)として承認申請するかは未定という。

 がん検査は医療機関で血液を採取して実施するのが主流となっている。簡便で非侵襲な尿を用いるがん検査が実用化できれば、在宅での検体採取が可能になり受診率が向上し、がん早期発見につながると期待されている。

m3.com 2016年6月15日

コーヒーはがんの原因にならないことを世界保健機関が発表 
ただし熱すぎる飲み物はがんの原因になる
 「コーヒーは膀胱がんの原因となる発がん性物質を含む」と、過去に世界保健機関(WHO)は発表していましたが、25年にわたってコーヒーとがんの関係が研究された結果、「コーヒーはがんを引き起こさない」ということがわかりました。一方で、種類に関係なく「熱すぎる飲み物」ががんを引き起こす可能性があると報告されています。

 WHOの発表によると、コーヒーは膀胱がんだけでなく膵臓がん・前立腺がんなどの原因にもならないとのことで、むしろ肝臓がんや子宮がんなど、20種類以上のがんリスクを減らすことができることさえ判明しています。

 WHOの指針の転換は、WHOの外部組織である国際がん研究機関(IARC)がコーヒーとがんとの関係を研究した1000以上の論文を再調査した結果を受けたもの。調査を率いたIARCのデイナ・ルーミス博士は「IARCが初めてコーヒーを『発がんの可能性があるもの』に分類した1991年から、コーヒーに関する科学的な調査結果はどんどん増えていき、信頼性も高まってきました」と語っており、過去の研究の被験者の中には喫煙者がいたことなどもあり、コーヒーとがんの間には「コーヒーが、がんのリスクを減らせるという関係がある」と、これまでの発表とは真逆の結論に至ったとのこと。現在、IARCはコーヒーを植物由来の化学物質による抗がん作用がある飲み物として記録しています。

 IARCが「発がんの可能性がある」と指定した物質を後に取り下げることは初めてではないものの、めったに起こらない出来事だそうです。

 一方で、IARCは「熱すぎる飲み物を摂取すること」ががんを引き起こすと発表。まだ証拠は限定的であるものの、「中国や南米ではアメリカ・ヨーロッパより6度ほど高い摂氏70度近くの飲み物を摂取する」という事実に注目した研究で、食道がんと「熱すぎる飲み物を摂取すること」の間には関係があることが示唆されました。

 アメリカのNational Coffee Associationによると、アメリカ人は平均して1日3杯のコーヒーを摂取し、2015年においてコーヒーに支払われた金額は全体で742億ドル(約7兆8億円)だったとのこと。アメリカ以外でも世界中でコーヒーの消費量は増えています。

 National Coffee Associationはコーヒーを90度〜96度で抽出することをすすめていますが、飲む前には適切な温度になるまで冷ますべきであるとしています。

GIGAZINE 2016年6月16日

歯周病が膵臓がんに関係?
2つの口内細菌保持者のがん発生率が高い
 ニーヨーク大学の研究によると、膵臓がんの発症率と歯周病を引き起こす口内細菌2種と間には相関関係があった。

 これら2種類の細菌が口腔内に住みついている人は膵臓がんになった割合が高かったというが、果たしてその真相は?

「膵臓」のがんの初期症状は? 「羊の衣をまとった狼」とも

 膵臓がんは最も恐ろしい「癌(がん)」の一つだろう。

 膵臓がんは、初期にはほとんど自覚症状がなく、しかも進行が早い。また、周囲の組織へ転移しやすいため、発見された時にはすでにかなり進行した状態のことが多く、摘出手術が行えないことが多い。

 残念ながら、膵臓がんの5年生存率は10%〜20%といわれている。

 膵臓がんの初期には、背中の痛み、黄疸(おうだん)、体重の減少などの症状が見られることもあるが、どれも膵臓がんに限った症状ではなく、これも膵臓がんが見逃されてしまう要因である。

 膵臓がんのこのような特徴は「羊の皮を着た狼」に例えられることもある。

歯周病菌が膵臓がんのリスクを高める?

 ニューヨーク大学の研究グループは被験者732人についての追跡調査を10年以上にわたって行った。

 その結果、ある2種類の口内細菌と膵臓がん発生との間に相関関係が見られたのである。

 P.gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)という細菌を持っていた被験者は、その菌を持っていない人に比べて約1.6倍、また、A.actinomycetemcomitans(アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス)という細菌を持っている被験者では、約2.2倍も膵臓がん発生率が高かったという驚きの結果が示された。

 この2つの細菌はともに歯周病の原因菌でもある。

口内の歯周病と膵臓がんの関係 求められる慎重な解釈

 今回、膵臓がんと口内細菌との間に関連性が見られたわけだが、それはあくまでも解析上の「相関関係」であって「因果関係」ではないことに注意しなくてはならない。

 これらの口内細菌が膵臓がんを引き起こすのか、また、引き起こすとしたらどのような作用で引き起こすのか。これらは今のところ全く分かっていないということである。

歯周病菌と膵臓がんをつなぐミッシングリンク

 生活習慣の乱れは、高血圧、心臓病、脳卒中、肥満、糖尿病、がんなどの要因となるが、同様に口腔内の衛生環境も悪くする。従って、膵臓がんの発生と歯周病菌の繁殖に共通する原因は、生活習慣の乱れなのかもしれない。

 しかしその一方で、歯周病菌が膵臓がんを引き起こすという仮説もある。歯周病菌による炎症が組織に波及し、がんの引き金となるという考え方で、その可能性もゼロではない。
歯周病予防を徹底することでがんを予防できる未来がくる?

 もし、歯を磨くことで膵臓がんが防げるとしたら、どんなに多くの人を救えるだろうか。また、自宅や歯科医院で唾液などを検査することで簡単に膵臓がんリスクを評価できるようになるかもしれない。

 今のところ歯周病菌と膵臓がんの因果関係は明らかでない。今後の研究の進展が待たれるところだ。いずれにしても、正しいやり方で歯をしっかり磨くことを含め、生活習慣を整えることが健康には大切である。

CIRCLE 2016年6月17日

腫瘍DNAの変異を予測、薬剤耐性への個別化医療に有用である可能性
 がんの正確な診断や治療法の選択に際して、従来の生検に代わるものとして、血液を用いる「リキッド・バイオプシー(液体生検)」の有望性が示された。研究を率いた米カリフォルニア大学デービス校(UCD)総合がんセンターのPhilip Mack氏によると、リキッド・バイオプシーでは、腫瘍から血液中に流れ込んだDNAを分析する。

 同氏らは1万5,000人以上を対象として、Guardant360と呼ばれる新型の遺伝子スキャンを用いて患者の血液中のDNAを分析し、70種類のがん関連遺伝子における突然変異の有無を調べた。本研究はこの検査を開発したGuardant Health社による資金提供を受けて実施され、米シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表された。

 腫瘍では新たな変異を獲得することで治療への抵抗性が生じる。そのため、この検査により特定の治療に対する抵抗性も検知でき、標的治療を用いる医師にとっても重要な情報が得られるという。今回の研究で特によくみられたがんの種類は、進行性肺がん(37%)、乳がん(14%)、大腸がん(10%)であった。

 腫瘍から血液中にDNAが放出されることは数十年前から知られていたが、生検の代用となるかどうかが常に問題であったと、Mack氏は説明する。今回の研究で、血液中の腫瘍DNAから、腫瘍検体にもみられる発がん性の変異を極めて正確に検知できることが判明した。

 患者398人を対象に、リキッド・バイオプシーでの遺伝子検査の結果を生検と比較したところ、94〜100%の確率で組織検体と同じ変異が血液検体にも含まれていた。また、腫瘍が薬剤への耐性を獲得したときにみられる変化も検出できることがわかった。検査を受けた患者全体の63%超では、リキッド・バイオプシーにより、米国食品医薬品局(FDA)で承認もしくは臨床試験で効果が確認されている薬剤から利用しうる治療選択肢が見つかった。

 リキッド・バイオプシーの費用は従来の生検と同程度になると予想されているが、現時点では、がんの初期診断には依然として組織生検と病理診断が必要だという。Mack氏は、「熟練した病理医は組織内の細胞の外見や挙動からほとんどの腫瘍の種類がわかる。たとえば、肝臓から採取した病変が実は肺がんだったと見分けることもある」と説明する一方、リキッド・バイオプシーの真価は、がんの進行を経時的に監視する際に発揮されるとの見解を示している。

 別の専門家らは、特定の患者では診断においてもリキッド・バイオプシーが有効な代替手段になりうると指摘し、例として外科的処置に適さない高齢者や健康状態の悪い患者、がんが脳や骨に転移した患者、出血リスクの高い患者などを挙げている。また、今回の研究では遺伝子に基づくがん治療に焦点を当てているが、がん免疫療法の効果を予測する検査も開発できる可能性があるという。

m3.com 2016年6月20日

がん検出率95%!人工知能を用いてがん細胞を特定する方法を米科学者が発明
 比較的精度が高いとされるがん診断法の多くは、診断時に使用する生体標識による細胞へのダメージが懸念されている。

 その現状打破への突破口となり得るが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、カリフォルニア・ナノシステム研究所のバーハム・ジャラリ教授率いる研究グループが開発した、人工知能によるがん診断法だ。

・独自に開発した顕微鏡を使用

 まず注目すべきは、がん診断に使用する顕微鏡である。これはジャラリ教授自身が独自に開発したものだ。アナログ‐デジタル変換器および広帯域の等価時間サンプリング・オシロスコープの利点をそれぞれ最大限に活かした独自の光子時間延伸技術で動くその顕微鏡は、すでに特許を取得済みである。

 顕微鏡のメカニズムについては、フラッシュを発光して撮影するカメラと似ている。レーザーの破裂とともに血管内を流れる血液細胞を撮影する仕組みとなっている。

 1回のプロセスはナノ秒、つまり1秒の10億分の1という速さで瞬時に行われる。したがって、1秒間につき3600万枚にも及ぶ画像が撮影・処理されることになる。

・深層学習でがん細胞と非がん細胞を区別

 続いて、人工知能の出番である。

 一言に人工知能と言っても学習手法はさまざまであるが、ここで使用するのは深層学習(ディープラーニング)だ。

 その複雑なアルゴリズムに基づき、データを解析し、大きさ・粒度・生物量を含む計16点の特徴を抽出する。その結果、95パーセントの確率でがん細胞を特定することが可能である。

・細胞を破壊しない

 通常、ほんのわずかな時間での撮影には、高照度下での実施が求められる。それに伴い、細胞が破壊され、解析が行えなくなる恐れがある。

 一方、今回のがん診断法は低照度下で行われるため、細胞へのダメージの恐れはない。

 これを機に、がんに対する知られざる新たな側面の解明に向け、一歩前進することを期待したい。

マイナビニュース 2016年6月21日

「クレソン」って何だか地味な野菜 実はがん予防に効果ありそう
 日本人の死亡原因第1位の「がん」。年間およそ37万人の人が亡くなり、その数は年々増えているという、恐ろしい病だ。

 そんながんへの予防効果が期待できる野菜がある。それも、胃がんや大腸がん、乳がんまで、様々ながんを予防する可能性を持つという。

メーンディッシュの付け合せのイメージが強い野菜だが、毎日食べれば抗酸化力がアップ

 気になる野菜の名前は「クレソン」。「イソチオシアネート」という栄養素を含む、アブラナ科の野菜の一種だ。

 イソチオシアネートとは、野菜に含まれる辛味成分の一つで、体内に入ると抗酸化物質を大量に作る。増えた抗酸化物質が全身の細胞内にある有害な活性酸素を無毒化し、がんの発生を抑えると考えられている。

 がん研究の世界的権威である「国際がん研究機関」(IARC)の発表でも、「ブロッコリー、キャベツ、クレソンなど、アブラナ科野菜ががんのリスクを減少させる」と指摘されるほど、効果が期待できる野菜なのだ。

 中でもクレソンは、100グラムあたりのイソチオシアネートの含有量がアブラナ科野菜の中でダントツに多い。1日にどれくらい食べたらよいのか、現時点では明らかになっていないが、定期的に摂取すれば効果が期待できると考えられている。ただ、過剰摂取が腎機能障害を引き起こすという報告もあり、食べすぎには要注意だ。

ギョーザに混ぜご飯、天ぷらにしてもおいしい

 付け合わせに使うイメージが強く、調理法がわからない人も多そうだが、クレソン農家では「クレソン入りギョーザ」「クレソンのサラダ」「クレソンを入れたスープ・みそ汁」「クレソンの混ぜご飯」「クレソンのおひたし」「クレソンの天ぷら」「クレソン入りグラタン」などなど、レシピは様々だ。

 番組では、毎日食べているクレソン農家の28〜81歳の6人の、血液中の抗酸化物質の量を測定した。すると、4人が実年齢の平均より多い数値に。特に49歳の女性は20歳の平均よりも遥かに高い数値が出た。クレソンを日々食べることで、がん予防につながる抗酸化力を上げた可能性がある。

J-CASTニュース 2016年6月23日

歯磨きががん予防になるかも?頭頚部がんとの関連を調査
2万人のデータの解析から
 口の中など、頭から首にかけての場所にできるがん(頭頚部がん)は、喫煙や飲酒によってできやすくなります。さらに歯の衛生が関係しているかどうかについて、データの解析による検討が行われました。

◆頭頚部がんが出なかった人は歯磨きをしていたか?

 ここで紹介する研究は、過去の研究で得られたデータを使って、歯の衛生状態と頭頚部がんの統計的関連を調べたものです。

 追跡調査で歯の状態と病気の発生などを調査された対象者のうち、頭頚部がんと診断された8,925人と、頭頚部がんではなかった12,527人を比較することで、もともと歯の状態がよかったかどうかに違いがあるかを調べました。

 歯の状態を評価するために、抜歯などで失った歯(喪失歯)の数、毎日歯磨きをするか、毎年歯科医にかかっているか、歯肉の病気がないか、総入れ歯(総義歯)を使っているかを指標としました。

◆歯磨きする人で頭頚部がんが少ない

 次の結果が得られました。

 仮説どおりの方向に、何らかの頭頚部がんとの負の関連が、喪失歯5本未満(オッズ比0.78、95%信頼区間0.74-0.82)、毎年歯科受診すること(オッズ比0.82、95%信頼区間0.78-0.87)、毎日歯磨きをすること(オッズ比0.83、95%信頼区間0.79-0.88)、歯肉疾患がないこと(オッズ比0.94、95%信頼区間0.89-0.99)に対して観察され、総義歯装着との関連は観察されなかった。

 喪失歯が少ない、毎日歯磨きをする、毎年歯科に行く、歯肉の病気がない人で、それぞれ頭頚部がんの発生が少なくなっていました。総義歯とは関連が見られませんでした。

 研究班は「喪失歯が少ない、毎年歯科に行く、毎日歯磨きをすることを特徴とする、口の中の衛生状態が良いことは、頭頚部がんのリスクをわずかに減らすかもしれない」と結論しています。

 歯磨きで口の中を清潔に保つことで、ほかにも健康に良い効果が挙げられています。歳を取ってもおいしく食事を楽しむためにも、歯磨きの習慣をつけましょう。

◆参照文献

The role of oral hygiene in head and neck cancer: Results from International Head and Neck Cancer Epidemiology (INHANCE) Consortium.

Ann Oncol. 2016 May 27. [Epub ahead of print]


medley 2016年6月24日

がんの最新治療方法!水素療法は効果アリ?ナシ?
 近年さまざまながん治療法が確立され、治療の選択肢が増えているのはいいことですが、「それって本当に効果があるの?」と思ってしまうものもあります。

 そこで、今回は最近話題の水素療法について、医師に解説していただきました。

水素ってなんですか?

 水素分子とは、常温で無色無臭の気体であり、分子量が小さく非常に軽い気体です。

 化学的な性質としては、酸化剤や、還元剤として働くことが知られ、酸素と水素が結合するときは水素は還元剤として働いて、爆発的な燃焼を起こし水を生成することが知られています。

 また、宇宙において水素は、最も多く存在する元素であることも知られています。

水素を摂取することで身体にどのような影響がありますか?

 水素を摂取することによって、私たちの身体に有害といわれている過剰な活性酸素を取り除き、活性酸素による組織の障害を抑えられるのではないか、という説があります。

 過剰な活性酸素は、例えば紫外線や放射線を浴びたり、喫煙、過度な飲酒などによって発生することが知られており、ストレスも活性酸素の発生を促進する重要な因子です。

 これらによって発生した活性酸素のうち、特に周囲の組織を酸化させる力が強く、ダメージを与えやすいタイプの活性酸素を除去する可能性があるのではないか、と考えられています。

水素はどのようにガン細胞に影響しますか?

 がん細胞自体は、生活習慣の乱れによる過剰な活性酸素の影響などを受けて、私たちそれぞれの体に毎日数多く発生していますが、ほとんどの場合、体に備わっている免疫機能によって生体から除去されています。

 しかし、体の免疫力が低下していたり、活性酸素が過剰であることなどによって、がん細胞を死滅させられず、体の中で増殖してしまう場合があります。これががんの発生であると考えられています。

 この発生を水素のもつ活性酸素を除去する力を利用して体の抗酸化力を高め、がん細胞の発生や増殖を抑えようというのが水素療法です。

 また、水素には体の免疫の重要な要である白血球の活性を高めてくれる効果もあるともいわれています。

ガン治療において水素はどのように使用されますか?

 一般的に医療の一部として行っている医療機関はまだ数が少ないようですが、水素ガスの吸引や、水素を水に溶かした飲料の飲用などが行われているようです。

 水素療法の様々な疾患に対する有用性を示した論文がいくつか発表されているようですが、現段階においては、明らかな効果に関する確証は得られておらず、まだ研究段階にある治療の一つと考えられます。

医師からのアドバイス

 がんには新しい治療法が次々に開発されていて、以前は治りにくかった特殊ながんやある程度進行したがんなどもずいぶん治りやすい時代になってきています。

 もちろん、がんは深刻な病気ですので、まずはしっかり確立した治療をおこなうことが何より大切ですが、今後の可能性の一つとして水素療法によるがん治療にも期待をしたいです。

ガジェット通信 2016年7月1日

ブサカワネズミががんから人類を救う
 がんになるのはヒトだけではない。魚もトリもネズミもイヌもネコもがんになる。ところがアフリカ原産の小動物ハダカデバネズミは長寿の上にがんに非常になりづらい。この秘密を解く鍵を日本の研究者が見つけた。

●ハチやアリと同じ社会

 ハダカデバネズミ(以下デバ)は、成体で体長10センチほど=写真。「変な頭の毛のないやつ」という学名付きで報告されたのは19世紀終わりだったが、1981年「サイエンス」誌に掲載された一編の論文が注目された。

 それによるとデバは、繁殖を担う一匹の女王、1〜数匹の王の他は、穴掘り、子育て、餌の調達、外敵の撃退などをワーカーと兵隊が分業する「カースト社会」を作っているという。これはハチやアリなどの昆虫でおなじみで、進化学者は「真社会性動物」と名づけていたが、哺乳類では未報告だった。そんな社会を持つ哺乳類は、いまだにデバとその近縁の一種のみしか確認がない。

 90年代から、行動生態学者や進化学者がデバを実験室で飼育し始めた。日本でも動物のコミュニケーション研究で岡ノ谷一夫さん(現・東京大学教授)が理化学研究所などでデバを飼育していた。

 そのうち不思議なことがわかってきた。同じような大きさのマウスの寿命はせいぜい2〜3年なのに、デバの寿命はその十数倍の平均28年。40歳を超える長寿者も報告された。寿命の8割以上の期間で老化の兆候はほとんど見えず、自然の状態でがんを発生することもない、と2010年前後に報告された。

 現在、日本でデバが実験室で飼われているのは、北海道大学遺伝子病制御研究所の三浦恭子講師の研究室だけである。

 温度・湿度管理がなされた飼育室には、いくつものアクリル樹脂の箱をパイプでつなげた「擬似トンネル」が並べられ、約200匹のデバがちょこまかと動き回っている。大きなお腹を引きずっているのは妊娠した女王だ。野生では根っこをかじっているデバも、ここではイモ、ニンジンなどを食べている。

●二重のがん防御機構

 三浦さんの専門は分子生物学である。それがなぜデバ?

「変な生き物が好き」。博士論文の研究をほぼ終え、次のネタ探しをするうちにデバに出会った。面白い特徴に惹かれた。理化学研究所の岡ノ谷研究室に通って飼育法を伝授してもらった。そのデバをそっくりもらい受け、11年、岡野栄之慶應義塾大学教授の支援でその研究室に飼育室を作った。14年にはまるごと北大に移った。

 研究の目標は、もちろんデバの長寿とがん耐性の解明である。「最初にiPS細胞を作ろう」と、デバの皮膚細胞に山中因子という四つの遺伝子を入れて多能性のあるiPS細胞を作った。iPS細胞は特別なネズミの皮膚に移植されると、増殖して「奇形腫」という一種のがんを作る。これは多能性の証明のひとつだ。

 ところがデバのiPS細胞は移植して半年たってもがんをつくらない。「デバのがん耐性に関係?」と三浦さんは考え、そのメカニズムを調べた。

 今年5月の発表によると、鍵は二つの仕組みだった。奇形腫を作るのに働くはずのERASというがん遺伝子が機能を失っていたこと。もう一つは、通常はiPS細胞では働かないがん抑制遺伝子ARFが、デバiPS細胞では働いていて、しかもそれが働かない場合は、細胞を老化させて増殖を止めるデバ特有のがん化抑制メカニズムが働くことを突き止めた。ARFはヒトも持っているが、デバのような二重の防御機構は知られていない。

 そのメカニズム解明と、デバの長寿を支える遺伝子解明が次の目標だ。デバは省エネ動物だ。マウスと比べると体温は5度低い32度、心拍数は3分の1の1分180回だ。これらも様々な耐性に関係するか。

「ヒトにすぐ使えるかどうかわからないが、デバの特徴は本当に面白い。研究者にとって宝の山だと思います」と三浦さんは言う。

dot.ドット 2016年7月3日

乳房MRIの撮影時の姿勢が精度に影響
伏臥位により腫瘍位置が変化する可能性
 乳がんの手術前にMRI画像を撮影するとき、患者が伏臥位(うつぶせ)の姿勢を取っていると正確なデータが得られない可能性があることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院(ボストン)の放射線科医らによる小規模研究で示された。それに対し、仰臥位(仰向け)のMRIでは詳細かつ正確な情報を得ることができ、効果的な腫瘍摘出につながると、研究を率いたEva Gombos氏は述べている。

 乳がん患者が乳房温存腫瘍摘出術を受けるとき、一般的には、腫瘍の大きさ・形状・位置を確認するために乳房MRIが術前に実施される。米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のKristin Byrne氏は、「乳房MRIの本当の利点は、同側または対側の乳房に別のがんがないかを術前に明らかにすることにある」と説明する。

 このとき、MRIは伏臥位で実施されることが多い。その理由は、仰臥位になると乳房がさまざまな角度で脇に垂れ下がるため、撮影のたびに見え方が違ってしまうためだという。しかし、患者が手術を受けるときには、撮影時とは逆の姿勢である仰臥位をとることになると、研究グループは指摘している。

 今回の研究では、乳腺腫瘍摘出術を受ける乳がん患者12人に着目。最終的にそのうち6人が、手術の前後ともに仰臥位で乳房MRIを撮像した。全体として、伏臥位でMRIを受けた場合、乳房および乳房内の腫瘍の位置に(MRIスキャン上で)著明な変形が認められた。この知見は「Radiology」オンライン版に6月22日掲載された。

 標準的な伏臥位の画像と、手術時の仰臥位の姿勢との間では、腫瘍は変位と変形により大きさや形状が変化していたと、Gombos氏は報告している。このことから、研究の上席著者であるMehra Golshan氏は、仰臥位と伏臥位の両方のMRIを実施すれば、残存する腫瘍を検出する助けとなり、再手術を防ぐための切除マージンを確保できるとの考えを示している。乳房温存手術を受ける女性の15〜40%は残存腫瘍を摘出するための再手術が必要になると、同氏は指摘する。

 Gombos氏は、今回の研究は小規模であるため、さらに大規模な研究による検証が必要であると強調している。Byrne氏は、今回の結論から確固たる結論を導くことはできないとし、「乳房MRIを伏臥位で実施するのは、姿勢に一貫性をもたせるためだ。これは後の撮像で経過をみるために重要である」と述べるとともに、手術直前のMRI実施には余分な時間を必要とするため、感染症や麻酔関連のリスクが高まるという欠点もあると指摘している。

m3.com 2016年7月4日

寄生虫が救世主!? 成功率95%のがん検査方法とは?
 早期発見が大切といわれる「がん」ですが、その検査方法はさまざまです。最近では、なんと寄生虫である「線虫」を用いたがんの最新検査方法が研究されているそうです。

 今回は、この「線虫」を用いたがんの検査について医師に詳しい話を聞いてきました。

線虫とはなんですか?

 線虫とは、線形動物門に分類される細長い動物の総称です。

 イメージ的には1ミリくらいの長さのものが想像しやすいですが、人間やその他の動物の腸管などに寄生するものの中には、なんと長さが1メートル以上あるものもいます。

 非常に多くの種類が存在し、今現在はっきりわかっているものだけで2万種もの線虫が地球上に存在しています。山の上から海底まで、とても広い範囲に生息していることが知られていて、特に海にすむ線虫に関してはまだ知られていないものが、数多く存在するのではないかと考えられています。

線虫をどう利用して検査を行うのですか?

 これは「C.エレガンス」と呼ばれる線虫の嗅覚を利用したものです。早期がんを含め、がん患者の尿には、人間にはかぎ分けられないものの、より嗅覚の発達した動物には違いを認知できると思われる「独特のにおい」があります。

 非常に鋭敏な嗅覚をもったC.エレガンスは、好きなにおいには積極的に近づいていき、嫌いなにおいからは遠ざかる、という性質をもっています。そこで、がん患者の尿にはC.エレガンスが近づいていき、がんがない人の尿からは遠ざかっていく、という非常に興味深い現象が見られたそうです。

線虫を利用したがん検査の精度の高さは?

 研究結果によると、95.8%もの確率でがん患者と、そうでない人の尿をかぎ分けたということです。

 これはC.エレガンスが、非常に鋭敏な嗅覚をもっているという、驚くべき結果となりました。

線虫を利用した検査におけるメリットは?

 まず、患者にとって負担の少ない検査であるということです。

 また、以前には、嗅覚が鋭敏である犬によって尿をかぎ分けさせる方法が考えられていましたが、いくつもの尿をかぎ分けているうちに犬自身、嗅覚が疲弊してしまい、継続性のある検査法とするのは困難でした。

 その点、C.エレガンスについては、単体が疲弊することによる検査の中断もなく、飼育も簡易で検査にかかる費用も非常に少ないという、多くのメリットがあるといえるでしょう。

線虫を利用した検査は、日本で普及するでしょうか?

 現在はまだ研究段階であり、実用化にはその信頼性や根拠について、いくつもの検証が必要だと考えられます。

 この研究が再現可能で、実際に90%を超える確率でがんを発見できるとしたら、日本ではもちろん、世界中に広く普及する検査となることが予想できます。

最後に医師からアドバイス

 がんに対する研究は、日進月歩で続けられています。このような画期的な方法でがんを早期発見できれば、多くの患者を救うことになるでしょう。

 線虫を利用したがん検査は、メリットも多い、非常に理想的な検査法といえるので、高い期待と関心が寄せられています。

ニフティニュース 2016年7月4日

心臓の保護、がん予防にも?コーヒーのもつ意外な効果
 ざっくり言うと

 コーヒーのもつ、健康への意外な効果を6つ紹介している

 コーヒーを多く飲む人は、様々ながんの罹患率が低くなるという研究がある

 心臓の保護、頭痛の解消、糖尿病の予防などにも効果が期待できるという


 皆さんはコーヒーがお好きですか? 「朝起きて真っ先にコーヒーメーカーのスイッチをオンにする」「コーヒーを飲まないと1日が始まらない」という人もいることでしょう。

 コーヒーには美容効果や、病気予防効果があることが広く知られています。そこで今回は、『WooRis』の過去記事や、海外の健康・環境系情報サイト『Rodale Wellness』の記事を参考に、そんな効能の数々をまとめてご紹介しましょう!


■1:がんの予防

 日本人の死因上位に入る“がん”。最近では芸能人でも罹患する人が目立ち、いつ誰がなるか分かりません。

 普段からがん予防を心がけたいものですが、 研究によると、1日に4杯以上コーヒーを飲んだ成人男性は、なんと前立腺がんの確率が飲まない人より59%も低くなるそうです!

というのも、コーヒーにはアンチオキシダントの“ポリフェノール”が豊富に含まれているからだそうです。なお、中国の研究ではコーヒーを多く飲む人の肝臓がん罹患率は50%低かったという結果が出ており、またカナダの研究では乳がんの罹患率も低いという結果が出たそうです。

■2:早期死亡の危険性が減少

 コーヒーに様々な病気予防効果があるということは、その分寿命が延びる可能性があるということですよね。

 米国の医学誌に発表された研究によると、どんな原因であっても、1日4杯コーヒーを飲んだ人の死亡率は、飲まなかった人より16%低かったそうです。

 また、1日3杯のコーヒーで、心疾患による死亡率も21%減少するという結果が出たとか。これなら朝から堂々と楽しめそうですね。

■3:頭痛の解消

 頭痛で悩む人というのは案外多いものです。

 過去記事「えっ…コーヒーも効くの!? 自宅でできる“突然の偏頭痛”を解消する方法5つ」でお伝えしたように、カフェインは頭痛薬や痛み止めにも配合されていることがあるそうなのです。

 ノルウェーで実施された研究によると、1日平均3杯程度のコーヒーを飲んでいる人は、頭痛になる確率が一番少なかったそうです。ただし、飲みすぎは時にさらなる頭痛を引き起こす原因になるそうですので注意しましょう。

■4:糖尿病の予防

 30〜40代にもなると気になってくるのが成人病。中でも糖尿病は命の危険もある大変な病気です。

 しかし、米国ハーバード大学の研究によると、今飲んでいるコーヒーの量よりもう1杯多く飲むことで、なんと糖尿病の確率が11%減ったという結果が出たそうなのです。

 逆に、コーヒーの量を減らすことにより罹患率が17%増加したとか! 今1〜2杯しか飲んでいないという人はもう1杯増やしてみては。ただし、既に4〜5杯飲んでいるという方はそれで十分だと思います!

■5:肝臓のデトックス

 コーヒーを多く飲むことで肝臓がんの確率が50%減少すると先に述べましたが、それもそのはず、コーヒーは肝臓を掃除するほか、肝臓疾患を予防する働きがあるというのです!

 なんと、コーヒーを1日2〜3杯飲むと、肝硬変の確率が66%減少するという研究結果もあるそうです。肝臓の健康が心配な方は覚えておいてくださいね!

■6:心臓を保護する

 コーヒーは健康上の効能を数多く持つことが分かりましたが、まだ終わりではありませんよ! なんと、米国心臓協会の公表によると、1日3〜5杯のコーヒーを飲んでいる人は、心疾患で死亡する確率が低いそうです!

 心疾患は、がんに続いて日本人の死亡原因として多い病気です。コーヒーを飲めば、どちらの予防にも効果がありそうですね。

 いかがでしたか? コーヒーには素晴らしい病気予防効果があります。しかし、世界保健機関(WHO)の公表によると、せっかく多くの効能を持つコーヒーでも、熱すぎるとかえってがんを発病させる危険性があるそうです!

 飲み物の温度が65度以上だと危険性がアップするそうなので、牛乳を入れたり、少し冷ましたりして、熱すぎるコーヒーを飲まないようにしましょう。また午後遅い時間に飲むと、睡眠に影響が出る可能性がありますので要注意!

 他にも大事なのは質のいいコーヒーと水を使い、正しく淹れること。コーヒーの美味しい淹れ方に関しては、過去記事「なるほど!コーヒー専門家が伝授する“あなたのコーヒーがマズい”理由5つ」をご参考にしてくださいね。

ライブドアニュース 2016年7月5日

尿を調べればがんがわかる?
尿でがんの早期発見をめざす新検査
 日立製作所と住友商事グループは、尿を使って乳がんや大腸がんの患者を識別する技術を開発し、今年6月に発表した。健康な人、乳がん患者、大腸がん患者、各15人の尿中から糖や脂質など1300以上の代謝物を取り出して比較。患者かどうかで含有量が大きく異なる物質を200以上見つけ出した。さらにその中からがんと関連が深いと思われる約10種類を指標(バイオマーカー)として絞り込むことでがんの有無に加え、乳がん・大腸がんの種類の識別にも成功したという。

 日立で開発に当たった基礎研究センタの坂入実チーフサイエンティストはこう話す。

「尿なら簡単に苦痛なく採取できる。検査による被曝もありません」

●簡易な実用化目指す

 現段階では、どの程度の進行具合のがんから見つけられるのかなどはわかっていない。今後は臨床データの件数を増やし、精度の向上を図る。また、若い女性に多い乳がんと大腸がんから研究をスタートさせたが、特定できるがんの種類も増やしていきたいという。

「将来は、検査キットなど簡易な方法で実用化を進めていく方針です。受診者が自宅で採った尿を検査機関に送付するだけで正確に診断できる仕組みを確立し、がんの早期診断や早期治療につなげたい。がんを治療したあとの再発の早期発見にも使えるのでは、と考えています」(坂入さん)

dot.ドット 2016年7月6日

本当は手術しないほうがいい「がん」?
「とにかく切らなきゃ!」は日本のおかしな風習だ
身体の一部を失うということ

 喉に悪性腫瘍ができる咽頭がんと喉頭がん。昨年、音楽プロデューサーのつんく♂が、喉頭がんの手術を受け声帯を摘出したことは記憶に新しい。

 『がんで死ぬのはもったいない』や『何のために生きるか』など、がん治療に関する著書も多い平岩正樹外科医が語る。

「たとえば、早期の咽頭がんの場合、手術ではなく放射線治療であれば、声帯を摘出する必要がないので、声を失うこともありません。人それぞれ状況が違うので、『どんな犠牲を払っても手術をしたほうがいい』というのは早計です。その人の年齢や生活スタイル、価値観によって、いろんな選択肢があってしかるべきです」

 命と引き換えに声を失う??。生きるためとはいえ、手術の「代償」はあまりに大きい。

 しかも喉頭がんには、こんなデータもある。昨年、アメリカのケースウエスタンリザーブ大学を中心とした研究グループが「進行した声門上の喉頭がんは手術をしてもしなくても、生存率はほぼ変わらない」という調査結果を発表した。

 '90年から'13年までの喉頭がん患者のカルテを分析した結果、手術をした人の5年生存率が約50%だったのに対し、手術をしなかった人(放射線や抗がん剤治療を選んだ人)も約50%と同等だったことが明らかになったのである。

 当然ながら発声機能については、手術をしなかった患者のほうがより維持されていた。

 「がんになったらもう切るしかない」、「手術しか助かる道はない」と患者にすすめてくる医者がいる。だが、一度立ち止まって考えてほしい。がんの手術は、身体の一部分を永遠に失う、という負の側面に加えて、手術をしても長生きするどころか、逆に健康寿命が縮まる危険性もあるのだ。

米国では安易にメスを入れない

 岡部漢方内科の岡部哲郎院長は、「若くて体力のあるうちであれば、手術をして根治を目指すのもいいかもしれないが、高齢者の場合はそうとは言い切れない」と語る。

「日本ではまだまだ『がんイコール手術』という考えが根強いですが、アメリカでは安易にメスを入れずに、放射線での治療がメインになっている。手術は全身麻酔や出血など身体にかなりの負担がかかります。適応能力が低下した高齢者ならなおさら。そのため、手術することでさらに調子が悪くなることが起こりうるのです。

 がんを宣告されれば、皆不安になり、医者に言われるまま手術を受けてしまう。『手術後どんな生活が待っているか』まで思いを巡らせられる人はなかなかいません。でも特に高齢者の場合は、その後の人生のことを考え、できるだけ手術を避け、他の治療法を探してほしい」

 手術をしたことで寿命は少し延びるかもしれないが、人間本来の大切な機能を失う可能性がある。ベッドから起き上がることもできず、そのまま人生を終えるか、それとも人間らしい生活を続けて、人生を全うするか??。

 少なくともそれは医師の言いなりで決めることではなく、自分で選択すべきことだろう。
どっちが幸せだったのか

 食道がんの手術は、「人間本来の食べるという機能」を失う可能性がある。

 術後、再建した食道が狭くなってしまう「食道狭窄」や、食べ物を飲み込みにくくなる「嚥下障害」など、QOL(人間らしい生活・人生の質)に大きく影響する後遺症が残ることもある。

 最悪の場合、胃に穴を空けて直接、栄養を送り込む「胃瘻」を付けざるを得なくなり、自由に動くどころか、ベッドから離れることもできず「こんなことなら手術なんかしなければよかった」と後悔する人も多い。

 患者にとっては非常に難しい決断と、つらい予後を強いられる食道がんの手術だが、にもかかわらず手術をしたがる医者が多いのはなぜか。

仮に手術は成功しても…

「食道がんは非常に難しい手術の一つです。しかし、それだけに医者は『一例でも多く手術をやって実績を積みたい』と考えるのです。ただ食道がんの場合、リンパ節に転移をしていることも多く、手術をしても完全にがんを取りきることは難しく、再発の可能性も高い。

 また食道がんは進行しやすいため、手術のせいで細胞が活性化され、全身に遠隔転移し、手術から1年足らずで亡くなられるというケースも少なくありません。だったら手術はせず、放射線と抗がん剤による治療法のほうが、むしろリスクは少ないと言えます」(消化器科専門の外科医)

 胃がんのため手術で胃を全摘出した坂田守さん(75歳・仮名)は、こんな胸の内を吐露する。

「胃がないので、ほとんど食事ができなくなり、体重もかなり減りました。筋肉も落ち、今では歩くこともままなりません。

 私は刺身が大好物だったのですが、それももう食べられない。延命と引き換えに『食べる楽しみ』を失ったのです。ベッドの上で一日中病院の天井を見上げていると『手術をした人生としなかった人生、一体どっちが幸せだったのだろうか』と分からなくなることがありますね」

 仮に手術は成功しても合併症の不安は常につきまとう。胃がんの代表的な合併症として挙げられるのが腸閉塞だ。胃を切除した場合、食べ物が直接小腸や大腸を通過するので消化しきれず詰まってしまい、猛烈な腹痛に襲われる。体力が低下している高齢者にとっては、命の危険性もある。

大腸がんの「落とし穴」

 がんの中では比較的切除が容易とされるため、手術をすすめられる大腸がん。だが、ここにも「落とし穴」がある。

 直腸がんが肛門に近いところにできた場合、肛門(肛門括約筋)も含めてがんを切除する必要があり、人工肛門が必須となる。

 大腸がんの手術をした山口雅春さん(65歳・仮名)が言う。

「人工肛門をつけてから『便が漏れたらどうしよう』という不安と、臭いが気になり、なかなか外出できなくなりました。一度バス旅行に行ったのですが、不安と緊張のため車内でパニック症状を起こしてしまったんです。それ以来、遠出はしていません。

 生きるためには仕方がないことだとは分かっているのですが、残りの人生を考えたら、もっと手術に対して慎重に考えればよかったと後悔しています」

70過ぎたら手術以外の道を

 現在では、肛門を残す手術方法もあり、一部の医療機関では実際に行われている。自分の年齢と今後の人生を考え、何が自分にとって最良の選択なのかを、今一度考える必要がある。

欧米では切らないのが常識

 がんの手術は、その患者の年齢と大きな関係がある。

 「前立腺がんは、70歳を超えれば手術をする必要はない」と断言するのは、医師であり、医療ジャーナリストの富家孝氏だ。

「前立腺がんは高齢者に多いがんですが、このがんによる死亡者数は、がんの中でも10位と決して多くありません。前立腺がんは他のがんに比べ進行が遅いので、放置しておいても問題なく生涯を終えられるのです。

 だから私は、年配の患者から相談を受けると、必ず『手術は止めたほうがいい』とアドバイスしています。ただでさえ前立腺は血流が豊富で、手術の際に大量出血しやすい上、手術の後遺症で尿失禁やインポテンツ(ED)になることも少なくありません。

 医者は『内視鏡手術なので痛みもないし、すぐ終わりますよ』とすすめてきますが、手術ミスや術後の合併症のリスクを考えると断ったほうが賢明です」

 だが実際には、医者に一度がんと診断されると外科手術で前立腺を切除することを選ぶ人が、後を絶たないという。

「『がん恐怖症』と言いますか、切ったほうがいいと信じ込んでいる人が日本人には多い。前立腺がんの治療の基本は外科手術ではなくホルモン療法です。このがんは男性ホルモンの分泌で大きくなるので、女性ホルモンを投与すれば、がんの成長を遅らせることができる。

 すでに欧米では70歳以上の患者の前立腺がんは『外科手術をしない』のが常識となっています。日本でも70歳以上の患者は手術を受けないほうがいい」(富家氏)

肺がん・すい臓がんの場合

 日本人男性の死因で、もっとも多い肺がん。進行が早いため医者はすぐに切りたがるが、これもまた手術をしないほうがいい場合もある。

「70代以上の患者にとって、肺を切除することはかなりの負担になります。息切れや動悸を起こしやすくなり、日常生活を送ることが非常に困難になる。さらに手術をしたことで、肺炎などの合併症を起こす可能性も高くなり、手術をしたばっかりに死期を早める可能性もあります」(呼吸器専門の外科医)

 がんの中でももっとも治療が難しく、生存率が低いのがすい臓がんだ。すい臓がんは早期の発見が難しく、見つかった時にはすでにかなり進行している場合が多い。

「腫瘍が1pを超えていると手術はしないほうがいい。ステージWになると他の臓器やリンパ節に転移している可能性が高い。取りきれなかったがんが、手術により活性化し、より増殖することもある。

 ですから、すい臓がんが見つかった時点で手術はせず、保存的な治療を考えるべきでしょう。手術をしたらそのまま病院から出られず、半年後に亡くなるという患者も多い。しかし、手術を避けて放射線治療などにすれば、2〜3年生きることは珍しくありません」(がん専門の外科医)

大学病院が一番危ない

 手術をしない場合、放射線、抗がん剤、重粒子線などの治療法が主に挙げられるが、前出の岡部氏は、昨今「ある治療」が注目されていると言う。

「『トモセラピー』と呼ばれる、立体的にがんをとらえ、がんがある部分にのみ放射線を当てることができる治療装置です。がんだけを狙うことができるため、副作用を大幅に抑えることができます。日本にはまだ20台ほどと少ないですが、アメリカではどんどん普及しています」

 さらに手術以外で、もう一つ有効な治療法が「マイクロ波」だと岡部氏は言う。

「マイクロ波とは、針の先から電子レンジと同じ電磁波を射出し、がんを焼いてしまうものです。肺がんや乳がんなど多くのがんに対応しています。CTで見ながら行うのでがんの部位をピンポイントで焼くことができ、約2〜3pのがんまで可能です。

 がんの場合、転移しないことが大事なことですから、トモセラピーやマイクロ波をやりながら、免疫療法を加えるのがベストです。そうすると、5年生存率が通常の手術より20%上がります。たとえば、ステージUAの肺がんを手術した場合、5年生存率は5割を切りますが、前述した方法なら7割になる。免疫療法で転移をブロックするのです」

術後に後悔しても遅い

 手術以外の治療法は日々進化しているものの、やはり医者の誤った判断によって、「いらぬ手術」をさせられる患者は後を絶たない。

 藤原雄介さん(32歳・仮名)は、父(62歳)の手術を担当した医者にこう憤る。

「父は検診で肝臓に影が見つかったので、大きな総合病院で調べてもらいました。すると検査の結果を見た医者から、はっきりと『肝臓がんですね』と言われたのです。動揺した父は、医者にすすめられるままに手術を受けました。

 でも実際に切ってみると腫瘍は良性で、まったく切る必要はなかったんです。ところがその医師は『何もなくて良かったですね。こればっかりは切ってみないと分からないから』と平然と言いのけたのです。手術以来、父は痩せてしまって、長期入院のため仕事も辞めざるを得なくなった。

 なぜあの時、セカンドオピニオンを取るなどして、他の医者の意見を聞かなかったのか、本当に後悔しています」

 気を付けなければいけないのは、大学病院や総合病院などへの「過信」だ。ある医療ジャーナリストは、市中病院よりむしろ大学病院のほうが危険だという。

「医師の数が多い大学病院では、一人の医師が技術力を磨く時間は多くありません。運悪く未熟な医者に当たる可能性も十分ある。手術をするかしないかの判断は、医者の力量の差がもっとも大きい部分です。名前だけで大きな大学病院を選んで『手術をしないほうがよかった』と後悔する人がなくならないのはそのためです」

 東京中央メディカルクリニック理事長の白川太郎氏も「もし手術を受けるなら、大学病院より市中病院がいい」と言う。

「大学病院にいる医者の多くの最終目標は、教授になること。そのためには世間をあっと言わす論文を書かなくてはならない。だから彼らは、いろいろと新しい手術を試したがるのです」

 医者の言うことを盲信するのではなく、とにかく自分自身で情報を集める。そして自分の価値観に照らし合わせて治療法を決める必要がある。

現代ビジネス+ 2016年7月12日

新聞のがん報道は裁判と芸能人ばかり
早稲田大教授「もっと予防の記事も」
 がんに関する日本の新聞報道は、医療ミスや裁判、著名人のがんなど社会問題として取り上げる記事は多いが、予防や早期発見を訴える啓発的な記事は極めて少ないという研究を、早稲田大学スポーツ科学学術院・岡浩一朗教授の研究室がまとめた。

 論文は、国際健康情報誌「Health Communication」(電子版)の2016年6月17日号に発表された。

医療事故、訴訟など社会問題が最多

 研究では、2011年の1年間に全国紙5社の朝夕刊に掲載された、がんに関する5314件の記事を抽出、内容に応じて記事を分析した。それによると、取り上げたがんの部位別では、肺がんがトップで575件、ついで白血病331件、乳がん302件、肝がん261件......と続く。しかし、この順番は実際の年間死者数の多さとは一致しておらず、死者が多い大腸がんや胃がんの記事が少なかった。

 記事をテーマ別にみると、医療事故やミス、訴訟などの社会問題がもっとも多く797件(15.0%)、次にがん関連の本や映画、イベント開催が762件(14.3%)、がんになった芸能人など著名人の話題が650件(12.2%)と続く。また、東日本大震災があった年でもあり、震災とがんの記事も653件(12.3%)あった。

早期発見の重要性訴えた記事はわずか1.8%

 一方、がんの治療や回復、終末期に関する記事は399件(7.5%)あったが、生活習慣による予防法を説いた記事は86件(1.6%)、また検診や早期発見の重要性を訴えた記事は98件(1.8%)しかなかった。

 この結果から、岡教授は「我が国の新聞のがん報道は、社会問題に偏っており、もっと米国や英国、中国の新聞のように予防と啓発に焦点を当てる情報を発信すべきです」と報告している。

J-CASTニュース 2016年7月15日

がん治療にiPS効果
京大研の金子准教授(松山出身)講演
 愛媛CATV開局25周年と愛媛新聞創刊140周年記念の特別講演会が16日、松山市大手町1丁目の愛媛新聞社であり、京都大iPS細胞研究所の金子新准教授(45)=松山市出身=が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用したがん治療について解説した。

 金子氏は、東京大医科学研究所などで白血病や悪性リンパ腫の治療などの研究に当たり、2012年から現職。iPS細胞技術を用いたがんや感染症の治療法の研究開発に取り組んでいる。

 金子氏は講演で、体内に入ったウイルスなど病原菌と戦う免疫細胞の中で「Tリンパ球」は優れた攻撃力とセンサーを持ち、がん細胞とも戦えると紹介。自分の細胞に由来するがん細胞を「敵」と認識するTリンパ球は少ないことに加え、次第に弱るため、がん細胞への免疫反応は弱く、がん治療へは「若いTリンパ球をいかに増やすかが課題だった」と説明した。

 無限に増やすことができ、どんな細胞にも分化できるiPS細胞が発見されたと聞いた金子氏は「強力なツールになる」と直感。研究でiPS細胞からTリンパ球を作ることに成功し、これまでの実験では、さまざまながん細胞に対して効果を示したと述べた。

 講演は市民ら約100人が聴講。会場から実用化の時期について質問があり、金子氏は「私の見込みだが3〜4年。実際に人体に入れていいものに仕上げる必要がある」と話した。

愛媛新聞ONLINE 2016年7月17日

「がんにならない県第1位」鹿児島県の健康のヒミツに迫る
 6月末、国立がん研究センターが全国47都道府県の、がん罹患状況を公表して話題を呼んでいる。’12年に新たに、がんと診断された患者数は全国で約86万5,000人だったという。同センターは集計したデータを解析し、がんの部位ごとに都道府県別・男女の罹患率を算出したのだ。

 その結果、“がんにならない県”として、著しく目立っているのが鹿児島県。乳がん1位、大腸がん1位、さらに胃がんや子宮がんでも2位で、トータル(全部位)で1位という驚きの結果に!この数字は、当の鹿児島県民たちにとっても予想外だったようだ。

 鹿児島県では8年前から「がん対策推進計画」を行っている。本誌は今回の結果をふまえて、取材を申し込んだのだが、鹿児島県庁保健福祉部健康増進課の担当者は困惑しきりだった。

「鹿児島が“がんにならない県”の1位だったことは、私たちも新聞の報道で知りました。集計は国立がん研究センターさんが行ったものですので、こちらからはなんと申し上げていいものか。食生活との関係ですか?さつまいもは全国で生産量1位、鶏肉生産量も1位ですが、がんとの因果関係については把握していません……」
 
 だが実は、かなり前から鹿児島の食生活は、がんを予防する効果が高いのではないかという研究が続けられている。

「’02年に鹿児島大学の教授が、“黒酢に抗がん作用がある”という実験結果を明らかにしています。さらに’13年にも鹿児島大学医学部の研究チームが“黒酢には皮膚がん細胞の増殖を抑制する効果があった”という内容の研究結果を発表しました」(医療ジャーナリスト)

 黒酢が販売されるようになったのは40年ほど前だというが、いまや鹿児島の特産品としても有名だ。

「’02年には、鹿児島大学がさつまいもの表皮のアントシアニンに、がん細胞の増殖抑制作用があることを確認したと、報じられています。このアントシアニンは抗酸化物質のポリフェノールの一種で、奄美すももなどにも豊富に含まれています」(前出・医療ジャーナリスト)

 また、西台クリニック院長で、がんの食事療法に関する著書を多く持つ済陽高穂先生は次のように分析する。

「鹿児島もそうですが、がん罹患率の低い県は、野菜の摂取量が比較的多いですね。食生活以外にも、がん予防で重要なのは生活習慣です。入浴をしっかりして37度前後の体温を保つことは、がんを寄せ付けない秘訣です。そういう意味では“温泉王国”である鹿児島県は、がんになりにくい環境だといえるでしょう」

 環境省の統計によれば、湧出量で全国3位、さらに“温泉を利用している公衆浴場数”では全国2位と、県民が気軽に温泉を利用しやすいのだそう。モンゴル国立医科大学教授でグローバル温泉医学研究所所長の松田忠徳さんは言う。

「他県でしたら『◯◯温泉は絶景』とか、施設の話題を話す人が多いのですが、鹿児島では『◯◯温泉は××に効く』とか、効能について語り合うのです。鹿児島市内にもたくさんの銭湯がありますが、ほとんどが温泉で、なかにはお湯を飲むことができるところもあります。他県に比べれば、温泉使用料は総じて安く、多くの県民たちが愛好しています」

 松田さんの研究によれば、温泉はがん予防に効果があるという。

「これまで大分や北海道など、7つの温泉地で350人を対象にして、採血検査を行いました。老化や病気の主な原因は、体内で酸素が変化して生じる活性酸素です。強い紫外線やストレスなどで増加して、がんなどの病気を招きますが、温泉にはこの活性酸素を減少させる作用があるのです。お湯そのものの力もありますし、リラックスすることもがん予防に役立っていると思いますよ」

女性自身 2016年7月18日

オメガ3脂肪酸、大腸がん患者の死亡リスク低減に寄与か
 大腸がんの患者が、マグロやサケなどの脂肪が多い魚に含まれるオメガ3脂肪酸を大量に摂取すると、生存率が高まる可能性があるとの研究論文が20日、発表された。

 研究は、米国の17万人以上のデータを基に行われた。このうちの1659人が大腸がんを発症したが、ここではオメガ3の大量摂取と死亡リスク低減との間に相関関係が強く示された。

 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)の消化器病学専門誌「ガット(Gut)」に発表された研究結果によると、診断後のオメガ3脂肪酸の摂取量が1日当たり0.1グラム未満の患者に比べて、同0.3グラム摂取した人では、死亡リスクが41%低かった。

 同誌に発表された声明は、「今回の発見が他の研究でも確認できれば、大腸がん患者は、これらの魚の摂取を増やすことで、生存期間を延ばす恩恵を受けられる可能性がある」 としている。

 オメガ3脂肪酸は青魚や一部植物および特定のナッツ油などに含まれる。

AFPBB News 2016年7月20日

国がん、癌罹患数予測で初の100万例突破
 国立がん研究センターがん対策情報センターは7月15日、2016年に新たにがんと診断される数を示す罹患数と死亡数のがん統計予測を算出、がん情報の総合サイト「がん情報サービス」にてその内容を公開した。

 日本のがん統計は、罹患データは4〜5年、死亡データは1〜2年遅れて公表されている。諸外国では、これらの遅れを数学的な手法で補正して、現時点でのがん統計を予測する試み(短期予測)が実施されている。昨年9月、厚生労働省人口動態統計より2014年のがん死亡数が公表され、今年7月には、国がんが2012年のがん罹患数全国推計値が公表している。これらの最新データを用いて2016年のがん罹患数および死亡数が予測された。

 2016年のがん統計予測では、罹患数予測が101万200例で、100万例を超える予測結果が算出された。日本の罹患数は統計が作成され始めた1970年代から一貫して増加、死亡数も37万4,000人で、戦後一貫して増加の一途をたどっている。罹患数、死亡数とも増加の主な原因は、日本の高齢者人口の増加と見ている。

 罹患者数予測の内訳は、男性が57万6,100例、女性が43万4,100例で、2015年の予測(98万2,100例)と比較すると、男女合計で約2万8,000例の増加、部位別では、大腸、胃、肺、前立腺、乳房(女性)の順にがん罹患数が多く、順位を昨年の統計予測と比較すると、胃が3位から2位に、肺が2位から3位になった。また男女別の罹患数では、男性が前立腺、胃、肺、大腸、肝臓の順で、女性は乳房、大腸、肺、胃、子宮の順で多かった。

 一方、死亡者数の内訳は、男性が22万300人、女性が15万3,700人、昨年の予測と比較すると約3,000人の増加となった。部位別では、肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順に死亡数が多く、昨年の予測から順位の変化はなかった。男女別の死亡数では、男性が肺、胃、大腸、肝臓、膵臓の順に、女性は大腸、肺、胃、膵臓、乳房の順だった。

 国がんでは、国や地域の確実ながん対策のため、過去の実績と将来予測の両方のデータを見る必要があるとし、2014年の予測より算出し公開している。予測値は、これまでの傾向が続いた場合を前提に算出するため、後に公開される当該年の実測値と突き合わせることにより、がん対策でどれだけの罹患、死亡を減らせたかの評価、分析を行うことも可能になるとしている。

m3.com 2016年7月21日

アルコール、がんの直接の原因と認定
 ニュージーランドのオタワ大学の医師による研究は、アルコール摂取はがん促進の直接の原因となると示した。論文は「Addiction」誌に掲載された。

 アルコール摂取によって罹患、悪化するがんには、中咽頭、喉頭、食道、肝臓、結腸、直腸および乳房のがんがある。

 研究データによると、アルコールは2012年全世界でのガンによる死亡件数の5.8%つまり約50万件の原因となったという。最も高いリスクはアルコールの暴飲に関係しているが、少量ないし節度を保った飲酒もまた、安全とは考えられないと研究者は述べている。

 前に、同様の研究チームはたとえ少量でもアルコール摂取によって老後、ガンによって死ぬ確率が高くなると関連付けた。

 先に伝えられたところによると、ロシアのアルコール消費量は5年間でほぼ3分の1減少し、アルコール中毒の件数も同程度減少した。

Sputnik 2016年7月22日

「喫煙」は乳がん患者におけるアロマターゼ阻害薬の効果を弱める
非喫煙者に比べて再発率が上昇
 喫煙は、一部の乳がん治療薬の効果を減弱させる可能性が、新しい研究で示された。

 「British Journal of Cancer」オンライン版に6月9日掲載された報告によると、アロマターゼ阻害薬を服用している乳がん患者のうち、喫煙者は非喫煙者に比べて乳がん再発率が3倍であることがわかった。ただし、これらの因果関係が証明されたわけではないという。

 一方で、喫煙は、化学療法やタモキシフェンなどの他の治療薬、放射線療法にはほとんど影響を及ぼさないことも判明した。

 「さらなる研究で今回の知見が確認されれば、乳がんの治療法を選択する際には患者の喫煙状況を考慮する必要性が生じるだろう」と、研究を率いたルンド大学がんセンター(スウェーデン)准教授のHelena Jernstrom氏は述べている。

 アロマターゼ阻害薬には、アナストロゾール(商品名:アリミデックス)、エキセメスタン(アロマシン)、レトロゾール(フェマーラ)の3剤がある。同薬は、閉経後女性でアンドロゲンからエストロゲンへの変換を抑えることで、ホルモン受容体陽性の乳がん細胞の増殖を刺激するエストロゲン量の低減に働く。

 乳がん患者の3人に2人は「ホルモン受容体陽性」タイプの乳がんであるとされるが、米国がん協会(ACS)によると、早期に発見され治療を受ければ、ほぼ100%の患者が5年以上生存できるという。

 喫煙がアロマターゼ阻害薬の効果を減弱させる原因は不明だが、「おそらくたばこに含まれる成分の一部が、乳がん細胞をこれらの薬剤に抵抗性を示すように働いている可能性がある」と、同氏は指摘している。

 今回の研究は、2002〜2012年に乳がんと診断された女性1,065人を5年間追跡したもので、対象女性の5人1人は、乳がん手術を行う前から喫煙習慣があった。追跡期間中、喫煙者では乳がん再発率のほか、がんや他の原因による死亡率が非喫煙者よりも高いことがわかった。なお、治療中に禁煙した女性はごく一部だったため、禁煙によりアロマターゼ阻害薬の効果が回復したかどうかは不明であるという。

 米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)の乳がん専門家であるStephanie Bernik氏は、喫煙は多くのがんリスクを高めると指摘しつつ、今回、アロマターゼ阻害薬を服用中の乳がん患者では、喫煙により余命が短くなるとの明確なエビデンスが得られたことから、「生存期間を延ばすためには禁煙が不可欠であることを強調していくべきだ」と述べている。

m3.com 2016年7月27日

癌5年相対生存率が60%超え
国がん公表、男性59.1%、女性66.0%といずれも上昇
 国立がん研究センターがん対策情報センターを中心とする厚生労働科学研究費補助金「都道府県がん登録データの全国集計と既存がん統計の資料の活用によるがん及びがん診療動向把握の研究」研究班は7月22日、「地域がん登録」データを活用してがんの5年相対生存率を算出し、報告書を公表した。

 地域がん登録は、都道府県のがん対策を目的に1950年代より一部の県で開始された。今回の集計対象診断年である2006〜2008年においては、前回集計の7県から21県に大幅に増加し、地域も東北から九州まで揃った。

 全部位5年相対生存率は62.1%で前回比3.5ポイント増だった。男性は59.1%(3.7ポイント増)、女性は66.0%(3.1ポイント増)といずれも上昇している。ただし、2006〜2008年の罹患状況を踏まえると、前立腺がんや乳がんなど予後のよいがんが増えたことなどの影響も考えられ、部位別、進行度別の詳細な分析なしに治療法の改善などが影響しているとはいえないと、研究班は述べている。

 部位別5年相対生存率について、男性では、70〜100%と比較的高い群に、前立腺、皮膚、甲状腺、膀胱、喉頭、結腸、腎・尿路(膀胱除く)が含まれている。一方で、0〜39%と低い群は、白血病、多発性骨髄腫、食道、肝および肝内胆管、脳・中枢神経系、肺、胆のう・胆管、膵臓だった。

 女性では、高い群が甲状腺、皮膚、乳房、子宮体部、喉頭、子宮頸部、直腸で、低い群は、脳・中枢神経系、多発性骨髄腫、肝および肝内胆管、胆のう・胆管、膵臓となっている。

 臨床進行度別生存率では、どの部位でも、一様に臨床進行度が高くなるにつれ、生存率が低下しており、多くの部位では早期で診断された場合には生存率が良好であることがわかった。年齢階級別生存率では、おおむね、加齢とともに生存率が低くなる傾向が見られたが、若年者より高齢者の生存率が高い部位や、年齢と生存率との相関がはっきりと見られない部位もあったとしている。

m3.com 2016年7月27日

大腸癌検診受けない理由トップ5【米国癌協会】
ほぼ全員が「受けるべき」と認識しているものの…
 米国癌協会(ACS)は大腸癌検診を受けたことがない2000人を対象とした調査を実施。6月30日のリリースで大腸直腸癌検診を受けない理由トップ5を発表した。

 大腸癌検診未受検者のほぼ全員が大腸癌検診を知っているだけでなく「自分は検診を受けるべき」と考えていると同協会。このギャップの背景には大腸内視鏡など検診の内容に対する知識不足があるようだ。

 今回の調査による、検診を受けたくない理由トップ5と同協会による正しい知識(カッコ書き)は以下の通り

 検査は簡便ではなく、苦痛を伴うと聞いている、また、大腸直腸癌検診について医師と話すのが恥ずかしい(実際には、痛みや不快感がなく自宅で行える検査もある)

 癌の家族歴がなければリスクは低く、検診を受ける必要がないと思っている(ACSなど多くの団体は、平均的リスクを持つ人全員に検診を推奨している)

 検診が必要なのは、症状がある人だけだと思っている(無症状でも検診を受けるべき)

 検査費用が心配(自宅での検査は非常に安価。検診費用のほとんどに医療保険が適用される)

 おそらくこれは最も重要と思われる懸念だが、検診のために仕事を休まなければならない、自宅から離れた施設に行かなければならない、自己負担となる費用が高いなど、手間と費用が心配(このような問題が起こらない検査もある)


 ACSと関係団体は大腸癌が検診で予防できる数少ない癌の1つと強調。「検診のハードルや誤解を取り除くことは最優先課題」と述べている。

m3.com 2016年7月28日

地中海食はたとえ高脂肪でも健康によい
糖尿病、心疾患、乳がんの予防に効果
 地中海食は、たとえ脂肪分が高くても、乳がん、糖尿病、心疾患の予防に有効であることが、新たなレビューで明らかにされた。研究を率いた米ミネソタ大学教授のHanna Bloomfield氏は、「地中海食を摂っている人は心筋梗塞や脳卒中になるリスクが低く、乳がんや糖尿病の発症率も低い」と述べている。

 米ワシントン大学(セントルイス)のConnie Diekman氏は、この知見は単独の食品や栄養素ではなく、全体的な食事パターンが健康の鍵であることを再認識させてくれるものだと指摘する。「地中海食の健康効果は、植物性食品を中心とするパターンによるものであることが常に示されており、今回の研究はその有望性を改めて裏付けるものである」と、同氏は話している。

 今回の研究では、1990年から2016年4月までに発表された計56件の研究について検討した。地中海食の定義は、飽和脂肪に対して一価不飽和脂肪の比率が高い(たとえばオリーブ油が多く動物性脂肪が少ない)、果物と野菜を多量に摂取、マメ科植物(種子類、豆類)を多量に摂取、穀物やシリアルを多量に摂取、赤ワインを適量摂取、乳製品を適量摂取、肉および肉製品の摂取が少なく魚の摂取が比較的多い、という7つの要素のうち2つ以上を満たすものとし、健康的な脂肪分の摂取については制限しなかった。

 一部の研究では、研究の質は低かったものの大腸がんリスクの低減の可能性も示唆されていたが、「全死因による死亡率に対する影響は認められなかった」と、Bloomfield氏は話す。1件の大規模研究では、地中海食により心筋梗塞、脳卒中、糖尿病のリスクが30%低減し、乳がんリスクは50%以上低減することが示された。今回の研究では因果関係は明らかにされていないが、地中海食はコレステロール、体重、血糖値を低下させるほか、抗酸化物質が豊富であることも健康増進をもたらすと考えられている。

 「地中海食を実践する場合は、まず、料理にはオリーブ油かキャノーラ油のみを使用することから始めるとよい」とBloomfield氏は述べ、鶏肉と魚を多く食べ、赤肉を減らし、ポテトチップスの代わりにナッツ類を食べるようにするとよいと付け加えている。Diekman氏は、野菜を増やし、シリアル、サラダ、さらには肉にも果物をトッピングすることを勧めている。次に、肉料理に豆類を追加したり、肉を豆類に置き換えたりするとよいという。

 今回の研究は「Annals of Internal Medicine」オンライン版に7月19日掲載された。米国退役軍人省が本研究を主に助成した。

m3.com 2016年8月1日

「がんになったからこそ、できること」イノベーション女子の思いとは
NPO法人マギーズ東京 共同代表 鈴木美穂

「Congratulations!」

 3年ほど前、がん患者の支援者たちが集まる国際会議に参加した時のこと。鈴木美穂(32)は、自身が元がん患者であることを周囲に告げると、そんな言葉をかけられた。それも、何人もの人から。
鈴木は、24歳の時に乳がんを宣告された。本職である報道記者の仕事を休職し、治療を受け、8ヵ月後に職場復帰した。

 「おめでとう!」と声をかけられたのは、「がんになったことをマイナスではなく、何とかプラスにしたい」と必死にもがいていた頃。欧米では、がんになった後の命に対して、「おめでとう!」と言う文化があることを知った。

「自分の人生を丸ごと認めてもらえたような気がした。発想の転換って凄いな、と思いました」

 「生きているだけで素晴らしい」と、心の底から感じることもできた。この出来事を機に、鈴木の気持ちが少しずつ変わっていった。

 鈴木はいま、東京・豊洲に建設中の「マギーズ東京」のオープンを今年10月に控え、奔走している。マギーズセンターとは、がん患者と支える家族が自由に過ごしたり、医療の知識のある専門家に無料で相談できる場所。英国を発祥とする。

 鈴木はマギーズセンターを日本にも作るべくNPOを立ち上げ、共同代表を務める。患者やその家族に「場」や「出会い」を提供したいと考える。

「『とりあえず行けば何とかなる』と思える場所。何となく向こうに見える“灯台”のような存在になれれば」

 元患者として、かつて自分が必要としたサービスをつくりたい、という思いはもちろんある。でも、どん底にいたのは自分だけではなかった。鈴木の言葉を借りれば「家族も第二の患者」。がんであることがわかると、母は仕事を辞め、海外に単身赴任をしていた父もすぐに帰国した。家族を巻き込んでの一大事だった。

 同じ目線で話せる人もいなかった。 みな精神的にどう向き合えばいいの か分からなかった、と鈴木は言う。

「あそこまで大変な思いをしなくて すむ方法が、あったんじゃないかな」

 英国のマギーズセンターの存在を知り、それを日本に紹介しようと力を注いでいた、現共同代表の秋山正子に自ら会いに行った。多くの人を巻き込みながら、なんとかマギーズ東京の着工にこぎ着けた。

 鈴木は、本職の報道記者としての仕事のペースも緩めることはない。がんになった自分だからこそ、「社会」という大きな枠組みに対して伝えられることがある。そう信じている。

すずき・みほ
日本テレビに入社して3年目に、乳がんを宣告される。8ヵ月の闘病生活を経て、職場復帰。2014年5月に、本職と並行しNPO法人マギーズ東京を立ち上げる。東京・豊洲に建設中の「マギーズ東京」は今年10月10日オープン予定。


Forbes Japan 2016年8月13日

米国で飲酒年齢を引き上げたら・・・ がん、肝疾患による死亡率が低下?
 米国で飲酒可能な年齢が21歳以上に引き上げられて以降、アルコールが原因の疾患による死亡リスクが減少している――米ワシントン大学の研究者らが、法的な規制が健康に与える影響を示す研究結果を発表した。

 米国では、1984年から連邦法によって酒類を購入できる最低年齢が21歳に定められており、全米50州で飲酒可能な年齢は21歳以上となっている。これは飲酒運転や犯罪抑制の目的で施行されたものだが、研究者らは飲酒を開始する年齢の変化が、その後の健康状態にも大きく影響しているのではないかと推測。

 21歳になるまで飲酒をしていなかった人と、していた人を比較するため、1990〜2010年までの国勢調査のデータから、飲酒年齢が21歳以上になる前後にあたる1967〜1990年の間に18歳になった人のデータを抽出し、肝疾患と口腔、咽頭がんの死亡率を分析した。

 その結果、大学に通っていた人では、飲酒開始年齢の違いと疾患の死亡率に有意な違いはなかった。しかし、大学に通っていなかった人は、21歳から飲酒を開始した場合、21歳以下から開始した場合に比べ、アルコール性肝疾患による死亡率が8%、その他の肝疾患死亡率が7%、口腔、咽喉がんによる死亡率が6%低下していた。

 大学在籍経験で差があったことについて研究者らは、「大学では伝統的に未成年者の飲酒や暴飲が推奨される文化があり、これが飲酒開始年齢の変化をなくしているのでは」とコメントし、大学生の早期飲酒に対して警鐘を鳴らしている。

 発表は、2016年6月24日、米アルコール中毒症研究会誌「Alcoholism: Clinical and Experimental Research」オンライン版に掲載された。

参考文献
The Impact of the Minimum Legal Drinking Age on Alcohol-Related Chronic Disease Mortality.


Aging Style 2016年8月17日

光でがん退治、転移にも効果 マウス実験で確認 米国立衛生研究所
 光の一種の近赤外線を当てる方法で、がん細胞を攻撃する免疫細胞のリンパ球を活性化させ、がん細胞を退治する治療法を開発したと、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らが、17日付の米医学誌はサイエンス・トランスレーショナル・メディシンに発表した。マウスの実験で転移がんにも効くと確認したという。

 リンパ球の中には、誤って自分自身を攻撃するのを防ぐブレーキ役の細胞がある。がんの免疫療法は、リンパ球の働きを全身で活性化させるため、健康な細胞も攻撃してしまう「自己免疫反応」が起きる恐れがあるが、活性化の度合いを弱めると効果も弱まるのが課題だった。開発したのは、がん細胞だけでブレーキ役を壊す方法。小林さんは「このジレンマを解消した強力な薬剤となり得る」と話している。

 小林さんらは、特定の波長の近赤外線を当てると近くにある細胞を破壊する化学物質を利用した。この物質と、ブレーキ役の「制御性T細胞」に結びつきやすい分子を組み合わせた複合体を作製。がんを移植したマウスに注射して、がんの部分にだけ光を当てた。すると制御性T細胞が破壊されてリンパ球が活性化し、がん細胞が減少して生存期間が伸びた。

ZAKZAK夕刊フジ 2016年8月18日

オンラインサポートを受ける乳がん患者は治療満足度が高い
多くの女性が診断後にサポート利用
 乳がんと診断されたのちに、ソーシャルメディアを通して話し合ったり、オンライン上で治療法に関する情報や支援を受けた女性では、最終的な治療決定に対する満足度が高いことが、新しい研究で示された。

 「今回の知見は、患者が乳がんの治療法を選択する際に必要とする支援のニーズが満たされていないことを強調するものだ。しかし、現時点では、臨床現場ですべての患者がソーシャルメディアやオンライン・コミュニケーションを最大限に利用することは難しい」と、研究を主導した米ミシガン大学医学部のLauren Wallner氏は述べている。

 この研究は、乳がんと診断されたのちにメールや携帯(ショート)メール、ソーシャルメディア、オンラインサポートグループへの参加などの使用経験に関する質問に回答した2,460人の女性を対象としたもの。

 解析の結果、全体で40%以上の女性が「ときどき」、あるいは「頻繁に」オンラインでコミュニケーションをとったと回答していた。また、約30%の女性はメールまたは携帯メール、あるいはその両方を、約12%はTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを使用しており、オンラインサポートグループの利用も約12%の女性にみられた。

 それぞれのメディアを用いる理由は異なり、メールや携帯メールは乳がんと診断された事実を誰かに伝える手段として用いられていたが、治療法や専門医による推奨内容に関する情報交換には、ソーシャルメディアやオンラインサポートグループを用いる傾向がみられた。さらに、これらのメディアは、乳がんの診断を受けたのちの否定的な感情やストレスに対処するためにも広く用いられていることがわかった。

 こうしたメディアを用いる女性の特徴は、若い女性が多く、白人やアジア人の女性ほどオンライン・コミュニケーションを用いる頻度が高く、黒人やヒスパニック系ではこれらの利用率は低かった。また、オンラインでコミュニケーションをとる女性では、自分の治療決定に対して最も肯定的で、その決定は慎重になされたもので満足度も高いと回答する割合が高かった。

 ただし、この知見は、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアの利用がすべての乳がん患者にとって有益であることを証明するものではなく、解釈には注意が必要であると、研究グループは強調している。

 同氏は、一部の乳がん患者ではソーシャルメディアは治療の一助となりうるが、患者ケアの一環に組み込むことには慎重な考えを示し、「われわれ医療者は、患者がオンライン上で目にする情報をすべて把握しているわけではなく、こうした情報の質や量などの実態はよくわかっていない。よりよい患者支援を行うには、まず、こうした点を十分に理解する必要がある」と述べている。

 この知見は、「JAMA Oncology」オンライン版に7月28日掲載された。

m3.com 2016年8月22日

罹患者急増のいま…江原啓之さんに聞く「がんとの向き合い方
「これまでがんと関わってきて、いま私が言えることは、病いを忌み嫌ってはいけないということ。病気から学ぶべきことは山ほどあります。病いになったことで、それまで築いてきたことを失ったという人もいるでしょう。けれどそこで初めて自分の人生において大切なことは何かが見えてくるということはあるのです」

 そう語るのは、江原啓之さん。7月15日、国立がんセンターは、’16年に新たにがんと診断される人が初めて100万人を突破するという予測結果を発表した。また、がんのために亡くなる人も’16年は37万4,000人と、過去最高になる見込みだという。

 スピリチュアリストとして「いかに生き抜くか」という人生哲学を伝え続けてきた江原さんは、これまで多くのがん患者たちの相談を受け、またその最期を見守ってきた。がんになったとき、自分のために、そして家族のためにどうすればいいのか?そんな、がん患者たちの悩みについて江原さんに聞きました。

【がんと診断されました。死ぬのが怖いです】

 人は生まれた瞬間から死に向かっているといえます。わかってはいても誰にでもいつか訪れる死が怖いのはなぜでしょう?それはあなたが死んだら無になると思っているからでしょうか。

 たましいは永遠です。死ぬときは肉体という窮屈な服を脱ぎ捨てるときでもあるのです。死とはこの世でなすべきことを終えてたましいが帰っていくこと。そのときにたましいが何を見ているかというと、お迎えの人です。先に逝った大切な人や家族がお迎えに来てくれるのです。そしてあの世に帰ればすべてのことが明白になり、あらゆる苦痛から解放されていきます。ただしお迎えがない限り、この世で行き抜かなければならないのです。

【がんを克服するには、どんな心構えが必要ですか?】

 いまの状況を受け入れ、一日一日を感謝して充実させられるかどうかということに尽きます。「こんなつらい治療がいつまで?」そう思うこともあるでしょうが、治療を、洗顔をしたり歯を磨いたりすることと同じような日常の習慣として受け入れましょう。一日を過ごせたことを感謝しながら積み重ねていくうちに、がんという病いから遠ざかり、いつしか治癒しているということも多くあります。そうして一日を大切に生きていたなら、たとえ再発して臨終を迎えたとしても感謝して逝くことができます。

【子供にがん闘病のことを話すべきでしょうか?】

 お子さんの年齢や気質にもよると思いますが、多くの場合、幼くともそれなりにちゃんと状況を理解しています。命の教育はとても大切なことです。「子供のトラウマになったらかわいそうだから」などと過剰に配慮し、病室にもお子さんを入れないことがあるといいます。けれども、それはちょっと違うと思います。いずれ人は死ぬのだと理解することで、今日生きていることは尊いことなのだと知ることができるのです。

女性自身 2016年8月22日

大腸癌「左右で予後に差」のインパクト
沖 英次・九州大学消化器・総合外科診療准教授に聞く
 日本でも罹患数が増えている大腸癌。この20年で手術や内視鏡技術の進化、化学療法のエビデンス集積に基づく治療成績の向上により、進行性大腸癌の生存期間中央値は臨床試験、観察試験を問わず最大30カ月程度延長したとも指摘されている。そんな中、複数の臨床試験でさらなる治療成績の向上に寄与する可能性が示され、注目を集めているのが「大腸癌原発巣の左右による予後の違い」だ。2人の専門家にこれまでの経緯や展望を聞いた。第1回は九州大学消化器・総合外科診療准教授の沖英次氏。今年5月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でのハイライト演題を含め、大腸の「左右」にまつわる話題を解説いただいた。
 
薬剤別では「生存期間に差なし」が左右別解析で差

 今年5月、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表された、CALGB/SWOG 80405試験の探索的解析の結果が大きな注目を集めた。進行性大腸癌患者1140例が参加した同試験では、化学療法への抗VEGF抗体ベバシズマブ、または抗EGFR抗体セツキシマブの追加療法による予後を比較。2014年の同学会年次集会で発表された主解析において、両群での全生存期間(OS)中央値ならびに無増悪生存期間(PFS)に有意差は見られないとの結果だった。

 しかし、今回報告された探索的解析ではなんと原発巣が左(下行結腸、S状結腸、直腸)か右(盲腸、上行結腸)かで患者を層別化し、OS中央値を解析したところ、左原発巣で33.3カ月、右原発巣で19.4カ月と有意な差が見られた。薬剤別の解析でも、左原発巣でOS中央値の延長が認められた他、薬剤ごとに生存期間の差は見られなかった主解析と異なり、今回の解析では右原発巣群でベバシズマブ、左原発巣群ではセツキシマブの生存期間延長が確認された。

右と左の大腸はこんなに違う

 大腸を左右に分けて解析するという考え方の背景には何があるのか。「もともと右と左の大腸は生物学的に違う。外科医にとっては、大腸を左右に分けて考えるのは自然なこと」と沖氏。発生学的にも右(近位)大腸は中腸系、左(遠位)大腸は後腸系と異なる由来を持ち、支配血管も右側大腸の場合には上腸管膜動脈系、左側大腸の場合には下腸間膜動脈系と異なることから、手術の際にも手術部位が右か左かで処理する血管が全く違うと指摘する。

 沖氏によると、これまでにも左右の大腸において腸内細菌叢が異なるとの報告があるほか、右と左では大腸癌の罹患の比率が違い、下行結腸から直腸までを合わせた左側の大腸癌が7割を占める。実地臨床での大腸癌の発見しやすさが異なり、左の場合、直腸や結腸の腸閉塞をきっかけに発見されることがある一方、右側は便が液状なので発見が遅れることが予後の悪化に関連しているのではとも考えられてきたそうだ。

大腸癌の「左右」で予後が異なるとの報告が近年集積

 1985年頃からは、左右の原発巣で各種癌遺伝子の発現様式が異なることが報告され始めており、沖氏らも2010年頃に右側結腸癌にDNAの塩基配列の繰り返し(マイクロサテライト)の不安定性(microsatellite instability: MSI)陽性が、左大腸癌にはp53遺伝子変異が多くみられるとの報告を発表している(Cancer Genet Cytogenet 2010; 196: 133-139)。他にも同じステージIV大腸癌でも右原発巣でより進行が速く癌特異的死亡率が高いとの多施設共同の傾向スコアマッチング研究(Int J Surg. 2014;12(9):925-30)、原発巣の部位は患者の予後に関連し、右原発癌でより不良であったとの国内外の15研究を含むシステマチックレビューとメタアナリシス(J Gastrointest Surg 2016; 20: 648-655)などの報告が集積しつつある。

原発巣の位置が“precision medicine”実現の有望なマーカーに

 今回、CALGB/SWOG 80405試験の探索的解析が大きく注目されたポイントについて、「大腸癌の予後が原発巣の左右で差があることが最大規模の母集団で証明されたこと」「原発巣の左右で分子標的薬の感受性が大きく違う可能性が示された」点を挙げた沖氏。「米国を中心に機運が盛り上がっている患者個人の背景因子を考慮した最適化医療(precision medicine)の実現に、大腸癌原発巣の位置が有望な代替マーカーである可能性が示されたことが注目されたのでは」と分析する。今後は、左右による予後の差の評価を主目的とした研究ではなく、あらかじめ左右の位置情報を層別因子として研究計画を立案していくことも必要になってくるだろうとも話した。
 
「左右」差は外科治療の方針にも影響?

 大腸癌の原発病変部位による予後の差の解明は、外科治療にも何らかの影響をもたらすのだろうか。「初回根治手術については、右と左の癌でリンパ節郭清度に差をつけたりすることはないだろう。ただ、より予後の向上が見込めることから、左の大腸癌原発からの転移巣においてより積極的な切除を行ったり、同じステージでも右結腸癌の場合は臨床的悪性度が高いと考え、術後補助化学療法を積極的に行ったりといった変化が出てくる可能性はある」と沖氏。切除不能・再発癌については、CALGB/SWOG 80405試験再解析の結果から、右結腸癌の場合ベバシズマブを、左結腸直腸癌の場合にはセツキシマブを使った治療が選択されることになるのか、大きな関心を持っているそうだ。ただし、「実臨床で、左右の位置情報だけでどちらか一方の薬剤を選択するということにはならない」との考えを示した。

m3.com 2016年8月23日

適度な運動が乳がん患者の「ケモブレイン」を改善する
記憶障害を低減
 乳がん生存者にしばしばもたらされる慢性的な記憶障害や注意力の低下の一部は、過度なストレス負荷によって引き起こされており、適度な運動を行うことでこうした障害を軽減できる可能性が、新しい研究で示された、

 「今回の知見から、中強度から激しい運動を行うと精神面にベネフィットをもたらし、記憶障害の低減にもつながることがわかった」と、研究を主導した米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部助教授のSiobhan Phillips氏は述べている。

 がん患者に生じる記憶障害や思考力の低下は「ケモブレイン」と呼ばれ、おもに化学療法や放射線療法後にもたらされるものと考えられているが、「今回の知見から、これらの障害の一部は精神的なものに起因する可能性が示唆された」と、同氏らは指摘している。

 同氏らは、「乳がん生存者は恐れやストレス、倦怠感をつねに抱いており、情緒面が不安定で、自信を喪失している場合も多い。こうした状態が長く続くと精神的な重荷となり、その結果、記憶障害と思われる状態になりやすくなる」と説明している。

 今回の研究では、乳がん治療後の生存者1,400人強を対象に、研究開始時点と6カ月後における運動量や自己効力感、抑うつや再発への懸念といった精神的苦痛の程度、疲労感に関する自己申告による調査を行った。さらに、ランダムに抽出した362人の女性には加速度計を装着してもらい、運動量を追跡した。

 その結果、対象者全体と加速度計で運動量を計測したサブグループではいずれも、早歩きや自転車走行、ジョギング、運動教室への参加といった中強度から激しい運動による身体活動量の増加に伴い、自己効力感が高まり、ストレスや倦怠感が軽減することがわかった。同氏らによると、こうした精神的なベネフィットは記憶力の向上にもつながっているという。

 この研究は、直接的な因果関係を証明するものではないが、運動量の増加に伴って女性は自信を回復し、精神的苦痛の程度も軽減しており、これらの改善が記憶障害の軽減にも関連している可能性が示された。

 なお、この知見は「Psycho-Oncology」7月8日オンライン版に掲載された。

m3.com 2016年8月25日

過体重でリスク高まるがん、新たに8種 研究
 過体重により、胃がんや消化管のがんの他、特定の脳腫瘍や生殖器腫瘍と診断されるリスクが高まる恐れがあるとする研究論文が24日、発表された。

 米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された国際研究機関による報告書では、過体重の人が罹患しやすいとされるがんの一覧に、新たに8種類が追加された。

 フランスに本部を置く世界保健機関(WHO)付属の「国際がん研究機関(IARC)」は2002年、結腸がんや食道がん、腎臓がん、乳がん、子宮がんなどは、過体重によりそのリスクが高まる可能性があると発表している。

 そして今回、胃がんや肝臓がん、胆のうがん、膵臓(すいぞう)がん、卵巣がん、甲状腺がんの他、髄膜腫として知られる脳腫瘍の一種や血液のがんである多発性骨髄腫などが新たに追加された。

 研究チームは、過体重とがんのリスクに関する論文1000件以上を調べた。

 報告書は、北米や欧州、中東の女性たちにみられるがんの約9%は、肥満に関連していると考えられるとしている。また、過剰な脂肪は炎症を促し、がんの成長を促進する恐れがあるエストロゲンやテストステロン、インスリンの過剰分泌にもつながると指摘している。

 研究チームは、長期にわたる体重増加の制限が、これらのがんリスクを低減させる一助となるとしている。

AFPBB News 2016年8月25日

飲酒や喫煙で食道異型上皮リスク増
京大、禁酒で食道癌の再発抑制可能と指摘
 京都大学は8月25日、食道扁平上皮がんの発生する予兆(前がん病変)とされる異型上皮の発生程度には、飲酒、喫煙、緑黄色野菜の摂取という3点が関連していることを明らかにしたと発表した。また、内視鏡治療を行った早期食道がん患者では、食道内の異型上皮の数が多いほど、食道内やのどの異時性多発がんの危険性が増すこと、加えて、禁酒によって食道がんの再発を抑制できることを世界で初めて発見したとしている。この研究は、同大学医学研究科の武藤学教授らの研究グループによるもので、研究成果は、「Gastroenterology」に8月1日付けで掲載されている。

 食道がんには、過度な飲酒が主な原因とされる扁平上皮がんと、胃酸逆流が関連するバレット腺がんの2つのタイプがあるが、扁平上皮がんは日本人の食道がんの約90%を占めている。また、食道扁平上皮がんは食道内でのがん多発や頭頸部の扁平上皮がんの合併をひき起こすFiled cancerization現象(広域発がん現象)をもたらし、治療後に別の部位でがんが再発するため予後をさらに悪化させる。

 食道扁平上皮がんは、前がん病変とされる異型上皮から発生すると考えられているが、これまで異型上皮の程度と食道がん発生、そしてFiled cancerization現象との関連性はわかっていなかった。がんの原因とされる飲酒をやめた場合の効果も、十分な検証がされていなかった。

 そこで、研究グループは、内視鏡治療をした早期食道がん患者330人に協力を依頼し、治療後の経過中にどのくらいの期間で、どのくらいの割合で、食道がんや頭頸部のがんが発生するかを見る追跡調査を実施した。また、全員に禁酒および禁煙指導を行い、禁酒・禁煙による発がん抑制効果も検討。さらに、食道内の異型上皮の程度をgradeA〜Cに分類し、異時性がんの発生を観察した。

 その結果、

・前がん病変とされる異型上皮の発生には、飲酒、喫煙、緑黄色野菜を食べない、やせが関連する

・食道内に多発性の異型上皮があると、食道内多発がん、頭頸部がんの発生が高くなる

・禁酒をすると、異時性の食道がん発生を約半分に減少させることができる。特に、食道内に多発性の異型上皮がある患者では4分の1に減少させることができる。一方、禁煙の短期的な効果は期待できなかった

ことが明らかになったとしている。

 これらは、根治が期待できる食道がん患者の治療後の生活指導の重要性を示している。今後は経過観察をさらに延ばすことで、他の臓器のがんの発生や今回確認できなかった禁煙の効果などを見ていく予定と、研究グループは述べている。

m3.com 2016年8月30日

がん治療にGoogleの人工知能が活躍!
 UCLH(ロンドン大学病院)は、主に口腔、咽頭、喉頭、鼻腔、副鼻腔、唾液腺、甲状腺、頸部食道、気管に現れる「頭頸部がん」の治療に、Googleの人工知能「DeepMind」を利用すると発表しました。

 具体的には、放射線治療の効率化に役立てられる予定です。

放射線治療の計画時間を、4分の1に短縮!

 頭頸部がんは、男性では75人に1人、女性では150人に1人が発症すると言われており、決して他人事とは言えない病気。その治療には放射線治療が用いられています。

 ただし、患部周辺には健康な細胞や神経もあるため、照射する位置や角度を綿密に計画する必要アリ。

 リリースによれば、この照射マップの作成(セグメンテーション)にはおよそ4時間ほどかかります。そこで、過去700件の前例を人工知能に学習させ計算を効率化し、1時間まで短縮する想定。メリットは2つ。

・患者のケアに時間を割ける。

・セグメンテーションアルゴリズムの開発。

 このアルゴリズム開発が進めば、他の部位への放射線治療に応用できるとも言われています。

 難しいがん診断をたった10分で特定したり、パターン化の難しい精神疾患への対応を過去の事例を基に改善したIBMのワトソンに続き、人工知能のメリットが医療へと生かされる新しい事例となるかもしれません。

ガジェット通信 2016年9月4日

成人期に太りすぎの期間が長いと、閉経後に一部がんリスクが上昇する
WHI研究7万人超の解析
 女性が成人期に過体重である期間が長いほど、閉経後に一部のがんリスクが高まるとの研究結果が、「PLOS Medicine」8月16日電子版に掲載された。

 国際がん研究機関(IARC、仏リヨン)のArnold氏らは、Women’s Health Initiative研究に参加した閉経後女性7万3,000人強を対象に、過体重(BMI 25以上)や肥満(同30以上)の期間とがんリスクとの関連を検討。

 その結果、成人期の過体重期間が10年増えるごとに、乳がんや卵巣がんなどの肥満に関連したがんリスクが7%上昇。とくに閉経後乳がんと子宮体がんリスクは各5%、17%上昇し、過体重の程度で補正後の解析では各8%、37%まで上昇した。

m3.com 2016年9月5日

受動喫煙による肺癌リスク「確実」に
国がん、メタアナリシス研究でリスク約1.3倍
 国立がん研究センターは8月31日、日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について複数の論文を統合、解析するメタアナリシス研究の結果を公表した。この研究では、受動喫煙のある人はない人に比べて肺がんになるリスクが約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様であることが示された。研究成果は学術誌「Japanese Journal of Clinical Oncology」に掲載されている。

 能動喫煙と肺がんの関連については、多くの調査、研究によりリスク要因として確実であることが明らかで、日本では肺がんの死亡のうち、男性で70%、女性で20%は喫煙が原因と考えられている。また、肺がん以外のがんとの関連も明らかで、がんの死亡のうち、男性で40%、女性で5%は喫煙が原因と考えられている。

 受動喫煙と肺がんの関連については、1981年に平山雄国立がんセンター研究所疫学部長(当時)が世界で初めて報告。2004年には、国際がん研究機関(IARC)が環境のたばこ煙の発がん性を認めるに至っている。日本人を対象とした研究もこれまでに多数発表されており、同センターによる多目的コホート研究からも報告されているが、肺がん全体に関して個々の研究では統計学的に有意な結果が得られず、日本人を対象とした科学的根拠に基づくリスク評価が「ほぼ確実」にとどまっていた。

 今回の研究では、日本人の非喫煙者を対象に受動喫煙と肺がんの関連を報告した426本の研究のうち、適用基準を満たした9本の論文結果に基づきメタアナリシスを行った。その結果、日本人を対象とした疫学研究のメタアナリシスにおいて、受動喫煙と肺がんとの間に統計学的に有意な関連が認められた。受動喫煙による相対リスクは約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様。研究デザイン、出版年、交絡因子の調整有無によって層別してもほぼ同じ結果であった。出版バイアスは統計学的に有意ではなく、出版バイアスを補完しても結果は変わらなかったという。

 今回の研究結果を踏まえ、同センター社会と健康研究センターを中心とする研究班は、受動喫煙における日本人を対象とした科学的根拠に基づく肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」にアップグレードした。これに伴い、日本人の実情に合わせ喫煙、飲酒、食事、身体活動、体形、感染の6項目でがん予防法を提示しているガイドライン「日本人のためのがん予防法」においても、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から“できるだけ”を削除し「避ける」へ文言の修正を行い、受動喫煙の防止を努力目標から明確な目標として提示した。

m3.com 2016年9月5日

日本は「外科至上主義」
 日本の医療とアメリカの医療は大きく違います。大戦時の軍事に対する両国の考え方のように異なるのです。

 こう語るのは、元国立がん研究センターがん予防・検診研究センターのセンター長でグランドハイメディック倶楽部理事の森山紀之氏。氏はアメリカ、ミネソタ州にある世界屈指の名病院と言われるメイヨー・クリニックに在籍したこともあり、日米のがん治療の違いを知る第一人者だ。

 まず、アメリカは医師の数が非常に多い。救急患者が運ばれてきたとしても、勤務時間が終わった医者はさっさと帰っていきます。それだけ人員に余裕があるわけです。

 一方、日本では医療従事者が少ないなかで、きめ細かい医療を施すことを目的とする体制になっており、医者一人ひとりの負担が大きい。それぞれの医師の技量は高くても、多忙のためうっかりミスが起きてしまう可能性があります。診察に時間もかけられない。

 日米で一人ひとりの医師の技術の差はない。むしろある領域においては日本人のほうが上かもしれません。しかし医療システム全体として見た場合、アメリカのほうがよくできている点があります。

 日本とアメリカでは健康保険をはじめ、医療制度が大きく異なります。皆保険で誰もが一定レベルの良質な医療が受けられるという意味では、日本の医療は非常に優れているが、同時に医療に対するコストを下げるために無理が生じている面があるのです。

 アメリカでは患者が医療保険に加入している場合でも、メリットが少なく無駄なコストばかりかかる医療行為が施された場合、保険会社から保険金が支払われない場合もある。

 従って患者は本当に必要な検査はなにか、費用対効果の高い治療法はなにかという点に関してシビアにチェックするようになる。医療システム自体が安全性が高く、コストに見合った医療を選択するように出来上がっているのだ。

 アメリカでは、病気になったとき最初にかかるのは、自分の『かかりつけ医』です。彼らは医療のコンサルタントのような役割です。がんが見つかった場合、まるでレストランのメニューを広げるような感じで『手術ならいくら、それに必要な検査はいくら、放射線治療をするならいくらかかる』とコストやリスク、メリットについて説明してくれます。

 かかりつけ医は実際に治療に関わるわけではありませんので、客観的で公平な立場からベストな治療法を選択できるようアドバイスしてくれる。

日本の場合だと、最初にかかったのが外科の医師だと、どういう手術をするかということばかりが優先されがちで、果たして放射線治療がいいのか、抗がん剤治療がいいのかといった中立的な立場での治療方法が選ばれないこともあります。

日本とアメリカでは、がんの治療法も大きく異なっています。

 手先が器用で職人気質を尊ぶ日本人は、外科手術を第一に選ぶ傾向にあります。実際、肝臓をはじめ、手術の難しい部位のがんの手術法には日本人の医者が考案したものが多くあります。トップクラスの日本人外科医の技術は世界一といっていいでしょう。外科手術は日本のお家芸で、がん治療といえばまず手術というのは、このような伝統に根差したものなのです。

アメリカは6割が放射線治療

 テレビドラマでもアメリカは麻酔医や診断医が主人公になるものがありますが、日本で人気が出るのは花形の外科医が活躍するもの。『わたし、失敗しないので』という世界が好まれるのです。

 患者のほうでも『何が何でも確実に命を助けてほしい』と、浪花節的な感性で医者に手術をお願いすることが多い。そうなると、たとえハードルが高くてもできるだけすべて悪いところを取ってしまおうという話になりがちです。

 一方、アメリカでは放射線治療がさかんに行われている。アメリカのがん患者の6割が放射線治療を選択すると言われるほどだ。

 アメリカには日本のような外科至上主義はありませんから、どの治療法がより最適か、コストとリスクに見合った医療行為なのかという点を冷静に判断します。そういう風土のなかで、効果が高い放射線治療が発達してきた。

 私がメイヨー・クリニックで働いていたときには、放射線科だけで医師が90人もいました。加えてレジデント(研修医)も同じくらいの数いました。日本だったら一つの病院で、これだけの数の放射線科医を抱えているところはありません。

 日本では同じような治療効果が予想されている場合でも、放射線治療より外科手術を受けたがる患者さんが多い。しかし例えば、前立腺がんなどの場合、手術をすると2人に1人は尿漏れなどの問題が生じて、場合によってはおむつをつけなければならなくなる。一方、放射線治療ですとそういう後遺症は残りにくい。

 日本の放射線医療が遅れているかといえば、一概にそうとも言えません。むしろ、日本のほうが進んでいる分野もあります。例えば陽子線や重粒子線といった、最先端の放射線治療は、日本の技術、施設が世界で一番充実しています。

 ではいったい何が問題なのかというと、まず放射線科医の数が非常に少ない。ある程度の大きさの市民病院で放射線治療をやっているところでも、放射線科医が常駐していないところがたくさんあります。そうなると他分野の医師も、放射線治療に対する理解や知識が深まりません。

 だから、放射線科医の仕事の内容をよく知らない人は『あいつらは鉛筆で治療の設計図かなにかを書いているだけで、まともに働いていないんじゃないか』なんて言うわけです。そういう偏見がまだ一部の日本の病院には根強く残っているのですね。このような事情から、いい技術や施設があっても日本は放射線治療がなかなかアメリカほどには広がらないのです。

 アメリカでは外科手術後、がんが再発した患者さんがいたとしたら、『放射線をやっているドクターと、抗がん剤をやっているドクターがいるから、それぞれの意見を聞いてみましょう』ということになります。しかし、日本では外科医が患者さんを抱え込んでしまう傾向にあり、放射線科になかなか回そうとしない現実がある。

 繰り返しますが、日米に技術の差はありません。しかし医療体制、システムが違うのです。先ほど、戦時中における日米の例を出しましたが、これはがん治療にもあてはまります。日本は戦時でも個々の命中精度を上げることに力を傾けました。これは高度な外科手術を目指して個々の医師が切磋琢磨する医療の現場と似ている。

 一方でアメリカは、『レーダーを使え、面倒だから弾幕を張ってしまえ』というふうに四方八方を撃ち続けるというシステム重視の考え方。物量、医師の数が違うのです。

 制度の差、文化の違いなどがあるので、日米の医療を単純に比較して、優劣をつけることはとても難しい。しかし、アメリカの医療を見ることで、日本の医療の問題点が見えてくるのです。

週刊現代 2016年9月10日

放射線科医は「0.5秒」で乳がんを見分けられると判明
何らかの異常を検出している
 訓練を積んだ放射線科医は、マンモグラム(乳房X線画像)の異常を0.5秒で見分けられるという新たな研究が報告された。米国と英国の研究グループによる実験結果で、経験豊富な放射線科医はX線画像で疑わしい所見を素早く判定できるとの説を裏づける結果となった。

 実際には、放射線科医がマンモグラムの評価にわずか0.5秒しか費やさないということは決してないが、今回の結果から、乳がんには放射線科医が即座にわかる検出可能な徴候が存在することが示唆されるという。

 研究上席著者のJeremy Wolfe氏は、「放射線科医は、マンモグラムを最初に見た時点で『直感』をもつ。われわれは、この直感が画像中に実在する何かに基づいていることを突き止めた。専門医が異常を示すマンモグラムを見て一瞬で何かに気づくという事実は、極めて印象的である」と述べている。それだけでなく、放射線科医は病変の存在しない対側の乳房を見ても、何らかの異常を検出することが可能であると、Wolfe氏は付け加えている。

 同氏は米ハーバード大学医学大学院(ボストン)眼科学・放射線科学教授で、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の視覚的注意研究室を率いている。この研究は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に8月29日オンライン掲載された。

 Wolfe氏は、「今回の結果から、正常とされる乳房にも異常に見える何かがあり、それを検出できる可能性があると示唆された。これらの結果を考え合わせると、放射線科医は、その時点ではわからない初期の全体的な異常の徴候に気づいていると考えられる」と説明している。

 その徴候を定義することができれば、さらに優れた画像ツールの開発や医学的訓練の向上につながる可能性があると、同氏は話している。

m3.com 2016年9月12日

がん生存者は肥満になりやすい
とくに大腸がん、乳がんで高いリスク
 米国では、がん生存者は、一般集団に比べて肥満になりやすいことが、新しい研究で示された。とくに大腸がん(結腸直腸がん)や乳がん生存者で肥満率が高かったという。

 この研究は、1997〜2014年の米国健康聞き取り調査(National Health Interview Surveys)に参加した米国成人(18〜85歳)53万8,000人強のデータを解析したもの。対象者のうち3万2,000人強ががん生存者であった。

 解析の結果、肥満者の割合の推移は、がん既往のない人では1997年の21%から2014年には29%だったのに対し、がん生存者では22%から32%に増加していた。

 肥満の年間有病率は、がん既往のない人に比べてがん生存者で高く、とくに大腸がん生存者と乳がん生存者で大きく増加していた。なかでも黒人の大腸がん、乳がん、前立腺がん生存者で増加率が高かった。

 肥満の有病率が大きく増加した大腸がん、乳がん、前立腺がん生存者それぞれの特徴を男女別にみると、女性の大腸がん生存者では、若年、黒人、過去2〜9年以内にがんと診断された人、男性では高齢、黒人、がんと診断されてから10年以上経過した人が多かった。乳がん生存者では、若年、白人、過去1年以内にがんと診断された人、前立腺がん生存者では、若年、白人、過去2〜9年にがんと診断された人といった特徴がみられた。

 研究責任者を務める米コロンビア大学(ニューヨーク市)メイルマン公衆衛生学部のHeather Greenlee氏は、この知見の一部は、近年、肥満に関連すると考えられている乳がんや大腸がんの患者数が増加していることで説明できるが、その他のがんについてはさらなる研究が必要との考えを述べている。

 また同氏は、「肥満によって、がん生存者の健康面での負担が増えることは明らかであり、体重管理などの目標を定めた介入策の実施が求められる」と付け加えている。

 この知見は、「Journal of Clinical Oncology」オンライン版に7月25日掲載された。

m3.com 2016年9月21日

進行癌患者の介護家族、2-3割に強い抑うつ【米国臨床腫瘍学会】
介護時間延長でセルフケア時間が短縮
 死亡率の高い癌患者の家族介護者のうち4分の1から3分の1が強い抑うつや不安の症状を経験している他、1日8時間以上を介護に費やす家族は介護時間の増加とともに睡眠や運動などの自分の健康維持の時間が減少し、精神的健康の悪化につながっている可能性も示唆された。米国臨床腫瘍学会(ASCO)が9月6日のリリースで、2016年腫瘍緩和ケア会議(Palliative Care in Oncology Symposium、サンフランシスコ)の発表予定演題を紹介した。

 研究グループは、膵癌、肺癌、脳腫瘍、卵巣癌、頭頸部癌、血液腫瘍あるいは第4期の癌と診断されたメディケア受給者を介護する家族294人に質問票による横断調査を実施。

 調査の結果、患者の健康状態が悪化するのに伴い介護者の自身の健康維持の能力が低下していた。また、回答者の4分の1近くが強い抑うつ症状、3分の1以上が境界線上、または強い不安症状を報告しており、自身の健康維持のための行動スコアの低下と有意に関連していた。また、同スコアの低下は介護の期間や時間の長さ、週当たりの日数の多さ、患者の健康状態にも関連していた。

 研究グループは、今回の検討を機に介護者を支援するための評価ツールやサービスの開発が進むことを期待したいと述べている。

m3.com 2016年9月21日

医師も避けたいつらい死に方 すい臓がんや大動脈解離は激痛
 「がん」「脳卒中」「心疾患」などによる死の中には、苦しみや痛みを伴うものもあれば、比較的「ポックリ」と死ねるものも存在する。一方で、様々な「死に方」の中で、どれが一番辛いかを見極めるのは難しい。

 今回、本誌は内科や外科、看取り専門医など各科の医師を取材。名医たちが挙げた避けたい死に方は主に「痛みが激しいもの」、「長く苦しむもの」、「精神的負担が大きいもの」の3つのグループに分けられた。

「痛みが激しいもの」として急性上腸間膜動脈閉塞症などの病名も出たが、これまで3000人以上の死に接してきた日の出ヶ丘病院のホスピス医・小野寺時夫医師はすい臓がんを挙げる。

「すい臓がん、直腸がんや子宮がんの末期で神経浸潤が強い場合、激痛を伴いモルヒネなどを使っても痛みを十分緩和できない場合がある。中でもすい臓がんの痛みが最も激しく、患者さんが半眠状態になるほど大量の鎮痛剤を投与せねばならず、患者さんにとって不運で気の毒というほかない」

「大動脈解離も激しい痛みを伴います」と話すのは池谷医院院長の池谷敏郎医師(循環器)だ。

「三層構造の血管の壁がチーズのように裂けていく。大動脈が心臓の方まで裂けると背中にかなりの圧迫感や激痛が走る。あまりの痛さに気を失うので『死ぬ瞬間』まで苦しむことはありませんが、私は絶対に避けたいですね」

NEWSポストセブン 2016年9月21日

Microsoftが人工知能を使ったがん治療への取り組みを開始
 Microsoftに言わせると、がんはコンピュターウイルスみたいなもので、「コード」を読み解くことで解決できるのだそうだ。このコンピューター・ソフトウェア企業は、人工知能を使った新たなヘルスケアの取り組みを開始する。その目的は、がん細胞をターゲットにがんを消し去る方法を研究することだ。

 新たなヘルスケアの取り組みにおけるプロジェクトの1つでは、機械学習と自然言語処理を活用し、現在利用可能な研究データを検索して、それぞれのがん患者に合わせた治療プランの策定を行う。

 IBMもWatson Oncologyという名で、似た内容のプログラムを実施している。これも、患者の健康に関する情報と研究データを照らし合わせて分析するものだ。

 Microsoftのヘルスケアの取り組みにおける別のプロジェクトでは、放射線治にコンピュータービジョンを活用し、時間の経過とともに変化する腫瘍の様子を捉える。もう1つのプロジェクトはMicrosoftが「ムーンショット」な目標を掲げるプロジェクトと呼ぶもので、これは私たちがコードを書いてコンピューターをプログラミングするように、生物もコードでプログラミングしようとするものだ。人の免疫システムが対応できていない部分に関して、人の細胞がその問題を修復できるように再プログラムを施す方法をこの研究で見つけるのが目的だ。

 Microsoftは、クラウド・コンピューティングを活用してこの種のプロジェクトに挑戦することは「自然な成り行き」と説明し、カスタマーにもこういったツールを提供する方法を模索していくと説明する。

 「もし未来のコンピューターがシリコンでできているのではなく、生きている物質になるというなら、そういったコンピューターをプログラムする方法を私たちは理解していなければなりません」とMicrosoftの役員であるJeanette M. Wingは言う。

 確かに、これだけの研究データがあれば、Microsoftや他でもがん治療を始め、健康管理に機械学習を活用する企業が、より素早く人を衰弱させる病の治療法を見つ出すことに期待できるかもしれない。

TechCrunch 2016年9月21日

禁煙30年後も遺伝子に「足跡」【米国心臓学会】
フラミンガム心臓研究含むゲノムコホートのメタ解析
 喫煙が遺伝子の活性化を制御する過程の1つであるDNAメチル化と呼ばれる「足跡」を残すことがゲノムコホートのメタ解析で明らかになった。

 既知のヒト遺伝子の3分の1に当たる7000種もの遺伝子で喫煙によるメチル化部位の影響が確認され、一部は禁煙30年後も残存していたとの結果も示されている。米国心臓学会(AHA)が9月20日、Circulation: Cardiovascular Genetics誌の掲載論文を紹介した。

 研究グループは心臓と加齢に関するゲノムコホート(CHARGEコンソーシアム)の16グループに参加した約1万6000例の血液検体を用いたDNAメチル化部位のメタ解析を実施。同コホートには1971年から開始されたフラミンガム心臓研究も含まれる。現在の喫煙者、前喫煙者、過去の喫煙歴なしの人を比較した結果、(1)喫煙に関連したDNAメチル化部位は7000種以上の遺伝子で確認された。この数は既知のヒト遺伝子の3分の1に相当する(2)禁煙した群では、禁煙から5年ほどでDNAメチル化の大部分は喫煙歴なしと同じレベルに回復していた(3)ただし、DNAメチル化部位の一部は禁煙30年後も持続していた、(4)最も統計学的に有意なメチル化が見られた部位は、心血管疾患や一部の癌のように喫煙が原因となる多数の疾患で多く発現する遺伝子と関連していた―などの知見が得られた。

 研究グループは、今回の主要な解析は長期の影響を見るためにデザインされたものではないが、喫煙がDNAメチル化に与える影響を見た検討としてはこれまでにない規模と説明。今回の検討結果は喫煙がヒトの体に分子レベルで長期的な影響を与えることを示唆する一方、禁煙によりDNAメチル化の大部分が喫煙歴なしの人と同じレベルに回復できるということも励みになるニュースとも述べている。

m3.com 2016年10月5日

新しい放射線療法で高齢肺がん患者の生存率が改善
ASTRO発表の2報から
 最先端の放射線療法により、手術を受けられない高齢の早期肺がん患者の生存率が有意に改善するようであることが、新たな2件の研究で示された。この治療法は体幹部定位放射線治療(SBRT)と呼ばれ、10年ほど前から利用されている。

 第一の研究では、米ヒューストン・メソジスト病院のAndrew Farach氏らが全米がんデータを用いて、2004〜2012年にステージI肺がんと診断された60歳以上の患者の記録をレビューした。期間中に放射線療法を受けた患者の2年生存率は、2004年の39%から2012年には58%に上昇したが、外科手術のみの患者には劇的な改善はみられなかった。各患者が受けた放射線療法の種類は不明だが、生存率向上とSBRTの利用増加には相関がみられるとFarach氏は言う。

 米国退役軍人局(VA)のデータに基づく第二の研究では、ステージI肺がん患者約1,700人(平均年齢72歳)に着目。一部の患者は標準の放射線療法を受け、約500人がSBRTを受けた。放射線療法を受けた患者の4年生存率は、2001年の13%から2011年には28.5%と、2倍以上に増加した。同期間にSBRTの利用も5%から60%に増大していた。さらに、SBRTを受けた患者の死亡リスクが従来の放射線療法に比べて約30%低いこともわかった。

 この結果から、年齢や健康状態のため手術が適さない早期患者には、放射線療法を検討すべきであることが強く示されたと、Farach氏は述べている。一方、米国がん協会(ACS)のLen Lichtenfeld氏は、SBRT以外にも生存率の改善を説明できる要因があると指摘する。たとえば、早期がん患者と転移のある患者を以前よりも正確に分類できるようになったことにより、適切な患者に放射線療法を用いることが可能になったとも考えられると、同氏は説明している。

 SBRTでは、より直接的に腫瘍を狙い、さまざまな角度から高線量の放射線を集中的に照射する。1〜2週間の間にわずか3〜5回の治療を受けるだけで済み、従来の放射線療法よりも副作用が少なく、腫瘍周辺の組織が受ける損傷も少ないという。しかし、がんの進行した患者や外科手術が可能な患者の場合は、放射線療法が手術や化学療法の代わりになると考えるべきではないとLichtenfeld氏は話している。また、早期患者に対して放射線療法が外科手術と同じくらい有効であるかを明らかにするには、臨床試験が必要であるとのこと。

 この研究の結果は、米ボストンで開催された米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次集会で報告された。この知見は査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなす必要がある。

m3.com 2016年10月7日

元国立がんセンター病院長の本音「確かにダメな外科医が多すぎます」
日本の医療はどこが歪んでいるのか?
 年に10回しか手術しない医者が「がんの専門医」に認定される。そんな医者の技術が信用できるはずがない。

 薬漬けの医療にあいつぐ手術の事故。日本の病院はどこに「歪み」があるのか? がん手術の大家・土屋了介氏と医療経済の専門家・松山幸弘氏がホンネで語り合った。

医者をチェックする仕組みがない

松山 医療費の膨張が止まるところを知りません。9月13日に厚生労働省が発表した'15年度の日本の医療費は41・5兆円。前年度比3・8%増で、13年連続過去最高を記録しています。

土屋 高齢化や医療技術の高度化で医療費が高くなっていくのは、ある程度、仕方がないことです。しかし、なかには「週刊現代」がくり返し指摘しているように、無駄な医療があることも確かでしょう。

 もちろん、医療というものは本来有益なものです。しかし、現代の日本ではそれが必ずしもうまく機能していない側面もあり、無駄も多い。

松山 何が有益で何が無駄な医療であるかを判断するのは、非常に難しい問題です。

土屋 とりわけ日本ではそうです。「この手術や薬は科学的に効果があると認められるべきかどうか」という医療の線引きが曖昧だからです。

 本来そのような線引きは、専門知識を持つ医者たちが科学的見地から行うべきですが、日本では中医協(中央社会保険医療協議会、健康保険制度や診療報酬改定などの審議を行う厚労省の諮問機関)や先進医療会議などで、官僚や一般民間人、経済学者も交じって行うのです。科学的な線引きが「素人目線」で行われているのです。

松山 医療の現場でも日本では「評価」が行われていません。患者が受けた治療が良いものだったかどうかを判断するのは、日本の場合は主治医一人に任されてしまいがちです。客観的な視点が欠けている。

土屋 私が理事を務めているがん研究会有明病院では、「チーム医療」を積極的に進めていますが、アメリカに比べるとまだ十分ではありません。そもそも日本全体では、このようなチーム医療を行っているところはほとんどない。

 複数の医者とともに看護師や薬剤師、技師が一緒に判断し、治療を行うのがチーム医療の本質です。しかし、日本は医者に比べて他の職種の権限が弱く、チェック機能が働かないのです。

 とりわけ大学病院はそうです。腹腔鏡手術の失敗で、多数の死者が出た群馬大学医学部がその典型でしょう。

松山 大学病院のシステムは本当にひどいですよ。私も殺されかけたことがあります。

 30年ほど前、当時勤めていた会社の診療所の所長に言われて、しぶしぶ大学病院で胃カメラの検査を受けました。「異状なし」と言われて、家に帰ったその夜、全身痙攣を起こしたんです。膵液が逆流し、急性膵炎になってしまって。

 言葉に表せないほどの激痛でした。若い医者でしたが、私の内臓を胃カメラの練習台にしていたんですよ。

土屋 おそらく膵管のところをいじってしまったんですね。

松山 結局、救急車で運ばれて3日間も昏睡状態でした。あとで会社の診療所長に文句を言ったら、「大学病院は危ないところだから、担当医にちゃんと胃カメラの経験が豊富なのか確かめなかったお前が悪い」と逆に怒られました。

技術のない専門医

土屋 大学病院という組織が抱えている問題は山のようにありますが、いちばん大きな問題はガバナンス(組織の統治)の問題です。

 たとえば先ほども出た群馬大のケース。腹腔鏡手術をやりたがる医者がいた場合、それをやらせても安全かどうか判断するのがガバナンスです。

 私は群馬大のケースでも、手術を失敗した医者だけに責任を取らせるのは間違っていたと思います。本来、手術を行わせていた学長は「現場は悪くない」と、医者を守るべき立場にあるはずです。問題になった医者は使命感に燃えて手術をしたのかもしれない。腹腔鏡という技術のメリットを信じてもいたのでしょう。だが、腕が悪かった。

 そのような医者に野放しで腹腔鏡手術をさせたのは病院のガバナンスがいい加減だったからです。

松山 アメリカの場合は、病院のリスク管理も徹底している。NASAの専門家を呼んできて、宇宙工学のレベルでリスク管理を行っているところもあるくらいです。

 事故が起きたら責任は一義的には医療機関が取って、医者を守る。その代わり、医療チーム全員で診療内容をチェックして無駄で危険な治療は絶対行わせないような仕組みになっているのです。

土屋 もちろん、技術力の高い医者を育てることも大切です。しかし、いまの日本の制度ではなかなかそれが難しい。なぜなら、きちんとした専門医制度が確立していないからです。

 私の専門である肺がんを例にとりましょう。

 肺がんの手術は年に約3万件行われています。外科医が技術を向上・維持するためには、できるだけたくさん手術を経験することが肝要です。理想的には毎日1度は手術をしたほうがいい。そう考えると年間300例くらいは、1人の医者が執刀することになる。

 すると、3万件の手術を行うのに必要な医者の数は100人程度です。逆にいえば、肺がんの専門医はこれ以上必要ない。外科医が現役で手術を行う年数が20年として、毎年5人ずつ専門医を育成していけばそれで済むわけです。

松山 実際には、肺がんの専門医は何人くらいいるのでしょう?

土屋 それが1000人もいるのです。15年前には1500人もいました。これは5年以内に50の症例をこなせば、専門医に認定されるという制度になっているからです。5年で50例といえば、年に10例、月に1例もないのですよ。

 このような制度では技術の質を保証できるわけがありませんし、そんな医者を「専門医」とは呼べません。

 大工だって毎日釘を打っているから、正確に打てるようになるんです。月に一度しか金槌を持たない大工を信用できますか? ましてや外科医は人様の身体を切る仕事ですよ。

松山 専門医制度も含めて、いろいろな改革が必要ですね。

 とりわけ大学病院の組織改革は重要です。まず病院を大学から分離するべきでしょう。経営感覚のない医学部の教授が口を出す結果、医療ニーズとミスマッチの過剰投資を続けている。病院を分離することでまともな経営体に変革し、医学部は基礎研究や若い医者のための教育に専念する仕組みにすべきです。

土屋 私も同じ意見です。基礎研究をやっていて、実験室にこもっている教授たちが病院長を選ぶというのはおかしい。

 基礎研究は学部でやればいいが、臨床研究は病院でなければできませんので、大学病院でする。ただし、臨床研究をしっかり行うような病院は全国で10ヵ所もあれば十分です。

松山 医療技術を集積することが、これからの日本の医療には必要になってきますね。高度な手術は一部の病院で行うべきです。

 そのためには、日本の医療事業体の規模はまだまだ小さすぎます。世界的に見れば年間1000億円レベルの売り上げがあって、初めて世界標準の医療事業体といえます。

土屋 日本でトップレベルのがん病院であるがん研ですら売り上げは350億円くらいですからね。

 患者さんは病院の売り上げと医療の質は関係ないだろうと考えるかもしれませんが、そんなことはありません。

 たとえば、CTやMRIといった機器を動かすのにも、日本だと1日8時間くらいしか稼働していない。アメリカではきちんと交代制ができていて機械が16時間動いているから、無駄が少ない。

薬の量が減らない理由

松山 アメリカでは高度医療の集中化が進んでいます。ピッツバーグで地域包括ケアを行う医療事業体は1兆4000億円規模の売り上げがあり、世界中から専門家が集まって、議論をしながら最新の医療を行っている。

 また、医療の質やコストを比較して公表することは欧米諸国で当たり前になっています。たとえば、オーストラリアの公立病院は、州政府がインターネットで成績表を公開しています。予定外の再入院の発生率、ベッドから落ちて骨折したケースの発生率など、様々な公開情報を見て病院を選ぶことができるのです。

土屋 それはすごいシステムですね。

 日本では、診療報酬の制度も改められるべきでしょう。「週刊現代」が特集しているように薬の飲みすぎが社会問題になっていますが、これは医者が患者に「本当に薬が必要かどうか」をゆっくり諭しても報われないからです。30分かけて「薬を飲むよりも食事や運動が大切だ」と説いて聞かせたとしても、診療報酬が増えるわけではない。

松山 薬の飲みすぎが起きるのは、患者がどのような医療を受けているのか、一元管理できていないからという面もあります。

 5年前に取材したアメリカの例では、医師と保険会社がチームを組み、医療費の削減に取り組んでいました。保険会社が患者たちの受診歴、投薬歴などの情報を医師に提供し、患者が病院に来るのを待つのではなく、逆に医師が受診すべき患者を指名します。この疾病管理と予防の結果、医療費が節約できたら、医師に報酬を支払うのです。

 医療費を抑制したら医療の質が落ちるとは限りません。長野県がいい例です。長野県は医療費が低い一方で県民の平均寿命、高齢者の健康寿命が日本一になっています。

土屋 無駄な薬や医療をなくすには患者自身の意識も変えなければならない。その薬が本当に必要かどうか、自分の身体に問いかけてみる。

 私はいま高血圧の薬と、以前十二指腸潰瘍をやったので腸の薬を飲んでいます。コレステロールが高いからといって薬を出されたこともありましたが、次の検診で数値が下がっていたので、その薬はやめました。

 薬を信用しすぎないで、本当に必要な薬はなにか自分で考えることが大切なのです。

土屋了介 つちや・りょうすけ/'46年生まれ。神奈川県立病院機構理事長、がん研究会理事。専門は胸部外科学(とくに進行肺がんの手術)。医療教育、医療制度に造詣が深い

松山幸弘 まつやま・ゆきひろ/'53年生まれ。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・経済学博士。社会保障審議会福祉部会委員。専門は社会保障制度改革の国際比較、医療産業政策

週刊現代 2016年10月8日

癌転移抑制に風邪薬成分が有効
北大、膀胱癌モデルマウスで抗癌剤の効果が回復
 北海道大学は10月5日、風邪薬の成分である非ステロイド系抗炎症薬のフルフェナム酸(商品名オパイリン)が、がんの転移と抗がん剤に対するがんの抵抗力を抑えることを発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科腫瘍病理学分野の田中伸哉教授らと、腎泌尿器外科の篠原信雄教授らの共同研究によるもの。研究成果は「Scientific Reports」誌に掲載された。

 日本では毎年約2万人が膀胱がんに罹患しており、そのうち8,000人が死亡しているといわれている。膀胱がんは何度も再発を繰り返すのが特徴で、深さが浅いがんと膀胱の壁の筋層に到達する深い浸潤がんに分けられる。浅いがんは予後が良好だが、浸潤がんは肺などに転移しやすく予後不良である。浸潤がんの治療には通常、シスプラチンなどの抗がん剤が用いられるが、薬剤耐性の獲得と遠隔臓器への転移が予後不良の原因となるとされる。そのため、薬剤耐性を解除し、転移を抑えることが必要とされていた。

 同研究では、ヒト膀胱がん細胞UM-UC-3を蛍光でラベルをしてマウスの膀胱に移植し、膀胱がんモデルマウスを作成した。移植から45日後に、肺転移、肝臓転移、骨転移が確認されたため、原発巣としての膀胱、転移先としての肺、肝、骨からそれぞれがん細胞を取り出して原発巣と比べ、転移したがん細胞でのみ高い発現を示す分子について、mRNAマイクロアレイ法を用いて網羅的に検討した。その結果、転移したがん細胞ではアルドケト還元酵素が3倍から25倍に増加していることを発見。転移巣でのアルドケト還元酵素の増加は、実際の膀胱がん患者の手術症例25例の病理組織でも認められたという。

 抗がん剤治療では、死滅したがん細胞の周囲で炎症が起こり、炎症性物質インターロイキン1を放出。これによりがん細胞内でアルドケト還元酵素の量が増加し、解毒作用が増強されて薬剤耐性を獲得する。さらに同研究で、アルドケト還元酵素ががん細胞の動きを司ることが明らかになった。フルフェナム酸はこのアルドケト還元酵素を阻害するため、フルフェナム酸を膀胱がん細胞に投与するとがん細胞の動きが止まり、抗がん剤の効果が回復することがわかったという。

 同研究から、風邪薬などの安価な薬の成分でも思わぬ抗がん作用があることが明らかとなり、将来のがん治療現場への定着が期待されると、研究グループは述べている。

m3.com 2016年10月11日

受動喫煙のリスクは「確実」
がん、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群
井手ゆきえ 医学ライター

 この夏、「たばこ白書(厚生労働省)」が改訂された。喫煙、受動喫煙と疾患との因果関係を「確実」〜「無関係の可能性」の4段階で評価した点が特徴。

 本人の喫煙と疾患との因果関係が証明されている「がん(肺・咽頭・食道など)」は「確実」。これまで「可能性あり」だった「脳卒中」「心筋梗塞」「糖尿病」も、「確実」に危険度が上がった。

 受動喫煙の影響に関しても手厳しい。「受動喫煙関連の年間死亡者数は1万5000人と推定される」という国立がん研究センターのデータを引いて、日本の受動喫煙対策は「世界でも最低」と断じ、屋内の100%禁煙化を推進すべきだと提言している。

 ちなみに、受動喫煙による推計死亡者数は、毎年1万人以上が亡くなった1960年代の年間交通事故死亡者数に匹敵する。

 当時は、前回の東京オリンピックを3年後に控えた61年から読売新聞が「日清戦争より多い死者」という刺激的なタイトルで、交通事故の現実を取材した連載「交通戦争」をスタート。欧米の事例から対策の必要を論じた。

 世論の盛り上がりを背景に、道路交通法の改定や取り締まり強化が行われ、安全面の技術革新もあって交通事故死は減少していく。2015年の交通事故死は、4117人。70年に記録した最大1万6765人の4分の1以下だ。

 受動喫煙関連死については、推計値に疑問の声がある一方、直接死ではない点が重大性を見えにくくしている。ただ、死亡者数の多さは侮れない。20年に向け、何らかの法整備はありそうだ。

 受動喫煙との因果関係が確実とされる疾患は、「肺がん」「脳卒中」「心筋梗塞」「乳幼児突然死症候群(SIDS)」がある。両親とも喫煙者でのSIDS発症リスクは、非喫煙夫婦の約5倍。母親の受動喫煙だけで2〜3倍に上昇する。

 妊娠の報告と同時に禁煙を迫られる人は少なくないだろう。分煙で勘弁して欲しいかもしれないが、喫煙者の身体に付着した残留物が屋内で再び放散される「サードハンドスモーキング」のリスクも侮れない。自分と子供の将来のために、禁煙したほうがいい。

DIAMOND online 2016年10月12日

オプジーボが再発NSCLC患者に奏効中
BMS、2件のP3最新結果を公表
 米国のブリストル・マイヤーズ スクイブ社は10月9日、CheckMate-057試験およびCheckMate-017試験の2件の重要な第3相臨床試験の最新の結果を発表した。両試験において、治療歴を有する再発の非小細胞肺がん(NSCLC)患者で、「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)の投与を受けた患者の3分の1以上が奏効継続中であったのに対し、ドセタキセルの投与を受けた患者では奏効継続中の患者はいなかったとしている。

 現在、海外においては、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社が、膠芽腫、小細胞肺がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、食道がん、大腸がん、胃がん、血液がんなどのがん腫を対象とし、オプジーボ単剤療法または他の治療薬との併用療法による臨床試験を実施中。

 日本では、小野薬品工業株式会社が2014年9月に根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬として発売している。その後、2015年12月に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、2016年8月に根治切除不能または転移性の腎細胞がんに対する承認を取得。また、ホジキンリンパ腫および頭頸部がんについても承認申請しており、胃がん、食道がん、小細胞肺がん、肝細胞がん、膠芽腫、卵巣がん、尿路上皮がん、悪性胸膜中皮腫、胆道がんなどを対象とした臨床試験を実施中である。

 CheckMate-057試験において、奏効期間(DOR)の中央値はオプジーボ群で17.2か月(95%信頼区間:8.4-評価不能)、ドセタキセル群で5.6か月(95%信頼区間:4.4-6.9)であり、CheckMate-017試験では、オプジーボ群で25.2か月(95%信頼区間:9.8-30.4)、ドセタキセル群では8.4か月(95%信頼区間:8.4-評価不能)だった。CheckMate-057試験では、PD-L1発現レベル1%以上の患者におけるDOR中央値は17.2か月(95%信頼区間:8.4-評価不能)、PD-L1発現レベル1%未満の患者においては18.3か月(95%信頼区間:5.5?評価不能)だった。両試験において、PD-L1 発現および非発現患者の両方において持続的奏効が認められ、CheckMate-057試験では、完全奏効患者の4人に1人がPD-L1発現レベル1%未満の患者だった。

 両試験における統合安全性解析では、オプジーボの新たな安全性シグナルは認められなかった。1年と2年の追跡期間の間に、より長期間の投与にもかかわらず新たな治療に関連する死亡例は発生せず、1年の追加追跡期間中には418例中11例で新たな事象が認められた。

m3.com 2016年10月14日

がんの二大名医が明かす「医者の選び方・薬の飲み方・理想の逝き方」
本音のスクープ対談
赤池信 あかいけ・まこと 康心会汐見台病院・病院管理者。元・神奈川県立がんセンター総長。専門は大腸がん

中山治彦 なかやま・はるひこ 国立がんセンターなどを経て、現在神奈川県立がんセンター副院長。専門は肺がん


 医療技術が日々進歩しているのは事実。だが、それが本当に患者のためになっているのだろうか。がんの名医二人が「手術、薬、理想の逝き方」について語る。

医者選びは本当に難しい

赤池 私は大腸がんが専門ですが、治療・手術の技術は着実に進歩してきました。

 腹腔鏡の手術も広く行われるようになった。ただ腹腔鏡の手術が特に優れているというわけではなく、開腹手術が劣っているということでもありません。これは臨床試験の結果からもいえることです。

 ただ、腹腔鏡の手術が広く認知され、そちらの症例数が増えてきていることは事実で、この傾向は続くでしょう。

中山 私の専門は肺がんです。私の考えるよい手術とは、解剖がきちんときれいに視認できている安全確実な手術です。そのために、私自身がいちばん気を付けていることはよい視野を確保するために極力出血を抑える努力をしています。逆にいえば、それができていないと下手な手術になるわけです。

 肺がんの手術では、根治性を保ちながら、肺機能の温存を目指すという流れが最近のトレンドです。

赤池 直腸がんの手術でも、人工肛門をつけないで済む手術が増えてきましたよ。

 手術を腹腔鏡にするか、開腹手術にするかは、主治医の判断が大きい。そこには技量の差も関係してきます。この先生だと腹腔鏡ではできないが、別の先生だと可能だという、がんの部位もあります。

中山 患者さんの立場から、手術の上手い外科医を選ぶ方法はとても難しいですね。

赤池 私たち医者にしても家族や身内が病気になったら、誰に手術を頼もうかと迷うわけですから、患者さんから見ればなおさらでしょう。

 ただ、病院も昔とはちがって情報公開が進んでいる面もあります。だから病院の選択という意味では、直近何年かの症例数を参考にするというのが、いちばん妥当な方法といえるでしょう。

 ただし、症例数が多い施設は技術の平均値が高いことは間違いありませんが、10人外科医がいたら10人とも手術が上手いとは限りません。

中山 私もまずは症例数の多い病院を探すのが正解だと思います。問題は、患者さんがいちばん知りたいのは症例数の多い病院のどの医師が優秀かということですよね。

赤池 もちろん、それがわかればいい。ただ、症例数が多いほうが、平均的に見て手術の成功率も高いというデータもあります。アメリカの心臓外科手術の調査の裏付けがあるのです。

中山 情報の公開という意味では、最近は手術の様子がビデオで録画されるようになりましたね。

赤池 あれを見ると手術の上手い、下手が一目でわかります。

 実際、とある疾患のトップといわれている医師の手術のビデオを学会などで見て、愕然としたことがあります。その分野で先頭を走っている人の手技なのですが、とても上手いとは言えない。ただ、草分け的存在で症例数だけは重ねてきているので、学会で大きな顔はできるわけです。

 一方、若手で学会での立場はまだまだ下っ端でも、上手い人は見ればわかります。

「点数」稼ぎに走る医師

中山 一般の方はビデオを見る機会もないですし、仮にビデオを見たとしても何が何だかよくわからないでしょう。しかし、そのような情報が公開されることで少なくとも医師たちの間で、評価し合うことはできる。

 患者さんも、手術の腕がいいかどうかはわからなくても、初診でコミュニケーションが取れているかどうかは、誰にでもわかります。コミュニケーションが取れなくても手術が上手い医者もなかにはいるかもしれませんが、やはり、不安感をもって手術に向かうか、信頼感をもって向かうかは大きく違ってきます。

赤池 疑問をもったまま手術に臨むと必ず後悔の種になりますからね。

気がかりな専門医制度

中山 最近、時々感じるのは認定医や専門医制度の問題です。認定医・専門医の取得には一定数の手術症例を経験しないといけませんが、えてして数を稼ぐことばかりに気が向いてしまって、一つ一つの症例をきちんと振り返り、次の症例に活かす努力が足りないと感じることがあります。

赤池 新しい技術を若手の医者にどう研修させるかは非常に大切な問題です。認定医は一定の経験を積んだという意味で、一つの指標にはなると思います。

中山 いまの若い医者たちが認定医の資格を取っていないと、「この人どんな教育を受けてきたの?」という目で見られますからね。

 ただ、地方の病院にいる名うての外科医のなかには、認定医の価値なんて認めないという人もいるでしょう。

赤池 とはいえ、現実として医者が資格を持っていないと優秀なスタッフも集まって来ない。そのような制度の下で、技術を継承していくことはとても重要な課題なんです。

 内視鏡外科学会がやっている技術認定制度はきちんとしたものです。実際に手術をやっているビデオを提出し、それを判定してもらう。誰でも申請すれば簡単に通るようなものではなくて、それなりに厳しいものです。実際に、応募しても落とされている例は多いですよ。

中山 ある病院が凄腕で有名な医者を引き抜くと、症例数がぐんと上がることがあります。しかし、その先生が自分でばかり手術をして、下の世代の面倒を見ないというケースもある。

 若い人たちにぜんぜん教えてくれないので技術の継承がなく、先生が定年を迎えると、また急に病院のレベルが下がってしまうということもある。

赤池 週刊現代は薬の飲みすぎの問題を追及していますが、確かにそういう患者さんはいますね。私がいまいる病院には、10種類以上も薬を飲んでいる患者さんがたくさん来ます。

中山 高齢者が本当に10種類以上の薬をきちんと服用できるのかどうか、心配ですね。

赤池 本当にちょっと認知症も始まっているような高齢の方が、独居しながらこれだけ多くの薬を飲んでいるというのは驚くべきことです。80歳を超えた人が、本当にそれだけの薬が必要なのか。減らしたほうがよいと思われるケースもある。

中山 残薬のチェックはなかなか難しい。逆に飲みすぎることもあるでしょう。糖尿病の薬を2回飲んで、低血糖になってしまう、なんてこともありうる。

赤池 近年、がん治療の現場でも、いろんな薬が出てきました。オプジーボのような新型の免疫治療薬は年間3500万円かかる高額薬で、話題になっています。

中山 これから日本の医療費は大変なことになりますよ。すごく高い胃がんの薬がどんどん出てきますから。

赤池 超高額な抗がん剤や治療法は、これから日本人が議論すべき大きな問題ですね。

中山 自分の家族ががんになったとしたら、余命が少しでも延びるなら高い薬を使いたいと思うのは自然なことです。特に日本の場合は国民皆保険ですし、高額療養費制度のおかげで一定の額以上は支払わなくてもいいですから。

 しかし、逆にそれが問題でもあって、税金がいくら使われても自分の懐が直接痛むわけではないので、医療のコストに無関心になってしまいがちです。

 1年生存期間を延ばすために、いくらまでだったら税金で負担できるのか。たとえ生存期間が延びても、あまりに高い薬であればコストパフォーマンスの悪い医療になります。

命に値段はつけられるか?

赤池 欧米では医療のコストパフォーマンスについて議論されていますが、日本ではそのような議論をするためのデータもあまり出てきません。そういう話をすれば「命に値段をつけるのか」と逆に非難される。

中山 イギリスでは費用対効果の悪い新治療はなかなか承認されません。アメリカでも、ある有名ながん専門病院では、大腸がんに有効とされた新規抗がん剤を使わないことを決めました。効果が既存の抗がん剤とほぼ同じなのに薬価が倍もするというのがその理由です。欧米は医療のコストに敏感なのです。

 日本は国民の誰もが平等に医療を受けられるという意味では、非常に恵まれています。しかし、その裏で大変なことが起こりつつあると認識したほうがいい。

日本の医療は破綻寸前

赤池 本当に日本の医療制度は破綻寸前です。

 医療費を膨張させないために、医師や病院が努力できることは、まだあります。たとえば死ぬ直前まで抗がん剤治療をやる必要があるのかどうか。

中山 オプジーボのような高額薬はこれからどんどん出てきますし、高くなっていきます。

 極論かもしれませんが、ある年齢以上の高齢者には高額の薬を使うのをやめるという議論になることもありえます。これまでタブー視されていた命の値段を医療経済・費用対効果の面から真剣に考えなければいけない時期に来ていることは確かでしょう。

赤池 オプジーボのような薬でも死ぬぎりぎりまで使う必要があるのか。医者としても効かないとわかったら、きちんと患者に説明してやめることも大切です。

中山 現在は、超高額薬が話題になっていますが、一方でほとんど効果のない風邪薬や抗生物質のようなものが大量に使われているという現実もあります。それ自体は安価でも、塵も積もれば山となります。

赤池 中山先生はご自身では何か薬を飲まれていますか。

中山 僕は血圧が高いので、降圧剤を2種類飲んでいます。ただ主治医の勧めもありダイエットしたせいか、血圧が低めになってきました。冬になってもこのまま上がらなければ、やめようと思っていますが……。

赤池 一つずつ減らしていけばいいんですよ。

 私は、コレステロールの薬を飲んでいます。副作用のリスクも理解したうえで、両者を天秤にかけながら、自分の身体に本当に必要なものは何かを考えるようにしています。

中山 どのようなリスクを許容し、薬をどう選ぶかは、結局はどう老いていくか、そしていかにして死ぬかという問題につながります。

 できることなら苦しまず、家族に迷惑をかけずに逝きたいという人が多いですね。そうなると心疾患がいいかもしれません。ただ、それだと急過ぎるかもしれない。家族に言い残したこともあるだろうから、2~3日は意識があって、すっと逝ける病気が理想でしょう。

赤池 私は腎不全が比較的穏やかな死に方だと思いますよ。死ぬまで何でも食べられて、だんだんと意識がポーッと薄くなって亡くなるんです。

中山 余命をどう過ごしたいのか、死をどう迎えるのかという問題は、人生観・死生観に直結します。そこまで患者さんとコミュニケーションが取れるかどうか。

 手術するかどうか迷った患者の家族に、「先生の家族が同じ病気だったらどうしますか?」と聞かれることがよくあります。そこで私が「自分の家族だったら手術しますよ」と言うと納得してもらえます。

赤池 そのように尋ねられることは多いですね。当然ながら、医者のほうが専門知識があります。

 だから何でも患者さんに判断させるというのは間違っていると私は思っています。すべての情報を患者さんに伝えて一緒に考え、その上で治療の責任はすべて背負う。そういう医師と患者さんの関係が理想ではないでしょうか。

週刊現代 2016年10月15日・27日合併号

肥満と2型糖尿病の患者は肝臓がんになりやすい
肥満に糖尿病を合併するとオッズ2.6倍に
 ウエスト周囲長の増加とBMIの上昇、2型糖尿病の存在は、肝臓がんの発症リスクを高める因子であることが、新しい研究で示された。

 「これらの3つの因子は肝臓がんリスクの増加と明らかに関連している」と、研究著者の1人である米国がん協会(ACS)のPeter Campbell氏は述べている。米国では、肝臓がんの発症率は1970年代半ばからほぼ3倍に増えており、予後もきわめて悪いタイプのがんであるという。

 同氏らは、肥満および2型糖尿病と肝臓がんとの関連を調べるため、米国で行われた14件の研究に参加した成人157万人のデータを再調査した。なお、研究開始時点には参加者のうち肝臓がんを発症した患者はいなかった。

 追跡期間中に、対象者のうち6.5%が2型糖尿病と診断され、2,100人強が肝臓がんを発症した。肥満を合併した2型糖尿病の患者と肥満だが2型糖尿病を合併していない患者における肝臓がんの発症率を比較したところ、2型糖尿病があると肝臓がんを発症する率は2.6倍に上ることがわかった。この関連は飲酒や喫煙、人種といったリスク因子を調整後も認められたという。

 また、BMIが5kg/m2上昇すると、肝臓がんリスクは男性では38%、女性では25%増加し、ウエスト周囲長が5cm増えると肝臓がんリスクは8%増加した。

 同氏によると、「Cancer Research」10月号に掲載されたこの知見は、肝臓がんが肥満に関連したがんのひとつであることを強く支持するもので、適正な体重を維持すべき理由にもなるとしている。

 今回の研究は、肥満と肝臓がんとの因果関係を示すものではないが、著者らは、肥満や糖尿病が近年の肝臓がんの急激な増加に寄与している可能性を示唆した過去の研究結果を裏づけるものだとし、Campbell氏も「過剰なアルコール摂取と肝炎ウイルスへの感染だけが肝臓がんの原因ではない」と述べている。

 肥満や糖尿病が世界中で蔓延している現状を鑑みると、今回の知見は公衆衛生の観点からも重要になる。「肝臓がんのリスク因子としてB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどについては広く啓発されているが、これらの因子は実際には、肥満や糖尿病に比べるとはるかに少ないものだ」と、著者の1人である米国国立がん研究所(NCI)のKatherine McGlynn氏は指摘している。

m3.com 2016年10月25日

乳房再建はすぐに受けるべき? 再建の遅れが患者の不安増につながる
乳がんに対する乳房切除術後の治療
 乳がん手術による乳房切除後には、乳房再建まで数カ月から数年の期間をおかずに術後すぐに再建術を受けたほうが、患者の精神的なストレスは軽減される可能性が、カナダの研究で示唆された。

 「術後すぐに乳房再建を受けた患者では、再建までに時間を要した患者に比べて、精神的な苦痛や再建前のボディーイメージの悪化、性生活の減少などに苦しむ期間が短くてすむ可能性が示唆された」と、研究著者であるトロント大学のToni Zhong氏らは述べている。

 今回の研究は、乳房切除術後に乳房再建を受けた106人の乳がん患者を対象としたもので、30人は乳房切除と同時に再建を受け、76人は乳房切除から平均で3年後に再建を受けた。

 乳房切除術を行う前には、対象患者の26%に不安レベルの上昇がみられ、9%にはうつ症状の悪化が認められた。両群ともに、乳房再建後にはこうした不安感は軽減していた。

 しかし、乳房再建までに時間を要した患者では、ボディーイメージや性生活への満足度、健康に関連したQOLに対する評価が低かった。このことから、こうした患者では、再建を待つ間に精神的なストレスを受けていたことが示唆されたという。

 一方で、乳房再建から6カ月後には、ボディーイメージに関するスコアに両群間で差は消失し、12カ月後および18カ月後には性生活への満足度に関するスコアでも差はみられなくなった。

 この知見は、「Plastic and Reconstructive Surgery」10月号に掲載された。

 同氏らによると、カナダでは、米国に比べて乳房切除術から乳房再建までに期間を要するケースが一般的であるという。術後すぐの乳房再建が適し、それを強く希望する患者については、「乳房切除術後すぐの乳房再建をコーディネートするようにあらゆる努力がなされるべきだ」と、同氏らは結論づけている。

m3.com 2016年10月28日

食道癌予後不良に腸内・口内細菌関与
熊本大、リアルタイムPCR法で組織内のフソバクテリウムを検出
 熊本大学大学院生命科学研究部の馬場秀夫教授の研究グループは、腸内や口腔内に生息する細菌「フソバクテリウム」が、食道がんの予後の不良に関与することを突き止めた。患者のがん組織を調査し、DNAの解析など行い、同細菌が多く存在すると、炎症性たんぱく質に関連する遺伝子群が変動することが分かった。

 ヨーグルトや乳酸菌飲料などのプロバイオティクスス(腸内に良い影響を与える微生物)や腸内環境を整える機能性素材を摂取し、腸内細菌叢(フローラ)バランスを改善することが予後を良好に保つ一つの対策として可能性が考えられる。

 研究グループは、熊本大学医学部附属病院で手術を受けた食道がん患者325人の承諾を得て、切除されたがん組織と非がん組織(正常組織)からDNAを抽出。遺伝子の定量を調べられるリアルタイムPCR法を用いて組織内のフソバクテリウムを検出したところ、がん組織からは正常組織よりも有意に多くの同細菌のDNAが検出された。がん組織から同細菌が検出された患者は、325人中74人で、約23%を占めていた。

 がん組織から同細菌が検出された患者と検出されなかった患者の2グループに分け、手術後の生存期間を比較。その結果、同細菌が検出された患者グループは、検出されなかった患者グループに対し、有意に生存期間が短かったことが分かった。

 次に、同細菌陽性と陰性の食道がんから抽出したRNAを用いて、遺伝子解析による遺伝子の変動を調査。同細菌陽性患者では、炎症を促すたんぱく質(炎症性サイトカイン)に関連する一連の遺伝子群が変動していることを確認できたとしている。これらデータを詳細解析すると、「CCL20」や「CXCL7」といった白血球の輸送に関するたんぱく質(ケモカイン)の遺伝子の量が増加していることが分かった。

 今回の研究から口腔常在菌である同細菌がケモカインを介して、食道がんの進展に関与している可能性が示唆された。同細菌は腸内フローラにおいて優位な存在ではないが、大腸がん組織から高頻度で検出され、大腸がんの進展に影響を与えている可能性のあることが報告されている。

 口腔に近い食道のがんでも悪影響にかかわるとみられ、同細菌の詳細な解析と役割を解明することで新たな対応法が探究できる。その一つとして考えられるのが腸内フローラの改善。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉細菌を増やすことが予後の状況改善に導く可能性がある。

m3.com 2016年10月31日

オプジーボの新規作用を発見
京大、Th9細胞に作用して悪性黒色腫に効果
 京都大学は10月26日、がん免疫療法の新薬「オプジーボ(R)」(一般名:ニボルマブ)の新規作用として、末梢血中に数パーセントしか存在しない「9型ヘルパーT細胞(Th9細胞)」に作用して、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者に効果を発揮することを発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科の大塚篤司助教、野々村優美博士課程学生、椛島健治教授らの研究グループによるもの。研究成果は国際科学誌「Oncoimmunology」に掲載された。

 ヒトの体の中には、自分にとって「異物」である菌やウイルスを自力で排除するシステム=免疫機構が存在し、健康な状態ではがん細胞も「異物」として取り除かれている。これを「がん免疫」と呼び、進行したがん患者ではこの免疫細胞が働けなくなるスイッチが入ってしまい、がん免疫が弱っていることがわかっている。このスイッチ(PD−1という分子)を解除して患者のがん免疫を回復させることでがん細胞を破壊する新薬が抗PD−1抗体オプジーボだが、この新薬が効くのは患者全体の3割程度で、残りの7割になぜ効果がないのかはまだわかっていない。

 研究グループは、患者それぞれがもつ免疫の状態の違いが新薬の効果の違いと関連があるのではないかと仮説をたて、それぞれの種類の細胞、分子1つひとつについて、治療効果があった患者群となかった患者群で差がないかを検証。その結果、リンパ球の一種であるTh9細胞が、治療効果があった患者でオプジーボ投与後、増加していることを発見した。

 さらに、Th9細胞を試験管内で作り出す実験を行い、抗PD-1抗体を加えると、ない場合と比べて、より効率よくTh9細胞を作り出せることを発見。また、悪性黒色腫のマウスモデルを用いた実験を行い、Th9細胞が作り出すインターロイキン9という分子がどのような作用をもつかを検討した結果、インターロイキン9の作用を無効にする試薬を投与したマウスでは、そうでないマウスに比べ、悪性黒色腫が早く進行したことから、インターロイキン9には悪性黒色腫の進展を抑える作用があることがわかったとしている。

 今後は、末梢血中Th9細胞をモニタリングし、オプジーボ投与後早期に治療効果を判定するバイオマーカーとしての活用やTh9細胞の機能を高めることで、抗腫瘍効果を高める可能性の波及効果が期待できると研究グループは見ている。オプジーボ投与後によりTh9細胞が増加する患者、しない患者のさらなる詳細な違いを解析していくとしている。

m3.com 2016年10月31日

がん細胞 手術せずにその場で可視化する技術 東工大が開発
 東京工業大学の研究チームは、血液注射すると、悪性化したがん細胞にある特殊な物質にのみ反応して近赤外線を発光し、患者の体を傷つけることなく、がん組織を特定する技術を開発し、マウスを使った実験で実証した。

 東工大の近藤科江教授と口丸高弘助教のチームは、悪性がんの腫瘍組織で活性化する「低酸素誘導因子」に着目。これまでの研究で、抗がん剤が効きにくくなったり、がん細胞の転移に関わることが判明しており、がんの早期発見につなげる診断マーカーとしての活用が期待されているが、あらかじめがん細胞に遺伝子を導入しなければならず、その場での診断は難しかった。

 そこで、がん細胞が血管形成を妨げ、慢性的な酸素不足の環境だと「低酸素誘導因子」が分解されない性質を利用して、近赤外線を発光する特殊なたんぱく質分子を組み合わせた試料を開発。

 皮膚がんのマウスの尻尾の静脈に注射し、全身に行き渡らせた実験では、投与後1時間で悪性がんに侵された部位を特定した。

 また、これまで大腸がんの診断では、投与した試料が膀胱や肝臓、腎臓などの排泄器官を通る全過程で発光してしまうことから、腫瘍の位置を特定するのが難しかったが、高精度な診断が可能になるという。

 研究チームは、「低酸素誘導因子」が、がんの発生や転移の過程でどのように機能しているのかを具体的に明らかにすると話している。

 なおこの研究結果は、英科学誌ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に掲載された。

ハザードラボ 2016年11月3日

飲酒によるがん死者、2012年に36万人 国連機関調査
 仏パリ(Paris)で開催の「世界がん会議(World Cancer Congress)」で2日、2012年に飲酒が原因で発生した新規がん患者は70万人以上で、がん関連の死者も約36万6000人に上るとする調査データが発表された。これらの発生件数は主に富裕国でのものだという。

 研究チームは、飲酒をする人としない人のがん発症リスクを比較し、がんの年間新規症例数の約5%、年間死者数の4.5%に、アルコールが関与しているとの結果を算出した。

 公式発表を控えた今回の予備報告書の共同執筆者で、国連(UN)の国際がん研究機関(IARC)のケビン・シールド(Kevin Shield)氏は、AFPの取材に「アルコールによってがんが引き起こされる恐れがあることに、多くの人が気付いていない」と語った。

 アルコールと最も強い関連性が認められたのは乳がんの新規診断例で、アルコールに起因する全がん症例の4分の1以上を占めていた。次いで関連が強かったのは大腸がんで、全体の23%だった。このことについてシールド氏は、特に乳がんでは「発症リスクが(アルコールの)摂取量とともに増加する」ことは明らかだと述べた。

 アルコールとがんによる死亡との関連について評価した結果では、食道がんで最も関連性が強く、次いで大腸がんが続いた。

 世界保健機関(WHO)の専門組織であるIARCは、アルコール飲料を「グループ1の発がん性物質」に分類している。これは、アルコールががんを引き起こすと考えられていることを意味するが、シールド氏によると、その発症機構については「正確には分からない」という。

 世界全体でみると、疾病負担が最も大きい地域は北米、豪州、欧州(特に東欧)などだが、発展途上国での飲酒量増加とともに、この傾向には緩やかな変化がみられると、研究チームは指摘している。

AFPBB News 2016年11月3日

揚げ物、米では前立腺がんのリスクを増大させるとの研究も
 健康長寿を実現できるかどうかは食材選びが重要だ。最新の研究では新たな知見も明らかになっている。その食材の一つがジャガイモだ。健康的なイメージはあるものの、食べ方次第で、体に悪いものになりかねないというのである。

 ハーバード大学で食と健康に関する研究をしていた米国ボストン在住の内科医師・大西睦子氏はこう言う。

「ジャガイモにはビタミンCなどのビタミン類やカリウム、マグネシウム、鉄などのミネラルに加え、皮には食物繊維が含まれます。

 しかし、味を良くするために油と塩を加えて調理されることが多く、それが肥満や生活習慣病などの原因になる。また、ジャガイモはアミノ酸の一種であるアスパラギンと、ブドウ糖や果糖などの還元糖を含み、高温で両者を加熱すると『メイラード反応』が起き、大量のアクリルアミドを生成します。アクリルアミドは国際がん研究機関(IARC)が、『人に対しおそらく発がん性がある』物質に分類している物質です」

 高温でジャガイモを調理するフライドポテトやポテトチップスには、このアクリルアミドが含まれているということだ。揚げ物といえば、百寿者(100歳以上の人)を対象とした調査で挙がる好物にも「天ぷら」や「カツ」があったが、一方でこれらは前立腺がんのリスクを増大させるとの研究報告が出ているという。

 米シアトルにあるフレッド・ハッチンソンがん研究所では、シアトル地域在住の前立腺がんと診断された男性1549人と健康な男性1492人(35〜74歳)を対象に、フライドポテトやフライドチキン、魚のフライ、ドーナツなどの揚げ物食品の定期的な消費と、前立腺がんのリスク増加や悪性度の高さとの関連について大規模調査を実施し、2013年6月に結果を発表した。前出・大西氏はこう言う。

「これらの揚げ物を週に1度以上食べた男性は、月に1回未満の男性と比較して、前立腺がんのリスクがそれぞれ30%から37%に上昇しました。調理の過程で、終末糖化産物、アクリルアミド、ヘテロサイクリックアミン、多環芳香族炭化水素などの発がん物質が生成されるからと考えられています」

 DHAやEPAなどを含む「魚」は、長生きする食べ物だったはずだが、フライにしてしまうと前立腺がんのリスクが出てくるという。

 もっとも、「大腸がんとは違い前立腺がんは早期発見できれば死亡リスクは低い」(大西氏)という。量の問題であって、特に高齢者がたまに食べるだけなら問題ないことは当の百寿者たちが証明している。

ガジェット通信 2016年11月5日

がん細胞を兵糧攻め!「究極糖質制限」の威力
初の臨床研究で約7割の末期がんが改善した

古川 健司 :医学博士 多摩南部地域病院外科


6カ月のケトン食療法を行った70歳・女性の事例。(左):2014年8月、肺の右上に22×28mmのがんを認める。(右):4カ月後の同年12月には同部位の腫瘍が完全に消失(写真:著者提供)









 がん細胞は、ブドウ糖をエネルギー源とする――。これは、1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞したオットー・ワールブルグ博士が、マウスの「癌性腹膜細胞」を用いた実験で解明し、1923年からの一連の論文で発表したものです。

 2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなるとされる中、今日のがん治療の大きな問題点といえば、この90年以上も前に発見された事実が、まったく生かされてこなかったことに尽きるでしょう。今では、がん細胞は正常細胞の3〜8倍ものブドウ糖を取り込まなければ、生命活動を維持できないことも分かっています。

ブドウ糖欠乏状態の体が生み出す「ケトン体」

 その理由は、2つ考えられます。1つは、がん治療の現場において、患者の栄養管理や食事指導内容が軽視され続けてきたこと。そして、もう1つは、糖質の代名詞である炭水化物が、私たちが生きていくために必要な、3大栄養素の中核を担ってきたことです。

 確かに、私たち人間の生命活動は、糖質が体内で分解されてできる、ブドウ糖を主なエネルギー源にしていると長く考えられてきました。しかし、結論から先に言えば、ブドウ糖が枯渇すると、人間の体内ではブドウ糖に代わる、緊急用のエネルギーが生み出されます。それが、私ががん治療の鍵としている「ケトン体」という酸性の代謝物質です。

 このケトン体は、皮下脂肪や内臓脂肪が分解されることで産生されます。そして、正常細胞がケトン体をエネルギー源にすることができるのに対して、がん細胞は基本的にそれができません。がん細胞には、ケトン体をエネルギーに変える酵素が欠けているからです。

 ここに、がん治療の大きなヒントが隠されています。がん細胞といえども、普通細胞と同様に、栄養源を絶たれれば死滅への道を辿らざるを得ないからです。

 ケトン体のすごいところは、単にがん細胞の栄養源を絶つことだけではありません。がんを誘発する酵素(β-グルクロニターゼ)の活性を低下させるなど、それ自体に抗がん作用があることが、動物実験などで解明されています。さらに、がんの発生起源と考えられる乳酸を除去し、ミトコンドリアの活性化を促す「長寿遺伝子」のスイッチを入れる働きがあることも、最近になってわかってきました。

 私が、世界初となる臨床研究(「ステージWの進行再発大腸癌、乳癌に対し蛋白質とEPAを強化した糖質制限によるQOL改善に関する臨床研究」)をもとに体系付けた、「がん免疫栄養ケトン食療法」とは、このケトン体を治療のベースに据えた、がん細胞を弱らせて正常細胞を元気にするための、食によるがんの兵糧攻め戦法に他なりません。

糖質の摂取を「限りなくゼロ」にするケトン食療法

 この食療法の基本となるのは、主食である炭水化物の極端なカットです。その代わりに、免疫機能の指標となるたんぱく質(魚介類、大豆類、肉などから摂取)と、がんの進行と炎症を抑えるオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸。魚の刺身やアマニ油などに含まれる)の摂取を強化し、さらに、その燃焼性の高さからケトン体の産生を強力に促してくれる中鎖脂肪酸(MCTオイルを主に活用)を、1日数回に分けて摂取するようにしています。

 食事メニューの詳細、栄養の組み合わせなどは『ケトン食ががんを消す』に譲りますが、こうした高脂肪、高たんぱく、低糖質のケトン食に、抗がん剤や放射線などの化学治療を併用すると、患者のがん細胞が縮小、消滅する確率である「奏功率」がアップすることも、私の臨床研究で明らかになりました。

 この食事療法は、3カ月の継続をベースに、実施の安全性が確認されている1年までを目処に行われます。参加者の臨床開始から3カ月後時点での病勢の中間報告によれば、PR(部分奏効)が6例、SD(進行抑制)が1例、PD(増悪)が2例となっています。血中の最高ケトン体数が1000μMを超えると、がんは縮小する傾向にあることが見て取れます。

 さて、この9例の1年後の評価はどうなったのでしょうか。3例がCR(完全寛解)、3例がPR(部分奏功)、1例がSD(進行抑制)、2例がPD(増悪)による死亡と、奏効率が67%、病勢コントロール率が78%という結果になりました。臨床対象者以外の免疫栄養ケトン食実施者も含めると(総勢18人が3カ月以上実施)、その病勢コントロール率は83%にものぼり、免疫栄養ケトン食と化学療法の併用の有意性が、さらに明確に示されています。

「ケトン食」の実施が危険な人もいる

 ただし、この極端な糖質カットによる免疫栄養ケトン食をすべての患者さんに実施できるわけではありません。肝臓にがんの原発巣(最初に発生したがん)を抱える患者さんや、先天的な要素が関係するT型糖尿病の人には、適用することができないのです。

 まず、肝臓にがんの原発巣がある場合は、ケトン体を合成し、全身に送り出す役割を担う肝臓が、ケトン体をエネルギーにできないことが理由になります。

 また、T型糖尿病の場合は、血液や体液の濃度が酸性に傾く「ケトアシドーシス」が多く見られることが理由です。このケトアシドーシスに見舞われると、嘔吐や頭痛、頻脈、ひどいときには昏睡の引き金にもなりますので、注意が必要です。

 私の臨床研究でも、PD(増悪)によって亡くなられた上記の2例は、インスリンや内服薬の導入はなかったものの、いずれも生活習慣によるU型糖尿病の傾向が見られました。理屈から考えれば、U型糖尿病でも緩やかな糖質制限を行えば、血糖やがんの病勢をコントロールできるはずでしたが、こうしたことから糖尿病の患者さんに対しては、現時点でケトン食を推奨できないという残念な結果が導かれています。

 しかし、インスリンの働きが正常である限り、ケトン体がいくら増えてもケトアシドーシスを引き起こさないことが、私の臨床を含めた多くの臨床研究から明らかにされています。免疫栄養ケトン食を3カ月以上にわたって継続した、糖尿病のない患者さんの総ケトン体数と、血液及び尿が酸性かアルカリ性かを示すpHを調べてみると、ケトン体数が異様に高いにも拘らず(基準値は28〜120μM)、血中pHと尿中pHのいずれも、基準値内に収まっていることが分かります。

 とはいえ、いずれにしてもがん治療におけるケトン食療法は、素人判断で行うべきではありません。がん患者の栄養管理や食事指導内容や抗がん剤などの副作用対策に精通した、医師の指導のもとで行われる必要があります。そのためにも、日本病態栄養学会が認定する「がん病態栄養専門管理栄養士」の充実と、がん治療に特化した食事療法の保険適用化の実現が、何よりも急務になるでしょう。

古川 健司(ふるかわ けんじ) Kenji Furukawa 医学博士
1967年山口県生まれ。1992年に慶應義塾大学理工学部電気工学科卒。その後、山梨医科大学医学部医学科に入学。1999年、消化器外科医を志望し、東京女子医科大学消化器外科に入局。大学では、膵臓班に所属し、当時、膵臓がん手術件数日本一を誇っていた。2006年、(公財)東京都保健医療公社荏原病院外科を経て、多摩南部地域病院外科に勤務。NST(栄養サポートチーム)に従事し、本格的にがんの栄養療法を開始。がん免疫栄養療法の臨床実績を上げて、14年、それまでの栄養療法のケトジェニック化に成功。15年1月より、ステージWのがん患者を対象に、世界初の臨床研究を開始。現在、がん免疫栄養ケトン食療法の普及に努めている。


東洋経済オンライン 2016年11月10日

「お年寄り進みが遅い」 がんの進行スピードは年齢で違う?
 日本人の死因・第一位である「がん」。

 2015年にがんで亡くなった人は37万346人だそうです。
がんは一般に「お年寄りのがんは若い人に比べて進行スピードが遅い」といわれることが多いのですが、実際に年齢とがんの進行スピードは関係あるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。

「早期発見」も発生から10年以上経過

 一般的な検査「X線検査」でがんが見つかるのは直径約1センチの大きさになったときです。

 このときの重さは約1グラム、がんの細胞数は約10億個といわれています。

 このサイズで見つかっていれば「早期発見」と呼ばれますが、実はがん細胞が発生してからすでに10年以上経過している状態です。

 がんの症状は2〜3センチほどの大きさに成長したときに出てきますが、がんの種類や状態によっては5センチ以上になっても目立った症状が出ないことがあります。

 そのため、症状が出てからではすでにがんが他の臓器へ転移していたり、臓器を圧迫したりしている可能性があるのです。

「がん」はどうやって進行する?

 がんは、大きくなればなるほど進行スピードが速くなります。

 「がんが大きくなる」というのは「がん細胞の数が増加する」ということを指し、増えた細胞が分裂しながら「がん」が大きくなっていくことを言います。

 がんが増殖すると周囲組織への浸潤に加え、全身に転移しはじめ、がんの増殖を抑えるのが困難になります。抗がん剤でがんを小さくしても、がん細胞に耐性がついた場合は抗がん剤が効かなくなり、増殖スピードも速くなります。

お年寄りは進行スピードが遅い?

 よく「若い人はがんの進行が速い」「お年寄りのがんの進行スピードは遅い」などといわれることがありますが、これは誤りです。

 がんの進行スピードは、がんができた場所や種類によって違います。胃がんや肺がんは比較的進行が速いですが、乳がんはゆるやかだとされています。

 年齢によってがんの進行スピードが変わることはありません。一方で、がんには「低分化型がん」といって、がん細胞が細胞としての機能を持たない状態でできているものと「高分化型がん」というがん細胞がある程度細胞としての機能を残した状態でできているものがあります。

 がんの進行速度が速いのは「低分化型がん」であり、これはお年寄りよりも若い人のほうができやすい傾向があります。

 また細胞周期が短いので化学療法によく反応すると言われています。

 繰り返しになりますが、年齢によってがんの進行スピードは変わるわけではありません。

 何歳であっても早期発見、早期治療が望ましいのです。

OVO [オーヴォ] 2016年11月13日

大腸癌の転移促進物質を発見
阪大、癌細胞の代謝物質オンコメタボライトD-2HG
 大阪大学は11月8日、がん細胞で産生されるオンコメタボライトD-2HGが大腸がんの転移を促進することを発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科消化器外科のヒュー・コルビン大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」に公開された。

 近年のがんの研究では、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常と関連して、がん細胞の代謝が、がんの形成や進行に影響を及ぼすことが明らかになってきた。

 脳腫瘍や白血病の細胞では、エネルギー代謝に関与するイソクエン酸脱水酵素(IDH)の遺伝子が変異し、2-ヒドロキシ・グルタール酸(2HG)が大量に蓄積される。2HGは、細胞をがんへと導く「造腫瘍性代謝物(オンコメタボライト)」として知られている。欧米では、IDHの酵素活性を標的として、オンコメタボライトの蓄積を防ぐことにより、がんの進行を抑える治療法がいくつか関発され、一部は臨床試験が行われている。一方で、腎臓がん(腎細胞がん)では、IDHの遺伝子変異の頻度が低いようながん細胞にも、このオンコメタボライトが微量ながら存在していることが報告されている。

 大腸がんについても、細胞内のさまざまな代謝産物の濃度に異常がみられることがわかっていたが、代謝産物の濃度変化が単に病気の結果として表れているのか、それがさらに病気の進行を促進する役割をもつのかについては明らかではなかった。

 研究グループは今回、毎年世界で70万人が亡くなると言われている大腸がんについて、2HGの役割を調べた。その結果、大腸がんの細胞にオンコメタボライトである2HGが蓄積していることがわかった。また、この蓄積した2HG(D/L異性体)のうち、D型の2HG(D-2HG)は、エピゲノム(遺伝子の発現制御)の変化を誘導して、上皮‐間葉転換(EMT)によって周りの細胞に浸潤し、血流に入り、離れた組織へのがん転移を引き起こすことを見出したとしている。

 さらに、臨床検体から得られたがん細胞を用いて、IDHの変異のない場合でもD-2HGの濃度が通常の細胞と比べて高いこと、D-2HGのレベルが高いほどがんのステージが高く遠隔転移している確率が高いことを示した。

 これらの研究結果から、今後は遺伝子の変異に加え、がんの代謝メカニズムにも焦点を当てることにより、がん転移の新しい診断法や治療法の開発が期待されると、研究グループは述べている。

m3.com 2016年11月14日

傷跡を自然にする「医療補助タトゥ」で患者満足度が向上
頭頸部腫瘍の手術を受けた患者で
 がん手術でひどい傷跡が残ってしまった患者でも、医療補助(パラメディカル)タトゥで傷跡を隠し自然な外観に近づけることで、患者の満足度が向上する可能性が、オランダの研究者により報告された。

 頭頸部の外科手術後に、傷跡に医療補助タトゥを施した患者56人を対象に調査したところ、患者の多くが施術後に外観への満足度が向上したという。

 研究共著者の1人、マーストリヒト大学(オランダ)耳鼻咽喉・頭頸部外科のRick van de Langenberg氏は、「これまで医療補助タトゥに対する患者の評価は明らかにされていなかったが、今回の研究で、患者は施術後に傷跡の外観による心理的なストレスが減り、悩みも減ることがわかった」と述べている。

 米国顔面形成外科学会(AAFPRS)の次期会長であるFred Fedok氏によると、医療補助タトゥは、米国では既に数十年にわたって行われており、「この技術は、皮膚に色素を入れて傷跡を自然にみせることのできる部位であれば、どこにでも用いられている。気になる部位の色が薄すぎれば濃くするなど、多くの場合は、皮膚の正常な色素に真似るように色をつける」と、同氏は述べている。

 また、皮膚科専門医のJessie Cheung氏(米イリノイ州ウィローブルック)は、医療補助タトゥは乳がん手術後の女性患者で最もよく行われており、乳房全摘後や乳房再建術の際に、乳輪周辺の皮膚の色に対する違和感を改善できるとしている。

 今回の研究では、頭頸部腫瘍への外科手術を受けた患者に着目し、2007〜2015年にアムステルダムの病院で医療補助タトゥの施術を受けた56人の患者を対象に調査を行った。患者の平均年齢は56.6歳で、75%が女性だった。

 施術例のなかには、手術により色が失われた下唇に赤色をつけたケースや、頸部に残った長い傷跡の赤みを隠すためにタトゥを施したケースなどがみられた。

 対象患者に、施術前後の外観に対する満足度を0〜10点で評価してもらったところ、平均スコアは施術前の3.8から施術後には7.8まで向上した。Langenberg氏によると、施術後には患者の全般的な満足度やQOLも向上したという。

 医療補助タトゥの適応となる患者について、Cheung氏は、皮膚に炎症がない限りはどのような変色も施術の対象になると説明している。費用については、再建術の一部である場合には保険適用になるという。一時的な赤みや痂皮(かひ)の形成、感染症などの副作用が考えられるが、「こうした合併症を回避するための傷跡のケアについて、患者は説明を受けるはずだ」と同氏は述べている。

 一方で、AAFPRSのFedok氏によると、ほとんどの患者は医療補助タトゥの存在を知らず、皮膚科医や形成外科医もその多くはタトゥ施術の知識をもちあわせていないという。タトゥ施術には、特別な訓練と経験が必要とされるが、同氏の場合は、傷跡や乳頭再建の経験豊富なタトゥ施術師と協力していると述べている。

 皮膚科医のTerry Cronin氏(フロリダ州メルボルン)も、「皮膚科医や形成外科医の多くは、パーマネントメイクアップやパラメディカルタトゥを専門とする美容アーティストと連携している」と述べている。

 この研究は、「JAMA Facial Plastic Surgery」オンライン版に9月22日掲載された。

m3.com 2016年11月16日

1日1箱の喫煙で肺に年間150個の遺伝子変異
5,000例以上を分析
 喫煙は肺やその他の臓器の著しい遺伝子損傷に関連することが、米ロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ)のLudmil Alexandrov氏らの研究でわかり、論文が「Science」11月4日号に掲載された。

 同氏らの研究グループは、喫煙者と非喫煙者のがん5,000例以上を分析した。がんは細胞のDNAの突然変異により生じ、タバコの煙にはがんを引き起こすことがわかっている70種類以上の化学物質が含まれる。喫煙とがんの関連を示す疫学的エビデンスは多く存在するが、今回の研究では、喫煙によるDNAの分子の変化を観察し、定量化したという。

 その結果、1日1箱のタバコを吸う人では、肺に毎年平均150個の余剰な突然変異が起きることが判明した。これにより喫煙者の肺がん発症リスクが高い理由の説明がつく。身体の他の部分の腫瘍にも、喫煙に関連する突然変異がみられた。たとえば、1日1箱の喫煙の場合、喉頭部の細胞では年間平均97個、咽頭では39個、口腔では23個、膀胱では18個、肝臓では6個の突然変異が起こる。

 Alexandrov氏は、「今回の研究は、喫煙ががんを引き起こす方法について新しい洞察をもたらすものだ。われわれの分析は、喫煙が複数の別個のメカニズムにより、がんにつながる突然変異を引き起こすことを示した。タバコの煙は、直接曝露される臓器のDNAを損傷するだけでなく、直接的・間接的に曝露される臓器で細胞の突然変異の速度を早める」と述べている。

 米国疾病管理予防センター(CDC)によれば、世界ではタバコが原因で年間600万人以上が死亡している。以前の研究では、喫煙と少なくとも17種類のがんが関連することが示されている。

m3.com 2016年11月17日

肝臓がんにも「放射線治療」 局所制御率9割以上
 肝臓がんには手術やラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓療法といった根治的治療がある。肝臓の領域では出遅れていた放射線治療も技術が進歩し、大きながんを消滅・縮小させるなど、治療の選択肢となってきた。

 通常がんの3大治療といえば手術、抗がん剤治療、放射線治療だ。しかし肝臓がんの場合、手術、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓療法となっていて、放射線治療が含まれていない。

 筑波大学病院陽子線治療センター部長の櫻井英幸医師が解説する。

「肝臓は放射線感受性が高い。つまりダメージも受けやすい臓器です。治療に必要な線量を照射すると正常な組織が傷ついてしまうため、肝臓がんでは放射線は根治的な治療でなく、症状緩和の場面などで使われてきました」

 肝臓内のがんは呼吸とともに動くため、ピンポイントで照射することは難しかった。しかし近年、大幅に改善された。

「エックス線治療機器の進歩は目覚ましいものがあります。息を吐き終えたタイミングを待ち伏せして照射する技術や、ターゲットを追尾して照射することも可能になりました。またエックス線を集めてピンポイントで照射する定位照射の技術によって、必要な線量を無駄なく腫瘍にあてることができるようになりました」(櫻井医師)

 現在は、5センチまでの比較的小型で、少数の肝細胞がんならば保険適用となる。通常、治療は4〜5回通院し、照射を行う。放射線治療後にがんが再発しない割合(局所制御率)は9割を超える。ラジオ波焼灼術が行えない、血管や肺に近い病変が、よい適応とされている。

「定位照射のメリットは無痛なことです。高齢者や糖尿病などの持病がある人は、体の負担が少ない放射線治療も選択肢に組み入れて考えてほしい」(同)

 定位照射が大型や多数個のがんに適さない理由はエックス線の特性にある。エックス線は病変に照射された後、通過していく。少数、小型ならば影響も少ないが、照射範囲が大きくなれば正常組織に抜けていく放射線も多くなる。その弱点を克服するのが陽子線や重粒子線だ。

「陽子線・重粒子線はターゲットの病巣に最も強い線量があたり、そこで止まります。病巣奥の線量はゼロ。がん周囲の正常組織の被曝が避けられるのです。定位照射ではエックス線の通過を考慮し、照射線量を抑えますが、陽子線・重粒子線では線量を十分にかけることができます」(同)

 陽子線・重粒子線でもがんの個数は三つまでと制限がある。しかし、大きさは基本的に無制限。肝臓の片側いっぱいに広がっているような場合にも対応可能だ。

 東京都在住の井上俊之さん(仮名・60歳)は2年前の健康診断で肝機能の数値の悪化を指摘され、精査したところ、画像には肝臓の右側を占拠した巨大な腫瘍が映し出された。診断は肝細胞がん。その一部は門脈に浸み込み、肝臓外にも広がっていた。

 幸い肝機能は良好だったため、手術で肝臓の4分の3を切除し、術後仕事に復帰できた。しかし、5カ月後、残された肝臓にがんが再発した。再切除は難しく、肝動脈塞栓療法を行ったが、4カ月後にまた再発。血管内にもがんは浸潤しており、塞栓療法の実施も難しい状況だった。井上さんは筑波大学病院陽子線治療センターの扉をたたいた。

「手術で切除した断端近くに腫瘍があり、肝臓内部に向かって血管内を8センチにわたって浸食していました。ただ幸いにも残肝が再生し、肝機能も残っていました」(同)

 井上さんは20回同センターに通院し、合計66グレイの陽子線治療を行った。その結果がんは消滅。治療中、治療後は副作用もなく、肝機能も安定している。

「まだ再発の心配もありますが、標準治療が困難と言われてから1年半、充実した毎日を過ごされています。患者さんには、とにかく選択肢を多く持ってほしい。セカンドオピニオンで来ていただくことも一つの方法だと思います」(同)

dot.ドット 2016年11月21日

細胞癌化させる新遺伝子発見
九州大ら、「GRWD1」がp53タンパク質量を減少させ癌化促進
 九州大学は11月18日、細胞をがん化させる新しいがん遺伝子「GRWD1」を世界で初めて発見したと発表した。この研究は、同大学薬学研究院医薬細胞生化学分野の藤田雅俊教授、同大学生体防御医学研究所の中山敬一教授、国立がん研究センター研究所の清野透分野長らの研究グループによるもの。研究成果は、分子生物学会誌「EMBO Reports」に11月17日付けでオンライン掲載されている。

 がん細胞においては、p53と呼ばれる細胞増殖の“ブレーキ”役であるタンパク質の異常が頻繁に起こっていることが知られている。しかし一方で、p53に異常のないがん患者も多く存在している。

 正常に増えている細胞中では、p53タンパク質はMDM2というタンパク質の働きで分解されている。細胞が異常な増殖刺激やDNAダメージなどのストレスに晒された場合、RPL11というタンパク質がMDM2に結合しその機能を抑える。その結果、p53量が増加し、細胞の増殖を止めて異常を修復したり、修復しきれない場合は細胞を自殺させ、がん化を防いでいる。

 研究グループは今回、GRWD1がRPL11というタンパク質との結合を介してp53タンパク質量を減少させ、細胞のがん化を促進させることを初めて明らかにした。さらに、がん患者のデータベースの解析から、いくつかのがんの種類においては、GRWD1タンパク質量の増加はがんの悪性度を上昇させ、予後不良の予測因子となり得ることを発見したとしている。

 今後の研究の発展によって、GRWD1発現検査によるがん治療方針のより適切な決定や、GRWD1を標的とする新たな抗がん剤開発につながることが期待されると、研究グループは述べている。

m3.com 2016年11月24日

癌医療にAI活用へ
国がん、5年後に実用化を目標
 国立がん研究センター(国がん)、人工知能(AI)技術開発のベンチャーであるプリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)、産業技術総合研究所は29日、AI技術を活用したがん医療システムの開発プロジェクトを始めると発表した。国がんが保有する膨大な臨床データやマルチオミックスデータなどを活用してメディカルAI技術を開発し、がんの疾患メカニズムの解明や診断、治療、創薬などに応用していく。5年後を目標に実用化を目指す。

 日本で最先端のがん研究を行っている国がんと、国内のAI分野をリードするPFN、産総研が連携して、革新的ながん医療システムの開発に取り組む。まず国がんが蓄積してきた臨床、疫学データ、ゲノム・エピゲノム情報、画像情報、血液検体や細胞などを統合したデータベースを構築する。PFNと産総研・人工知能研究センターの深層学習(ディープラーニング)・機械学習技術を用いてデータを解析し、がんの新たな診断システム、創薬設計システム、個別化医療実現支援システムなどを開発する。

 プロジェクトは、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」研究として実施される。最大で3億8000万円の助成を受ける見込み。CREST事業で求められている2年4カ月後までにPOC(概念実証)を取得し、5年後をめどに実用化を目指す。

 国がんの間野博行研究所長は記者会見で、AI技術を医療分野に応用する研究が日本は海外より遅れていることを指摘したうえで、「ベスト・オブ・ベストの方々が集まった。日本の持つ叡智を結集して世界に発信していきたい」と意欲を語った。また、日本の優れている点として品質の高い臨床データ、画像データなどが豊富なことを挙げ、そのデータをディープラーニングさせることで精度の高い医療システムを構築できるとの期待を示した。

m3.com 2016年11月30日

ロボット支援腎部分切除術で優れた周術期転帰
腹腔鏡・開腹手術への移行、合併症、断端陽性のリスクが低い
 腹腔鏡下腎部分切除術に比較して、ロボット支援腎部分切除術は優れた周術期転帰が得られるとのメタ解析結果が、「The Journal of Urology」11月号に掲載された。

 シンガポール、タントクセン病院のJeffrey J. Leow氏らは、腎部分切除におけるロボット支援手術と腹腔鏡下手術の転帰を比較する文献レビューを実施。25件の研究から患者4,919人のデータを対象とした(2,681人がロボット支援手術、2,238人が腹腔鏡下手術を受けていた)。

 その結果、ロボット支援手術を受けた患者は、腫瘍が大きく、R.E.N.A.L. nephrometryスコア(RNS)の平均値が高い傾向がみられた。またロボット支援手術を受けた患者は、腹腔鏡下手術を受けた患者に比べて、腹腔鏡下手術または開腹手術への移行(リスク比[RR]0.36)、合併症および主要合併症(それぞれRR 0.84、0.71)、断端陽性(RR 0.53)のリスクが低く、温虚血時間が4.3分短かった。手術時間、推定出血量、術後の推定糸球体濾過量の変化は、両群で同程度だった。

m3.com 2016年12月7日

乳房再建は高齢女性にも恩恵をもたらす
若年患者に比べて合併症リスクは上昇せず、便益も同程度
 乳房切除術を受けた高齢の乳がん患者は、若い女性と同様な乳房再建によるベネフィットを得られることが、新しい研究で示された。女性の年齢は術後合併症のリスクに影響を及ぼさなかったことから、研究グループは手術の適応を年齢だけで判断すべきではないとしている。

 今回の研究は、米国およびカナダで乳房切除術後に乳房再建を受けた女性患者1,500人以上を対象としたもの。対象患者のうち45歳未満は494人、45〜60歳は803人、60歳超の高齢女性は234人であった。

 その結果、再建した乳房への満足度は、手術前の乳房に対する満足度と比べて45歳未満群、45〜60歳群では同じだったが、60歳超群ではやや低い程度であった。

 また、患者自身の組織を用いた場合に比べて、インプラントによる乳房再建を受けたほうが術後合併症の発症率は低かった。合併症の発症率は、インプラントを使用した場合は45歳未満群では22%、45〜60歳群では27%、60歳超群では29%であり、自家組織による再建の場合はそれぞれ33%、29%、31%であった。

 この知見は、「Journal of the American College of Surgeons」オンライン版に10月26日掲載された。

 著者の1人である米ミシガン大学ヘルスシステム形成外科教授のEdwin Wilkins氏は、「外科医も患者も、高齢女性に乳房再建を行うのはよい選択肢ではないという先入観を抱いているかもしれないが、今回の知見から、高齢の女性でも乳房再建によってQOLや身体イメージが向上する可能性があり、また、加齢は有意な合併症のリスク因子ではないことが示された」と述べている。

 同氏らによると、米国では2016年に乳がんと診断された患者は25万人近くに上り、このうち約4割を62歳以上が占めると予測されている。乳がん治療のために乳房切除術を受ける女性はここ10年間で増加しているが、乳房再建を受けるのは若年の女性よりも高齢者で少ないという。

m3.com 2016年12月8日

卵巣温存は子宮頸癌の予後に影響しない
転移の危険因子はステージIIB、頸部間質浸潤、リンパ節転移
 早期の子宮頸部腺癌患者で、卵巣温存は生存率に影響を及ぼさないとの研究報告が、「American Journal of Obstetrics & Gynecology」10月号に掲載された。

 中国、華中科技大学のJing Chen氏らは、子宮頸部腺癌の女性194人を対象に後ろ向き研究を実施し、卵巣温存の予後への影響を検討した。159人で追跡を完了し、卵巣温存した33人と両側卵管卵巣摘出術を受けた126人を比較した。

 その結果、両側卵管卵巣摘出術群と卵巣温存群で、生存期間に有意差は認められなかった(無病生存期間P=0.423、全生存期間P=0.330)。無病生存期間の悪化と有意に関連する独立した予後因子は、腫瘍サイズ(4 cm以上)、深い頸部間質浸潤、リンパ節転移であり、リンパ節転移は全生存期間にも相関した。

 両側卵管卵巣摘出術を受けた153人において、卵巣転移と深い頸部間質湿潤、リンパ節転移、子宮傍組織浸潤との関係に有意差が認められた。文献のメタ解析では、臨床病期がI〜IIAに対してIIBであること、深い頸部間質浸潤、リンパ節転移、子宮体部浸潤、子宮傍組織浸潤が、卵巣転移に相関していた。

m3.com 2016年12月8日

がん転移と脂肪摂取の関連性、マウス実験で確認 研究
 がんの転移を阻止する方法を、マウス実験で発見した可能性があるとの研究論文が7日、発表された。論文を発表したスペインの研究チームによると、がんの転移は脂肪の摂取に関連している可能性があるという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された論文によると、スペイン・バルセロナ生物医学研究所(IRB)などの研究チームは、がんを臓器から臓器へと拡散させるタイプの腫瘍(しゅよう)細胞を発見したという。転移として知られるこのプロセスは、がんの致死率を大きく高める原因となる。

 また研究チームは、この腫瘍細胞が「CD36」と呼ばれる受容体を持つことを明らかにした。CD36受容体については、脂肪の摂取を調節することが知られている。

 人の腫瘍を移植したマウスを用いた実験では、CD36受容体を阻害する抗体を投与することで、転移が「有意に減少した」と研究チームは述べている。この方法では、人の口腔(こうくう)がん、皮膚がん、乳がんなどに効果がみられた。

 研究チームは、一部のマウスで転移細胞が完全に消滅したことを明らかにしながら、「このようなことは、日常的に起こるものではない」と力説した。

 さらに、CD36受容体が豊富な細胞を持つマウスに高脂肪の餌を与える追加実験では、遺伝子的に近いマウスに普通の餌を与えた場合に比べて、転移の発症数が増え、転移の規模も大きくなったと、研究チームは説明している。

 転移は、がん細胞が腫瘍から離れ、血液やリンパ系を通じて移動し、体の別の部位に新たなコロニーを形成することで発生する。研究チームによると、がん死の約90%は、転移が原因で起きるという。

 がん細胞のすべてが転移をするわけではない。転移を起こすがん細胞を特定して殺傷できるようにすることが、がん研究の最優先事項の一つになっている。

 今回の最新の研究結果により、CD36は抗がん剤の有力な標的候補となると研究チームは指摘した。

■警告徴候

 研究を率いたIRBのサルバドール・アスナール・ベニター(Salvador Aznar Benitah)氏は、AFPの取材に「われわれの研究が将来的に、腫瘍が転移を起こす理由と仕組みに関する理解の向上に寄与するだけでなく、転移細胞を攻撃する方法を考案するための新たな一歩となることを期待している」と話す。

 ベニター氏は、取材に応じた電子メールで「現在は、人に投与するための新たな遮断抗体の開発を進めている。この遮断抗体については、患者への臨床試験を比較的短期間(4〜10年)で実現したいと考えている」と説明した。

 その上で、がんの転移における脂肪と食事の役割を検証するためには、さらに研究を重ねる必要があると述べ、「だが、今回の結果が警告徴候であることは確かだ。食事で摂取する脂肪酸に対して、転移細胞が極めて高い感受性を持つことを、今回の結果が強く示している」と続けた。

 がん患者は通常、治療による体への負担に対処するため、多くのカロリーを必要とする。そのような理由からも、今回の研究結果には慎重な態度で臨む必要があるとの声も一方では上がっている。

AFPBB News 2016年12月8日

悪性脳腫瘍の新治療法を開発
名古屋市大、ターゲットは「長鎖非翻訳RNA」
 名古屋市立大学は12月1日、タンパク質に翻訳されないRNAのうち“長鎖非翻訳RNA”と呼ばれるRNAをターゲットとした治療法が、悪性脳腫瘍に有効である可能性を培養細胞やマウスを用いた実験から明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科遺伝子制御学分野の近藤豊教授と勝島啓佑助教らの研究グループが、名古屋大学、東京大学、ナノ医療イノベーションセンター、国立がん研究センター研究所らとの共同で行ったもの。同研究成果は、英科学雑誌「Nature Communications」(電子版)に12月6日付で掲載されている。

 がんは “がん幹細胞”とこれに由来する多様ながん細胞から成るが、がん幹細胞の作り出すこの組織多様性は、がん治療を困難にしている一因となっており、がん幹細胞を消滅させる方法が必要とされていた。がん幹細胞が自分自身を維持する過程には、“エピゲノム” と呼ばれるシステムによる遺伝子のON/OFFの調節が重要な役割を果たしている。エピゲノムによるON/OFF調節にはタンパク質に翻訳されないRNAである“長鎖非翻訳RNA”が深く関与していることがわかってきていた。

 脳腫瘍のひとつであるグリオブラストーマ(膠芽腫)は、脳腫瘍の中で最も高頻度に発生するきわめて悪性度の高い腫瘍。現在、この腫瘍に対する有効な治療法はなく、新しい治療法の開発が求められている。今回の研究では、ヒト脳腫瘍からがん幹細胞を作製し、がん幹細胞の維持にかかわる長鎖非翻訳RNAの役割について詳細に解析。その結果、長鎖非翻訳RNAのひとつである「TUG1」により、がん幹細胞が維持されていることを世界で初めて明らかにしたという。

 次に、“抗TUG1として働く薬剤(TUG1の機能を効率的に抑えることができる薬剤)”を作製し、がん幹細胞を移植したマウスを用いて、がん治療薬としての有効性について解析した。有効ながん治療薬を開発するためには、薬剤をがん部のみに送り届ける必要がある。そこで同研究では、ナノ医療イノベーションセンター片岡一則センター長、東京大学宮田完二郎准教授の協力のもと、薬剤をがん部のみに届けることができる“運び屋”と抗TUG1として働く薬剤を組み合わせた治療薬(TUG1-DDS)を作製。このTUG1-DDSを用いることにより、抗TUG1として働く薬剤をがん部のみに送達することに成功。さらにTUG1-DDSによる治療が有効な抗腫瘍効果を示すことを確認したという。

 この研究において開発したTUG1-DDSは、膠芽腫に対する有望な治療薬になることが期待される。研究グループは、今後、さらに同治療法について副作用等を含めた解析を進め、安全性に関する試験を行い、TUG1-DDSの実用化を目指すとしている。

m3.com 2016年12月9日

「マジックマッシュルーム」でがん患者の絶望感を緩和
抑うつや不安が数カ月にわたり低減
 がん患者はしばしば、生きていても意味がないという絶望感(existential distress)に襲われることがある。新たな2件の小規模研究で、幻覚作用のある「マジックマッシュルーム」に含まれる成分シロシビンにより、このような感情が劇的に改善されることが示された。研究に参加した患者の1人は、シロシビンを服用すると「神の愛に包まれた」と感じ、その後も恐怖や不安は消えたままだったと、記者会見で話している。

 しかし、シロシビンは米国麻薬取締局(DEA)により最も危険な“スケジュール1”に指定される違法薬物であるため、医師が使用することはできない。「Journal of Psychopharmacology」12月号に掲載された両研究の付随論説を執筆した米コロンビア大学医療センター(ニューヨーク市)のCraig Blinderman氏は、「大規模研究で今回の結果が裏づけられれば、シロシビンの分類を医師が使用できる“スケジュール2”に変更することを検討すべきである」と述べている。

 米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン医療センターのStephen Ross 氏が率いた第一の研究では、患者29人を無作為に2群に割りつけ、シロシビンまたはビタミン剤を1回投与した。シロシビンを投与した患者の80%に急速な苦痛の緩和が認められ、不安および抑うつの検査スコアによれば、その効果は6カ月持続した。

 第二の研究では、米ジョンズ・ホプキンス医科大学(ボルチモア)の研究グループが、生命に関わるがんに罹患する成人51人に低用量のシロシビンを投与し、5週間後にさらに高用量を投与した。その結果、ほとんどの患者の不安や抑うつが軽減し、6カ月効果が続いたと、研究を率いた同大学教授のRoland Griffiths氏は述べている。いずれの研究も訓練を受けた監視員による管理の下で実施された。

 付随論説の共著者で米ニューヨークプレスビテリアン病院の精神科医であるDaniel Shalev氏は、違法薬物の研究は難しいが、その有用性が示されつつあると指摘している。NYUの研究グループは現在、大規模な第3相試験の実施についてFDAの承認を待っている段階だという。ジョンズ・ホプキンス大学の研究に参加した別の被験者は、記者会見で「シロシビンを服用すると、暗い雲が晴れたようだった。家族や子どもたちと再度つながることができ、生きる喜びを取り戻した」と語っている。

m3.com 2016年12月13日

被ばく同量でも“小分け”なら、がん発生率低下 量研機構が解明
自然に発生したがんと被ばくに起因するがんの識別の原理
 量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所の柿沼志津子部長らは、放射線の被ばくの総量が同じ場合、短時間で一度に被ばくするより、少しずつ長期間の被ばくの方が被ばくを原因とするがんの発生確率が低くなることを明らかにした。被ばくを原因とするがんと自然発生するがんを遺伝子解析で区別できる特殊なマウスを使い、ガンマ線照射後のがんの発生率を調べ解明につなげた。

 今後、小腸や腎臓など複数の臓器のがんについてマウスやラットで実験することにしている。データを蓄積し、放射線被ばくによる発がんへの影響の解明が期待される。

 柿沼部長らは、細胞増殖に関わる遺伝子「Ptch(ピッチ)1」に着目した。二つあるピッチ1のうち片方が異常になった「ピッチ1遺伝子ヘテロ欠損マウス」は小脳がんを発症しやすい。

 自然発生するがんではピッチ1が二つとも異常、放射線被ばくによるがんでは正常なピッチ1の欠損が確認されている。マウスの放射線照射後にがん組織を採取。ピッチ1の状態を遺伝子解析し、がんの原因を調べた。

 このマウスの生後直後にガンマ線を照射し、生後500日までに発生したがんの発生率を調べた。総量500ミリシーベルト相当のガンマ線を1分程度照射した場合、マウスの66%ががんを発症。そのうち、自然発生のがんが32%、被ばくによるがんが34%となった。

 一方、最終的な被ばく量が同じになるように低線量のガンマ線を4日間かけて照射した場合、がんの発生率が55%で被ばくによる発がん率は16%になることが分かった。

 成果は米科学誌ラディエーション・リサーチ電子版に掲載された。

日刊工業新聞 2016年12月15日

手術時に癌細胞をpHセンサーで識別【米国癌学会】
感受性88%、特異性90%
 癌手術における正常組織の過剰な切除や癌組織の取り残しに伴う再手術は患者にとって極めて大きな負担となる。このたび新たに開発された癌手術の際に、正常組織と腫瘍組織を高感度に識別するための光ファイバーpHセンサーの識別能を検討した結果が明らかになった。米国癌学会(AACR)が11月30日のCancer Research誌掲載論文を紹介した。

 今回紹介された新しい光学ファイバープローブは、癌細胞がしばしば正常細胞より酸性を呈することを利用してデザインされたもので、術中に組織のpHを測定して癌細胞と正常細胞を識別を識別する仕組み。プローブを組織に当てると、その部位のpHに応じてプローブ尖端のpHインディケーターが発する光の色が変わり、その色から励起した蛍光をプローブの他端にある小型スペクトルメーターで検出する。組織が発する自己蛍光による干渉を防ぐため、pHの測定はプローブを組織から離した後に行う。測定シグナルは、プローブを組織から離した後、約10分間は安定を保つ。

 乳房切除術4件(再発性乳癌の腋窩郭清1件、転移性黒色腫3件)に新プローブを試用し、結果を病理学的所見と対比させたところ、プローブによる腫瘍と正常組織識別の感受性は88%、特異性は90%であった。

 研究グループは、プローブ試用に供したサンプル数が少ないこと、プローブによる検査の特異度を高める必要があることが、今回の研究の課題と指摘。一方、「この測定方式は、ほかの医療技術に比べて費用効果が高いので、いろいろな手術で広く使われることが見込まれる。現在はデータベースを増やすために切除組織サンプルを多数集めており、近い将来には臨床研究も視野に入れている」とコメント。企業の協力を得て、このプローブの実用化を強く推進していく見通しを示している。

m3.com 2016年12月19日

薬剤の癌細胞選択的運搬技術を開発
岡山大、新規制御性T細胞「HOZOT」により
 岡山大学は12月16日、2006年に株式会社林原が開発した新規の制御性T細胞「HOZOT(ホゾティ)」を用いて、腫瘍融解ウイルス製剤をがん細胞へ選択的に運搬する技術の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)消化器外科学分野の藤原俊義教授、同大学病院新医療研究開発センターの田澤大准教授、林原の中村修治研究員らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」オンライン版に11月30日付けで掲載されている。

 全身に広がったがん細胞を効率的に治療するためには、がん細胞へ治療薬を選択的にデリバリーする技術の開発が必要不可欠。そのため、がん細胞への選択的なデリバリー技術の開発は、進行したがん患者の生存率向上を目指すうえで重要な課題である。

 現在、腫瘍融解ウイルスを用いたウイルス療法の臨床開発が進められているが、ウイルスのがん細胞への選択的なデリバリー技術がないために、全身に広がった転移巣にウイルスを運搬することは困難だった。HOZOT細胞は、ヒト臍帯血から樹立された新規の制御性T細胞で、がん細胞へ選択的に侵入する機能を有する。

 今回、研究グループは、HOZOT細胞のがん細胞への選択的な細胞内侵入効果(Cell-in-Cell activity)を利用して、腫瘍融解ウイルスを搭載したHOZOT細胞を作製。がん細胞へ選択的に腫瘍融解ウイルスをデリバリーする技術を開発。腫瘍融解ウイルスを搭載したHOZOT細胞は、がん細胞への選択的なデリバリー機能によってがん細胞内に侵入してウイルスを拡散させるため、腹腔内に広がったたくさんのがん細胞を死滅させることを動物モデルで証明したという。

 今回の研究成果により、がん細胞へ選択的な細胞内侵入効果を有するHOZOT細胞をウイルスのキャリア細胞として用いることで、腫瘍融解ウイルスを用いたウイルス療法が、将来的に腹膜播種転移を有するがん患者にも適応できる可能性が出てきた。ヒトへの投与が可能となれば、進行したがん患者の生存率を改善する可能性も期待できる。

 今後、腫瘍融解ウイルスを搭載したHOZOT細胞の臨床開発が進めば、腹膜播種転移に対する新たな治療法の開発も期待される、と研究グループは述べている。

m3.com 2016年12月21日

胃癌の発育に神経ストレスが関連
東大、癌細胞が「神経成長因子」を産生
 東京大学は12月16日、胃がんの発育と神経ストレスの密接な関連と、そのメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学医学部附属病院消化器内科の早河翼助教、小池和彦教授らが、米国コロンビア大学などと共同で行ったもの。同研究成果は、米学術誌「Cancer Cell」オンライン版に同日付けで発表されている。

 ヘリコバクターピロリ菌感染者の減少により、胃がん患者数は減少傾向にあるものの、欧米諸国に比べて日本は依然として圧倒的多数の胃がん症例を有している。進行胃がんは抗がん剤や放射線の治療が効かないことが多く、5年生存率は20%に満たないのが現状。同じ消化管がんでも多くの新しい薬剤が開発され効果を発揮している大腸がんと対照的に、胃がんにはこうした薬剤の奏功率はそれほど高くない。そのため、胃がんには別の治療標的を持ったアプローチが必要と考えられている。

 胃がん細胞のまわりに存在する腫瘍微小環境が、がん細胞の増殖や生存を助けていることが、薬剤が胃がんに効きにくい一因と考えられている。腫瘍微小環境には免疫細胞のみならず、線維芽細胞や血管内皮細胞など多数の細胞が存在するが、研究グループは神経細胞に着目。研究を重ね、これまでに神経シグナルが胃がんの発症に重要であることを明らかにしていたが、その詳細なメカニズムはわかっておらず、またこれらの手法は身体への負担や危険性が大きいことから、治療応用の実現には至っていなかった。

 今回、同研究グループは、マウスの胃がん組織を詳しく観察し、胃がんが進行する過程で、がん細胞が「神経成長因子」と呼ばれるホルモンを産生し、これに反応した神経細胞ががん組織に集まり、強いストレス刺激を受けることで胃がんの成長が加速していくことを世界で初めて明らかにした。また、この「神経成長因子」を抑える薬や、神経ストレスを放出する細胞を除去することで、胃がんの進行を抑えることができたという。

 神経ストレスが胃がんに与える影響はこれまで詳しくわかっていなかったが、今回神経細胞とがん細胞が相互作用を持ちながらがんを形成していく過程が詳細に明らかになった。この相互作用を抑えることが、新しい胃がん治療として有効な可能性がある。

 がん細胞の増殖を直接抑える従来の抗がん剤に加えて、神経細胞との相互作用を抑える薬剤により、胃がん治療の効果を高めることができると考えられる。神経成長因子を標的にした薬剤はすでに臨床試験や実際の臨床でさまざまな疾患に使用されていることから、胃がんに対しても早期の臨床応用が期待される、と同研究グループは述べている。

m3.com 2016年12月21日

がんに対するワクチン療法の有効性がマウスで確認
 米ミシガン大学は27日(現地時間)、「ナノディスク」と呼ばれる小さな構造でがん細胞に特有の抗原を免疫システムに導入し、がん細胞に対する免疫を獲得する治療法が、マウスによる実験で有効であったと発表した。腫瘍細胞だけを免疫システムによって排除させることで、より個人の状態に則した治療を提供でき、副作用の減少などが期待される。

 がん細胞(腫瘍細胞)はもともと通常の細胞であったものが外的な刺激などで変異し、増殖したもので、通常では日々免疫系によって増殖を抑えられたり、排除されている。いわゆる「がん(悪性腫瘍)」という疾患は、主にその制御が何らかの原因で追いつかなくなった場合をさしている。

 がん細胞の増殖を抑える免疫療法には、インターフェロン製剤や免疫賦活剤などがあるが、作用する範囲が広いため、正常細胞にまで影響を及ぼし、さまざまな副作用が存在する。そのため、分子標的薬のようながん細胞のみを特異的に攻撃する治療法が長く求められている。

 このがん治療ワクチンでは、腫瘍細胞に特有の変異である腫瘍新生抗原(病原体)を仕込んだナノディスクを使う。ナノディスクは、大きさが10nm程度の高密度合成リポタンパク質で構成されている。極めて小さいため、ワクチン成分を正しい器官の正しい細胞に効率的に送り届けられる。そして、これら特定の新生抗原を認識するT細胞を生成することで、この技術はがん変異をターゲット化し、がん細胞を除去、腫瘍の成長を抑制する。

 一般的な予防ワクチンと違い、がん治療ワクチンは、ワクチンナノディスクが免疫システムの引き金を引き、既存のがん細胞と戦わせることで、患者用にパーソナライズされた形で、すでに発生したがん細胞を殺すことができる。

 その結果、メラノーマ(悪性黒色腫)や、大腸がんを再現したマウスに対し、マウスのもつ血中のT細胞の27%を腫瘍に対して感作させる、つまり腫瘍に対して反応させることができた。さらに、10日以内にがん細胞を消失させることに成功した。

 驚くべきことに、腫瘍細胞が消失した70日後に同様の腫瘍細胞を注入しても定着しないことも報告されており、これはちょうど麻しんワクチンなどのように、腫瘍細胞に対して免疫記憶が成立するために、再発まで抑えることができるという。

 研究者は、この技術をより大規模な動物実験で実証することを期待している。

PC Watch 2016年12月28日