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2014年8月 文献タイトル
マウスiPSから別種がん幹細胞 岡山大大学院妹尾教授ら
がん攻撃の新手法開発 東北大、正常細胞と区別
特集:おしえてドクター 緑茶で認知症改善?
サルナシに肺がん抑制効果 岡山大大学院有元准教授、マウスで確認
スパコン「京」で創薬成功…東大など がん新薬候補物質
医師500人で作る「何でもランキング」 癌で手術なら京大病院がトップ 旧帝大人気、「どこでも良い」は4割弱
採血1回で13種のがん発見 負担少ない検査法開発へ 国立センター、5年計画
岩手医大にブレスト外来 がん手術と乳房再建を連携
90歳以上は半数が無治療も 五大がん、拠点病院集計

マウスiPSから別種がん幹細胞 岡山大大学院妹尾教授ら
 2012年にマウス由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、腺がんのもとになるがん幹細胞の作製に世界で初めて成功した岡山大大学院自然科学研究科の妹尾昌治教授(生物工学)らのグループは、同様にマウスのiPS細胞から悪性脂肪肉腫を形成するがん幹細胞の作製にも成功した。成果は7月、がん研究の国際科学雑誌に掲載された。

 がん幹細胞は体内でがん細胞を次々と生み、転移や再発のほか、抗がん剤や放射線治療などが効きにくくなる原因となる。がん幹細胞はがん組織にごくわずかしかなく研究は困難。iPS細胞から異なる種類のがん幹細胞を作りだした今回の成果を応用すれば、さまざまながん幹細胞の研究の進展が期待され、新たな抗がん剤の開発につながる可能性もある。

 さらに、細胞内外に物質を輸送する働きのある小胞が、がん化に関与していると従来から言われていたが、がん細胞が分泌する小胞に、iPS細胞をがん幹細胞に誘導する物質が含まれていることも発見した。

 研究グループは、マウス由来のがん細胞株を2、3日培養した液から遠心分離して抽出した小胞で4週間、iPS細胞を培養した。マウスに移植したところ、約1カ月後に悪性脂肪肉腫の発症を確認した。その後、転移も見られたという。

 妹尾教授は「今回の研究で、iPS細胞から複数の種類のがん幹細胞が作れる可能性が示された。基礎研究に必要な量のがん幹細胞を確保できれば、がん治療の進展に大きな貢献ができる」と話している。

m3.com 2014年8月4日

がん攻撃の新手法開発 東北大、正常細胞と区別
 正常な細胞との違いを見分けてがん細胞だけを攻撃する新たな手法を開発したと、東北大の加藤幸成教授(腫瘍生物学)らの研究グループが1日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に発表した。グループは「将来、副作用のない医薬品の開発が期待できる」としている。

 抗がん剤の中には、がん細胞にあるタンパク質を識別して攻撃するものがある。しかし、正常細胞にも同じタンパク質がある場合が多く、副作用を引き起こす危険性が高い。このため実用化は白血病など一部を対象にしたものにとどまっている。今回の手法は、タンパク質表面の違いを見分け、がん細胞だけを攻撃できるという。

 加藤教授によると、がんの転移を促す「ポドプラニン」というタンパク質を攻撃する特殊な抗体を作製した。

 このタンパク質は肺がんや悪性脳腫瘍、卵巣がんなど治療が難しいがんによく見られる一方、正常細胞にも存在する。チームは、タンパク質の表面に付着している糖の化合物の位置や種類、数が、がん細胞と正常細胞で異なることに着目。新たな抗体で、違いを見分けてがん細胞だけで作用させ、死滅させることに成功したという。

 加藤教授は「副作用の危険性のために研究が進んでいなかった種類のがんに対する治療の可能性が広がる」と指摘し、今後、臨床研究をしたいとしている。

m3.com 2014年8月4日

特集:おしえてドクター 緑茶で認知症改善?
 緑茶を飲むことは健康に良いとのイメージがあるが、実際はどうなのか。体内で脂肪の吸収を抑えるなどの作用は以前から指摘されていたが、最近は認知症の予防を示唆するデータも出てきた。緑茶と認知症の関連をリポートする。

◆予備的試験で効果確認−−山田浩・静岡県立大教授

 認知症は、記憶や時間、場所などを判断する能力が低くなって、社会生活を営むことが難しくなる。認知症になる要因は主に三つあり、代表的なのはアルツハイマー病によるもの。認知症患者のおよそ半分を占める。この他、脳卒中などによって生じた脳血管疾患に伴う認知症、たんぱく質の異常な構造物(レビー小体)が脳内にたまって生じるレビー小体型認知症などがある。

 治療に関しては、いまのところ認知症の症状の進行を遅らせる薬はあるものの、根本的に治す薬はない。このため、生活習慣の改善を通じた予防策が重要となる。

 ◇カテキンなどの含有成分に注目

 そうした中で緑茶に含まれるカテキンやテアニン(アミノ酸の一種)の機能性が注目されている。細胞を使った実験で脳神経細胞を保護したり、ネズミを使った実験で認知機能の低下が改善されたりする研究報告があるからだ。

 緑茶に含まれる成分の働きに注目した山田浩・静岡県立大薬学部教授(医薬品情報解析学)は伊藤園中央研究所、社会福祉法人・白十字会(東京都東村山市)と共同で緑茶が認知症の改善に効果があるかどうかの試験を一昨年に行った。

 老人ホームに入居する認知症の高齢者12人(平均年齢88歳、男性2人、女性10人)を対象に、緑茶の粉末2グラム(カテキンの総量は1日227ミリグラム)を毎日、3カ月間飲んでもらい、3カ月後に認知機能検査の点数が上がるかどうかを調べた。12人の内訳は脳血管疾患による認知症8人、アルツハイマー病3人、レビー小体型認知症1人。

 認知機能の検査は世界的に使われているMMSE(ミニメンタルステート試験)日本語版を使った。「いま季節は何ですか」「きょうは何曜日ですか」などの質問をして、点数の合計点(30点満点のスコア)で認知症の程度を知る検査法だ。

 この試験の結果、12人の平均スコアは、飲む前は15・3点だったが、3カ月後の検査では17点に上がった。特に「近時記憶」の検査では、12人のうち8人のスコアが上がった。

 この「近時記憶」は、試験者から出された「ボール」「旗」「桜」の3語を繰り返して言えるかどうかをまず答え、次の別の質問のあとに、この3語の単語を覚えているかどうかを尋ねるものだ。この検査では平均点も上がったことから、近時記憶の改善が目立ったといえる。

 ◇一般的煎茶なら1日に2〜3杯

 この試験で認知症の高齢者が飲んだ緑茶の量はどれくらいか。

 人によってお茶のいれ方に差はあるものの、一般的に食卓で煎茶を飲む場合、100ミリリットルあたり80ミリグラム前後のカテキンが含まれる。この80ミリグラムを基にすれば、1日に2〜3杯の緑茶で効果があったことになる。通常の300ミリリットル容器の緑茶飲料は、煎じた場合よりもカテキンはやや少ないため、2本程度に相当するという。

 これまでは緑茶を実際に人に飲んでもらって、認知症の症状の改善に効果があるかどうかの試験はほとんどなかっただけに、今回の試験の意義は大きい。ただ、山田浩教授によると、今回の試験では参加総数が12人と少なく、さらに緑茶を飲んだ群と飲んでいない対照群(プラセボ群)との比較がないのが課題として残った。

 そうしたことから、山田浩教授は「今回の試験は予備的な試験」と位置づけ、昨年秋から、同じ施設の認知症の高齢者30人を対象に、1年間の緑茶飲用の効果を見るための本格的な試験を始めている。結果は来年に出る予定だ。

 共同研究した提坂裕子・伊藤園中央研究所長は「これまでの研究で、緑茶が人の認知症予防に効果がある可能性が示されていたが、今回の研究はそれを支持する結果ではないか」と話す。

 いま続けている試験について、山田浩教授は「認知症の高齢者は他にも病気があることが多く、試験を1年間継続するのはとても難しいが、なんとか結果を出したい」と意欲的だ。

 ◇コーヒーや紅茶、差は見られず

 一方、緑茶の摂取が認知症の予防になるのを示唆する新たな疫学研究結果も出ている。金沢大の山田正仁教授(神経内科)や篠原もえ子助教らの研究グループが行ったもので、米国科学誌プロスワンにも掲載された。

 同研究グループは2007〜08年、石川県七尾市中島町に住む60歳以上の高齢者を対象にお茶を飲む習慣を聞き出し、認知機能などを検査したうえで、認知機能が正常な490人を約5年間追跡した。

 その結果、緑茶を全く飲まない138人では43人(約31%)が認知症か軽い認知障害の認知機能低下が見られた。これに対し、週に1〜6日飲む195人では認知機能低下は29人(約15%)と低く、毎日緑茶を飲む157人では同18人(約11%)とさらに低かった。コーヒーや紅茶では差は見られなかった。

 統計的な解析の結果、緑茶を全く飲まない場合に比べ、緑茶を毎日飲むと認知機能低下のリスクは3分の1に、週に1〜6日飲むと2分の1に減ることが分かった。

 山田正仁教授によると、この研究手法は、研究開始時に生活習慣と認知機能を確かめたうえで追跡していくため、「前向き縦断試験」といい、信頼性は高い。緑茶のどんな成分が効いているかの解明は今後の研究課題だが、今度の疫学研究を受けて、山田正仁教授らは現在、アルツハイマー病の脳に蓄積するアミロイドという異常たんぱく質を阻害する作用をもつポリフェノールのカプセルをアルツハイマー病の患者に投与する比較対照試験を始めている。今後が注目される。

◆女性胃がん予防にも−−若林敬二・静岡県立大特任教授

 ◇お酒はほどほどに 禁煙、減塩もお忘れなく

 毎年約5万人が死亡する胃がん。緑茶と胃がんの関係については、これまで数多くの研究報告がある。それらを総合的に解析した結果では、女性では胃がんの予防効果があるようだ。

 ◇リスク3割減、男性は差なし

 国立がん研究センターの研究者らは2年前、日本で報告されている八つのコホート研究(コホートは集団の意味)と三つの症例対照研究を総合的に解析した研究結果を報告した。それによると、1日当たり5杯以上の緑茶を飲む女性は、1杯未満の女性に比べ、胃がんになるリスクが3割程度低かった。男性では差はなかった。

 胃がんは、食道に近い方の上部(噴門部)にできるがんと出口に近い下部にできるがんがある。日本人に多いのは下部のがんで、緑茶を多く飲んで予防効果が見られたのは下部のがんだった。男性で差が見られなかった理由の一つは、男性は女性ほど緑茶を飲んでいないことが挙げられるという。

 では、緑茶はどんなメカニズムで胃がんにつながる炎症を抑えるのだろうか。食品とがんの研究で知られる若林敬二・静岡県立大食品環境研究センター長(特任教授)らは、胃がんを起こす原因の一つとされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染しやすいスナネズミを使って実験を行った。

 強い酸性の胃の中でもピロリ菌が生きていられる理由の一つは、ウレアーゼという酵素を生成しているからだ。ウレアーゼは胃の粘液に含まれる尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する。ピロリ菌はこのアルカリ性のアンモニアで自身の体を守っているわけだ。ところが、このアンモニアなどの生成物は人の胃の粘膜に炎症を起こす作用がある。

 若林特任教授らはウレアーゼの作用を抑える食品はないかとキノコ、ハーブ類などさまざまな食品を調べたところ、緑茶がウレアーゼの作用を抑えることが分かった。

 そこでピロリ菌を感染させたスナネズミに緑茶抽出物を飲ませて実験したところ、緑茶抽出物を飲んだネズミでは、ピロリ菌の活性が抑えられていた。こうした疫学研究や動物実験から、若林特任教授は「確定的なことは言えないものの、女性では緑茶に胃がんを予防する働きがあるようだ」と話す。もちろん、がんの予防には他にも大切なこと=表=はあるので、それらを心がけることも重要だ。

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 ◇がん予防、心がけたいこと

(1)喫煙をやめる

(2)塩分の過剰摂取を控える

(3)酒はほどほどに

(4)野菜・果物を多く取る

(5)脂肪の過剰摂取を控える

(6)適度な運動

(7)ピロリ菌、肝炎ウイルスなどの感染予防と除去(治療)

(8)胃がんなどがん検診


m3.com 2014年8月7日

サルナシに肺がん抑制効果
岡山大大学院有元准教授、マウスで確認
 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の有元佐賀恵准教授(遺伝毒性学)は、サルナシの果汁が肺がんの抑制に有効なことをマウスによる実験で確認した。皮膚がんや、大腸がんの前段階である「前がん病変」の予防効果に続く成果。研究を依頼した岡山県新庄村は「特産化を一層推進したい」としている。

 サルナシはキウイの原種とされ、果実は直径2―3センチの緑色。岡山県内唯一の産地という新庄村には、古くから自生し、ビタミンCが豊富で滋養強壮効果などがあるとされてきた。

 実験は、たばこに特有の発がん性物質を皮下注射したマウス31匹のうち、16匹に水道水、15匹にサルナシ果汁を飲ませながら飼育。22週間後に解剖して左肺の腫瘍を調べたところ、水道水グループは1匹当たり3―7個見つかったのに対し、サルナシグループは0―2個にとどまった。

 村は健康への好影響をPRにつなげる狙いで2010年、成分研究を依頼。12年に皮膚がんの抑止、13年に大腸がんの前がん病変の発症を抑える効果などが確認された。有元准教授は「肺がんは全がんの中で死者が最も多い。人間への効果は今後研究を進めるが、有用な結果が得られた」と話している。

 新庄村では今年、村サルナシ栽培研究会(17人)が約1・1ヘクタールで栽培し、700キロを収穫する計画。リキュールやジャム、酢に加工したり一部を生食用に販売する。

 村産業建設課は「自信を持って生産拡大を推奨できる」と歓迎し、栽培研究会は「特長を生かしてブランド化につなげたい」と話している。

m3.com 2014年8月7日

スパコン「京」で創薬成功…東大など がん新薬候補物質
 東京大と富士通、製薬会社の興和は、理化学研究所の世界最速級のスーパーコンピューター「京けい」(神戸市)を活用して、抗がん剤の候補物質を作製することに成功した。

 「IT創薬」と呼ばれる方法で、高い治療効果が見込める薬を効率的に作る新たな技術として注目される。

 研究チームは、がん細胞の表面にある増殖に重要な役割を果たすたんぱく質に着目。たんぱく質の「鍵穴」に「鍵」のように入り込み、細胞増殖を抑える化学物質をスパコンで設計した。たんぱく質と化学物質が引き合う力や体内の水分の影響など複雑な計算を、スパコンを使うことで精密に行うことが可能になった。

 スパコンでの化学物質の設計は富士通が担当。興和が実際に化学的に合成できるか検証した。東大は設計方法の改良などを担った。

 8個の化学物質を合成し、そのうち1個が、たんぱく質と実際に強く結びつくことが確かめられた。従来は、10万種類以上もの既知の化学物質の中から、鍵穴にぴったりの物質を探す方法が主流だったが、スパコンを活用することで全く新しい未知の構造の化学物質を設計して検証することができる。

 児玉龍彦・東大教授は「異分野の力を結集することが、これからの創薬には重要だ」と話す。

m3.com 2014年8月7日

医師500人で作る「何でもランキング」
癌で手術なら京大病院がトップ
旧帝大人気、「どこでも良い」は4割弱
自身が癌患者になった場合、手術を受けたい病院 (単位:人)

1位 京都大学37  2位 慶應義塾大学28  3位 大阪大学25  4位 順天堂大学15
4位 九州大学15  6位 北海道大学13  7位 名古屋大学12  8位 東京大学11
9位 自治医科大学9  9位 岡山大9  11位 東京医科歯科大学8  12位 東京慈恵会医科大学7
13位 札幌医科大学6  13位 藤田保健衛生大学6 15位 東北大学5  15位金沢大学5
17位 東京女子医科大学4  17位広島大学4  17位 久留米大学4  17位 長崎大学4
17位 熊本大学4  22位 福島県立医科大学3  22位 横浜市立大学3  22位 北里大学3
22位 新潟大学3  22位愛知医科大学3  22位 三重大学3  22位 京都府立医科大学3
22位 近畿大学3  22位 大阪市立大学3  22位 神戸大学3  22位 徳島大学3
22位 産業医科大学3  34位 岩手医科大学2  34位 秋田大学2  34位 山形大学2
34位 埼玉医科大学2  34位 千葉大学2  34位 帝京大学2  34位 東邦大学2
34位 聖マリアンナ医科大学2  34位 名古屋市立大学2  34位 山口大学2  34位 福岡大学2
34位 大分大学2  
34位 海外の大学2

特になし195

 具体的なケースを想定して、「自身が癌患者になった場合、最も手術を受けたい大学病院はどこか」を、1つのみを選択できる形式で聞いた(有効回答数506人)。

 1位は京都大学で37人、2位は慶応義塾大学で28人、3位は大阪大学で25人となった。旧帝国大学の2大学と、私立医学部の最難関の慶応大がトップ3となった。

 旧帝国大学は、根強い人気があり、4位九州大学(15人)、6位北海道大学(13人)、7位名古屋大学(12人)、8位東京大学(11人)。東北大学(15位、5人)を除いて、トップ10に入った。

 他にトップ10に入ったのは4位順天堂大学(15人)。自治医科大学と岡山大学は、ともに9位、9人の結果となった。自治医大を除いて、新設医大以外の歴史の長い大学が並んだ。

 「海外」と回答した医師は2人。ともに米国の大学で、テキサス州立大学の付属施設の「MDアンダーソンがんセンター」と、マサチューセッツ総合病院などを運営する「ハーバード大学(関連の施設)」との回答だった。

 ただ、実際に最も多かったのは、「特に希望はない」で38%(195人)の医師の回答が集中した。トップの京都大学でも回答数が全体の1割にも満たないことを考えると、医師の間でも、癌に限っても、「どこの大学病院が良い」と一概に言えず、癌腫別あるいは担当医別に、受診先を見極めているのかもしれない。

m3.com 2014年8月13日

採血1回で13種のがん発見 負担少ない検査法開発へ
国立センター、5年計画
 国立がん研究センターと東レなどは18日、1回の採血で13種類のがんを発見できるシステムの開発を始めると発表した。身体的な負担の少ない血液検査でがんの疑いがある人を見つけ、詳細検査を受けてもらう想定。早期発見、治療開始によって、がん克服につなげたいとしている。

 事業は本年度から5年間。対象は、胃、食道、肺、肝臓、胆道、膵臓、大腸、卵巣、前立腺、膀胱、乳房のがんと、肉腫、神経膠腫。

 がん発見の目印にするのは、血液や唾液などの体液に含まれ、人間では2500種類以上が確認されているマイクロRNAという物質。近年、乳房や大腸など、がんの種類により、異なったマイクロRNAが血液中で増えることが分かりつつあり、診断への利用に期待が高まっている。

 センターが保有する患者の血清や組織計6万5千人分を分析し、がんになる臓器ごとに、どの種類のマイクロRNAが増えているかを明らかにする。このデータを基に検査装置の開発を進める。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業で、総額約79億円の予定。

 国立がん研究センターの堀田知光理事長は「世界に先駆けて日本発の高精度な検査を確立できれば、健康寿命を延ばし、産業の発展に寄与できる」と述べた。

 がんとマイクロRNAの関係を調べたこれまでの研究は小規模なものが主で、実用化には精度を高めるため大規模な研究開発が必要だとしている。NEDOは同じ手法を利用した認知症の検査法開発も目指すという。

m3.com 2014年8月19日

岩手医大にブレスト外来 がん手術と乳房再建を連携
 岩手医大病院(盛岡市)は19日、乳がん治療の質の向上を目指し、新たに「ブレストケア外来」を設置したと発表した。患部の切除などを担う外科と、乳房の再建手術をする形成外科が連携して治療に当たる取り組みで、病院によると東北では初めて。

 以前はまず外科が診察し、再建の必要がある患者のみ形成外科に紹介したため、患者の希望が反映されにくかった。ブレストケア外来では両科の医師らが同じ診療室で患者に向き合い、治療方針を説明するため、患者にとっても治療の流れが分かり、納得を得やすい利点がある。

 乳房再建手術は今年4月までに保険適用され、同病院で従来、約100万円かかっていた患者負担が3分の1程度に軽減されており、医師が再建手術を勧めやすくなったという。

 ブレストケア外来は7月から開設され、既に20人以上の患者が利用。酒井明夫(さかい・あきお)病院長は記者会見で「治療の選択肢が増える効率的なシステムだ」と意義を強調した。同病院によると、岡山大病院でも同様の取り組みがあり、参考にしたという。

m3.com 2014年8月20日

90歳以上は半数が無治療も 五大がん、拠点病院集計
 90歳以上でがんが見つかった場合、切除や縮小を目指す積極的な治療は肺がんでは6割で行わず、胃がんや肝臓がんでも半数では実施しないことが25日、国立がん研究センターの集計で分かった。患者の多い主要な5種類のがんについて、2012年に全国397のがん診療連携拠点病院で診断された約61万人の診療情報を集計した。

 高齢者はがんの進行が比較的遅いことや、抗がん剤の副作用、手術の身体的負担を考慮し、痛みや吐き気への対応にとどめることが多いためらしい。80代では、治療しない人の割合が最も高い肺がんでも、無治療率は約3割にとどまった。

 集計は、胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がんが対象。90歳以上でも、大腸がんは8割、乳がんは9割が積極的に治療していた。大腸を詰まらせる大きながんを取り除く手術や、乳がんのホルモン療法が広く行われた可能性が考えられるが、原因は特定できていないという。

 また、40代以下と80代以上は進行した状態で見つかる場合が比較的多いが、若い患者は、どのがんでも大半が積極的に治療を始めていた。

 センターは「本人の体調やがんの特徴によって適切な治療は変わるが、自分と同じ年代、進行度の人がどんな治療を受けているかの参考になる。患者と医師が話し合う際の材料にしてほしい」と話している。

 各病院が提供する医療の向上を図るため、診療数や生存率などの情報を集める「院内がん登録」を利用した。報告書は同センターのサイト、http://www.ganjoho.jp/professional/index.htmlで閲覧できる。

m3.com 2014年8月26日