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2014年6月 文献タイトル
細胞死“目印”出現防ぐ物質 京大グループ発見
細胞老化の仕組み、名市大グループが解明
乳がんの新バイオマーカー? 2件の報告でほくろの数との関連が示唆
「がんもどき」「データ捏造」間違い 勝俣範之・日本医大武蔵小杉病院腫瘍内科教授に聞く
働きたいがん患者に支援を 厚労省検討会が提言
筋萎縮性側索硬化症(ALS)マウスの寿命延長 iPS使い京大、治療に道
1日3時間以上のテレビ視聴で若年者の死亡リスクが倍増

細胞死“目印”出現防ぐ物質 京大グループ発見
 生きた細胞を死んだと間違って処理されないようにするタンパク質を、京都大医学研究科の長田重一教授や瀬川勝盛助教らのグループが見つけた。死んだ細胞の処理システムが正しく機能する上で欠かせない役割を果たし、血液難病などの発症と関連している可能性があるという。米科学誌サイエンスで6日発表する。

 細胞は、がん化やウイルス感染した場合、自ら死んで他を守る「アポトーシス」を起こす。死んだ細胞は、表面に目印分子フォスファチジルセリンを出して、異物を食べる貪食細胞に認識されて分解される。

 グループは、生きた細胞の表面に目印分子が出てしまうのを防ぐタンパク質ATP11Cを見つけた。マウスの実験で、このタンパク質をなくすと生きた細胞でも目印分子が表面に出て、貪食細胞に食べられた。

 グループは、死んだ細胞の表面に目印分子出す働きのあるタンパク質も既に見つけており、目印分子の制御システムをほぼ解明することに成功した。

 これらのタンパク質がきちんと機能しないと、がんや白血病、血液成分が減少する血球貪食症などを発症する可能性がある。長田教授は「病気との関わりや類似したタンパク質にも同じ機能があるかどうかなどを詳しく調べたい」と話している。

m3.com 2014年6月6日

細胞老化の仕組み、名市大グループが解明
 ヒトの細胞が分裂を繰り返す「細胞周期」から外れて老化するメカニズムを解明したと、名古屋市立大学大学院医学研究科の中西真教授の研究グループが発表した。

 老化や老年病の予防法の開発などにつながることが期待されるという。理化学研究所などとの共同研究で、研究成果は5日付(米国時間)の米科学誌「モレキュラー・セル」電子版に掲載される。

 発表によると、ヒトの正常な細胞には、DNAの複製と細胞の分裂を繰り返して増殖する周期がある。中西教授らは皮膚や網膜上皮といったヒトの細胞に、活性酸素や放射線などによる刺激を与え、細胞が老化する過程を顕微鏡で解析した。刺激を受けた細胞は、分裂前の準備期で、がん抑制遺伝子のp53とRbたんぱく質が活性化し、分裂を回避して通常の2倍のDNA量を持ったまま増殖が止まっていることがわかった。

 また、ヒトの老化細胞の一つであるほくろを調べたところ、正常な表皮細胞と比べて約2倍のDNA量があり、増殖が止まっていることが確認された。

 東京大学医科学研究所の北村俊雄教授(分子生物学)は「老化にはいろいろな説があるが、具体的なメカニズムは解明されていなかった。今後の研究につながる極めて興味深い研究だ」と話している。

m3.com 2014年6月6日

乳がんの新バイオマーカー?
2件の報告でほくろの数との関連が示唆
 これまでの疫学研究から乳がんの危険因子として初潮年齢や初産時の年齢,閉経年齢などといったホルモンに関連する要因が明らかになっているが,新しいバイオマーカーとして身近な皮膚良性疾患との関連に注目が集まっている。6月10日のPLoS Medicine には,ほくろの数の多さと乳がんリスクの上昇の関連を示唆する報告が2件発表された。大規模疫学研究で,ほくろの数を調査していたことがそもそも驚きだが,ほくろと女性ホルモンレベルの関係は以前から注目されていたようだ。

ベースライン時のほくろの数と18〜24年間の乳がんリスクの関連を検討

 2件の報告は米のNurses’ Health Study(NHS)に参加した7万4,523例の女性看護師における約24年間の解析(PLoS Med 2014年6月10日オンライン版)と,国際がん研究機構(IARC)による欧州10カ国50万人以上が参加するEPIC研究のフランス人女性のコホートE3Nの約18年間の解析(同オンライン版)。いずれもベースライン時のほくろの数と追跡期間における乳がんリスクの関連が検討された。

 NHSコホートの研究では1986年のベースライン時に自己計測によりほくろの数※1の記載のあった7万4,523例の女性看護師を2010年まで追跡。期間中に同コホートで5,483例の浸潤性乳がんが発見されていた。ほくろがない女性に比べ,ほくろがある女性ではほくろの数が増えるのに伴い乳がんリスクの有意な上昇が見られた。

 E3NのコホートでもNHSと同様,1990年から40〜65歳の女性8万9,902例を対象にベースライン時のほくろの数と2008年までの乳がんリスクとの関連を検討。18年の追跡期間中に5,245例の浸潤がんを含む5,956例の乳がんが発見された。年齢,教育レベル,既知の乳がん危険因子で補正したモデルによる解析では,ほくろが非常に多い女性で,ほくろがない女性に比べ乳がんリスクの有意な上昇が見られた。しかし,良性乳腺疾患(BBD)の既往や乳がんの家族歴を加えて補正したモデルでは有意差は消失した。

 米University of Arkansas for Medical SciencesのBarbara Fuhrman氏らは,2件の報告ではほくろが乳がんの有用なマーカーである可能性がアピールされているが,ほくろの評価が自己申告であること,両試験で結果の一部が再現されていないことなどから,今後さらに詳しい研究が必要と述べている。

Medical Tribune 2014年6月16日

「がんもどき」「データ捏造」間違い
勝俣範之・日本医大武蔵小杉病院腫瘍内科教授に聞く

近藤氏の主張方法は非科学的で残念

――本の内容について、お聞きしたいのですが、工夫された点、苦労された点などがあれば、お教えください。

 まずエビデンスをきちんと書くこと。もう一つは、近藤先生が決定的に間違っているところを、きちんと理論的、科学的に論述することです。

――近藤先生が「決定的に間違っている」と思われる点はどこでしょうか。

 近藤先生の主張の仕方は、科学的のようで科学的でないことです。分かりやすく言うと、一部の点は、科学的にも非常に的を射た指摘をしているのですが、大部分が自己の主張を通すために、医学論文を無理にこじつけている点です。冷静、客観的に自然現象を論述するのが科学でしょう。近藤先生は、自分の主張が先にあって、それに合いそうなデータを持ってきているだけなのです。それは科学ではなく、単なる個人的な見解にすぎません。

 エビデンスレベルで言えば、RCT(ランダム化比較試験)やメタアナリシスには、個人の考えが入る余地は少なく、最も信頼できるデータです。一方、個人の経験、主張は最も低いレベルです。

――先生のご著書でも、医学論文におけるエビデンスレベルのことを説明されています。

 一般読者には、なかなか分かりにくいことと思います。近藤先生の本は、一読すると論理的で非常にわかりやすく記述されているので、どこまでが科学的に正しくて、どこまでが近藤先生の個人的な見解かを区別することはできないと思います。

 僕は今でも若干思っているのですが、近藤先生は「自分の主張は本当は間違っている」と分かっていて、わざと書いているのではないかと。

――その目的は何だとお考えですか。

 手術や抗がん剤偏重主義に、一石を投げかけたいという思いがあるのでしょう。ただその主張を通したいがために、無理な主張やこじつけはよくありません。患者さんに誤解を与えるのもよくないと思います。そうであれば、きちんと反論しておく必要がある。近藤先生が一番言われたくないところ、一番辛いところを、僕は書いたのだと思います。

――それは科学ではないということ。

 医学論文も絶対的なものではありませんので、統計学的エラーやバイアスなどがあります。近藤先生は、少しのエラーをオーバーに表現したり、根拠なく不正と言ってみたりするところが多いのです。ただ、これだけ多くの論文を読んでいる人は、なかなかいない。だから、もったいない。もっとしっかりとした評論をしてくれれば、と思っています。その点は残念です。

――抗がん剤治療をはじめ、日本のがん医療は見直す余地は大きい。

 だから、近藤先生には、一般向けではなく、医学誌にもきちんと投稿してもらいたい。学会にも来てもらい、真剣に議論をした方が、本当の意味で医学界を変えることができるのだと思うのです。

 近藤先生が言うように、日本の医学界には問題のある先生も確かにいます。

 がんの治療についても、抗がん剤のやりすぎの問題もあります。でも、近藤先生は、実際の医療現場の状況がどうであるのかも知らずに、「医師が金儲けしたいからだ」などと、過剰な表現しかしません。もっと医療現場に入って、現場の医師たちと話をして、現場で何が困っているのか、現場の医師たちはなぜそうしてしまうのか……。そうしたところを的確にまず見てもらって、学会に来て議論をし、それを世論に訴えるという方法を取れば、もっとうまく効果的にできたのではないか、という気はします。だから残念だということです。しかし、近藤先生は、医師に直接言うことはあきらめてしまったのでしょう。

――クレスチンの時は、ランセット誌に働きかけた。

 はい。1994年にランセット誌に、日本人研究者による「胃がんの術後に、クレスチンを使うと、生存率が向上する」という論文が掲載されました。これに対し、近藤先生は、データの問題を指摘し、編集部に手紙を出した。間違いが確認され、その後、「胃がん以外で死亡した患者さんを生きているとして扱った」として、訂正声明が出されました。その後も、きちんとやってくれればよかった。

 この頃、近藤先生は、乳房温存が広まらないことや、エビデンスの乏しい経口抗がん剤が過剰に使用されていることを、学会やメディアにも働きかけていたのですが、逆に医学界からバッシングされた。このことで、医学界に恨みを持ったのでは、と僕自身は見ています。だから、「医師たちに、直接言うのはやめよう、と思ったのでは」という気もしています。

――近藤先生も当初は科学的な反論をされていたのに、次第に科学的ではなくなってきた。

 そうですね。

――各論として、勝俣先生が問題視されている一つが、「がんもどき」「本物のがん」です。

 「がんもどき」か、「本物のがん」かは、近藤先生の“仮説”であり、非常に乱暴な区分け。転移のあるがんを「本物のがん」と言い、「本物のがん」は治らず、死んでしまうと言っている。それは違いますよね。転移しても、進行がゆっくりだったり、ほとんど進行しない人もいます。

 私自身、放置療法ではないですが、進行がんであっても経過観察している人はたくさんいます。例えば、悪性度が低い肉腫で多発肺転移があり、積極的治療はしていませんが、何年もそのままの人がいます。それは「近藤理論」から言えば、おかしい。

――その一方で、最初は転移がなくても、その後、転移するがんも多い。

 ステージIの乳がんとか、検診で見つかったがんは、「がんもどき」と近藤先生は言うのです。ステージIのがんでも、怖い。少し放置しておくと、あっという間に転移するものがあります。

 本にも書きましたが、5mmの乳がんの患者さんが、近藤先生に「放っておけ」と言われた。次第に転移していって、18年後、最後は骨転移となり亡くなりました。18年間、がんと闘い続けたわけですよね。最初に手術をしたら、治っていた可能性が高いのです。

――近藤先生は、抗がん剤の臨床試験についても、「生存曲線が上に凸の曲線があるのは、人為的操作があるから」などと問題視しており、それに対して、勝俣先生は科学的に反論しています。ただ、生物統計学が分かっている人なら、そうした問題視をしないはずだとも思います。

 その点は近藤先生が一番強調しているところなので、きちんと書く必要がありました。生存曲線は、死亡率が変化することによって、「上に凸」にも、「下に凸」にもなります。しかし、近藤先生は、「上に凸」になっているのをおかしいとして、ねつ造とか言っていますが、統計学的には全くそんなことはない。

 だから僕自身は、(近藤先生は)分かっていて、わざと言っているのでは、という気がするのです。面白半分でやっているところもありますよね。「専門医は、なぜ反論しないのか」と煽ったりしている。そうしたやり方自身が、科学者のやり方ではない。我々は喧嘩したいわけではないのです。科学的に冷静に議論して、患者さんにより良い医療をやるために、冷静に議論すればいいわけです。

――ところが反対に、近藤先生の本を読んだ患者さんに対して、インフォームド・コンセントを行うのにかえって手間がかかるようになり、現場の先生方に負担をかけている。

 大変ですよ。まだまだ近藤先生の本の方が、影響力が大きい。私の本など読んでくれません(笑)。しかし、ちょっと勉強すれば、「近藤先生はおかしなことを言っている」ということは誰でも分かる。

――ご著書では、近藤先生の本の問題点を単に指摘するだけではなく、がんの患者さんに対して、正しい治療を受けるためのアドバイスなども書かれています。

 例えば、緩和ケアについても、医師の間でもまだまだ誤解があります。私は近藤先生を真っ向から批判しているのではなく、近藤先生が指摘する通り、過剰な抗がん剤をすることで“抗がん剤づけ”にするのは、よくないと思います。抗がん剤は、諸刃の刃ですから。いい面もあれば、悪い面もある。使い方を間違えれば、患者さんを殺しかねず、十分に注意しなければいけません。

――先生の立場から見て、日本のがん医療で改善の余地が大きいのは。

 腫瘍内科医という専門家が少ないというのは、日本にとって一番不幸なことだと思います。

――大学として腫瘍内科を講座として持っているところがまだまだ少ない。

 そうです。腫瘍内科医は、ベースが内科医ですから、患者さんとよくお話をして、より良い治療をコーディネートすることも我々の仕事です。腫瘍内科医がもっと増えていくことが、日本のがん医療をよりよい方向へ発展させていくことと思います。

m3.com 2014年6月18日

働きたいがん患者に支援を 厚労省検討会が提言
 厚生労働省の有識者検討会は23日、働きたいと思っているがん患者に、医師が仕事を辞めないよう助言することを報告書で提言した。企業にも、働きながら治療や検診が受けられる仕組みを検討するよう求めた。医療が進歩し、がんの5年生存率は6割近くあるにもかかわらず、患者の約3割が仕事を辞める実態を受けた。

 提言を受け、厚労省は全国に約400ある「がん診療連携拠点病院」の医師に助言するように求める。

 がん患者で働く人は約32万5千人(2010年時点)。一方、がんと診断される人は年約80万人いる。04年の厚労省研究班の調査によると、診断後に約3割が自ら離職していた。別の調査では、負担を減らす取り組みをしている企業は約1割だった。

 医師側も患者の就労にまでかかわることはあまりなかった。最近は外来で放射線治療や化学療法をすることも多く、働きながら治療する場合も少なくない。

 報告書では、医師や企業が協力し、患者への就労支援を進めるべきだと指摘。主治医は患者の病状に応じて「今すぐに仕事を辞める必要はない」と助言し、治療の見通しを文書などで説明することが重要とした。

 企業も、治療や検診のために短時間勤務の導入などを検討するよう求めた。

m3.com 2014年6月24日

筋萎縮性側索硬化症(ALS)マウスの寿命延長
iPS使い京大、治療に道
 人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から神経細胞を維持する細胞を作り、全身の神経が徐々に侵され筋肉が動かなくなる難病ALSのマウスに移植して、寿命を約10日間延ばすことに成功したと京都大の井上治久教授(幹細胞医学)のチームが26日発表した。有効な治療法が見つかっていないALSに、iPS細胞を使う再生医療が有用である可能性を示す成果で、26日付の米科学誌ステム・セル・リポーツ電子版に掲載された。

 ALSの進行には、神経細胞のネットワーク維持や栄養供給に関わる「グリア細胞」と呼ばれる細胞が異常になることが関与しているとされる。

 チームはALSのマウス24匹の脊髄に、iPS細胞から作った、グリア細胞に変化する細胞を1匹当たり約8万個移植。

 細胞移植をしなかったALSマウス24匹の平均生存期間は150日だったが、移植をしたマウスは162日に延びた。

 移植した細胞は、ほとんど全てがグリア細胞の一種である「アストロサイト」に変化し、神経細胞の維持に必要なタンパク質ができていることも確かめた。iPS細胞の利用で発生が指摘される腫瘍の形成は見られなかった。

 チームによると、マウスの10日間は人の数カ月から半年間に当たるが、単純な日数換算は難しいという。

 ALS治療では細胞移植が有望とされるが、移植用細胞の安定確保が課題。皮膚などの細胞に遺伝子を導入して作製するiPS細胞はさまざまな細胞になる能力を持つため、細胞の供給源として期待されている。

 井上教授は「今後は、iPS細胞から作った運動神経細胞と一緒に移植して、どのような効果があるのか研究したい」と話している。

※筋萎縮性側索硬化症(ALS)

 筋肉を動かす神経が徐々に侵され、全身の筋肉が動かなくなり歩行や呼吸、食事が困難になる厚生労働省指定の難病。通常、体の感覚や知能、内臓機能などは保たれる。人工呼吸器による生命の維持が必要になることが多い。詳しい原因は分かっておらず、有効な治療法は確立されていない。

※人工多能性幹細胞(iPS細胞)

 皮膚や血液など特定の機能を持つ細胞に数種類の遺伝子を導入し、受精卵のようにさまざまな細胞や組織に変化する能力を持たせた細胞。培養条件を変えることで心臓や神経など特定の細胞に変化させることができる。がん化の恐れなど課題もあるが、病気やけがで機能を失った組織や臓器を修復する再生医療や創薬への応用が期待されている。京都大の山中伸弥教授が開発し、2012年にノーベル医学生理学賞を受賞した。

m3.com 2014年6月27日

1日3時間以上のテレビ視聴で若年者の死亡リスクが倍増
 University of Navarra(スペイン)Medical SchoolのFrancisco J. Basterra-Gortari氏,Miguel Martinez-Gonzalez氏らは,座位行動(テレビ視聴,パソコン使用,自動車運転)と全死亡リスクとの関連を検証するため若年の健康人を対象とした中央値8.2年の追跡期間の研究を実施。1日3時間以上テレビを視聴していた若年者では,1日1時間に満たなかった若年者に比べて死亡リスクが倍増した一方で,パソコン使用と自動車運転には関連性が認められなかったとの報告をまとめた。詳細は J Am Heart Assoc(2014年6月25日オンライン版)に掲載された。

平均年齢37歳の若年健康人を対象に調査

 身体活動量が少ないほど心血管疾患やがんなどの慢性疾患や死亡のリスクが高まることは,これまで国内外の検討で報告されてきた。特に,座位行動はこれらの重要なリスク因子と考えられてきたが,座位行動が一律に全死亡リスクに影響を及ぼすのかどうかは明らかにされていない。そこで,Basterra-Gortari氏らは,テレビ視聴およびパソコン使用,自動車運転による座位行動の種類別に全死亡リスクを比較検討する研究を実施した。

パソコン使用・自動車運転と死亡リスクは有意に関連せず

 座位行動のうち,テレビ視聴時間は,年齢および性,喫煙習慣,総エネルギー摂取量,地中海食の遵守状況,BMI,身体活動量で補正後も全死亡と明らかな関連性が認められた。テレビ視聴時間が3時間/日以上の群では,1時間/日未満の群に比べて,全死亡リスクが有意に2倍に増加した。

 Basterra-Gortari氏らは「これまで指摘されてきたように,テレビ視聴時間と座位行動の合計時間は,身体活動をはじめとする交絡因子を補正後も全死亡リスクと直接的な関連性を示した。これらの時間を減らすことで死亡率が低下するのか臨床試験での検証が求められる。一方で,パソコンの使用と自動車運転の時間は全死亡リスクの上昇に影響を及ぼさなかった」と結論。

 また,Martinez-Gonzalez氏は「若年者では最近,座位行動,特にテレビ視聴時間が長くなる傾向が見られており,加齢に伴う健康問題に拍車をかけると考えられる。身体活動量を増やし,長時間にわたる座位行動をやめるべきだろう。特にテレビ視聴は1日1〜2時間にとどめる必要がある」とコメントしている。

 なおテレビ視聴時間のみに全死亡との関連性が見られた点については,他の座位行動に比べてスナック菓子や砂糖含有飲料の消費量が多い可能性や,慢性疾患患者が含まれていた可能性(解析時には慢性疾患患者は除外している),パソコン使用および自動車運転はテレビ視聴に比べて消費カロリーが多い可能性などを指摘しつつも理由は明らかでないとし,さらなる検証が必要との考えを示している。

Medical Tribune 2014年6月30日