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2014年4月 文献タイトル
PM2.5:黄砂で発がん性上昇 金沢大など発表 春先、マスク対策を
病気リスク、血液型で差
苦しくない胃カメラとは
がんなど遺伝子病、酸化DNAが関与 九大など解明
アスピリンのがん予防効果
ニコチンのからくり
微量の血液で大腸がん発見 国立がんセンターが開発
食道がん手術で高い成果 川崎医科大、5年生存率7割超
がん転移の仕組み解明 京大、予防法開発に
大腸がんスクリーニングにおける便DNA検査の有効性を検証

PM2.5:黄砂で発がん性上昇
 金沢大など発表 春先、マスク対策を
 金沢大などの研究グループは、大気汚染源とされる微小粒子状物質「PM2・5」と黄砂が交じると、発がん性の高い物質が発生しやすくなることを突き止めた。黄砂が化学反応を加速させ、PM2・5に元々付着している発がん性物質に比べ、がんを引き起こすリスクが100倍以上高い物質が生じやすくなるという。

 研究を取りまとめる金沢大・環日本海域環境研究センターの早川和一センター長(63)=環境科学=は「PM2・5と黄砂がともに増える春先はマスクを身に着けるなど意識して対策をしてほしい」と呼びかけている。

 PM2・5は大気中に浮遊する直径2・5マイクロメートル以下(マイクロは100万分の1)の微粒子で、車や工場の排ガス、ストーブなどから発生し、中国からの飛来が懸念されている。

 研究グループは1990年代後半から毎年夏と冬を中心に、金沢・輪島両市や中国・北京、ロシア・ウラジオストクなどの日本海沿いで、携行式の器具を用いて地上約1・5メートルの空気を採取し、汚染物質を観測してきた。

 その結果、大気中の黄砂量が多い時に、高い発がん性を持つ「NPAH(ニトロ多環芳香族炭化水素)」の濃度が上昇する傾向が見られた。

 そこで早川氏らは、黄砂がNPAHの発生に深く関わっていると推測。PM2・5に含まれる発がん性物質「PAH」と、大気中に浮遊する窒素酸化物を入れた容器に、黄砂を混ぜたところ、NPAHが大量に発生し、推測が裏付けられたという。黄砂が触媒となって化学反応を促したと見られ、詳しい発生メカニズムを分析している。研究成果は熊本市で先月末にあった日本薬学会で発表された。

 ストーブなど石炭燃料の暖房使用に伴い生じるPM2・5と、中国大陸から飛来する黄砂の量がともに増える3〜4月に、NPAHが多く発生すると研究グループは見ている。早川氏は「NPAHは黄砂に付着するので、マスクでも除去効果は期待できる」と話している。

m3.com 2014年4月9日

病気リスク、血液型で差
くらしナビ・ライフスタイル

 血液型診断といえば、性格占いを思い浮かべる人が多いだろう。しかし意外にも、血液型によってがんになりやすかったり、感染症にかかりにくかったりする傾向が研究によって分かってきた。将来的には血液型に合わせた健康法が出てくる可能性もある。

●遺伝子が関係か

 「A、B、AB型の人はO型に比べ、膵臓がんになりやすい」。2009年、こんな衝撃的な論文を米国国立がん研究所が発表した。約10万人を8年間追跡調査したもので、膵臓がんのなりやすさはO型に比べ、B型は約1・7倍、AB型は約1・5倍、A型は約1・3倍だった。

 その後、この論文を裏付ける研究が米国の別の研究機関やイタリア、中国の研究でも明らかになった。詳しい根拠は分かっていないが、血液型を決める遺伝子の働きが関係していると推測されている。

 また、「O型は血栓症になりにくい」との報告もある。米ハーバード大医学部関連医療機関の「ダナ・ファーバー研究所」の発表(10年)によるとO型に比べ、A、B、AB型は静脈にできた血栓が肺動脈に詰まる肺塞栓症になるリスクが約1・5倍も高かった。

 さらに、O型は感染症のマラリアに強いといわれる。マラリア患者が多い赤道付近の東南アジアや南米の地域の先住民にO型が多いのは、マラリアに打ち勝って生き延びてきたとみられるからだ。

 一方で、O型は胃や腸など消化器系潰瘍には弱いという研究結果がスウェーデンなどから報告されている。

 全般的に言えば、O型が有利といえそうだが、生まれ持った血液型を変えるわけにもいかない。何か予防策はあるのか。

 世界中の文献を調べ、血液型と疾患に詳しい永田宏・長浜バイオ大学バイオサイエンス学部教授は「B型の人が膵臓がんになりやすいといっても、もともと膵臓がんは多くないので、あまり神経質になる必要はない」とする。その上で「血栓が生じやすいA型とB型の人で中性脂肪が高かったり、高血圧だったりした場合は、早めに生活習慣の改善を試みるといった程度の注意があればよいのでは」と話す。

●夢のヨーグルトも

 それにしても、なぜ、細菌やウイルスによる感染症と血液型が関係するのか。

 血液型はA、B、O、ABの四つあるが、型の差は、赤血球の表面にくっついている「糖鎖(とうさ)」(糖の一種のガラクトースなどの単糖が鎖状に結合した物質)の種類によって分けられている。この糖鎖は胃、腸、腎臓、肺などあらゆる臓器の表面にある。唾液や精液などから血液型が分かるのは、この血液型糖鎖が赤血球以外にもあるからだ。

 この臓器の表面にある血液型糖鎖が、ウイルスや細菌との結合のしやすさを左右するとみられている。細菌やウイルスから見れば、好きなタイプの血液型があるわけで、この性質を利用して人の血液型糖鎖を認識する乳酸菌の研究も進む。

 斎藤忠夫・東北大大学院教授らは7年前、人の腸にいた約270種類の乳酸菌を調べた。その結果、約30種類が血液型物質に応じた腸表面の糖鎖に強く付着し、腸に長くとどまることを突き止めた。長くとどまれば、有害な細菌の侵入を防ぐことができる。

 その後、斎藤教授らは研究を重ね、潰瘍性大腸炎の原因の一つと考えられている有害な腸内細菌のフソバクテリウム・バリウム菌が腸の糖鎖に付着するのを阻害するビフィズス菌を発見した。ビフィズス菌が先回りして血液型糖鎖に結合し、バリウム菌の作用を抑えることができれば予防になるという理屈。近く東北大学病院の倫理委員会の承認を得て、潰瘍性大腸炎の予防や安定した症状の維持に効果があるかを検証する人の臨床試験に入りたいという。

 斎藤教授は「潰瘍性大腸炎の国内の患者数は14万人を超える。研究が進めば将来的にはこうした疾患の予防に役立つ機能性ヨーグルトの登場も夢ではない」と話す。

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◇国別の血液型の分布例(数字は%)

     A  O   B  AB

英国   42  47  9  3

ドイツ  43  41 11  5

フランス 47  43  7  3

日本   38  30 22 10

韓国   32  28 31 10

中国   27  29 32 13

タイ   22  37 33  8

ケニア  19  60 20  1

ブラジル  0 100  0  0

 ※中国は北京の数字。ブラジルは先住民の数字。(数字は四捨五入のため合計が100にならない国もある)

m3.com 2014年4月10日

苦しくない胃カメラとは
大塚医院(京都山科区)・大塚健さん

 胃がんや食道がんが心配だけど、胃カメラの検査はオエーっとなるし、どうも苦手……という人は多いと思います。しかし近年、検査の方法や機械の進歩で、苦しくない胃カメラ検査が普及しています。

 苦しくない胃カメラ検査には2種類あります。まず「経鼻内視鏡」という方法で、細いカメラを鼻から胃へ入れます。鼻の穴には麻酔薬を塗って痛くないようにします。この場合、喉を通る際は、ほとんど苦痛がありません。また検査中、医者と会話ができるので、自分の胃の中を見ながらいろいろ質問もできます。

 この方法の欠点は、鼻の穴の奥が狭い人はカメラを入れた時に痛みや鼻血が出るときがあることです。また人によっては全く入らない場合もあります。特に顔の小さい女性は、鼻からカメラを入れるのは難しいと言われています。使用するカメラは非常に細いのでレンズが小さく、やや解析度が低くなり、小さい病変を見落とす心配もあります。

 もう一つは「鎮静下内視鏡」という方法で、睡眠薬を点滴や注射で投与し、患者さんにウトウト寝てもらってから、普通に口から胃カメラを入れる方法です。検査中、患者さんは眠っているので苦痛はほとんどありません。入れるカメラも通常のサイズなので、小さい病変を見落とすこともありません。

 この方法の欠点は、検査のあと、睡眠薬が覚めるまでしばらく寝ている必要があることです。目が覚めるまで1時間以上かかる場合が多く、検査が終わってサッサと帰る、とはいきません。また、薬の影響で目が覚めた後もボーっとすることがあり、病院からの帰り道で転倒した、という事故もあります。なお、心臓や肺の悪い患者さんは、睡眠薬を投与すると呼吸状態が悪くなる場合があるので、この方法は使えません。

 一長一短ありますので、医療機関によってはどちらか一方しか採用していない場合も多く、患者さんが検査方法を選べないこともあります。しかし、早期の胃がん、食道がんは、胃カメラを飲まなければ発見できないので、検査方法を工夫している医療機関で、できれば楽に検査を受けることが大事でしょう。各医療機関のホームページなどで確認してから受診すると良いかもしれません。

m3.com 2014年4月15日

がんなど遺伝子病、酸化DNAが関与 九大など解明
 九州大や理化学研究所などの研究グループは、がんなど遺伝子病の原因となる生殖細胞(卵子、精子)の自然突然変異に、遺伝子本体であるDNAの酸化が関与していることを解明した、と発表した。15日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に論文を掲載した。

 九大生体防御医学研究所の作見邦彦准教授(分子遺伝学)によると、生殖細胞の突然変異は、受精卵の分裂過程で将来卵子や精子となる細胞に生じ、子孫に代々遺伝する。研究グループが、酸化DNAを除去する酵素をなくした雌雄のマウスを5〜8世代にわたって交配したところ、最後の1世代当たりの突然変異発生率は通常のマウスより平均約18倍上昇。がんや水頭症などの病気となった個体も多く見つかったという。

 これまで、生殖細胞以外の体細胞の突然変異で酸化DNAが原因となることは分かっていたが、生殖細胞の突然変異にも関与していることを突き止めたのは初めてという。

 作見准教授は「マウスと同じ遺伝子で発病するヒトにも当てはまる実験結果。DNAの酸化は呼吸や炎症、放射線などが原因とされており、今後は親の性別、年齢が突然変異の発生に与える影響などを解明したい」と話した。

m3.com 2014年4月16日

アスピリンのがん予防効果
 「アスピリン」と聞けば、健康で薬と無縁の人も「あの痛み止めの……」と思い当たるだろう。1899年の発売以来、世界中で使われる解熱鎮痛薬の代名詞的存在だ。近年は解熱鎮痛薬の用量より少ない用量(100ミリグラム)を服用すると、血が固まるのを防ぐ抗血小板作用を発揮することが分かり、脳梗塞患者などの再発予防薬にも使われる。

 そのアスピリン(アセチルサリチル酸)について、国立がん研究センターなどのグループが「大腸がんの前段階である大腸ポリープの再発を抑える」との研究結果を英消化器病専門誌Gut(電子版)に発表した。一度できた大腸ポリープを切除した日本人患者約300人を1日1錠(100ミリグラム)のアスピリンを、2年間飲む群と偽薬を飲む群に分け追跡したところ、アスピリン群では再発リスクが40%下がり、心配された消化管出血などの有害事象もなかったという。

 アスピリンのがん予防効果は、欧米で研究が進む。世界の医学研究を紹介する医学総合誌「MMJ」(毎日新聞社刊)でも、大腸がんの死亡率の抑制効果や胃がんなどの予防効果を報告した英国の論文を紹介した。日本人で同様の効果が分かったのは今回が初めてだ。日本の大腸がん患者は増え続けており、胃がんに次ぐ第2位。研究代表者の武藤倫弘・同センターユニット長は「薬(化学物質)でがんを予防する『化学予防』を確立したい」と意欲を示す。

 健康な人が服用する以上、がん予防薬は安全で安くなければならない。100年以上の実績があり、1錠約6円のアスピリンは理想的だが、一般の人が使えるように国の承認を得るためには、より大規模な試験による有効性と安全性の検証が必要だ。巨額の投資で新薬開発に取り組む企業が、「6円の薬」に関心を示すだろうか。武藤さんらは「国主導で」と期待するが、従来存在しなかった「がん予防薬」という概念のため、前途は多難といえる。

 今回の成果は、薬によるがん予防に注目を集める出発点となるかもしれない。とはいえ、アスピリンには消化管出血など有害事象の恐れもあるので、自己判断で予防的に服用することは禁物だ。

m3.com 2014年4月17日

低ニコチンのからくり
くらしナビ・ライフスタイル

 たばこの外箱に表示されているニコチンやタールの数値が低いと、その有害性も低いかのようなイメージを持ちやすい。しかし、国の保健研究機関によると、実際に吸った場合のニコチンは必ずしも低くない。なぜ、低ニコチンのはずが高くなってしまうのか、そのからくりを知っておきたい。

●葉に含む量は同じ

 神経毒性をもつ有害なニコチンについて箱に表示されている量は、たばこの銘柄によって相当な差がある。例えば、軽いイメージのあるメビウス・ワンのニコチン量は1本当たり「0・1ミリグラム」なのに対しピース(10本入り)は「2・3ミリグラム」で、その差は20倍以上もある。日本たばこ産業(JT、東京)によると、この数値はたばこの葉に含まれるニコチン量ではなく、口から吸ったときの主流煙に含まれる量だ。

 実は、葉に含まれるニコチンの量はどのたばこも同じくらい。ではなぜ、吸ったときの煙では異なるのか。

 厚生労働省の国立保健医療科学院(埼玉県和光市)によると、表示されたニコチンの数値が低いたばこは、口元に近いフィルターの外側に小さな穴(通気孔)があいており、そこから空気が出入りしてニコチンの濃度を薄めている。この穴によってニコチンの空気中濃度が低くなり、吸い込むニコチンの量も少なくなる仕組みだ。

●通気孔で濃度変化

 ニコチンの測定の仕方は国際的な標準法があり、日本でもそれに従って測定された数値が表示されている。この数値は通気孔が開放された状態で測定されたもので、通気孔をふさいだ状態で測定するとニコチンの量は増える。

 つまり、実際に吸うとき、意識せずに指で通気孔をふさいで吸えば、ニコチンの量は増えてしまうわけだ。

 それを裏付ける研究がある。同医療科学院の稲葉洋平主任研究官らは約100人を対象にセンサー付きパイプをつけてたばこを吸ってもらい、主流煙や唾液に含まれるニコチン量を測った。その結果、ニコチンが0・6ミリグラム未満の低ニコチン表示のたばこを吸う人は、1回当たりの平均吸煙量が58・4ミリリットルで、高ニコチン表示の人(同50ミリリットル)より多くの煙を吸い込むことが分かった。少ないニコチンを補うために体が無意識により多くの煙を吸って体内のバランスをとろうとする行為が作用したとみられる。

 唾液中のニコチンは予想通り、高ニコチン表示のたばこの人が平均して高かった。しかし、外箱表示では10倍以上の差があったニコチン量が、唾液中では3倍程度の差しかなく、低ニコチン表示のたばこでも、予想以上にニコチンを摂取していた。

 稲葉さんは「実際に吸うときは、指で通気孔を押さえたりするので、通気孔の機能が十分に働いていない可能性がある。低ニコチン表示のたばこを吸う場合は、煙をより多く吸いがちなので、結果的にニコチンの摂取量は表示よりも多くなる」と低ニコチン表示だから有害性が低いとは限らないことを強調する。

●発がん性物質70種

 JTは「外箱のニコチン量は国際的な標準方法で定められた測定結果を表示している。しかし、吸い方は個人によって異なるため、それぞれの人が吸いこんだニコチン量が外箱の数値と相違することはありうる」とし、個人が吸う量を統一した数字で表すことは難しいと話す。

 一方、たばこの煙には約5000種類の化学物質が含まれ、そのうち約70種類は発がん性が指摘されている。ニトロソアミン、ベンゼン、ホルムアルデヒド、カドミウム、ヒ素化合物などは、国際がん研究機関(IARC)で発がん性のデータが最もそろっているグループ1にランクされている。また、たばこには体への影響が強いアルファ線を出す放射性物質のポロニウム210も多い。

 たばこの有害物質を調べてきた欅田(くぬぎた)尚樹・同科学院生活環境研究部長は「外箱の表示からは、たくさんある発がん性物質を知ることができない。低ニコチン表示のたばこでも、発がん性物質は他のたばこと同じように含まれている」と改めてたばこの有害性を強調している。

m3.com 2014年4月17日

微量の血液で大腸がん発見 国立がんセンターが開発
 早期の大腸がんを数時間で見つける方法を、国立がん研究センターなどの研究チームが開発した。ごくわずかな血液で調べることができ、従来の方法よりも精度が高い。数年以内の実用化を目指すという。研究成果を英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(電子版)に発表した。

 センターの落谷孝広・分子細胞治療研究分野長らは、細胞が分泌する「エクソソーム」という微粒子に着目。大腸がん細胞のエクソソームに特異的に多く含まれる物質を発見し、0・005ミリリットルの血液からそれをとらえて光らせる方法を開発した。1時間半から3時間で検出できるという。

 大腸がん患者194人の血液を調べたところ、約5割から検出。健康な191人から検出されたのは、1人だけだった。大腸がん特有のほかの物質も特定し、検査の精度をさらに上げることを目指すという。

 国内で大腸がんになる人は胃がんの次に多く、近い将来に最も多くなると予測されている。がん患者のうち、女性では大腸がんで亡くなる人が最も多い。

 現在検診で利用される、便に含まれる血液を調べる便潜血検査は、陽性が出た人のうちがんだったのは約4%という調査もあり、精度が高くない。

 落谷さんは「新しい方法は早期の大腸がんを発見するのに優れ、簡単で精度が高く、患者の負担を減らせる。早期診断が難しい膵臓がんや、がん以外の疾患の診断法にも応用できる可能性がある」と話している。

m3.com 2014年4月17日

食道がん手術で高い成果 川崎医科大、5年生存率7割超
 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)が食道がんの手術で成果を挙げている。通常は首、胸、腹の3カ所にメスを入れるが、できるだけ胸を開かないため、患者の体への負担が少ないのが最大の特徴。積極的なチーム医療で術前・術後の管理にも力を入れ、術後の5年生存率は7割(全国平均54%)を超え、全国トップクラスを誇る。

 「手術ができてよかった。まだまだやりたいことがたくさんあるからなぁ」。3月中旬、県内の女性(87)が病室でうれしそうに話した。高齢になると体力が落ち、外科手術は敬遠しがちだが、女性は体への負担が少ない方法で2週間前に手術を受けた。

 食道は体の中心にあり、心臓や肺、大動脈などに囲まれているため手術が難しいとされる。早期発見できれば内視鏡を使って切除が可能だが、進行している場合は首、胸、腹の3カ所にメスを入れ、がんやリンパ節を摘出した後で、胃などをつなぐ手術を行うのが一般的だ。

 しかし、同病院では開胸はせず、腹から横隔膜を切って、がんなどの部位を取り除く。「胸にメスを入れるより横隔膜を切る方が体の負担は少ない」という。手術時間も約4時間で、従来より2時間程度短縮。開胸の必要がある場合も、より切開面が小さくてすむ胸腔鏡を導入するなど工夫している。

 こうした傷をできるだけ小さくする低侵襲手術などは、合併症やがんの転移を抑制するといい、10%程度とされる術後の肺炎、縫合不全といった合併症も5%以下。2003〜12年に手術した61人の5年生存率は71・5%となっている。

 医師、看護師、栄養士らが連携したチーム医療による術前・術後の栄養管理やリハビリなどの支持療法も充実させた。手術の約2週間前から入院し、脂肪酸(魚油)を多く含む経腸栄養剤を摂取してもらうことで、炎症を引き起こす化学物質サイトカインを抑制する効果が期待できる。術後も体力トレーニングなどで体調管理を徹底する。

 消化器外科部長の平井敏弘教授は「体への負担が少ない方法と栄養サポートなどを取り入れれば、高齢でも手術は可能。低侵襲手術ができる人材育成にも努めたい」と話す。

m3.com 2014年4月17日

がん転移の仕組み解明 京大、予防法開発に
 がんの転移は、さまざまな臓器の表面を覆う「上皮組織」で、隣り合う細胞同士の相互作用がうまく働かなくなると起こるとの研究結果を京都大などのチームがまとめ、21日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。

 相互作用に関わっているとみられるのは、腎管から出るタンパク質「フィブロネクチン」で、細胞を下支えしている。

 高橋淑子京大教授は「このタンパク質を使い、副作用の少ないがんの転移予防法や治療法開発に役立つことが期待される」と話す。

 正常な上皮組織では、細胞は整然と並んでいるが、転移の初期段階では、刺激やストレスが加わると、上皮はもろくいびつな形になってバラバラになる。

 チームは、内臓を覆う薄い膜になる「体腔上皮」とその下に作られる腎管に着目。ニワトリの胚を使い、腎管を取り除いて体腔上皮の形成の仕方を調べたところ、いびつな形になった。さらにがん遺伝子を入れてストレスを与えると、細胞がバラバラになった。

 がん遺伝子を加えても腎管を残したままだと細胞はバラバラにならなかったため、フィブロネクチンの働きで細胞同士が作用し、がんの転移を防いでいるとみられた。

m3.com 2014年4月22日

大腸がんスクリーニングにおける便DNA検査の有効性を検証
 大腸がんの発生機序について解明が進む中,標準的な免疫学的便潜血検査(FIT)以外にも複数の検査法が提唱され,有効性を支持するエビデンスも蓄積されつつある。

 しかし,現時点ではFITが最も一般的なスクリーニング検査法として位置付けられている。

 米・Indiana UniversityのThomas F. Imperiale氏らは,複数の遺伝子変異などをターゲットにした便DNA検査(multitarget stool DNA testing)の大腸がんスクリーニングにおける有効性を免疫学的便潜血検査(FIT)と比較した研究の結果をN Engl J Med(2014; 370: 1287-1297)で報告した。

 同研究では,非侵襲的な便DNA検査による大腸がん検出率はFITより有意に高いことが明らかになった。ただし,偽陽性例も多かった。
 
 この結果について,米・White River Junction VA Medical CenterのDouglas J. Robertson氏らは,付随論評(2014; 370: 1350-1351)で,「便DNA検査の特異度の低さと費用の高さを考慮すると,FITのように年1回の頻度で検査を実施できる可能性は低い」との見解を示している。

Medical Tribune 2014年4月24日