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2014年3月 文献タイトル
働くがん患者32・5万人 厚労省が初めて推計
入眠困難と熟睡障害は死亡リスクを高める
スタチン常用と食道がん発症との間に有意な負の相関関係
川崎市立井田病院で食欲落ちた患者においしい薬膳定食/神奈川
精製したホウレンソウ成分 膵臓がん治療に効果
鉄を断ってがん追い込む 岡山大病院、臨床研究へ
マンモグラフィ検診による乳がん死の低減効果認められず カナダ・9万例対象のRCT
酒かすが肝炎予防に効果 月桂冠総合研究所

働くがん患者32・5万人 厚労省が初めて推計
 働きながらがん治療を受けている人は全国で約32万5千人に上るとの推計を厚生労働省がまとめた。2010年の国民生活基礎調査のデータを基に初めて算出し、今年2月中旬、がん患者の就労支援に関する検討会の初会合に提出した。

 がんの生存率が向上する一方で、就労可能な年齢でがんになる人は毎年少なくとも20万人を超える。相当数が仕事を辞めているとみられ、就労支援の重要性があらためて明らかになった。

 働くがん患者の内訳は、男性約14万4千人に対し女性約18万1千人。男性は60代が最も多く約6万1千人。それに50代(約3万4千人)、70歳以上(約3万2千人)が続く。

 女性は50代が約7万人で最多、次いで40代(約5万人)、60代(約3万4千人)の順。男性は肺がんなど高齢で発病するがんが多いのに対し、女性に多い乳がんは比較的低年齢で発病するといった違いを反映しているとみられる。

 厚労省によると、08年の新規患者約80万人(上皮内がんを含む)のうち、20〜64歳は約25万9千人で32%。対象を69歳まで広げると約36万5千人で46%に達する。今後、雇用延長などで働く人の高齢化が進むと、患者の就労支援はよりいっそう重要になる。

 同検討会のメンバーで、患者の就労を支援する会社やNPO法人を運営している乳がん経験者の桜井なおみさんは「がんによって患者本人の雇用が揺らぐだけでなく、患者を支える家族の仕事にも影響する。社会的、経済的な損失は非常に大きく、国としての戦略が必要だ」と話す。

 検討会は夏ごろまでに提言をまとめる予定。

m3.com 2014年3月11日

入眠困難と熟睡障害は死亡リスクを高める
 不眠症状のうち入眠困難と熟睡障害は死亡リスクの上昇と関係すると,米・Brigham and Women’s HospitalのグループがCirculationの2月18日号に発表した。

 不眠の訴えは特に高齢者に多く,死亡リスクと関係している可能性があるが,一貫したエビデンスはない。同グループは,不眠症状が死亡リスクの上昇と関係するかどうかを前向きに検討した。

 その結果、ほぼ常に入眠困難または熟睡障害がある男性はない男性と比べ,心血管疾患による死亡リスクが,それぞれ55%と32%高かった。

Medical Tribune 2014年3月13日

スタチン常用と食道がん発症との間に有意な負の相関関係
 スタチンの常用が食道がんの発症に予防的に働くことを示す研究の結果が,英国のグループによりGastroenterologyの3月号に発表された。

 スタチンには発がん抑制作用があることが示唆されている。同グループは,スタチンの常用と食道の腺がん,扁平上皮がん,食道胃接合部腺がんとの関係を検討した。

 BMI,喫煙,アルコール摂取,併用薬を補正した結果,スタチンの常用は食道腺がんおよび食道胃接合部腺がん発症と有意な負の相関関係を示した。

食道腺がんのリスク低下は用量と服薬期間の両方,食道胃接合部腺がんのリスク低下は用量と関係していた。

 また,1〜4年間のスタチン服用は食道扁平上皮がんの発症と有意な負の相関関係を示した。

Medical Tribune 2014年3月13日

川崎市立井田病院で食欲落ちた患者においしい薬膳定食/神奈川
 病院レストランの在り方を検討してきた川崎市立井田病院(中原区)のプロジェクトチームが、「からだにおいしい定食」を新たに考案し、3月から同病院内のレストランで販売を始めた。治療で食欲の落ちた患者らが食べやすいよう、薬膳の考えを取り入れた点が特徴。健康な人が食を見つめ直すきっかけになることも期待されている。

 同病院はがん拠点病院に指定されている。がん患者や高齢者の利用が多く、食欲低下が問題となるケースが目立つという。そうした面を考慮し、定食は単にヘルシーさを求めるのではなく、「どうやって食欲を保ち、おいしく食べ続けられるか」をコンセプトにメニューを組み立てた。

 十六穀米、主菜、小鉢、茶わん蒸し、スープを日替わりメニューで提供。漢方薬を使うわけではなく見た目も普通の定食だが、食材の持つ薬効(体が温まる、新陳代謝が良くなるなど)を役立てることをポイントに据えた。

 また、小鉢には川崎の地元野菜を積極的に取り入れ地産地消を推奨。食に関するパンフレットも年5回配布し、病院レストランを食と健康の情報発信基地として活用する試みも加えた。価格は900円。

 プロジェクトの中心メンバーの西智弘医師は「健康の源は食にある。そのことを食べながら学ぶ場として病院レストランは有効であり、地域のヘルスリテラシー向上の中心となる可能性も秘めている」と語った。

 プロジェクトチームには同病院の医師や看護師、職員ら約10人が参加。外部の業者に運営委託されている院内レストランについて、医療や患者の目線から在り方を再考しようと昨年3月に発足した。

 市民や運営業者らも交えて、これまでに10回のワークショップを開催。栄養士や料理研究家らの助言も得ながら、初の成果として「からだにおいしい定食」をプロデュースした。

m3.com 2014年3月14日

精製したホウレンソウ成分 膵臓がん治療に効果
 ホウレンソウに含まれる特定の糖脂質「MGDG(エムジーディージー)」が膵臓(すいぞう)がんの増殖を抑え、抗がん剤や放射線治療の効果を高めることを、神戸学院大と神戸大のグループが解明した。ホウレンソウをそのまま食べても効果はないが、精製すれば膵臓がん治療の補助食品として利用が期待できるという。

 膵臓がんは特徴的な症状に乏しく、発見が遅れて完治が難しいケースが多いとされる。さらに、抗がん剤や放射線治療は正常な細胞まで死滅させることがあり、臓器障害など副作用の懸念がある。

 グループは、マウスの体内にヒト由来の膵臓がん細胞を移植。MGDGと抗がん剤を併用した場合、抗がん剤を単独で使った時に比べ、がん細胞の増殖を抑える効果が約5倍になった。MGDGと放射線治療を併用した場合でも、放射線単独の時に比べてがん細胞の増殖抑制効果が約3倍になった。MGDGががん細胞の複製を抑えているとみられる。

 MGDGは葉緑体の膜の部分にあり、安全性の高い食品成分。MGDGの摂取によって抗がん剤や放射線の量を減らし、治療全体の副作用を軽減できる可能性がある。また、膵臓がん以外のがん細胞の増殖を抑える効果も期待できるという。

 グループのうち、神戸大医学部付属病院放射線腫瘍科の佐々木良平特命教授は「食品成分に既存のがん治療との相乗効果があるとは驚きだ」とし、神戸学院大栄養学部の水品善之准教授は「MGDGを利用して、毎日摂取できるがん治療補助食品を5年以内に実用化したい」と話している。研究成果は、神戸市内でこのほど開かれた日本分子生物学会年会で発表した。

m3.com 2014年3月18日

鉄を断ってがん追い込む 岡山大病院、臨床研究へ
 岡山大学病院(岡山市北区)は、進行性の肝臓がんの患者に対し、鉄を体内から取り除く薬剤を使って抗がん剤の効き目を高める治療の臨床研究を始める。近く倫理委員会の承認を経て、患者を募集する。

 対象は、手術ができずに飲み薬の抗がん剤「ソラフェニブ」を服用している、病状が進んだ「ステージ4」の肝臓がん患者10人。体内の鉄を除去する効果がある薬剤「デフェラシロックス」を1日1回飲む。

 研究を担当する岡山大学非常勤講師の大原利章医師(消化器外科)と准教授の能祖一裕医師(消化器内科)によると、鉄は肝臓がんの原因の一つ。鉄分の少ない食事をすれば肝臓の機能が保たれるとされる。

 今回の臨床研究で使う薬剤はがん細胞の増殖を抑えるものの、がん細胞に栄養を運ぶ血管を作り、がんの成長を助けてしまう面もあることが動物実験などで分かっている。そこで、がんの周りに血管を作らせない働きのある抗がん剤ソラフェニブと組み合わせる。

 研究では血液検査で安全性を確かめながら、がんが小さくならないか調べる。大原医師は「鉄をコントロールしてがんを追い込む新しい方法で、今まで治療が難しかった患者に希望を与えたい」と話している。

m3.com 2014年3月18日

マンモグラフィ検診による乳がん死の低減効果認められず
カナダ・9万例対象のRCT
 乳がんの早期発見を目的としたマンモグラフィ検診は世界各国で実施されているが,乳がん死の低減においてマンモグラフィ検診によるベネフィットがどの程度あるのかを正確に示した研究は少ない。

 カナダ・University of TorontoのAnthony B. Miller氏らは「40〜59歳の女性において,年1回のマンモグラフィ検診は触診あるいは通常ケアを上回る乳がん死の低減をもたらさず,同検診で発見された乳がんの22%は過剰診断であることが示された」とする最長で25年追跡したCanadian National Breast Screening Study(CNBSS)の結果を報告した。

 この結果を踏まえ,Miller氏らは「今回の結果は全ての国に当てはまるわけではないが,技術的に進んだ国ではマンモグラフィ検診の価値について再評価が必要である」との見解を示している。

 これに対し,「今回発表された論文がきっかけで乳がんスクリーニングは受ける必要がないと考える女性が増えるのではないかと危惧している」とした強い懸念も出ている。

Medical Tribune 2014年3月20日

酒かすが肝炎予防に効果 月桂冠総合研究所
 酒かすに含まれるタンパク質が、肝硬変や肝臓がんにつながる「非アルコール性脂肪肝炎」の予防に効果があることが、月桂冠総合研究所(京都市)の研究で明らかになった。28日に明治大生田キャンパス(川崎市)で開催の日本農芸化学会大会で成果を発表する。

 非アルコール性脂肪肝炎は、お酒を飲まない人でも脂肪分の取りすぎなどで発症する生活習慣病。自覚症状がほとんどなく、特に中高年の発症が多いという。

 月桂冠総研は京都府立医大の監修によるマウス実験で、ココアバターなど高脂肪の餌を与えた集団と、同じ餌に酒かすの成分を加えた集団を比較した。その結果、酒かすの成分を加えなかった集団では肝臓への脂肪の付き具合を示す数値が、加えた集団と比べて約3倍になったという。

 また肝硬変に進む過程で生じる肝細胞の死滅が、酒かすを加えた集団で抑えられたことも確認した。

 月桂冠の広報は「食品や飲料メーカーと組んで、酒かすを使った機能性食品を消費者に提案していきたい」と話している。

m3.com 2014年3月24日