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2014年2月 文献タイトル
がん細胞を正常化 鳥大研究グループが手法発見
尿だけで健康状態把握 新大教授ら研究スタート
肝臓がん発生の仕組み解明 愛知県がんセンター研究所
食道がんリスク高い「飲酒+喫煙」 Dr.中川のがんの時代を暮らす
低用量アスピリンで大腸腺腫の再発リスクが40%低下 日本人対象のRCT
子宮頸部 胎児残し、がん切除 琉大病院が成功
マンモグラフィ検診による乳がん死の低減効果認められず カナダ・9万例対象のRCT
漫画「がんのひみつ」刊行 学研から国立がん研究センター

がん細胞を正常化 鳥大研究グループが手法発見
 鳥取大学医学部の三浦典正准教授(54)=薬物治療学=の研究グループは30日までに、細胞内に存在して生命活動を制御する小分子リボ核酸(RNA)「マイクロRNA」の一種を悪性度の高いがん細胞に入れると、がん細胞が正常な細胞に変化することを発見した。抗がん剤が効かない末期がん患者に対して有効な治療になる可能性がある。

 24日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版で発表した。

 三浦准教授は長年、生命活動のためにデオキシリボ核酸(DNA)から発生するマイクロRNAを研究し、5年前からはマイクロRNAの一種の「520d」の働きを調べてきた。

 人間の肝臓がんの細胞をマウスの体内に入れると、通常ならがんになるが、事前に520dを細胞内に導入した肝がん細胞だと悪性腫瘍にはならず、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や正常な細胞になることを確認した。悪性度が高い「未分化型」のがん細胞でその作用が現れるのが特長という。

 実用化のためには、体内に入れるとすぐに無くなってしまう性質があるマイクロRNAを、がん細胞に届くまで無くならないように保護する方法を確立する必要がある。

 三浦准教授は「抗がん剤が効かないがんの治療に成果が生かせると期待している。患者さんに使えるように研究を続けたい」と話している。

m3.com 2014年2月3日

尿だけで健康状態把握 新大教授ら研究スタート
 尿を検査するだけで人間ドックを受診したように健康状態を把握することができるシステム開発に向け、新潟大と東芝が今年から本格的な共同研究を始める。尿に含まれる特定のタンパク質が病気の発生や進行に関わっているとみて、1000〜2000種類ほどのタンパク質の量の変化から病気の兆候を探る。新大大学院医歯学総合研究科の山本格(ただし)教授(64)=腎臓病理学=は「多くの人が介護を必要とせず、100歳まで元気に暮らせる社会にしたい」と意気込む。

 文部科学省が、10年先の社会を見据えた産学連携の研究に助成する「革新的イノベーション創出プログラム」の一環。新大は、東北大が中心に進める食事や運動、睡眠などの日常生活からさまざまな健康情報を把握し、管理するシステム作りの一端を担う。プログラムの期間は2013年度から最長9年間で、グループごとに毎年最大10億円が助成される。

 山本教授は、長年にわたり腎臓病の原因を調べており、10年に新潟日報文化賞を受賞している。

 今回の研究は、健康な人と、腎臓病患者の尿を継続的に採取し、質量分析機でタンパク質の種類ごとに含有量を調べる。さらに健康な人と腎臓病患者の尿の違いを見つけ、どのタンパク質に違いがあれば腎臓病と判断できるのかを突き止める。東芝は、得られたデータを生かして、日常的に健康状態を把握できる装置の開発を担う。

 山本教授は2年前から、研究員1人をスイスの研究機関へ派遣し、世界最先端の質量分析方法を学ばせている。研究員は4月に帰国後、研究に参加し、この分析法を活用して従来より高精度でタンパク質の量を測る。

 研究スタッフは約10人で、5月ごろから東芝社員らの協力を得て尿の採取を始め、7月にも本格的な研究に入る予定だ。

 山本教授は「まずは2年をめどに腎臓病の指標を見つけたい。さらには糖尿病などの生活習慣病、がんや心臓病、アルツハイマーなども把握できるように分析を進めたい」と話す。

 日本腎臓学会元理事長で、新大の下條文武前学長は「尿は情報の宝。血液検査のように、手間や負担がかからず、病気の早期発見に効果がある。夢のある研究だが、尿は日進月歩で研究が進んでいて、実現可能性は高い」と話した。

 <革新的イノベーション創出プログラム> 日本発の技術革新を目指し、世界市場にインパクトを与える産学連携の研究に行う文部科学省などの助成事業。昨年公募され、190件の提案の中から12グループが採択された。ほかには、カーボンナノチューブを使って汚染水を高精度に浄化する研究(信州大など)や、絵画やブロンズ像を高精度に再現する技術を用いて、世界の美術作品を展示する研究(東京芸術大など)といった研究がある。

m3.com 2014年2月6日

肝臓がん発生の仕組み解明 愛知県がんセンター研究所
 肝炎ウイルスによる慢性肝炎から肝臓がんを発症するメカニズムを愛知県がんセンター研究所(名古屋市)がマウスの実験で解明し、7日までに米学会誌に発表した。遺伝子で「メチル基」という分子がくっつく「メチル化」と呼ばれる異常が起きるのが原因で、これを抑えれば、がんの発生を抑制できる可能性がある。

 同研究所によると、肝臓がんは8割以上が、肝炎ウイルス感染後、慢性肝炎や肝硬変を経て発症する。これまでウイルス感染後に遺伝子異常が起こることは分かっていたが、発症の仕組みは解明されていなかった。

 同研究所は、人の肝細胞を移植したマウス47匹で発がん過程を解析。B型やC型の肝炎ウイルスに感染すると、免疫反応からウイルスを排除しようと細胞が活性化し攻撃するが、同時に肝臓で炎症が起きてタンパク質が増加する。この細胞やタンパク質が肝細胞も攻撃して破壊してしまう。

 肝細胞は修復されるが、破壊と修復を繰り返す過程で、メチル化が起きて遺伝子が正常に機能しなくなり異常が発生、がん細胞が生まれるという。

 同研究所の近藤豊(こんどう・ゆたか)ゲノム制御研究部長は「炎症はウイルスなど『外敵』を排除する反応だが、こうした防衛活動ががんを引き起こすという皮肉な仕組みが分かった。抗炎症作用を持つ薬を投与することで、肝臓がん発生の抑制が期待できる」としている。

 ※米学会誌は「ガストロエンテロロジー」

m3.com 2014年2月10日

食道がんリスク高い「飲酒+喫煙」
Dr.中川のがんの時代を暮らす
 食道がんで亡くなる芸能人が続いています。今年も、タレントのやしきたかじんさん(64)や女優の淡路恵子さん(80)がこのがんで命を落としました。僕の母校、暁星学園(東京都千代田区)の先輩である中村勘三郎さんも、2012年末に食道がんで悲しい最期を遂げています。

 芸能人に食道がんが多い理由は、「飲酒+喫煙」の生活習慣にあるといえます。たかじんさんは、私も治療法などについて何度も相談を受けたことがありますが、療養中も大好きなワインをたしなんでいました。淡路さんも、遺族がブランデーとたばこをひつぎに入れたほど、酒とたばこを愛していたそうです。勘三郎さんも酒好きでした。30年近くがん治療に携わってきましたが、食道がんの患者さんで、酒にもたばこにも縁のない例はほとんどなかったと思います。

 酒とたばこは、食道がんを増やす「リスク因子」ですが、量が増えるとともに危険性が高まります。たばこの場合、喫煙指数(1日の箱数×喫煙年数)が20未満では、食道がんになる確率は吸わない人に比べて2・1倍ですが、指数が40以上になると4・8倍に跳ね上がります。

 飲酒は、日本酒に換算して1〜2合では2・6倍、2合以上では4・6倍になります。芸能人に多い「飲酒+喫煙」は特に危険で、リスクが10倍に達するという研究もあります。さらに、ヘビースモーカーが顔を赤くしながら3合以上お酒を飲むと、食道がんのリスクは30倍以上ともいわれます。芸能人には、こんな人が多いのかもしれません。

 また、勘三郎さんの場合、診断された時点でリンパ節に転移がありました。食道がんは胃や腸と違い、臓器の外側を覆う膜がないため、早い時点で転移が起きるのが特徴なのです。最近は手術と並び、放射線と抗がん剤を併用する「化学放射線治療」も広がってきましたが、放射線だけの治療に比べ副作用が強く出る傾向があります。

 食道がんのリスクを減らし、予防するため、野菜や果物を食べる方法もありますが、何といっても、「禁煙+節酒」が最良の予防法といえます。

中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長

m3.com 2014年2月13日

低用量アスピリンで大腸腺腫の再発リスクが40%低下
日本人対象のRCT
 大腸がんに進展する可能性が高い腺腫(ポリープ)の再発リスクが欧米人と同様に,日本人でもアスピリンにより低下するかもしれない−。国立がん研究センターや京都府立医科大学など19施設で行われた二重盲検ランダム化比較試験(RCT)により,低用量アスピリン腸溶錠を2年間服用することで,プラセボ群に比べて大腸腺腫または腺がんの再発リスクが40%低下するとの結果が得られた。

 国立がん研究センター研究所がん予防研究分野の武藤倫弘氏らは今回,大腸がん高リスクと考えられる大腸腺腫(大腸ポリープ)および/または腺がん(粘膜内に浸潤がとどまるものと定義)を内視鏡手術で切除した40〜70歳の男女311例を対象に,低用量のアスピリン腸溶錠の再発予防効果を検証する多施設共同の二重盲検プラセボ対照RCTを実施した。

 これらの患者を低用量のアスピリン腸溶錠(100mg/日)を2年間投与するアスピリン群(152例)とプラセボ群(159例)にランダムに割り付け,2年後の内視鏡検査で腺腫の再発などを評価した。

 その結果の分析では,プラセボ群に比べてアスピリン群で大腸腺腫または腺がんの再発リスクが40%低下した。

Medical Tribune 2014年2月25日

子宮頸部 胎児残し、がん切除 琉大病院が成功
 琉球大学は2月24日、同大学医学部付属病院産婦人科が、早期の子宮頸(けい)がんを患う30代の妊婦に、胎児を残したまま子宮の患部を切除する手術を実施し、成功したと発表した。手術は昨年8月に実施され、女性は1月に無事出産した。病院によると現在は母児とも退院し、健康で経過は順調だ。

 国内で同様の手術を受けて出産したのは、1例目の大阪大学医学部付属病院に次いで、琉大が2例目という。

 子宮頸がんは20〜30代の若い女性に増えており、妊娠しやすい時期と重なる。県内でも子宮頸がんのタイプによっては、妊娠を継続したまま手術ができるようになり、治療の選択肢が広がった。

 同付属病院で手術を受けた女性は、妊娠14週で、がん細胞が子宮の深部に入り込む浸潤子宮頸がん(1B1期)が見つかった。17週で子宮頸部を広く摘出し、子宮体部と膣を縫い合わせる「広汎子宮頸部摘出術」を受けた。女性は今後も新たに妊娠、出産できる可能性があるという。

 妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合、通常は妊娠を諦めて子宮を摘出する手術が標準治療だが、近年腫瘍の大きさが2センチ以下などを目安に、妊娠継続を望む人には、子宮と胎児を残す「広汎子宮頸部摘出術」ができるようになった。

 執刀医で同病院産婦人科の青木陽一教授は「妊娠中に子宮頸がんが見つかり、悩んでいる人にとって治療の選択肢になる」と話している。

m3.com 2014年2月25日

マンモグラフィ検診による乳がん死の低減効果認められず
カナダ・9万例対象のRCT
 乳がん予防を目的としたマンモグラフィ検診は世界各国で実施されているが,乳がん死の低減においてマンモグラフィ検診によるベネフィットがどの程度あるのかを正確に示した研究は少ない。

 カナダ・University of Toronto名誉教授のAnthony B. Miller氏らは「40〜59歳の女性において,年1回のマンモグラフィ検診は触診あるいは通常ケアを上回る乳がん死の低減をもたらさず,マンモグラフィ検診で発見された乳がんの22%は過剰診断であることが示された」とする最長で25年追跡した研究の結果を報告した。

 この結果を踏まえ,Miller氏らは「今回の結果は全ての国に当てはまるわけではない」とした上で,「技術的に進んだ国ではマンモグラフィ検診の価値について再評価が必要である」との見解を示している。

Medical Tribune 2014年2月27日

漫画「がんのひみつ」刊行
学研から国立がん研究センター
 子どものがん教育に役立てるため、国立がん研究センターは、学研の学習漫画「まんがでよくわかるシリーズ」から「がんのひみつ」を刊行した。非売品だが、今月から「学研電子ストア」で無料の電子書籍として公開された。

 がんが身近な病気であること、がんになっても社会で活躍できること、検診・予防の重要性などを、小学生の主人公の目を通して描く。

 同センターは「専門の指導者がいなくても、子どもたちが自発的に学習できるように、物語を重視する内容を目指した」と説明する。物語の途中には、がんができる仕組みなど豆知識をまとめたコラムも掲載した。

 学研電子ストアのホームページはhttp://ebook.gakken.jp/gstore/

m3.com 2014年2月27日