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2014年9月 文献タイトル
若年層のがん、診断時の進行度高く 61万人を集計
世界に先駆け「がんワクチン療法」の確立目指す 神奈川県立がんセンター
三重大、がん標的遺伝子発見 副作用少ない治療に期待
精子の元の細胞、放射線への強化に成功 京都大
肺腺がん、「XAGE」抗原が生存に関与 川崎医福大教授らのグループが証明
胃がんの8割がピロリ菌 除菌で3〜4割減少 国際がん機関が報告書

若年層のがん、診断時の進行度高く 61万人を集計
 胃がんや大腸がんなどの主要ながんで、若年層は診断時に最も進行した4期になっている割合がほかの年代より多いことがわかった。国立がん研究センターが、全国のがん診療連携拠点病院の2012年のデータをまとめた結果を発表した。

 がんセンターは、全国に397カ所ある拠点病院で12年にがんと診断されたか、他病院で診断されて受診した61万3377人について集計した。

 がんは進行度に応じて1期からもっとも進んだ4期まで4段階に分ける。39歳以下で診断時に4期とされた患者は胃がんでは27・9%、大腸がんでは20・3%だった。40代以上はいずれも20%未満だった。肝がんでの4期は39歳以下だけが30%を超え、33・1%だった。肺がんでは46・6%と高率で、90歳以上の50・8%を除けば40代以上はいずれも30%台だった。

 いずれも、早期の1期だった割合は40〜80代に比べ低かった。

 がんセンターの堀田知光理事長は「若い患者のがんは進行が速いのが原因ではないか」と話している。若年層はこれらのがんの検診の対象外だが、体に異常を感じたらすぐ受診することが望ましいという。

 集計は07年分から始まり、6回目。年代別に進行度を集計したのは初めて。

m3.com 2014年9月2日

世界に先駆け「がんワクチン療法」の確立目指す
神奈川県立がんセンター
 県立がんセンター(横浜市旭区)が今月から治験を始める「がんワクチン療法」は、がん細胞を体内の異物と認めて排除しようとする免疫力を活性化させる“次世代の治療法”だ。

 世界に先駆けて標準的な治療法として確立されれば、切除不能な進行がんの患者に新たな希望を与えられる可能性もある。さまざまな種類のがんへの応用や新療法の開発も目指す「県立の研究開発拠点」が、医療革新に向けた新分野で存在感を高めようとしている。

 「がんワクチン療法は、期待されているが標準治療として確立されていないのが現状。科学的根拠に基づいて、この療法を開発していきたい」

 県立がんセンターで10日に開かれた会見で赤池信総長はこう述べ、同センターが新たな1歩を踏み出す意義を強調した。

 がんワクチン療法が脚光を浴びるようになったのは、米国で前立腺がんを対象としたワクチンが承認された2010年。現在、国内で承認されたがんワクチンはなく、新たながん治療法として世界中で開発競争が進んでいる。

 同センターが使うがんワクチン「サバイビン2B」の第1段階の治験は、安全性を確認する目的で札幌医科大の研究グループが12年8月から13年5月にかけて実施。単独で投与された患者のうち約53%でがん進行が抑えられ、重い副作用は認められなかったという。

 今回の治験は第2段階。薬の使用量や効果的な使い方などを調べる目的で、医師が主導して16年12月まで実施する。

 次の第3段階が最終段階で、数多くの患者を対象とし既存の薬と比較して効果や安全性を確認。その後、医薬品として国の承認や保険適用を目指している。

 同センターは昨年11月、建て替えによる新病院に移転。15年には放射線の一種でがん細胞を狙い撃ちにする重粒子線治療施設が稼働する予定で、がん治療や研究機能を拡充させている。

 今年4月に稼働した「がんワクチンセンター」では、がんワクチンが適応できるがん種の増加や発症・再発予防への活用も目指している。

m3.com 2014年9月12日

三重大、がん標的遺伝子発見
副作用少ない治療に期待
 がん細胞が栄養を取り入れるための血管を作り出す「血管新生」を促すヒトの遺伝子を、三重大学大学院医学系研究科の田中利男教授(薬理ゲノミクス)の研究グループが発見し、十八日発表した。ヨーロッパ生化学学会の学術誌「FEBS Letters」のオンライン版に掲載されている。

 同大によると、血管新生の原因となる別の遺伝子が十年ほど前に発見されており、この遺伝子の働きを抑える抗がん剤はすでに使用されている。しかし、この遺伝子は血管を形成する役割があることから、心臓や消化器への副作用が課題となっていた。

 これに対し、田中教授らが新たに発見した遺伝子は、臓器の形成など大きな機能を持つとの報告事例はないため、この遺伝子の働きを抑制する抗がん剤が開発されれば、副作用の軽減も期待される。田中教授は「がん治療の新たな選択肢となりうる」としている。  田中教授らは、ヒトと遺伝子構造が似た小型の淡水魚「ゼブラフィッシュ」を改良し、より実験に適した特徴を持たせた「ミエコマチ」を開発。これにヒトのがん細胞を移植して遺伝子を解析したところ、「血管新生」に合わせて増加する遺伝子が見つかった。

 この遺伝子に血管新生との因果関係があると考えた田中教授らが、ミエコマチにこの遺伝子を投与したところ、血管新生の起こる確率が上昇した。その一方で、この遺伝子の働きを抑える試薬を投与すると、血管新生の発生確率は減少したという。

 田中教授は同日、三重大で会見し、「この遺伝子を基に抗がん剤が開発されれば、がん治療の大きな選択肢となるはずだ」と研究成果を強調。「がん細胞を移植しやすく、効果も確認しやすいミエコマチを使ったからこそ得られた成果でもある」と述べた。

m3.com 2014年9月19日

精子の元の細胞、放射線への強化に成功 京都大
 放射線などに弱い精子のもとになる細胞(精子幹細胞)の抵抗性を高めることにマウスの実験で成功したと京都大医学研究科の篠原隆司教授らが米科学誌ステムセル・リポーツ電子版に発表した。研究が進めば、小児がんを放射線などで治療した後の男児が大人になった際、不妊症になるのを防げる可能性があるという。

 普通の細胞は、放射線や抗がん剤でDNAに傷が付くと、p53という遺伝子が働き、傷ついた部分が修復される。しかし精子幹細胞ではこの遺伝子が働かないと考えられていた。

 ところが、篠原教授らがマウスの精子幹細胞を培養して放射線を当てる実験を行うと、この遺伝子は活発に働いた。ただ、その結果、2種類のたんぱく質が細胞内で大量に作られ、細胞が死んでしまうことがわかった。これらのたんぱく質を遺伝子操作で作れなくすると放射線や抗がん剤に対する精子幹細胞の抵抗性は3-8倍強くなったという。

 小児がんは完治するケースが増えているが、放射線治療後の男児の場合は精子欠乏症になり、不妊の原因となる場合がある。大人の患者と違って治療前に精子を保存しておくことができないという問題もあった。

m3.com 2014年9月21日

肺腺がん、「XAGE」抗原が生存に関与
川崎医福大教授らのグループが証明
 川崎医療福祉大の中山睿一教授(腫瘍免疫学)と川崎医科大の岡三喜男教授(呼吸器内科学)らの共同研究グループは、肺腺がんに特異的に現れる抗原「XAGE」に対する免疫反応が、完治が難しい進行がんと診断された後でも機能しており、患者の生存期間に深く関わっていることを5年間にわたる追跡調査で証明した。

 がんの進行を遅らせるワクチンの開発につながるといい、グループは成果を活用した新たな免疫療法も検討している。 肺がんの中で最も多いのが気管支の末梢部分に発生する肺腺がん。中山教授らは、肺腺がん細胞の40―50%にXAGEが存在することを約10年前に発見していた。

 一般に、がん細胞は自分の細胞が変化(がん化)したため、抗体が異物と認識できず免疫反応が起こりにくいという。抗原があれば、それが“目印”となって抗体となるリンパ球が活性化し、がんの進行は抑制される。

 グループは2007年以降、川崎医科大付属病院で進行した肺腺がんと診断された患者145人を対象に、XAGEの有無と免疫反応などを観察。診断後の生存期間の中央値を比較したところ、免疫反応があるグループは33・3カ月、ないグループは15・1カ月だった。

 一方、がん細胞の周りには免疫の働きを抑えようとする「制御性T細胞」が多数集まっていることも確認した。「がん細胞排除の障害になっている可能性がある」として、制御性T細胞を取り除く抗体薬を投与する医師主導臨床治験を13年2月から始めている。

 岡教授は「XAGEを使った新型ワクチンの開発を進め、制御性T細胞を除去する治療と併用した複合型免疫療法も実現させたい」と話している。

 成果は25日に横浜市で開催される日本がん学会総会で発表する。米国がん学会の公式学術誌、世界肺がん学会誌にも掲載される。

m3.com 2014年9月24日

胃がんの8割がピロリ菌 除菌で3〜4割減少
国際がん機関が報告書
 世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC、本部フランス)は24日、胃がんの8割がピロリ菌の感染が原因で、除菌で胃がんの発症を3〜4割減らせるとの報告書を発表した。国内事情に応じて、除菌による胃がん予防対策を検討するよう各国に求めた。

 IARCは1994年にピロリ菌を発がん要因と分類したが、胃がんの主要な原因であると認めたのは初めて。特に、日本人に多い胃の入り口(噴門部)以外の胃がんでは、9割の原因であると推測されるという。

 報告書は国際的な専門家で構成される作業部会が、従来の研究結果や疫学調査を精査してまとめた。全胃がんの78%、噴門部以外の胃がんの89%がピロリ菌の慢性感染が原因だと考えられるという。抗生物質を使った除菌で発症が大幅に抑制できるが、抗生物質の耐性菌が増えるなどのマイナス面も指摘した。

 このため、患者数やピロリ菌検査・除菌の費用、医療対策の優先度など各国の事情に応じて対策を検討すべきだとした。

 報告書によると、胃がんは2012年に世界で約100万人が発症し、約72万人が死亡、がんの死因としては第3位となっている。日本では年間約5万人が死亡し、がん死因では肺がんに次いで2位。

m3.com 2014年9月25日