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2013年6月 文献タイトル |
日焼け止めの日常使用で皮膚の老化24%抑制,任意使用と比べ |
「炭水化物を植物性脂肪に」で前立腺がん患者の死亡リスク3割減 |
米で喫煙女性の死亡リスク上昇 喫煙関連リスクの50年間の変化を検討 |
豊胸手術で乳がんの診断が遅れる可能性 |
米国医師会が方針「肥満は疾患」 |
日焼け止めの日常使用で皮膚の老化24%抑制,任意使用と比べ |
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クリーム状や乳液状などさまざまな種類がある日焼け防止薬(日焼け止め)。紫外線から皮膚を守ることで,乾燥肌やシミ・シワを防ぐだけではなく,皮膚がんのリスクを減らすことにもつながるとされる。 オーストラリア・王立ブリスベン病院のMaria Celia B. Hughes氏らは,日常的な日焼け止め使用が皮膚の老化を防止できるかを検証するため,日焼け止めの日常使用または任意使用,および酸化防止効果で知られるβカロテン摂取の有無による2×2ファクトリアルデザインでのランダム化比較試験(RCT)を行った。 その結果,日焼け止めの任意使用に比べ日常使用では皮膚の老化が24%抑制されていたことが分かった(Ann Intern Med 2013; 158: 781-790)。 また,βカロテンの摂取では,皮膚の老化防止に効果が示されなかったという。 Medical Tribune 2013年6月6日 ![]() |
「炭水化物を植物性脂肪に」で前立腺がん患者の死亡リスク3割減 |
前立腺がん診断後の食事と,がんの進行や全死亡との関連について多くは分かっていない。 米カリフォルニア大学のErin L. Richman氏らは,男性医療従事者を対象とした疫学研究 Health Professionals Follow-up Study (HPFS)の参加者で,骨転移のない前立腺がんと診断された患者を前向きに追跡し,診断後の脂肪摂取と予後との関連を分析。 総カロリーの10%が炭水化物から植物性脂肪に置き換わると,致死性前立腺がん(遠隔転移または前立腺がん死亡)のリスクが29%,全死亡のリスクが26%減少することを明らかにした(JAMA Intern Med 2013年6月10日オンライン版)。 同研究では,植物性脂肪は,特に植物油やナッツから摂取されていた。 Richman氏らによると,これらの食物の摂取により,血中の抗酸化物質が増加し,インスリン,LDLコレステロール,炎症マーカー,酸化ストレスが低下することが報告されており,前立腺がんの進行を抑制した可能性がある。ただし,植物性脂肪が前立腺がん特異的アウトカムを改善するのか,例えば他のフィトケミカルが関与しているのかなど,さらなる研究が必要だろうと指摘している。 また,前立腺がん患者において,心血管系に良い食事,つまり炭水化物と動物性脂肪を植物性脂肪に置き換えることで全死亡は減らせると結論付けている。 Medical Tribune 2013年6月12日 ![]() |
米で喫煙女性の死亡リスク上昇 喫煙関連リスクの50年間の変化を検討 |
米国がん協会(ACS)疫学部門のMichael J. Thun副部長らは,1960年代と80年代の2件のコホート研究データと,2000年以降の5件のコホート研究の統合データを解析し,米国における喫煙関連リスクの50年間の変化を検討。 喫煙女性の死亡リスクは年々上昇しており,現在では非喫煙者と比べた喫煙者の死亡リスクは男女ともに高く,ほぼ同等との結果をNew England Journal of MedicineのSpecial Article(2013; 368: 351-364)として発表した。 今回の研究によって得られた主な結果は以下の通り。 (1)1960年代以降,女性の喫煙による死亡リスクは上昇を続け,現在では,喫煙者の肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD),虚血性心疾患,全脳卒中による死亡リスクと全死亡率は男女ともに同等である。 (2)男性の55〜74歳群と女性の60〜74歳群で,喫煙者の全死亡率が,喫煙経験のない者の3倍以上であった (3)COPDによる死亡率は,喫煙者の間で男女とも上昇を続けている。これは1970年代から紙巻きたばこのデザインなどが変更されたことによると考えられる(フィルターの種類とたばこの葉のブレンド方法が変わり,煙のpHが下がった)。このような変更は煙を深く吸入することを助長し,肺実質の煙曝露を増加させた。これは末梢型肺がん発症率を上昇させ,逆に中枢気道の小細胞がんと扁平上皮がんを減少させた可能性がある (4)禁煙はその開始年齢にかかわらず,喫煙関連疾患による死亡リスクを劇的に低下させる。40歳までに禁煙すれば,ほとんどの超過リスクを回避できる (5)喫煙の害は学歴に関係なく影響を及ぼす。喫煙経験のない者に比べた喫煙者(現在の喫煙者と過去の喫煙者)の相対死亡リスクは高卒者と大卒者の間で同等だった カリフォルニア大学のSteven A. Schroeder博士は,同誌の付随論評(2013; 368: 389-390)で「健康における便益に関しては,いつ禁煙しても遅過ぎることはない」とし,禁煙を奨励する取り組みをさらに進めるべきであると強調。 さらに「喫煙が社会的地位の低い階層の悪弊と見られていることにより,保健政策や研究計画を立てる者にとって喫煙リスクが見えにくくなってきた」とし,そうした当事者に対して喫煙の流行を抑制する上で役立つとされる政策にいっそうの注意を払うよう忠告している。 Medical Tribune 2013年6月13日 ![]() |
豊胸手術で乳がんの診断が遅れる可能性 |
ラバル大学(カナダ)のEric Lavigne氏らは,1993〜2012年に発表された12件の研究のシステマチックレビューとメタアナリシスを行い,「美容目的の豊胸手術を受けた乳がん患者では,同手術を受けていない患者に比べて診断時のステージがより進行している場合が多い傾向にあり,乳がん発症後の死亡リスクも有意に高い」との結果をBMJ(2013;
346: f2399)に発表した。 ただし,今回解析の対象とした研究には交絡因子による調整を行っていない研究も含まれていたため,同氏らは「この結果は慎重に解釈すべきである」としている。 美容目的の豊胸手術への関心は高まる一方で,米国では美容目的の手術として同手術は最も施行件数が多く,2011年の施行件数は30万7,000件に上った。 しかし,豊胸手術を受けた女性にマンモグラフィによる乳がん検査を行った場合,豊胸用インプラントの陰影で乳腺組織が部分的に不明瞭になることがあるため,乳がんの早期発見が困難になる可能性が指摘されている。 Lavigne氏らは今回の研究の限界を幾つか指摘した上で「豊胸手術が乳がんの診断や予後に及ぼす長期的な影響については,交絡因子で調整した解析を行うなど,さらなる研究が必要である」との見解を示している。 その一方で,同氏らは「豊胸手術を受けた女性では,受けていない女性に比べて診断時に限局性乳がんよりも非限局性乳がんであるリスクが高いことを示す複数のエビデンスがある。また,豊胸手術が乳がんと診断された後の乳がん特異的生存率を低下させることを示すエビデンスもある」と付け加えている。 Medical Tribune 2013年6月20日 ![]() |
米国医師会が方針「肥満は疾患」 |
6月18日,米国医師会(AMA)が年次集会で公衆衛生または科学上の新たな問題に関する方針を発表した。会員らの投票により10の方針が採択。「肥満は医学的介入が必要な疾患」も含まれている。 AMAは「肥満を医学的介入が必要な疾患と認識し,治療と予防の進展に取り組む」との方針を採択。声明の中で「米国人の3人に1人が直面するこの複雑な問題の解決に取り組むべき」と述べている。 この宣言を受け,米国心臓協会(AHA)も「心臓病と脳卒中の重要な危険因子である肥満に対し,さらなる集中が求められる」とのコメントを発表。個人,産業界,医療関係者や行政が一丸となって働きかけるべきと訴えた。 一方,循環器専門メディアthe heart.orgでは「肥満は喫煙と同様,病気ではない。喫煙が肺がんや肺気腫を引き起こすように肥満は糖尿病や高血圧につながっている」「肥満は深刻な問題だが,なぜ必ずしも健康に問題のない人まで含めて米国人の3分の1を疾患と診断すべきなのか」といったAMA会員の反対意見も紹介している。 AMAはこの他,「遺伝子による差別に反対」「男性同性愛者の生涯にわたる献血の禁止に反対」「小児へのエナジードリンク販売を禁止」「長時間の坐位による健康リスク対策」などの方針を採択した。 Medical Tribune 2013年6月25日 ![]() |