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2013年2月 文献タイトル
スタチン(高脂血症用薬)使用で食道がんリスクが30%低下 13報をメタ解析
週刊誌のがん関連記事や広告は増加傾向,しかしその内容は…東大グループの調査
喫煙は“美肌の敵”を証明,岐阜大の日本人女性対象調査で 非喫煙者に比べ多いメラニン,紅斑量
乳がんと前立腺がんに発現する抗原と結合するT細胞受容体のクローニングに成功
飲酒によるがん死亡への影響,安全な閾値なし 米研究
身体活動による余命の延長 推奨レベル未満でも効果見られる
乳がんや大腸がんのスクリーニング
平均余命10年未満では便益よりリスクの方が大きい

スタチン(高脂血症用薬)使用で食道がんリスクが30%低下
13報をメタ解析
 スタチン使用とがんリスクとの関連はしばしば議論されるテーマとなりつつある。最近では,がん関連死亡率の減少につながるとのデンマークからの報告などもあるが,こうした結果については慎重に受け止めるべきとの意見も多い。

こうした中,米メイヨークリニック消化器・肝臓病科のSiddharth Singh氏らは,スタチン使用と食道がんとの関連をメタ解析により検討。「スタチン使用群では食道がん発症率がスタチン非使用群と比べて約30%有意に低く,この傾向はとりわけ,バレット食道患者の食道腺がん発症に関して顕著であることが示された」とClin Gastroenterol Hepatol 2013年1月28日オンライン版で報告した。

欧米では食道腺がんの増加が深刻な問題に

 近年,欧米を中心に食道がん(食道腺がん,食道扁平上皮がん)の中でも予後不良とされる食道腺がんの割合が増える傾向にある(日本では食道がんの大半は食道扁平上皮がんであり,欧米とは事情が異なる)。米国も例外ではなく,その背景として肥満の増加が指摘されている。加えて,バレット食道患者では食道腺がん発症リスクが特に高いことから,その対策(診断・予防)も喫緊の課題となりつつある。

 スタチンと食道がんとの関連については,食道がんリスク低下につながることを示唆した複数の研究が存在する。現在米国で議論の的となっている,バレット食道患者の食道腺がんリスクにフォーカスした研究も発表されているが,その結論はまちまちで,統一的見解には至っていない。

 そこで,Singh氏らはMedline,Embase,Web of Scienceに2012年8月までに収載されたランダム化比較試験(RCT)および観察研究の中から13報をピックアップし,スタチン使用と食道がん全体との関連を検討した。

 その結果,スタチン使用群では同薬非使用群と比べ,潜在的交絡因子による調整後の食道がんリスクは28%有意に低かった。

 質が高いと評価された観察試験7件のみに対象を絞った検討でも,スタチン使用による食道がん発症の有意なリスク低下が確認された。

 Singh氏は「今回の解析の結果,スタチンが食道がんリスクの低下につながること,中でも,バレット食道患者における食道腺がんの発症リスク低下に有用と考えられることが示唆された」と指摘。「今後はスタチン使用期間などとの関連をよりいっそう明らかにするとともに,バレット食道患者などの高リスク群に対するスタチンの食道腺がん予防効果を臨床試験によって検証すべき」と結んでいる。

Medical Tribune 2013年2月1日

週刊誌のがん関連記事や広告は増加傾向,しかしその内容は…
東大グループの調査
 新聞やテレビでは,著名人の訃報や闘病の様子など,疾患や医療に関連する情報を目にしない日はない。中でも国民の2人に1人が罹患し,3人に1人が死亡するがんへの関心は高い。

 東京大学泌尿器科の永田政義氏らがこのたび日本で発行されている週刊誌のがん情報の量と質に関する調査を実施,その結果をJpn J Clin Oncol 2013年1月30日オンライン版に報告した。

 新聞やテレビと異なり,週刊誌におけるがん報道や広告の実態を調査した報告はこれまでほとんどなかったと同氏ら。調査からは,近年,週刊誌でのがん関連情報が増加する傾向が明らかになっている。ただし,同氏らはその内容には課題があったとも指摘した。

週刊誌記事全体のおよそ2%ががん関連,徐々に増加

 日本の主な週刊誌6誌(週刊新潮,週刊ポスト,週刊現代,週刊文春,週刊朝日,サンデー毎日)の総発行部数は270万部に上ると推計され,社会的影響力が大きいと永田氏ら。こうした週刊誌では健康や疾患,医療に関するニュースがしばしば取り上げられるが,中でも社会の関心が高いとされるがんに関連する情報がどのように取り扱われているのか実態は明らかでなかったと説明。今回の調査を実施した。

筆頭著者,永田政義氏との一問一答

「エビデンス不十分,画期的新薬の記事に過大な期待抱く患者は少なくない。取材手法の見直しが必要」


〜今回の結果について,従来の新聞やテレビでのがん情報の取扱いと共通する点,異なる点は?

 一般的な特徴として,テレビは広く情報が伝えられるが,紙上メディアと異なり,複雑な情報は伝えにくいため内容は簡潔なものに限られる。新聞は,スペースの制限があり,そのサイズと紙面の位置によるバイアスがある。週刊誌は,紙面スペースに制限がなく,10ページ以上に渡る特集記事も組むことができる。

 共通点は,高齢社会でがんにかかる人や亡くなる人が増え,全体的に報道の割合がどのメディアでも増加傾向にあることではないか。

 内容に関しては,新聞のがん報道は,がんについての医療制度に関する記事の比率が高い。医療費や新薬の認可,医療訴訟や医療過誤などである。政治や経済からの目線の記事が多くなる。

 週刊誌はそれと比べると,有名人のがん罹患記事やがんによる死亡追悼記事の比率が高く,がん患者からの目線で記事が書かれている。テレビは同じく有名人のがん罹患記事,そして病気について医師が解説するいわゆる健康番組が多いと思われる。

〜実際の臨床でメディアの報道による影響を感じることはあるか? また,どう対応しているのか?

 特に末期のがん患者から「週刊誌に載っていた免疫治療をやってみたいけど,紹介状を書いてくれないか」などと聞かれることがある。エビデンスレベルの高い医学雑誌で効果が示されているわけではないことと,保険がきかず自費なので値段が非常に高くなる可能性をお話しし,よく説明するが,最終的には患者の希望に沿わざるをえない。

 こうした治療を扱っている記事を見ると,非常に期待を持たせるような書き方が多く,現実とのギャップを専門医が説明しなければならない。

 また,まだ認可されていない新薬に関して,「進行○○がんに希望の新薬登場」などと,あたかも特効薬が日本ですぐに使えるかのように記事に書いてあると,末期のがん患者は非常に期待する。

 しかし,実際の予後延長期間のデータは新薬使用でも数カ月の延長しか期待できないことが多い他,日本で保険適用されるのは数年先になることを説明しなければならず,結果的にがっかりさせることになる。記事の書き方によるが,論文のデータをきっちり示した上で,あまり期待をさせ過ぎない記事の構成が望ましい。

〜今回の調査では根拠不十分な免疫療法などを含む記事が多いこと,専門医コメントが特定の医師に集中していたことが指摘されている。前者は専門誌では取り上げられないが一般の人が興味を抱きそうで,かつ医学界ではメジャーではない,つまり「何か目新しいことを追いかける」という報道の性質を表すもので,後者は「取材に応じる医師が限られている」可能性を表すとも考えられるか? また,こうした課題を解決するために何が必要と考えるか?

 前者に関して,特に末期のがん患者は,わらにもすがる気持ちで週刊誌に散見される効果に関する確立された証拠のない免疫治療などの広告や記事を見ることになる。このことはある意味で治療の選択肢が増えることになるが,効果の証拠のない治療に莫大な自己費用をかけることになる可能性がある。

 このような記事を週刊誌に載せることは,薬事法にはひっかからない。広告については,一部のトクホ食品で問題になったように,ある程度は法整備も必要であろう。あとは,アカデミックな視点で別のがん専門医に公平な立場で意見を聞き,治療効果や費用の信頼性についてコメントを載せることも必要であるかもしれない。

 後者に関しては,取材に応じる医師が限られるというよりは,むしろ記者側に問題がある可能性がある。週刊誌のがん記事は,おそらく少人数の記者がつくっており,毎週締め切りに追われて記事を構成する。

 したがって,取材しやすい毎回同じ医師にコメントを求めることが多くなるのではないか。調査では特に東京の医師に取材が偏っている点も明らかになっている。これも出版社が全て東京にあることが理由だろう。

 さらに,読者の興味を引いて発行部数を上げるために,医学界においてではなく“読者にとって”有名なビッグネームドクターに取材が偏る可能性もある。どんな有名な医師でも,どのがんでもどの治療法でも得意とは限らない。同じがん種でも,治療法によってそれぞれ専門家が異なり,それぞれの専門家は全国に散らばっている。記者も,内容によってどの医師に取材するのが妥当なのか,学会・論文レベルできちんと判断できる知識を持つべきであろう。

Medical Tribune 2013年2月12日

喫煙は“美肌の敵”を証明,岐阜大の日本人女性対象調査で
非喫煙者に比べ多いメラニン,紅斑量
 喫煙は美肌の敵といわれるが,その科学的根拠を示す研究成果が日本から報告された。岐阜大学大学院疫学・予防医学分野教授の永田知里氏,玉井裕也氏らが日本人女性を対象に喫煙状況およびメラニン量指数などを調べたところ,非喫煙女性と喫煙経験女性に比べて喫煙女性はメラニン・紅斑量が多いことなどが分かったという。MT Proの取材に対し,両氏は「(女性たちが)喫煙をやめるきっかけになることを期待する」とコメントを寄せた(Tob Control 2013年1月26日オンライン版)。

健康診断を受けた20〜74歳の約940人対象

 喫煙による健康リスクについては数々の報告があり,皮膚に関しては乾癬,全身性エリテマトーデス,皮膚がんなどが知られている。そうした状況に加え,アジア人女性が明るい皮膚の色をより好む傾向にある点に着目。喫煙が皮膚の色に与える影響が証明されれば,禁煙対策の一助になるとして,日本人女性を対象に喫煙状況と皮膚のメラニン量・紅斑量について調査を実施した。

 対象は,2003年10月〜06年3月に岐阜県の総合病院で行われた健康診断を受けた女性から抽出した20〜74歳の939人。健診当日に喫煙状況などのアンケートおよびメグザメーター(Mexameter)による内側前腕・上腕と前額の3カ所におけるメラニン量・紅斑量の指数の測定を行った。皮膚がんや関節リウマチ患者などは除外した。

日焼け防止剤使用やビタミン類の食事摂取などで調整しても結果変わらず

 関連を検討した結果,メラニン量指数については,測定した3カ所(内側前腕・上腕,前額)のいずれにおいても,非喫煙者および喫煙経験者に比べ喫煙者で有意に高いことが分かり,1日当たりの喫煙本数,喫煙年数,pack-yearsとも相関が見られた。

 紅斑量指数については,内側前腕・上腕においてのみ非喫煙者および喫煙経験者に比べ喫煙者で有意に高いことが示され,1日当たりの喫煙本数,喫煙年数,pack-yearsとも相関が見られた。

 上記については,日焼け防止剤の使用,ビタミンCおよびDや野菜類,脂肪の食事摂取で調整後も変わらなかった。

 報告された今回の永田氏および玉井氏らの研究により,非喫煙者や喫煙経験者に比べて喫煙者ではメラニン量・紅斑量指数が高くなることが示された。

 MT Proの取材に対し,両氏は「女性にとって非常に関心の高い肌の美容と喫煙が関連しているという結果には価値があると考えられる。最大の健康リスクである喫煙をやめるきっかけになることを期待する」とコメントを寄せた。

Medical Tribune 2013年2月13日

乳がんと前立腺がんに発現する抗原と結合するT細胞受容体のクローニングに成功
 ウプサラ大学(スウェーデン)のMagnus Essand教授らの研究グループは「前立腺がんと乳がんに発現する抗原に結合するT細胞受容体のクローニングに成功した」とProceedings of the National Academy of Sciences, USA(PNAS,2012; 109: 15877-15881)に発表した。

 このT細胞受容体を発現するT細胞は,前立腺がんと乳がんの細胞を特異的に死滅させることができるため,今後のがん治療への応用が期待される。

前立腺がんと乳がんの新しい治療法に道

 遺伝子組み換えT細胞は最近,いくつかの進行がんの治療で極めて有効であることが示されている。この方法ではまず,患者自身の血液細胞からT細胞を分離する。次にこのT細胞に,腫瘍細胞上の抗原を認識する別のT細胞受容体の遺伝子を導入する。そして得られたT細胞を培養し,患者に投与する。これらの組み換えT細胞はいったん体内に取り込まれると,転移した腫瘍や個々の腫瘍細胞を探し出し,排除する。

 2011年秋,この治療法は,ペンシルベニア大学(米)の研究者らがそれまで不治とされていた白血病の根治に3例中2例で成功したことによって世界中のメディアから注目された。

 また,メラノーマの治療でも,米国立がん研究所(NCI)で臨床試験が実施され,一定の成果を上げている。

 Essand教授らの研究グループは今回,有望なこの治療法を公衆衛生上重要な前立腺がんと乳がんにも応用するため,最初の一歩を踏み出した。

前立腺に発現する蛋白質に対するT細胞受容体のクローニングは世界初

 Essand教授らはこれまで,新しいがん治療法として2つの有望な方法を研究しており,組み換えT細胞はその1つである。同教授らはT細胞受容体をクローニングし,それががん細胞殺傷能を持つことを証明するまで約3年を要した。

 博士課程での研究の一環としてプロジェクトに参加した同大学のVictoria Rashkova氏は「前立腺に発現する蛋白質に対するT細胞受容体のクローニングに成功したのは今回が世界で初めてである。今後,この受容体を導入したT細胞について,臨床試験が行われることが望まれる。その実現のためには,米国中の研究者の協力が必要であろう」と今後の研究に期待を寄せている。

 全てのT細胞はそれぞれ固有のT細胞受容体を持つ。それらはそれぞれに適合した外来抗原を認識し,例えばウイルス感染した細胞を死滅させる。T細胞は腫瘍細胞も認識し殺傷するが,その数は通常,固形腫瘍を消滅させるには不十分である。しかし,腫瘍細胞が発現している抗原が分かれば,その抗原と結合するT細胞受容体をクローニングすることができる。そして,そのT細胞受容体をがん患者のT細胞に導入することにより,治療として利用できる。

Medical Tribune 2013年2月14日

飲酒によるがん死亡への影響,安全な閾値なし
米研究
 口腔咽頭がん,下咽頭がん,食道がん,女性の乳がんは飲酒との関連が指摘されている。米国立がんセンターのDavid E. Nelson氏らは,これらを含む飲酒との関連が深い7つのがんの飲酒による死亡数は全米で1万8,178〜2万1,284例であり,飲酒に起因する死亡により17〜19年の生活年数が失われるとの試算結果を発表した(Am J Public Health 2013年2月14日オンライン版)。この結果は2009年のデータから算出されたもので,同氏らはアルコール摂取量に安全な閾値は存在しないと結論した。

アルコール摂取量20g/日未満でもがん死亡の構成比は約3割

 Nelson氏らによると,米国における飲酒に起因するがん死亡に関する報告は1980年(Prev Med 1980; 9: 174-179)以来だという。

 なお対象のがん種は,飲酒との関連が多数報告されている口腔咽頭がん,下咽頭がん,食道がん,大腸がん,直腸がん,肝臓がん,女性の乳がんの7つとした。

 試算結果によると、アルコールに起因するがん死亡の構成比を毎日のアルコール摂取量(20g/日未満,20〜40g/日,40g/日〜;アルコール20gでビール瓶1本に相当)別に見ると,40g超は47.5〜60.2%,20〜40g/日は14.4〜17.2%を占めていた。

 しかし,アルコール摂取量が20g/日未満であっても25.5〜35.2%(男性17〜25%,女性37〜51%)であると推計され,アルコール摂取とがんリスクに安全な閾値は存在しないことが示された。

 同氏らは,飲酒量を減らすことががんを予防する上で重要であるとしている。

Medical Tribune 2013年2月22日

身体活動による余命の延長
推奨レベル未満でも効果見られる
 米国立がん研究所(NCI)がん疫学遺伝学部門のSteven C. Moore博士らは「余暇の身体活動は余命の延長に関連しており,その効果の程度は身体活動のレベルに依存していることが示唆された」とPLoS Medicine(2012: 9: e1001335)に発表した。

 今回の研究では,中等度の身体活動を週に75分間行うなど,推奨レベルに満たない場合でも余命延長効果が見られたという。

 解析の結果,平均余命は,推奨身体活動レベルに満たない低活動1群および低活動2群においても,不活動群と比べそれぞれ1.8年と2.5年と、有意に延長していた。

 身体活動レベルが高いほど平均余命は延長しており,不活動群と比べ中活動群で3.4年,高活動群で4.2年,超高活動群で4.5年延長していた。

 Moore博士らは「今回の結果は,軽度の身体活動でも健康上の恩恵が多少得られることを示しており,不活動な人々に運動を奨励する上で役立つであろう」と述べている。

Medical Tribune 2013年2月28日

乳がんや大腸がんのスクリーニング
平均余命10年未満では便益よりリスクの方が大きい
 カリフォルニア大学老年医学のSei J. Lee助教授らは「生存期間のデータに基づいて行ったメタアナリシスの結果,平均余命が10年未満の人では,乳がんや大腸がんのスクリーニングに伴うリスクの方が便益よりも大きい可能性があることが分かった」とBMJ(2013; 346: e8441)に発表した。

 この結果を踏まえ,同助教授らは「乳がんや大腸がんのスクリーニングは,平均余命が10年以上の人に的を絞って施行すべきである」と述べている。

便益が得られるまでのタイムラグを推計

 スクリーニングの便益が得られるのは何年も先である一方で,実施による合併症は短期的に害をもたらしうる。そのため,多くのガイドラインでは,高齢者に対するスクリーニングは健康人に限り行うよう勧めている。しかし今のところ,がんスクリーニングの便益を得るのに必要な余命の長さについては明らかにされていない。先行研究の多くは便益の大きさに焦点を合わせており,便益が得られる時期を調べたものは少ない。

 Lee助教授らは今回,大腸がんスクリーニング(便潜血検査:FOBT)の試験4件と乳がんスクリーニング(マンモグラフィ)の試験5件から年齢が40歳以上の人のデータを解析。スクリーニングの便益が得られるまでのタイムラグ(time-lag to benefit:スクリーニング実施時期からスクリーニングの便益が現れるまでの期間)を推計し,平均余命の点からスクリーニングの便益を評価した。

 これらの試験はいずれも1986〜2008年に発表されたもので,対象人数の規模は4万人弱〜15万人超,追跡期間は8〜20年だった。

 試験の結果からLee助教授らは,平均余命が10年以上見込める人については「大腸がんスクリーニングと乳がんスクリーニングを積極的に受けるべき」とし,平均余命が3〜5年の人に関しては「スクリーニングに伴うリスクが便益を上回る可能性が高いため,スクリーニングは実施しない方がよいかもしれない」と提案。ただし,「今回の結果が,平均余命が短い人のがんスクリーニングの機会を奪うものであってはならない」と注意を促している。

 また「今回の研究は,その人の価値観や希望を尊重した上で,便益が最大となるような意思決定に役立てるべきだ」と強調。「便益が得られるまでのタイムラグをガイドラインに取り入れることにより,乳がんや大腸がんのスクリーニングにおけるリスクと便益をこれまでよりも明確にすることができる。高齢者はさまざまな健康上の問題を抱えていることが多いため,こうした情報が加わることによって,患者1人1人に合ったより最適な意思決定ができるようになるだろう」と付け加えている。

Medical Tribune 2013年2月28日